【ラグビー】新年度特集④金沢篤ヘッドコーチ

新年度特集第4弾は、金沢篤ヘッドコーチだ。昨年度に引き続き、今年度もヘッドコーチ体制のもと指揮を執る。昨年度は悔しくも大学選手権セカンドステージ敗退に終わった慶大蹴球部。「慶大らしいラグビーとはなにか」。原点に返った指揮官と蹴球部が目指すのは「大学日本一」だ。明日に迫った全早慶明三大学ラグビーを筆頭に、春季大会が後に続く。ついに蹴球部の戦いの幕開けだ。ケイスポでは、ここまでの新チームの取り組みや状態から、日本ラグビーにおける大学ラグビーまで、幅広くお話を伺った。

 

就任2年目を迎えられた金沢篤ヘッドコーチ

就任2年目を迎えられた金沢篤ヘッドコーチ

 

―昨年度を振り返ってチームとしてどんな年でしたか。

 

結果からすると、すごく厳しい年だったと感じています。関東大学対抗戦は、同率で4位、順位上は5位という結果でしたが、大学選手権は、三連敗で終わってしまいました。自分たちのスキル不足に加えて、最後は怪我人も多くなったことで、自分たちがやろうとしていることをあまり出せず、パフォーマンスとしても伸びない、残念な結果になってしまったと思っています。

 

―結果を踏まえ他大との最も大きな差はどこにあるとお考えですか。

 

慶大は、いわゆるスポーツ推薦がないため、リクルートにおいて、他大学、特にトップにいる帝京大、明大、大東大、東海大と比べて、後手を踏むことになります。そのため、スキルやフィジカルといった面で、スタートの時点で差がついているというのが大きいです。それをどうやって埋めていくのかが重要になりますが、昨年度は冬までにそれを確立できなかったことが、結果に影響しました。

 

―具体的に今季へ持ち越した課題や、引き続き継続したい取り組みはありますか

 

反省点としては、ディフェンス面の強化についてです。昨年は、アタックを重視していました。ラグビーは、ルールが改正される中でアタックが有利になるような、いわゆる見ている人がおもしろいようなラグビーに変化しつつあります。その中で、慶大も他大と比べてアタックで優位性を出せると思っていたのですが、現実的にはそれがすごく難しかったです。今の慶大の環境を考えると、ディフェンスをもっと強化していかないと、なかなか他大に太刀打ちできません。そのため、今年度はディフェンスを強化していきたいと考えています。一方で、大きく変わらないのは、運動量ですね。この点も他大と比べて大きく差をつけないと勝てないと思っているので、継続して強化していきたいと考えています。

 

―キックオフミーティングではどのような話をされましたか。

 

慶大らしいラグビーとは何かという点にフォーカスして話をしました。ディフェンス、それから運動量ですね。加えて、もっとメンタル的に勝ちにこだわることやファイトにこだわることの3つを選手には伝えました。

 

―就任2年目を迎えられましたが、指導にあたって心境の変化はありますか。

 

大きく変わったところはないです。自分がやりたいラグビーは、選手にこの一年間で浸透していると思いますので、その意味ではやりやすいと思いますし、さらに自分の色を出していきたいと考えています。特別な変化はなくて、常に自分も100%でベストを尽くしてコーチングしていくだけだと考えています。

 

―昨年度から始まったヘッドコーチ体制継続の意図は。

 

OB会としてGM制度にした理由は、マネージメントとして、慶應を小学校からの一貫校として見た際に、どうやって強化していくべきかを、短期ではなく長期的なビジョンで捉えるというところにあります。ヘッドコーチは現場での一番のトップとして、大学が今勝つためにはどうしたらいいのかを短期的、中期的な目で見て、どうやって強化していくのかを考える立場なので、それを2年目として継続させるということです。

 

―ご自身の年間目標は何ですか。

 

私ももちろん、大学日本一を目指してやるしかないと思います。そういう意味では、他の大学のスタッフやコーチ陣に比べても、努力をしなければならないと思っています。

 

―最終的に慶大としてどのようなチームを目指しますか。

 

一番は、ディフェンスで低くタックルして前で止める、そういうチームにしたいと思っています。そしてそれを全員が誇りに思えるようなチームにしたいですね。「やっぱり慶大ってよく走ってディフェンスするチームだよね」と、みんなに言われるようなチームにしていきたいと思っています。

 

―今年度、主将、副将に加えて、Fwdリーダー、Bksリーダーが設けられましたが、これにはどのような意図がありますか。

 

怪我人が出たときに誰がどういう役割をするのかを明確にしたいというところから、主将と副将、その下にサポート役として、FwdリーダーとBksリーダーをつけたという形です。彼ら4人と、その下のポジションリーダーも含めたそれぞれが中心となって、ポジションごとであったりFwd、Bks というユニットごとで、ビデオを見たりミーティングをしたり、コーチに言われるだけでなくもっと自分たちで積極的な活動をしてほしいと考え、昨年に比べて幹部を増やしました。

 

―今年度、副将は金沢ヘッドコーチご自身が指名されました

 

慶大の場合は、主将は例年基本的に4年生が同期で話し合って決めてきています。今年は、副将以下については、主将と私で話し合って決めました。

 

―豊田選手を副将に選ばれた理由は。

 

