【連載】突撃!慶應体育会2022 vol.5 端艇部カヌー部門(後編)

連載

後編では端艇部カヌー部門、永田隼一(政3・成城)新主将のインタビューをお届けします!今年の目標や主将としての思いを語ってくれました。

※前編はこちらから

主将として

――自己紹介

法学部政治学科3年でカヌー部門の永田隼一です。

――カヌーをはじめたのはいつでしょうか

僕は途中入部で、大学1年生の冬から始めました。

――入部理由は

自分は浪人していた経験もあり、高い環境の中にいた方が自分の意識を高く保てると思ったので、寮生活をしていて、なおかつ大学から(競技を始めても)日本一を目指しているという環境が良いと思い、この部活を選びました。

――実際に寮生活をしてみて

メリハリがあるというのが一番の印象です。練習中はみんな集中して取り組むのですが、寮での生活ではおふざけして話し合っていて(笑)、家族のような仲間が増えたので良い環境だと思います。

――寮生活で苦労したことは

朝起きることに一番苦労していました。全員で寮生活をしているのでアラームを鳴らしてはいけないルールがあり、バイブ音だけで起きなくてはいけなく、最初は苦労しました。でもそれも最初の2、3カ月だけで今は音が鳴る前に起きられます。

――主将になった経緯は

一つ上に久保領雄音(環4・小松市立)さんという日本で一番早い先輩がいて、僕は(部内で)2番手だったので、久保領雄音さんの背中をずっと追いかけてきました。僕たちはほぼみんな未経験者のチームですが、領雄音さんが経験者一人で、昨シーズンは他大の強豪に勝ち下剋上するという目標を掲げてやりきっている姿を見て、自分のチームを変えて他大に勝ちたいという思いが強くあり主将をやりたいと思い、立候補しました。

――主将になった後、意識していること

僕は自分のことに集中するタイプなのですが、それだと主将は務まらないと思っています。部員にアドバイスすることはもちろんですが、自分自身が明るくいようということを心掛けています。主将が物静かな感じでも良いとは思いますが、自分が明るい方が、周りも明るくなり、コミュケーションも活発になって、お互いに切磋琢磨し合える環境になると思います。特に寮生活では人間関係が重要なので、常に明るく振舞って周りにも明るくなってもらおうという気持ちがあります。

今シーズンについて

――昨シーズンを振り返って

昨シーズンは冬に対面授業がなかったので、それを生かして戸田で厳しい練習をずっとしていました。コロナの影響で何回か練習が途切れてしまうことはあったのですが、それでも久保前主将を中心にみんな高い意識を持って練習してきました。インカレ(全日本学生カヌースプリント選手権大会)では僕たちはフォアというメインとなるチーム競技(K-4 1000m)で40数年ぶりに準優勝し、1位とも1秒差でした。確実に他大との差を埋められているのだと思いました。

――今シーズンの具体的な目標は

「インカレ部門3位」を掲げています。昨年も掲げていたのですが果たせなかったので、ここを目標に頑張っていきます。また個人では、昨年久保前主将とペア競技に出て、関東大会では優勝し、全国大会でも予選ではずっと1位でしたが最後の決勝戦での僕がパドルミスをして転覆してしまい失格になってしまいました。領雄音さんに金メダルを渡すことができなかったことが一番の後悔なので、今まで応援してくれた人や久保前主将への恩返しとしてペア競技で全国優勝を果たしたいと思っています。

――今年のチームと昨年のチームの違い

昨年は久保前主将を筆頭に厳しい雰囲気の中での練習でしたが、今年は、僕が厳しく言うタイプではないので、自分で考えて欲しいと思っています。人に全て押し付けるのではなく、ある程度きっかけを与えるようなアドバイスをし合っていて、自分で考えるということが今年のチームは得意だと思います。

――主将として引っ張っていく中で今感じていることは

いろいろありますが……一番感じているのは「自分が主将」という感覚がシーズン当初は他人のものに思えてしまって、例えば自分が見てきた主将のようになれているのか、資格があるのかと考えてしまい、自分はそうでないと思ってしまうこともありました。それでも同期や後輩と話していくうちに、主将は「主将」という見られ方をするので、自分が主将というポジションにいるということを自覚して、資格があるかどうかの前にまずは自分が先頭で引っ張ってみようと思い、練習でも常に先頭で漕ぐようにしています。そうすることで、「主将」たりえるのだと思っています。

