25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第69回となる今回は、男子バスケットボール部の廣政遼馬(経4・福大大濠)。強豪校で培った勝利への基準を携え慶大に入部した廣政だったが、大学では様々な壁に直面する。主将としてチームを率いる中で廣政が追い求めたのは、組織における「自分なりのリーダーシップ」だった。
憧れたのは「人としてかっこいい」姿
廣政がバスケに出会ったのは4歳のとき。当時住んでいたアメリカで、兄に着いて行ったことがきっかけだった。日本へ移ってから本格的に競技を始め、その実力を買われて高校は福大大濠へ進学した。しかしそこに待っていたのは、世代別代表クラスの選手が並ぶ高い壁だった。高校1年時はとにかく圧倒され、2年時は後輩の台頭に焦りを感じた。試合出場どころかベンチ入りを争った日々は、バスケ人生でも特に苦しい時間だったという。
3年時には副キャプテンを務め、廣政の中でのリーダーシップ観が少しずつ輪郭を持ち始める。試合に出て結果を残すだけでなく、プレー以外でも組織に貢献できるのではないか――。そんな思いが強くなっていった。
そんな廣政が慶大を志した理由は、競技環境だけではない。慶大に進学した福大大濠のOBと接したとき、その姿に初めて「人としてかっこいい」と感じたという。バスケの技術だけではなく、冷静さや視野の広さ、余裕を備えたその在り方に惹かれ、「ここに行けば、こんな人になれるのかもしれない」と思った。
意見を言うだけでは届かなかった
大学で最初にたどり着いたリーダーシップの形は、今振り返れば未熟だったと廣政は語る。1年時は、とにかく発言することがあるべき形だと思っていた。コート内外で、準備からプレーまで、目標達成のために必要だと考えることを発信し続けた。当時のことを「自分が自分の後輩じゃなくてよかった(笑)」と振り返る。

2023年早慶戦
しかし、それだけではチームは動かなかった。自分では正しいと思っていた言葉も、結果が伴わなければ意味がないと感じ、初めてその現実に直面する。
目線を合わせるということ
2年生以降、廣政は少しずつ変わっていく。前年の反省から周囲への接し方に目を向けた。まず人の話を聞き、相手の目線に立つこと。一つのやり方に固執せず、相手に応じて伝え方を変える必要もある。そして、相手に求めるだけでなく、自分から求めに行くことも意識するようになった。
大学には、高校までとはバスケへの向き合い方も知識量も異なる選手が集まる。強豪校で当たり前だった勝ち方が、そのまま通用するわけではなかったことに気づかされた。それぞれの組織に合った勝ち筋をどう見つけるか。その問いに向き合う中で、廣政の視野は自分自身から、次第に組織全体へと広がっていった。

3年時の早慶戦
主将としての「リーダーシップ」
4年生になり、主将として迎えたシーズンは苦難の連続だった。組織のことを考えすぎるあまり、春は思うようなプレーができず、結果もついてこなかった。副将の椎橋遼生(政4・國學院久我山)に「今の遼馬のプレーを見ていても面白くない。もっと自分らしくやればいい」と言われ、その言葉に、廣政は自分がバスケをしている理由を思い出した。勝つため、主将として責任を果たすため――しかしその前に、バスケが大好きで、楽しいから続けてきたのだと。

主将として臨んだ、最後の早慶戦
目標未達の悔しさの中で、廣政は一度自分に矢印を向け直した。主将である前に、一人のバスケットボールプレーヤーとして納得できるか。慶大が勝つためには、自身の活躍も欠かせないと分かっていた。それがチームの勝利に直結するなら、まずは自分が自分らしくコートに立たなければならない。だからこそ秋は、求めるべきものをはっきり求める姿勢へと再び舵を切った。ただし、それは1年時のような発信一辺倒ではない。聞くことも、補うことも、厳しく示すことも知った上で、それでも今選び取るべき最適解を見極めた上での結果だった。
その背景には、高校時代からロールモデルとして仰いできた片峯監督の存在がある。「監督がいなければ、ここまでリーダーシップにのめり込むこともなかった」と語る。
「停滞は衰退だ」。廣政は監督のこの言葉を今も大事にしている。現状に満足せず、進化を止めないこと。組織の価値を守るためにも、リーダーが追求をやめてはならない。主将としての1年間は、その言葉の重みを身をもって感じる時間でもあった。
答えのない問いを、追い続けて
常に前を向き、主将として走り続けた廣政。しかし4年間を通しても、これが正解だと言い切れるリーダーシップ像には辿り着いていないという。
「リーダーシップに答えはないと思っています」。そう語る廣政にとって、大切なのは完成された理想像を持つことではなく、向き合い続ける姿勢そのものだった。状況や組織も変わっていくからこそ、それに応じて柔軟に考え続けることに価値があった。
4年間で得たのは、組織を俯瞰しながら最適解を考える力と、どんな状況でも前を向き続ける強さだと振り返る廣政。主将として、常にチームの進む方向を示し続ける責任を背負いながら、逃げずに向き合い続けた時間でもあった。

オータムリーグ2巡目・帝京平成大戦
確かな答えにはたどり着かなかった。それでも、答えを探し続けるその向き合い方こそが、4年間で廣政が手にしたものだった。「停滞は衰退」――その言葉の通り、立ち止まらずに問い続ける姿勢が、廣政のリーダーシップを更新し続けていた。
(取材・記事:本橋未奈望)