一番評価しているのが人間的な力ですね。彼の練習に取り組む姿勢や、普段の行動、発言を見ていると、彼だったらチームを引っ張っていけると感じさせられます。彼は、昨年一年間をほとんどリハビリに費やしていて、なかなか苦労していましたが、その期間の姿勢も含めて、彼を副将にしたいなと思いましたね。

 

―現在、実力の伸びを感じている選手はいますか。

 

ハーフ団で、江嵜真悟(商2)や古田京(医2)といった昨年度一年生だった選手ですね。実際試合に出られるかどうかはまだわかりませんが、これからもっともっと伸びていってもらえれば、チーム全体が良くなるのではないかと思っています。4年生は、彼らの代なので私がとやかく言わなくてもやるというのもありますが、彼らのように若い力が伸びてくれることを期待しています。

 

―今年のチームは客観的に見てどのようなカラーだと感じますか。

 

まだ実際に試合をやっていないですし、練習の中でしかわからないですけれども、、、すごく突出した力があるわけではないですが、四年生を中心として全体的によくまとまったチームだと、今のところは思っています。これからシーズンが進んでいく中で、チームが上手く勝てなかったりだとか、人によっては、なかなかシニアに入れなかったりだとか、逆境に立たされる場面があると思いますが、そのときに彼らがどれだけ頑張れるかでまた変わってくるとは思いますね。ただ現状では、四年生がコミュニケーションをとりながら非常によくまとまったチームだと思っています。

 

―春季大会開幕に向けて重点的に取り組んでいることは何ですか。

 

メインはタックル、ディフェンスのところでどれだけ前に出て相手にプレッシャーをかけられるか、という点ですね。すごくベーシックなところしかまだやっていないのですが、今はそこに重点をおいて強化しています。

 

―経験層の薄いポジションはどのようにカバーしていきたいと考えていますか。

 

昨年度でいうと、フロントは4年生が多かったので、その意味では、フロントローは若い力が出てくることになります。大学生の場合にはどうしても経験層の薄いポジションが出るのは起こりうることなので、上手く試合の中でやりくりしながら、経験を積んでいってもらうしかないなと思っています。ただ、新しい力というのは、可能性を秘めているとポジティブに捉えることもできますし、それを含めて彼らには期待しています。

 

金沢ヘッドコーチ②―春シーズンの展望は。

 

春季リーグでは、昨年のベスト4に入っている大東大がいて、外国人選手が多くいたり、ハーフ団も昨年活躍していた選手が残っていたりしているので、そういった意味で楽しみですね。そこにどれくらい今年のチームが戦えるのか。大東大とは早めに対戦するので、楽しみですね。

 

―今年度から大学選手権の出場枠が減りました。

 

取り組み方は、大きくは変わらないですね。結果は最後についてくることなので、一戦一戦やっていくしかないです。昨年では対抗戦5位まで出場できたものが4位までになるわけですが、だからといって出場枠に入るために4位を狙うわけではないので、一戦一戦大事にしながら大学選手権にまずは出場できるように頑張っていきたいと思っています。

 

―昨年度と力が大きく変わりそうだと感じる大学はありますか。

 

トップ4のチームは、やはり継続して強いチームですね。あとは、早大は、今色々と報道されているように、大学もOB会も含めて部の強化をしようとしていますので、もしかしたら大きく変わってくるチームなのかなとみています。

 

―日本でのラグビー人気の高まりを感じる場面はありますか。

 

昨年のワールドカップの直後に大学ラグビーが直接的に何か変わったというのは、特別には感じていませんが、トップリーグやサンウルブズの試合を見ていると、やはり一般の観客は明らかに増えていますし、ラグビーの注目は上がっているなと思いますね。色々なメディアにラグビー選手も出ていますし、人気は高まっていると感じます。

 

―その高まりは、大学ラグビーに今後良い影響を与えると思いますか。

 

プレーする選手としては、いずれトップリーグでやりたいと考えている選手もいると思いますし、そういった意味では、未来が明るく、盛り上がっているというのは、大学選手にとってもプラスになると思います。また単純にずっとラグビーに関わってきた者としてこの高まりはうれしいですね。

 

―慶大はラグビー界でどのようなポジションにいると感じますか。

 

現状でいえば、なかなか日本代表クラスの選手が慶大の中から出てくるのは難しいと思っています。でも、廣瀬俊朗選手(理卒)だったり山田章仁選手(総卒)だったり、慶大出身の選手でも、数は少なくても活躍している選手はいますので、今いる中から、そういう選手が出てきたらうれしいと思います。

 

―最後に、Webをご覧の皆様にメッセージをお願いします。

 

昨年度は、特に大学選手権に入ってから、なかなかディフェンスで踏ん張ることができずに厳しい結果となり、ご覧になっている方々を失望させてしまったと感じています。今年度は、慶大の伝統であるディフェンスを強化し、もう一度みなさんの心を揺さぶれるようなラグビーをしていきたいと思っていますので、引き続き、応援のほど、よろしくお願い致します。

 

(取材・室塚あす香)

 

 

金沢篤(かなざわ・あつし)

2000年卒、現役時代のポジションはSO。在学中は副将として慶大蹴球部を大学日本一に導いた。卒業後はプロのコーチングの実績を積み、昨シーズンから慶大蹴球部のヘッドコーチに就任。

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