真夏の陽光が降り注ぐ秩父ミューズパークにて関東学生選手権大会本戦が開幕した。初日に行われた男子シングルス初戦には慶大から7選手が出場。厳しい暑さをはね返すような熱戦を繰り広げた。照りつける日差し、砂埃を立て足元を絡め取るクレーコート、立ちはだかる強敵たち。そのすべてを払いのけ、もう一つの関東王者の栄光を手にするのはだれか。8月の連戦を占う夏関の幕が上がった。
2013/08/05関東学生選手権大会@秩父ミューズパーク
男子シングルス一回戦
試合結果●権大亮6(7)-7,6-3,5-7中村祐樹(上武大)
○井上善文6-3,6-0伊藤祐樹(法大)
○渡邉将司6-4,6-1坂口雄大(駒大)
○近藤大基7-5,6-2中澤祐貴(立大)
○矢野隆志6-0,7-5,7-5●髙田航輝(同校対決)
○谷本真人6-4,6-4長田和典(法大)
二次予選から勝ち上がった井上(経3=慶應義塾高)は法大の4年生である伊藤と対戦した。序盤二度のコート移動というハプニングに見舞われるも、「逆に平常心を保つことができた」(井上)と落ち着いてラリーを展開。時折ダブルフォルトなどのイージーミスも見られたが、そこから流れを失うことはなく、順調に第1セットをものにする。続く第2セットでもミスでいらだつ相手を後目に、パワーのあるストロークでゲームを組み立てると、危なげなくストレート勝ちを収めた。普段は長身を生かしたサーブアンドボレーが持ち味の井上だが、この日の相手は「ダブルスで戦績がある選手で(前に)落としてきたり、ロブを上げるのが上手い」と判断し、ストローク中心のプレースタイルに変更。3年生になりプレーの幅を広げつつある井上が戦略勝ちで一回戦を突破した。
また、昨年大会ベスト16の渡邉(総2=名古屋経済大市邨高)は駒大の坂口と対戦。キレのあるサーブやリターンで流れをつかむと、豪快なネットプレーでリードを広げ、3-0とする。しかしここから決め所でミスが多発し、デュースの連続の中でゲームを落としたことから、試合はシーソーゲームの様相を帯びていく。5-4で迎えたリターンゲーム、相手のサーブに食らいつくと、その粘りが相手のミスを誘い、ブレーク成功。第2セットではいきなりブレークされてスタートするが、そのあとは一歩も引かないドライブショットで真っ向勝負を挑み、6-1で勝利を収めた。
押しも押されぬ慶大の二番手であり、不在の志賀主将(政4=秀明八千代高)に代わって優勝を狙う近藤(環3=湘南工科大附属高)は立大・中澤との初戦に臨んだ。競り合いとなった第1セット、浅い球でネットに誘い出され、思わずミスを出したが、激しいラリーの応酬の中でも機を捉えてフォアに回り込み強烈な逆クロスを浴びせる。要所でもしっかり締めると7-5で接戦を制した。その勢いは第2セットに入るとさらに強まり、6-2と相手を突き放して初戦突破を決めた。
同じく白熱のラリー戦を見せたのは法大のルーキー・長田と対戦した谷本(環2=名古屋高)だ。「あまり無理せずしつこくいけた」と振り返った谷本は、持ち味のパワフルなストロークで序盤にリードを築く。しかし相手もまたハードヒッターであり、コーナーを突くダイナミックなショットでポイントを積み上げられると、3-4と逆転を許してしまった。厳しい局面に立たされた谷本だったが、粗削りな相手に散見した隙を見逃さず逆転し返し、第1セットを先取。第2セットも激しい打ち合いとなったが、コースを読み、逆をついてエースを奪うと徐々に主導権を握り、6-4で勝利した。ライバル校の若手を下して、次戦に勢いをつけた。
個人戦に多くの選手を送り込む強豪校にとって避けられないのが同士討ちとも呼ばれる潰しあいだ。その宿命が今大会初戦で矢野(環3=八雲高)、髙田(環2=湘南工科大附属高)の二人に降りかかった。ダブルスではともに優勝を狙うパートナーだが、対戦相手となったからには「正々堂々と戦って、この試合に勝ったほうが次に進むというだけ」(矢野)。試合は序盤から髙田が「自分から相手を振り回していく」という意識で矢野を圧倒し、6-0とリード。
