6月23日、慶大男子アーチェリー部が四年越しの大舞台に臨んだ。全国から強豪校が集結し頂点を争う全日本学生王座決定戦だ。前日に行われた予選で6位に入った慶大の初戦の相手は、同じく予選で11位と出遅れた東北学院大。格下の相手に2回戦進出は堅いかと思われたが、蓋を開けてみればまさかの2点差で敗北となった。選手たちにとって記念すべき初めての王座はほろ苦い経験として記憶に刻まれた。
全日本学生王座決定戦@静岡県ヤマハリゾートつま恋多目的広場
一回戦
●慶大200-202東北学院大
選手たちが夢に願った王座の舞台は流れ星のように一瞬で終わってしまった。新緑の奥に広がるヤマハリゾートつま恋に設けられた射場で行われた全日本学生王者決定戦。「慶応として三年ぶり、男子では4年ぶりということで気合十分で臨んだ」(相川主将・経4)という慶大は前日に行われた予選で16校中6位と好調ぶりをアピール。的から70メートルの距離で72射を放つ予選では、643点で63名中7位に入った鄭(経3=南山高)を筆頭に、主務も務める小菅(経4=慶應義塾高)が618点で21位、安藤(政3=慶應義塾高)が613位で27位と続く。
良い形で弾みをつけた慶大は一夜明けた23日、予選11位の東北学院大との初戦を迎えた。時折木々の枝を揺らす強めの風が吹く中行われた本戦では、「予選よりも射つ本数が少ないということもあるので、それだけ一本にかかるプレッシャーは大きく」(相川主将)なるという。慶大は相川主将、小菅、鄭の「フルメンバー」(鄭)が入り、安藤が4番手に控えるという万全の布陣をしいた。未経験の大舞台ということもあり固さも見られたが、選手たちは鋭い視線で的を見据え、真剣に射をこなしていく。まさにデッドヒートの様相を呈した試合だったが、合間には笑顔でハイタッチを交わすなど徐々に自分たちのペースを取り戻していく選手たちの姿があった。しかしまずまずの200点で試合を終えた慶大に対し、王座常連校であり勝負強さにおいて慶大の上をゆく東北学院大が202点をたたき出し、慶大はまさかの一回戦敗退。念願であった王座は「あっという間」(小菅)に幕を閉じることとなった。
全力を尽くしたが、「思っていた以上に実力が出し切れなかった」(小菅)。3年間王座から遠ざかっていた慶大に対し、試合巧者は相手だった。2点というほんのわずかな点差に、大きな経験の差が横たわっていた。しかし一回戦で200点以上をマークした出場校は慶大以外全て二回線に駒を進めており、激戦の中慶大が健闘したことは間違いない。「4年ぶりの王座出場という快挙」(鄭)にチームを導いた4年生はこれで引退となるが、夢の舞台で涙を流した経験は血となり肉となり後輩たちを成長させていくだろう。快進撃は終わらない。未来の栄光を射止めるため、慶大アーチェリー部の飽くなき挑戦は続く。
(記事 伊藤明日香)
◆選手コメント
相川主将(経4=慶應義塾高)
(今日の試合を振り返って)慶応として三年ぶり、男子では4年ぶりということで気合十分で臨んだんですけど、やはり全国の壁は高いということを痛感しました。僕たちも全力を尽くしていつも通りの感じで臨んだが、それでも一回戦敗退という結果は悔しいです。それを重く受け止めて、自分たちの力はまだ通用しないということなので、来年後輩たちにはさらに気合を入れた練習に臨んでもらってこの場に戻ってくるんだという雰囲気でやっていってもらいたいです。(僅差で敗れましたが、予選と比べて本戦では固さがありましたか)そうですね。予選よりも射つ本数が少ないということもあるので、それだけ一本にかかるプレッシャーは大きくなったりして、フォームが固くなるということはありました。あとはちょっと風が吹いたりしていたので、天候に惑わされたということもあったと思っています。(4年ぶりの王座進出ということですが、今年を振り返ってどんな点が王座につながったんですか)ここ数年、男子で言えば4年間王座に出場できてないということを重く受け止めて、非常に心苦しくはあったけれど、まずは王座に出場するという目標をスタートの時点でみんなで決めました。それが功を奏したというか、みんなで一丸となって目指しやすい目標というか、割りと自分たちに近いところの目標にみんなで取り組むことができたので、まとまりを出してこのチームでやってこられたのだと思います。(今大会の経験を踏まえて、後輩たちに託したいことはありますか)まずはこの試合を一人一人が振り返って、何が足りなかったのかを考え、全国の舞台というのを自分の目でみて肌で感じて全国の強豪校というのはどういうものなのかを知ることができたので、そういうことから学んでほしいです。僕が主将としてやってきた一年間というものを振り返ってもらって、良かった点というのをしっかり自分の中で整理した上で次に向かって取り組んでもらいたいと思います。(最後にご自身の4年間の選手生活を振り返って一言お願いします)本当にいろいろなOBの方や、部員や高校生たちを巻き込んでやってこられた4年間だったことは、今後自分の人生の中で振り返った時に非常に大きな財産になると思うし、主将としてやらせていただいたということは非常にいい経験になったと思います。これからはOBという立場で後輩たちに何かの形で支援していきたいと思います。
