【端艇】第95回全日本選手権大会――集大成も悔しい終幕――

 

台風が接近する中、10月26日から29日にかけて第95回全日本選手権大会が行われた。4年生にとってはこの大会で引退となる今年最後の大舞台である。「総合優勝」を掲げ、端艇部一丸となって臨んだ大会。天候に不安が残る中だったが、順調に大会が進行していく中、慶大は立ちはだかる全日本の壁思い知り、苦さを噛みしめる結果となった。

 

第95回全日本選手権大会 10月26日(木)~10月29日(日)@戸田漕艇場

 

・大会結果、詳細

 

男子舵手付きフォア

 

C:今村匠(商4)

 

S:小坂哲生(商4)

 

3:鈴木魁(経2)

 

2:宮嵜裕之(法2)

 

B:長石治徒(総4)

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選D組

1:39.42

3:25.17

5:16.63

7:04.00

3

敗者復活へ

敗復B組

1:39.61

3:22.28

5:09.72

6:55.26

1

準決勝へ

準決B組

1:37.33

3:20.56

5:03.64

6:42.54

3

順位決定へ

順決

1:38.58

3:25.47

5:11.32

6:53.90

2

6位入賞

 

経験豊富な四年生三人と勢い溢れる二年二人で今大会に臨んだ舵手付きフォアは、予選でいきなりボート界の絶対王者日本大学との対戦。ここで日大に勝てば優勝も狙える中で、「日大を叩くには頭から出るしかない」と小坂が言うようにスタートから果敢にアタックを仕掛けた。前半1000mまで食らいつくも、そこから王者の底力を見せつけられる形で突き放され、三着でゴール、翌日の敗者復活戦へ。

続く敗者復活戦、順当にいけば準決勝進出は有力視された中、得意のスタートで突き放しきることが出来ずに苦戦を強いられる。しかし、調子が悪い中でも勝ち切る勝負強さを発揮し、何とか準決勝行きの一枚の切符を手にした。

準決勝では4艇の内、上位2艇が決勝に、下位2艇が順位決定戦に進出する。慶大クルーは決勝進出を目指し、前日までの反省点を修正し、2000mのレース中一度も京都大学と1秒以上離れないという壮絶なデッドヒート演じて見せた。しかし、勝負は無情。たったの0コンマ6秒の差で3位、決勝進出を逃した。このレースで二年宮嵜は「1秒の重さを改めて思い知った」という。

最終日の順位決定戦には宿敵早稲田の姿があった。四年生にとって現役最後のレースになるこの舞台で慶大クルーは何としても早稲田に勝つという目標を立てて臨んだ。1000m地点までは先行される形になるも、どのクルーよりも早くラストスパートに入ることを目指し、第三クォーターで加速し、早稲田を置き去りに。「今年、最高の瞬間だった」とコックスの今村、慶大クルーは見事全日本の舞台で6位入賞という結果を手に入れた。今大会で引退となる小坂は「自ら違いを生み出し、勝てるクルーを」と後輩たちに希望を託す。2年宮嵜は「先輩たちのおかげでのびのび漕がせて頂いた。先輩たちのためにもまずは勝利を。」と意気込んだ。

今大会で4年生は引退となり、端艇部は次の代へ受け継がれる。後輩たちは不安に思うかもしれない。しかし、4年生が残した言葉や、共に漕いだ経験、ボートと向かい合う姿勢が残された端艇部をより強い団体へと導いていくのだと断言できる。

 

 ・4年生の言葉

 

小坂哲生

(ボート生活を振り返って)

正直に言うと僕は本当にボートが嫌いで、俺は努力してるのにボートは振り向いてくれないと思っていて、でも一生懸命頑張ることがその人の実力を上げることじゃないってラスト三ヶ月に気づいた。今までは何も頭を使わないでいたから、一定レベルのところで止まっていて先に進めなかったんだって。

振り返るとすごい長かったけど、自分の中で一番ボートに真面目に取り組んで向き合えたのはラスト三ヶ月だけだったな。それはすごい後悔している。後輩にはこうはなって欲しくないかな。

(4年間で一番よかった瞬間は)

2年前の全日本の付きペアでの順位決定と今年のインカレの付きフォアの準決勝。どちらも四年間全然できなかった自分たちから違いを作り出して勝つっていうことがあのレース二回はできた。それ以外は後手に回って負けたり、勝っても相手をギリギリかわしてっていう形だったけどこの2つは後から振り返ってあれがあったから勝ったって言えたレースだった。

