【連載】突撃!慶應体育会 vol.11 洋弓部

連載

慶應義塾体育会には現在、43の部活がある。そんな体育会各部は普段どのような雰囲気で、どのような練習を行っているのか。試合などでは見られない、体育会の知られざる日常に迫る。第11回となる今回取り上げるのは洋弓部。矢で的を射抜く、単純ながらそれは日々の練習のみが可能にする。大学で始める人も多いスポーツだからこそ、みえてくる可能性もあるようだ。

活動紹介

70メートル先の的を狙いすます部員たち。春休み期間中の3月中旬、日吉記念館、蝮谷テニスコートをさらに奥に進んだ射場にて洋弓部の練習が行われていた。長期休暇中は2部制に分かれており午前・午後で各自3時間ほど練習を行う。授業期間中は、平日はオフの月曜日を除いた火~金曜日のなかから自身の時間割に合わせて3日間練習する。ナイター設備を備えているため授業後から夜にかけても練習が可能だ。土・日曜日の練習を含め原則週5日間練習し、洋弓の腕を磨く。

横一列、タイマーを用いて練習を行う

練習内容はその時期に応じたものが行われる。リーグ戦等の試合が集中する春は点数を記録する練習を主に実施し、夏冬はできるだけ多くの矢を放ち体力をつける。

夏と春には1週間程度の合宿もあり、そこでは1日約8時間の練習で技術を磨くだけでなく、ミーティングを通してチームの結束もより強固なものにする。

 

洋弓の難しさ

ここで洋弓(アーチェリー)と和弓(弓道)の違いを紹介したい。両者は矢で的を射抜くという点では共通しており同じような競技にも見えるが、実は違いも多くある。

1.的

弓道の判定は「あたり」か「はずれ」のみだが、洋弓では的が色分けされており射抜いた場所により点数が異なる。中心部が最も点数が高く、その大きさはCD・DVDの直径(12センチ)とほぼ同様。手元の1ミリのずれも70メートル先では7センチのずれとなり、これほど小さな中心部を射抜くことは大変難しい。

 

2.天気

弓道は射位(矢を引く場所)にも的にも屋根がついているのに対し、洋弓は完全屋外での実施が主となるため、夏場は暖気に、冬場は寒気に直にさらされる。かつ競技は雨の中でも行われ、雨風にさらされながらも矢を的の中心に一定に放つ技量が求められる。

この日の練習も雨の中行われた

3.弓

弓道の弓は主に竹やグラスファイバーからなるのに対し、洋弓の弓は金属製である。冬場は寒気にさらされる上に金属製の弓がとても冷たく感じられるという。もちろん手袋をつけるわけにもいかず、選手らは寒さに耐えながら的を狙う。

自分に合った弓・矢を探す

近年の試合成績

例年春にリーグ戦があり、それを突破すると王座決定戦に出場できる。王座決定戦とは大学日本一を決める大会であるが、そこでの洋弓部のチーム目標は男子が優勝、女子がベスト4入りを果たすこと。部は創立してから計4回日本一に輝いており、直近では男子が2015年に達成している。女子も2021年にはベスト8に輝いており、ベスト4まであと一歩だ。

年度

男子

女子

22年

ベスト16

ベスト16

21年

3位

ベスト8

20年

ベスト16

ベスト16

(表)近年の試合成績・王座決定戦

王座決定戦の様子

年度

男子

女子

22年

〇3403―3279

●2112―2311

21年

〇3600―3476

●2181―2488

20年

〇3676―3625

●2159―2439

(表)近年の試合成績・早慶定期戦

早慶定期戦の様子

部員はチーム内だけでなく個人としても多くの活躍を見せる。例えば飛田和真(理4・水城)選手は大学生以外も出場する全日本大会で5位となり、さらにナショナルチームにも選ばれている。また芦田美弥妃(総3・国際基督教大学高)選手は2022年のインカレで優勝している。

 

「切磋琢磨」

チームのスローガンは「切磋琢磨」である。一つには部活内での切磋琢磨。学年をまたいだ6~7人で班を作り、班内でお互いのフォームなどをチェックしてアドバイスし合う。コロナ禍で一緒に食事に行く機会などがなくなってしまっても、このような仕組みを通じて会話を増やし交流を深める。

二つ目は附属校との切磋琢磨だ。慶應義塾高・慶應女子高にも洋弓部があり、練習場所をともにする。そのことからも両校と大学の部は交流があり、大学からは部員をコーチとして高校に派遣する取り組みも行われている。両校も大学の部に並び好成績を残しており、この切磋琢磨は高い相乗効果を生み出している。

 

「選手としても主将としても650点」

主将・笹井 清雅(経4・慶應)は引退を6月に控え、個人としての目標は720点中で650点を取ることだという。プロ選手でも670点ほどで、650点は全国大会優勝レベルであり決して易しい数値ではないが達成に向けてひたむきに練習に励む。また部の運営面でも650点を目標としているという。謙虚ながら高い目標に向かって鍛錬する主将の姿勢がうかがえる。

 

新年度が始まるにあたり、主将から入部を検討している新入生へメッセージをいただいた。

「アーチェリーはマイナースポーツということもあって、他の部活とは異なり初心者から始めてもインカレや全国規模の大会に出られる可能性が大きい部活だと思います。大学から新しいことに挑戦してみたい人などには特にうってつけのスポーツです。また自分の実力が点数として目に見えるところも大きな特徴です。そういう点で、自分が成長したいと思う人に向いているスポーツだと思います。ぜひ入部してください!」

 

日々ミリ単位のズレを修正し、その練習をもってして試合ではどんな環境でも中心を射抜く。今年のリーグ戦・王座決定戦、早慶戦をはじめとした対校戦にも注目だ。

新入部員を募集中!

(取材:五関優太)

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