【ソッカー(女子)】<コラム>サイドのスペシャリスト・佐藤幸恵 “超”攻撃型サイドバックがサイドを駆け上がるまで

ソッカー

現代サッカーにおけるサイドバックの重要性は日に日に高まっている。一昔前の守備的な役割から、攻守両面においての働きが求められるようになって久しい。そんな近年で最も役割が変化したであろうサイドバックというポジションで、佐藤幸恵(総2・十文字)はひときわ輝きを放っている。最終ラインでは組み立てに参加し、中盤から前線にかけては持ち前の攻撃センスとテクニックでチームのチャンスを生み出す。大学2年目にして、今や慶大ソッカー部女子に必要不可欠な存在となっている。

ルーキーイヤーから大活躍

 

昨季、1年での1部復帰を目指す慶大で佐藤は開幕からスタメンを獲得。その後もドリブル、パスそして持ち前の攻撃センスで伊藤洋平監督の信頼を勝ち取り、1年生ながらリーグ戦全23試合(関東女子サッカーリーグ、関東大学女子サッカーリーグの両リーグ)中22試合に出場した。しかし、特に注目すべきはそのゴール数だろう。2017年度はサイドバックながら両リーグ戦で3ゴールをマーク。これは守備陣、ましてや1年目の選手としては少なくない数字だ。また、得点場面以外でも積極的な攻撃参加を見せ、数字以上に慶大の得点力を支えていたことは間違いない。しかし、こうして“攻撃型サイドバック”としての地位を確立した佐藤にとって、意外にもこのプレースタイルは兼ねてからのものではなかったという。

 

「自分がやらないと」。芽生えた責任感 攻撃型サイドバックができるまで

 

幼稚園年長時、「兄がボールを蹴っているのが楽しそうで自分も親にお願いして」サッカーを始めたという佐藤。中学に入ると浦和レッズレディースジュニアユースに所属したが、強豪クラブの下部組織では思うように試合に出られず。高校進学時には自ら「全国を狙いたい」と十文字高校へ進学することを決めた。この時からすでに両サイドバックをこなしていたという佐藤だが、今ほど攻撃や得点への意識は強くなかった。全国レベルのチームでは周りの選手に頼ってしまうことが多く、得点を意識することはあまりなかったのだ。しかし大学に入り、転機が訪れる。必ずしも全国の強豪レベルとは言えない慶大に入り、自分が何とかしなくてはと思う場面が増えたのだ。「自分がやらないと」。そう思い始めた彼女は徐々に得点への意識を強めていった。練習でもシュートやドリブルでの1対1を強化。「自分が試合を決定づけられるような選手に」という思いで今の“超”攻撃的なプレースタイルを確立していった。

 

そんな佐藤の強みはパスやクロス、ドリブルやオーバーラップなど多岐にわたるが、中でもパスの質とオーバーラップには自信があるという。パスに関しては「昔から受け手のことを考えてパスを出していた」というように、体に染みついたセンスがある。また、ゴール前へのクロスも「中の人があとは触るだけ」というボールを意識しているという佐藤。「ほんの数センチとかでもクロスの質は大事だと思うので、そこは突き詰めてやっています」と、パスやクロスへのこだわりは強い。加えて、オーバーラップも佐藤の強みの一つだ。中盤にボールが入るとタイミングよく駆け上がり、クロスやパス、時にはドリブルで慶大にチャンスをもたらす。しかしその他にも注目したい特徴がある。それは両サイドをこなせる柔軟さ、そして得点への強い意識だ。今季佐藤はサイドハーフも含め左右両サイドで安定したプレーを見せている。まさにサイドのスペシャリストとして成長している彼女にとって、この柔軟性も強みと言えるだろう。そして何より他と一線を画しているのが、得点への意識だ。話の中でも幾度となく得点やゴールへの渇望を口にした彼女にとって、もはやサイドバックだからという固定観念は存在しない。得点が取りたいという彼女の強い気持ちは、他のサイドバックの中でも群を抜いている。

 

目に見える結果を

 

しかし、今季の出来には佐藤自身まだまだ満足していない。昨季は2部で得点やアシストを記録していた一方、今季はまだ目に見える結果が出ていないのだ。「去年以上に今年は全然得点に絡めていなくて、自分自身ももっと得点に絡んでいきたい」と話すように、攻撃の部分ではまだ物足りなさを感じていた。そんな中迎えた第32回関東大学女子サッカーリーグ第6節の武蔵丘短期大学戦。勝利すればインカレ出場権獲得に近づくという大事な一戦で、佐藤は得点に絡む活躍を見せる。前半15分、中盤にボールが入るとタイミングよくサイドを駆け上がった佐藤がボールを受ける。そして顔を上げゴール前に味方の存在を確認すると、ディフェンスラインとGKの間に速いグラウンダーのクロス。完全に相手守備陣の背後を突いた正確なボールを、最後は平田朋(環1・日ノ本学園)が押し込みゴールが決まった。まさに「あとは触るだけ」の上質なパスで得点を演出した佐藤。結局この得点がチームに貴重な勝ち点3をもたらすことになった。

 

目指すは今季初得点、そしてインカレ

 

得点に絡む活躍でチームを勝利に導いた佐藤だが、本人はまだ物足りないと話す。やはり欲しいのは今季初得点。「まだ自分自身は今シーズン点が取れていないので今後もどんどんサイドバックからでも得点を狙っていきたい」と、得点への意識はより一層強まった。点が取れるサイドバック。そんな“超”が付くほどの攻撃型サイドバックを目指す彼女は、必ずインカレ出場を目指す慶大のキーパーソンになってくるだろう。大学リーグも残すところあと3試合。そしてその先のインカレへ。「得点は毎試合狙っている」という彼女がゴールを決める日はそう遠くないのかもしれない。

(記事 岩見拓哉)

 

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