 

今村匠

(ボート部を振り返ってみて)

やっぱりボート部の活動の中で、負けた悔しさが必ずあって、それを考えないようにしたら楽なんですけど、それは逃げてるだけじゃないかなって思った。だから、今後も何らかの形で、勝負はし続けて行きたいな思うようになりました。

(後輩に向けて)

勝てるって時に勝ちにいかないとダメなんで、そこは全員でまとまって勝ちに行けばいいんじゃないでしょうか。

 

長石治徒

(ボート部を振り返って)

一瞬だったなと。今はもう気持ちが解放された感じ。

(ボート部で良かったなという瞬間は)

好きだったのは誕生日を祝ってくれたイベント。でも毎日が楽しかったなという感じ。

 

男子舵手なしペア

 

S:麓政人(医3)

 

B:磯貝悠(商3)

 

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選A組

1:42.75

3:36.29

5:35.14

7:33.00

2

敗者復活へ

敗復A組

1:44.83

3:36.66

5:30.48

7:22.66

1

準決勝へ

準決B組

1:42.90

3:32.49

5:26.23

7:17.62

4

順位決定へ

順決

1:48.09

3:40.66

5:31.91

7:24.62

2

6位入賞

 

今回舵手付きフォアと合わせてもう1艇順位決定戦に残ったのがこの舵手なしペア。次世代を率いる3年2人が意地を見せ、全日本の舞台で6位を勝ち取った。

 

男子エイト

 

C:中居誠大(経3)

 

S:内田優志(政4)

 

7:寺坂僚太(経4)

 

6:笹岡裕之(政4)

 

5:新井勇太(経2)

 

4:吉田高寅(経3)

 

3:高田直人(総4)

 

2:北原敬梧(法4)

 

B:高崎隼人(商3)

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選A組

1:28.76

3:01.99

4:35.84

6:11.98

3

敗者復活へ

敗復B組

1:29.24

3:01.07

4:35.98

6:08.10

3

 

 

慶大の最強の八人を集めたエイトだったが、集大成となる全日本の舞台はあまりにあっけなく終わった。予選、敗者復活戦、共に社会人の厚い壁の前に屈し悔いが残る敗戦となった。

 

 ・4年生の言葉

 

内田優志

(引退した今の気分)

楽しかった。全然出し切れなかったし、全然いいレースでもなかったけど、自分は後悔してない。あれ以上強く漕ぐことをできなかったし、そういう意味ではちゃんとレースを楽しめた。

でも、一番あるのは感謝。特にOBの方々、監督と両親。たくさんの支援を受けて、こんなに好きなことを死ぬほどやって、でも結果は何ももらえなかった。本当に勝てなくて申し訳ないという気持ち。要は相当なわがままやってたし、いわば借金とか不良債権みたいなもの。それでも今俺を恨むなんてしないで、よかったとか、これからも頑張れって声をかけてくれた人たちばっかりで、本当にこれからどうやって恩返ししていこうかというところしかない。今まで受けた恩の分しっかりサポートしていきたい。

 

高田直人

(4年間を振り返って)

こんなに刺激的なことはなかなかないと思ってます。大阪から一人できて、4月1日からここ(慶大端艇部戸田艇庫)に住んで練習を始めたので、最初は環境に適応するまで辛かったです。それに慣れてくると、ボートに集中できる環境なので、濃い4年間だったと思います。その中で、中高で作ったプライドみたいなものを捨てて周りからいろいろなものを吸収できる素直さみたいなものが得たものだと思います。

(後輩に向けて)

今まで慶應の先輩が作ってきた歴史があって今は右肩上がりに強くなってきているんですけど、ちょっとしたことでそれが崩れてしまうということを1年間幹部としてやってきて感じています。積み上げるのは本当に大変ですけど、崩すのは一瞬なので、積み上げてきたものを大事にしつつ、進化しないと勝てないということを伝えたいです。

 

寺坂僚太

(4年間を振り返って)

人として成長したなと思います。ただただ前を見るのではなく、長い目や引いた目、チーム全体を見る目のような、自分に余裕を持てるようになったと思います。小澤監督が自由にやらせてくれていたので、小澤監督のおかげというところもすごく大きいと思います。

(後輩に向けて)

僕は2年目のシーズンに早慶戦やインカレで勝つ楽しさを知って、それがすごく大事だと思います。勝たないとやっぱり面白くないですよね、今年は勝てない試合が続いたので思うんですけど、それを味わっていない人が多いと思うんですけど、まだ未知だと楽しさ、うれしさ、達成感は何ものにも代えがたいので、そこを目指して頑張って欲しいと思います。