鄭(経3=南山高)
(今日の試合を振り返って)三人ともちゃんと射てたという気持ちはあります。その積み重ねでいつも自分が出していたような点が出せなかったことは本当に悔しいです。ただやっぱりこの三人がフルメンバーなので、その上で負けてしまったということには悔いはないです。相手は予選ではかなり格下の相手だったので甘く見てた部分も敗因の一つになったかなとは思います。(今大会が4年ぶりの王座決定戦ということですが、試合前にはどんな気持ちがありましたか)ここに来るために全員が一年間努力してきたので、それで4年ぶりの王座出場という快挙を達成して、この55代というチームが歴史を変えるという役割を果たしたことは、チームの一員として誇りに思っています。(王座に出場することが今季の目標だったと伺いましたが、来季出場したら何を目標としたいですか)慶大と他大学の戦力を考えると来年も王座に出場することは必ずできると思うので、目標は王座獲得というところに引き上げて取り組む年にしたいと考えています。(来季が大学最後となりますが、どんな一年間にしたいですか)自分自身も一日一日悔いがないような過ごし方をしたいと思いますし、来年まだ弓を引きはじめてもいないような一年生を幹事代として引っ張っていく立場になるので、彼らにこの悔しさをしっかり伝えた上で全員が笑って終れるようなチームを作っていきたいと考えています。
小菅主務(経4=慶應義塾高)
(今日の試合を振り返って)今日は本当にあっけなく終わってしまったなというのが一番のところです。事前にいろいろと準備をしてきて、それで王座の切符を久々につかんだので、自分としてはいい形で入れたと思っていたんですけれども、思っていた以上に実力が出し切れなかったので悔しいです。振り返ってみればもっとやれることはあったかなと思うんですが、全力は出し切れたので、その点に関して悔いはないです。(今日のプレーはご自身の中で何点くらいだと思われますか)普段のプレーよりは落ちると思いますが、全力を出し切ることが出来たので、その点を考慮して……。でも、点数つけられないですね。(今年一年間を振り返って、何が王座進出のカギとなりましたか)チーム内での団結力というか、思いを共有できたという部分が大きかったと思います。4年生の中ではもちろん、下級生との間でも気持ちの共有ができた代だったと思うし、だからこそこうして王座に来ることが出来たんだと思います。(来年は後輩たちにどのように取り組んでいってもらいたいですか)僕たちの良い所はもちろんあったと思いますが、悪かった所も改善してもらってぜひ王座獲得を成し遂げてもらいたいです。もう応援という形でしかくることが出来ないですが、またこの場に戻ってきたいと思います。
安藤(政3=慶應義塾高)
(今日を振り返って)自分は四番手ということで初戦には立つことが出来なかったんですけど、みんなでチームとして戦って負けたので悔いはないです。(慶大にとって4年ぶりの王座ということで、ご自身にとっては初めての王座だったと思いますが、どのように感じましたか)前まではすごく怖いと思っていたんですけど、いざ試合にやるとすごく楽しく、みんなの応援を受けて戦える良い場所だと思いました。(来年再びこの場所に戻ってくるためにはどんな準備が必要だと思いますか)今は4年生、3年生が中心なので例年入ってくる1年生や2年生の指導などを含め、みんなで挑戦するということが大事だと思いました。(ご自身としては来年に向けてどのような取り組みをしていきたいですか)最上級生になるので、下級生を引っ張れるようにキチンとすることと、なぜここに来たいのかとかそういう思いを伝えていくことがすごく大切だと思うので、そういうことをしっかりやっていきたいと思います。(引退する4年生にはどんな思いをもっていますか)今まで、自分たちが入部してから3年間一緒にやらせていただいて本当にありがとうございますという気持ちです。いろいろ怒られることもあったんですけどこうして、泣く結果にはなったものの王座で試合が出来て、ありがとうございましたという一言に尽きます。
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