【What is 〇〇部?】チームワークで己を磨く/File.36 拳法部

拳法
慶大の体育会を深堀りしていく連載企画、「What is 〇〇部?」。第36回は、拳法部!迫力ある打撃や投げが繰り出される日本拳法を極めし選手たちは、どんな練習を行っているのか。そして、拳法部の特色とは何なのか。練習の取材と主将へのインタビューを行い、その全貌に迫った。(取材:12月8日)
 
拳法とは

拳法とは、日本拳法と呼ばれることが一般的な武道。自衛隊でも採用されている実戦的な総合格闘技で、突き・蹴り・投げなどあらゆる技を用いることができ、自由度が高い。また、顔と胴体に防具とグローブを装着しているため、技を安全に受けられるという特徴もある。体重制はなく、無差別級で争われるため、小さい者が大きい者を制することが可能であり、これこそが日本拳法の醍醐味であると言える。

部の概要
慶大拳法部は1953年に創部し、1998年に体育会加入。日吉記念館右の階段で蝮谷を下り、蝮谷テニスコート手前で左に曲がると見えてくる、蝮谷拳法場で練習を行っている。拳法場は、入って左手を少林寺拳法部、右手を拳法部という形で分け合って使用している。
 
選手の多くは高校時代に運動部に所属していたが、格闘技や武道をしていたのは一握り。慶應義塾高の拳法部から慶大拳法部に進んだ選手はいるものの、それ以外で高校時代に拳法を心得ていた選手はいないという。
部員は選手27名、マネージャー5名の計32名。特徴的なのは、途中入部の部員も多いこと。32名のうち9名が1年秋以降に入部している。
 
活動内容
平日の練習は火水木金の18:00〜20:30で行われており、選手はその中から3日を選んで参加するシフト制を取っている。週末は日曜日の10:30〜13:00で行われ、選手は全員が参加。平日と合わせ、計週4日で練習を行う。
マネージャーは週2日、練習に参加することとなっている。
オフの日は資格勉強に取り組んでいる部員もおり、学業との両立が可能。また、サークル活動やバイトをしている部員も多くいる。
 
25年度はチームの活動目標として、新人戦優勝・早慶戦連覇・全国ベスト4の3つを掲げ、以下のような結果を収めた。
○東日本大学新人戦 準優勝
◯東日本大学選手権 男子の部3位
◯早慶定期戦 勝利、26年ぶりの2連覇を達成
◯全日本学生選手権 ベスト8
 
また、個人としては昇段級審査会での昇段を目指し、日々の練習に励んでいる。
 
練習内容
この日は18:00に練習開始。まずはシンプルな準備運動で始まるが、テニスボールを足裏で踏んで転がすような目新しい練習も。さらに、受け身や瞬発系のトレーニングなど、拳法の特性に合わせたアップが20分間行われた。
 
続いて型の練習。突きや蹴りを各々行い、部員同士で指導し合うシーンも見られた。
 
18:40頃に防具をつけ、打撃の練習を開始。力強い突きや蹴りが当たった際は、破裂するような音が蝮谷にこだました。
 
最後は実戦練習。間合いの駆け引きを重ね、一瞬の隙を突いて蹴りや突きを狙っていく。
時折繰り出される投げも迫力満点。
 
実戦の最中は、「いいよ!惜しい!」と、絶えず活気のある声が掛けられていた。
実戦練習では動画を撮影してチーム全体に共有し、練習後のフィードバックも欠かさずに行っている。
実戦練習を終えると、入念なダウン、ミーティングと進み、練習は20:30頃に終了。ハードに、緊張感を持って取り組みながらも、部員同士がアドバイスを求め積極的にコミュニケーションを重ねる姿が印象的だった。
練習後、25年度主将の小久保遼(商4)選手にインタビューを行った。
 