 

北原敬梧

(ラストレースの後の気持ちは)

ゴールの直後は普通のレースと同じで、悔しかったし、色々と反省点を思い浮かべてた。でも陸上に上がった後に、ああもう試合も練習もすることないのかって寂しかった。

その後少し時間が経って、やっぱり常にレースを目標にして練習だったり、艇庫での生活を送るべきだったなって。どうしても練習のための練習になっちゃったり、気分の乗らない日があったりとかして、単純に積み重ねが足りなかったのかなって思った。

(後輩に向けて)

さっき言ったことと被るけど、全てをレースのために練習して欲しい。今はレース前になって焦って色々とやっているけど、常日頃から大会を意識すること。今年はレースのために何をしなきゃいけないのかという追求がめちゃくちゃ甘かったなって今思います。

 

笹岡裕之

(後輩へのアドバイス)

あっという間に4年間はすぎてしまうので、1日1日を大切にっていうこと、いつまでも練習できるわけではないし、今を大切に生きて欲しい、練習してほしいって感じですね。

(4年間で一番良かった瞬間は)

去年のインカレ、四位で悔しい思いをした後の全日本で部として久しぶりに5位入賞をした時。先輩と漕げる最後の舞台でB決勝という形ですけど、一位になれて見送れたことがうれしかった。

 

男子舵手なしフォア

 

S:王田恭之(商1)

 

3:鍛冶田有史(経1)

 

2:コントレラスピート遥介(経2)

 

B:栗野稜平(政2)

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選D組

1:39.99

3:23.58

5:11.19

7:00.12

3

敗者復活へ

敗復B組

1:40.17

3:25.42

5:14.96

6:58.80

5

 

 

1、2年の有望株で構成された舵手無しフォアだったが、全日本の舞台ではまだ結果を残すことができなかった。来たる全日本新人では慶大の主力になることは間違いない。そこでの躍進を期待大だ。

 

男子舵手なしクォドプル

 

S:藤原健太郎(経3)

 

3:高橋航平(経4)

 

2:有馬康耀(法4)

 

B:辻井将仁(総3)

 

 

500m

1000m

1500m

2000

着順

結果

予選D組

1:37.47

3:17.32

5:01.07

6:46.40

2

敗者復活へ

敗復B組

1:38.37

3:19.89

5:03.80

6:47.81

4

 

 

予選はスタートで出遅れ、2着と悔しい結果になり、臨んだ敗者復活戦だったが、敗者復活戦でもスタートの差を埋められず、「思うようにいかった」(有馬)大会となった。

 

高橋航平

(ラストレースをゴールした後の気持ち)

ゴールした後はキツかったという思いしかなかったんですけど、岸つけて、ダウンをしている時に、もうこうやって本気で漕ぐことは無くなったんだなと思うと結構感慨深いものがある。

(ボート部生活で学んだこと)

1つは努力したらそれが帰ってくるということ。ボートというのはそういう競技だと思ってますし、自分がどれだけ頑張ったかが嘘つかないでそのまま跳ね返ってくる。

もう1つはありきたりかもしれないですけど、やっぱり仲間が大切だなっていうのがあって、どれだけ辛い練習とかでも、レースの一番苦しい時とかに、一緒に頑張っている仲間がいたり、苦しい時を一緒に乗り越えてきた仲間がいるから、信頼して自分も頑張っていけるというのを学んだ。

 

有馬康耀

(4年間を振り返って)

一言でいうと、結果が出なかった。大会自体は早めの2年のインカレから出さしていただいたんですけど、準決勝どまりで、他の同期に比べても結果が全然でなかった、苦しい4年間でした。

(後輩に向けて)

僕らを抜かしてくれとしか言いようがない。僕らの代に比べると経験値の少ない子が多いと思うんですけど、むしろ僕らが抜ければチャンスはいっぱいあると思うので、どうすれば上手くなるかということを徹底的に考え抜いてもらって、僕らの結果をはるかに追い抜いてほしいと思います。

 

男子舵手付きペア

 

 

C:黒田諒(商3)

 

 

S:細田外嗣(法4)

 

 

B:本多進之介(経2)

 

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選A組

2:01.59

4:08.37

6:14.50

8:18.07

6

敗者復活へ

敗復B組

1:56.95

3:57.38

6:04.30

8:09.41

4

 

 