――今年のチームのスローガンは

「実」です。昨年果たせなかった下剋上を実現するという「実」という意味もありますが、下剋上する上で大切だと思ったことは「現実」と「実行」です。下剋上するうえで、絶対的な自信が自分のモチベーションになるので持っておいた方が良いですが、現実を見るということもすごく重要です。例えば、他大との差、昨シーズンは1秒差でしたが、フォアの1秒差は半艇身分くらいで、1000m漕いで半艇身ということは、1回漕ぐごとに2.5cmずつ離れている計算になります。その2.5cmを埋めるにはどのようにすれば良いか考え、実行していく。現実の「実」と実行の「実」を取って「実」という言葉にしました。

大学で競技を始め本気で日本一を目指す部員たち

もう一つ、今シーズンが始まる前にキックオフミーツというものを開催しました。1年の練習メニューや計画を全部想定して書いてあります。練習メニューを組む中で、どうやったら未経験者の自分たちが強豪校に勝てるかを考えた時に、強い人の習慣を取り入れていくしかないと思いました。領雄音さんを筆頭に、強い方々の経験に基づくウェイトや乗艇、有酸素運動の習慣をすべて取り入れ、実行しようという意味もあります。習慣の例として、ウェイトの数値が高い人は記録管理と補食がまめです。記録管理にはアプリを使って毎回自分がどれくらいできたかを細かく記録することで、次回には限界ギリギリまで追い込めるので、アプリの使用も全員に徹底するようにしました。補食を絶対に取らせるということもしています。

――練習計画書はご自身で作られたものですか

そうですね、毎年作るのが恒例になっています。その場でやっていくと、カヌーはつらい競技なので、低い方へ流れて行ってしまいます。オフシーズンの間に自分たちで計画して高い視座を持っておくことで、シーズン中につらいことがあってもこの通りやっていけば必ず目標が達成できると信じています。

――カヌー競技のつらいところとは

くじけずに同じパワーを出し続けるというところです。

――魅力や楽しいところは

水上で漕ぐので、思ったよりスピードが出ます。水上を切り裂いている感覚があり、どこでも経験できない特殊なものだと思っています。カヌーは上半身で漕ぐと思われていますが、一番重要なのは下半身の力です。下半身で艇を蹴って、その力を利用して上半身が動くという仕組みになっています。それが上手くいくと、いつもはつらいスピードでも、疲れずにそのスピードを保てるようになってきます。それができるようになってくると楽しくなってきます!

――できる人は限られているのですか

限られていますし、僕も練習で調子が良い時と悪い時でできたりできなかったりします。日本トップレベルの選手でも調子にブレがあり、できていると早いです。それも競技の魅力の一つですね。

――未経験で競技を始め、いつごろから1人で漕げるようになりますか

長い人で2、3カ月くらい、早い人では1カ月かからないくらいで1人で乗れるようになります。

 

普段の生活

――普段は朝に川で練習、夕方は何の練習を

夕方はウェイトトレーニングを行っていて、日吉の部室棟や寮のウェイト部屋で行っています。また、有酸素運動も取り入れています。空きコマにする部員もいます。

――朝も夕方も練習がある中で、学業との両立は

両立はしやすいと思っています。朝8時で練習が終わって、そこからウェイトをする部員もいますがそれでも9時くらいまでです。そこからはフリーなのでバイトをする人もいますし、食堂兼自習室のような場所があり、そこは勉強に集中できる環境なので、勉強したりしています。戸田からだと日吉も三田も移動時間がありますが、戸田は埼玉なので電車で座れることも多いので(笑)、移動時間に駆使して勉強する部員が多いです。

――ボート部門との関わりは

ボート部門との関わりもあって、一緒に寮生活をしており、掃除時間は一緒にやるので、その時に話したり、学年学部ごとに集まったりご飯を食べたりする機会があります。また、早慶戦前のボート部門の追い込みは目を見張るものがあり、かなり良い刺激をもらっています。

今後について

――どのような人に入部してもらいたいですか

カヌーは心の競技でもあるので、フィジカルは重視せずに、諦めない心を持っている人は大歓迎です!

――今後期待の選手は

宮本(朝瑠=経1・浦和)選手です。高校3年間浦和高校でカヌーをやっていて、コロナ禍でほとんど練習ができずに結果を出せずにいましたが、大学に入ってからすごく結果を出しています。1年生ながら僕と領雄音さんともう一人の4年生と一緒にフォアに乗り、宮本のおかげで準優勝できたところもあります。関東大会の個人競技では全ての大学の1年生の中で一番速かったので、期待の新人です。

――改めて、今シーズンの意気込みをお願いします

コロナ禍の昨年とは違い練習を継続することが可能だと思うので、常に高い意識を持って、「実」のもと、昨年果たせなかった下剋上を果たすべく部員一同、習慣・現実・実行を大切に部門3位を目指して頑張ります!

――お忙しい中ありがとうございました!

 

(取材:長沢美伸)

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