主将インタビュー

ーー拳法を始める前にやっていたスポーツはありますか。

もともと、空手とテニスをやっていて、空手がきっかけとなって塾高の拳法部に入りました。

ーー塾高の拳法部はどのくらいの人数が所属していましたか。

自分の時は20人前後ぐらいでした。

ーー塾高でやっていた方で大学でも続けられている方は、どのくらいいますか。

すごく少ないですね。今(4年生で)残っているのは自分だけで、後輩も1人しかいないというくらいです。

ーー拳法の競技の特性として、練習で特に鍛えるところはどんなところですか。

一番大事なのは足だと思います。ステップを踏んだり、踏み込んだりしますし、蹴りもあるので基礎となる足は自然と鍛えられていくと思います。筋トレもそこに加えてやっています。

ーーウォーミングアップでは、テニスボールを足裏で転がすトレーニングをされていましたが、どういった目的ですか。

足の裏をほぐすという趣旨でやっています。半年前くらいにOBの方のご協力を得てフィジカルトレーナーをつけていただきました。その方から「足の裏をほぐすとけがが減る」とアドバイスをいただいて、取り入れた形です。

ーーご自身のスタイルや得意技を教えてください。

自分はカウンターが得意なので、カウンターを活かした胴突きが得意技としてあります。

ーー拳法をやっていて一番楽しいのはどんな瞬間ですか。

自分としては、仲間が勝った瞬間ですね。この間の早慶戦でも、自分が勝ったときもすごく嬉しかったですが、後輩や同期が勝った瞬間の方が喜びが強かったです。

ーーここまでの4年間での一番の思い出を教えてください。

早慶戦で勝てたことです。早慶戦には特別な想いがあるので、去年に引き続き2連覇できたことが一番の思い出です。

ーー今年度はチームとしてどんな目標を掲げてきましたか。

今年度は、新人戦優勝、早慶戦連覇、全国ベスト4という3つの目標に向けて頑張ってきました。

新人戦に関しては惜しくも準優勝であと一歩届きませんでしたが、早慶戦は連覇することができました。全国大会は次の日曜日(インタビューは12月4日、全国大会は12月7日)に引退試合としてあるので、ベスト4を取れたらと思います。

ーー主将になってからの1年間を振り返って、いかがでしたか。

周りに頼りきりだったというのが正直な感想なんですけれども、ほんとうに周りに支えてもらって、早慶戦に勝てましたし、後輩たちが新人戦を勝ち上がっていく姿を見られたので良い1年間になったと思います。

ーー拳法部の特徴を教えてください。

距離感が近いところだと思います。上下関係も少ないですし、横のつながりも強いと思うので、関係性で挑む試合はより一層力が入りますし、応援しがいがあると思っています。

ーー今日の練習でも、学生同士でアドバイスし合う姿が見られました。

声掛けやフィードバックは大事にしています。自分では気づけないことに周りの学生が気づいてくれていることもありますし、自分からフィードバックしに行くと考える力や主体性が育まれていくので、この部活の良いところの一つとしてあると思います。

ーーこの1年間でチームのどんなところに成長を感じていますか。

組み技が強くなったと思います。ソーナイン(経4)が去年から入ってくれたことで、技術が育まれたと思いますし、あとは組みをメインとした練習を今年から取り入れて、もともとは他校から組みが弱いと言われることもありましたが、今は全員が組みをできるようになり、組みで勝負するという選択肢もあるくらいなので、そこがチーム全体で一番成長した点だと思います。

後輩に指導するソーナイン選手(水色の服)

指導によって突きに変化が

ーー最後に、日曜日の全国大会に向けて意気込みをお願いします。

ベスト4を目指して全力を尽くしたいと思います。個人としては今までの7年間積み上げてきたものを全部出し切れたらと思います。仲間を頼りにして頑張ります。

 

12月7日に行われた全日本学生選手権。目標のベスト4には一歩届かず、ベスト8という結果に終わった。4年生が残したものを受け継いだ後輩たちが、拳法部の新たな歴史を紡いでいく。

 

(取材:柄澤晃希)

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