練習から好タイムを記録し、自信を胸に臨んだ今大会であったが、本番で十分な力を出し切れず、惜しい結果となった。

 

 ・4年生の言葉

 

細田外嗣

(4年間を振り返って)

未経験から初めて、2年目3年目に他の人よりもそんなに苦労せずに結果を残せてしまった分、3年生の後半や4年生でスランプという試練があったときに、焦ってしまった。でも、結果は振るわなかったけども、妥協はしてこなかったし、やり抜いたことは評価できると思います

(後輩に向けて)

他の強いチームに比べて足りないのは自信や誇りを持ってプレーすることだと思う。順位決定に行けるぐらいが自分の実力だと思った時点でそれ以上の結果は望めない。メンタル的に大変だとは思うが、自分を過信して上を目指して、最後まで大きい夢を求めて欲しい。

 

 

男子ダブルスカル

 

S:三輪崇(商2)

 

 

B:奥山清弘(経4)

 

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選D組

1:43.73

3:37.85

5:56.22

7:33.75

4

敗者復活へ

敗復B組

1:43.21

3:36.34

5:34.69

7:28.58

3

 

 

 

 ・4年生の言葉

 

奥山清弘

(4年間を振り返って)

本当に4年になって伸びるとは思ってなかった。理由はわからないけど、責任に伴って成長していけたんだと思うし、同時にボートが楽しくなってきた。今一番楽しいし、名残惜しいなとは思う。

(後輩に向けて)

僕は気づくのが遅かった。ボートの楽しさっていつ気づくかわからないけど、本当に頑張った瞬間にしかそれは訪れない。そういう意味では僕が1.2年生の時にもっと頑張れたと後悔もしてる。だから、一回馬鹿になって本気で上手くなることだけを考えてやってみて欲しい、そうしたら拓けるものがあると思う。そこで気づければ勝手に上手くなるだろうし、楽しくなってくるはずだから。

 

男子シングルスカル

 

 

S:石渡達哉(商4)

 

 

 

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選H組

1:49.76

3:48.64

5:52.54

7:55.29

3

敗者復活へ

敗復H組

1:53.06

3:49.08

5:50.56

7:50.29

2

 

 

昨年と同じ種目に出場したが、予選、敗者復活戦と惜しいレースが連続した今大会。惜しくも昨年の記録を超えることはできなかった。

 

 ・4年生の言葉

 

石渡達哉

(4年間を振り返って)

結構一人でコツコツ何でもやろうとしてしまうタイプなんですけど、それをボートを上手くなるために先輩からアドバイスをもらったり、同期に支えられたりしてここまでやってこれたと思います。

(後輩に向けて)

とにかく自分の志を高く持って、目標を常に持って努力し続けること。一回目標を立てて終わりではなくて、それを持ち続けることが大事だなと思います。

 

女子エイト

 

C:安立里菜(文3)

 

S:渥美優(環3)

 

7:萩原沙柚子(政3)

 

6:青木遥南(法2)

 

5:野方千裕(政4)

 

4:江藤祐実(経2)

 

3:根岸彩子(政1)

 

2:金旼我(文3)

 

B:芝崎佐和子(経3)

 

 

500m

1000m

1500m

2000m

着順

結果

予選A組

1:46.72

3:36.08

5:26.91

7:16.61

4

敗者復活へ

敗復A組

1:42.45

3:29.89

5:19.50

7:09.48

4

 

 

早慶戦以来となる女子エイト。惜しくも決勝に進むことはできなかったものの、0.6秒差で立教に競り勝ち、「勝てるということを知れたレース」(野方)となった予選。それを経ての敗者復活戦は次に9人の気持ちが一つになったレースとなった。

 

・4年生の言葉

野方千裕

 

(4年間を振り返って)

もう、きつかったという一言に尽きます。同じ学年に女子漕手が同じ学年にいなかったので、ボートがきついスポーツな上にさみしいなという思いがありました。最初の3年間に勝てなくて練習しての繰り返しだったのでなおさらきつかったです。でも、後輩がいたからやってこれたと思います。

(後輩に向けて)

自信を持ってほしい。勝ったことがないと自信は持てなくて、今の慶大女子部でも勝ったことがあるのは私だけで、私も3年まで勝ったことがなかったんですけど、スイープは大学から始める種目だし、今の慶大女子部はエルゴがすごい回るようになってきて、伸びている時期なので、もっと自信をもってボートを楽しんで欲しいと思います。

 

(記事・岩本弘之、辻慈生、写真・辻慈生)

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