先の早慶戦でも白星をうちあげた若手が二回戦に進むかと思われたが、ここから矢野が上級生としての意地を見せる。自分の戦略やプレーを「信じて、やることをやる、貫き通す」と誓った矢野は、第2セット序盤のビハインドを覆すと、卓越したフットワークで粘りに粘り、7-5としてゲームを振り出しに戻した。どちらも譲れない第3セット、二人が縦横無尽に駆け回ったコートは灼熱の太陽のもとでもうもうと土煙を上げる。しかしそんなことは意にも介さぬ様子で両者エースを奪い合う展開に。取っては取られ迎えた4-4の第8ゲーム、矢野は中央のライン際に球を集めて髙田のリカバリーを封じる。そして髙田のペースを崩すとコーナーにエースを突き刺し優位を築いた。リードされた場面で「一歩後ろに下がって守りに入って」しまった髙田。それに対し一本自分の軸を貫いた矢野が今回の同校対決を制した。
そしてこの日の慶大陣で最長の4時間近くの長丁場を戦ったのが、権(総3=秀明栄光高)だ。出だしは好調だった。武器である鋭いバックハンドで相手コートをえぐると、フォアハンドでもショートクロスでエースを量産。不意を衝くドロップショットも完璧で5-4とリードして第1セット終盤を迎えた。しかしここで対戦相手の中村(上武大)のサーブが火を噴き、追いつかれてしまう。果敢なボレーなどネットプレーで再びリードするも、サーブでプレッシャーをかけられ、自身のサーブも軽快に打ち返されると連続ポイントが取りづらくなってゆく。このセットはタイブレークまでもつれこんだが7-9で力尽き、第2セットに逆転の望みをかけた。その第2セットではうまく自分の流れに持ち込み、6-3とするが、迎えた最終セットでは相手に先リードを許し追いかける展開に。3-4でブレークに成功すると、続くサービスゲームでは相手の好リターンを浴びながらもなんとかサービスキープし、ついに逆転。初戦突破に光がさしたかに思われた。しかしプレッシャーのかかる場面でも相手サーブの威力が衰えず、逆に勢いづいた相手にブレークを許してしまう。最後まで好調の相手にあと一歩粘れず、無念の一回戦敗退となった。
初戦から幾多のドラマを生んだ関東学生選手権。明日二日目は井上VS渡邉、矢野VS谷本の同士討ちに注目が集まる。大会序盤といえども一戦一戦厳しい道のりが続いていく。真夏のサバイバルゲームの展開から目が離せない。
(記事 伊藤明日香)
◆選手コメント
井上善文(経3=慶應義塾高)
(今日の試合を振り返って)今日はコートの問題で二回コート移動があって、最初1ポイントやって移動し、次3ゲームやって移動だったので、タフな状況ではあったんですけど、相手が結構それにイラついていたので、自分は逆に平常心を保つことができました。コンディションも変わったので難しかったと言えると思いますが、その中で淡々とプレーできて、それが大きな勝因だと思います。あとは自分はいつものハードコートでの試合だとボレーに出たり、サーブアンドボレーをしたりするんですけど、今日はクレーコートで、相手もダブルスで戦績がある選手で(前に)落としてきたり、ロブを上げるのが上手いと思ったので、敢えてサーブアンドボレーをせずにラリーでじっくりやって相手をミスさせたり、チャンスで前に出るというふうに組み立てることができたので、それが良かったと思います。(あえて課題を挙げるとすればどういう点ですか)サーブですね。自分はサーブが武器なので、サーブを中心に試合を組み立てるんですけど、今日はファーストサーブが全然入ってなくて、多分50%切ってるぐらいだったので、結局セカンドのスピンサーブで押せてポイントを取れてはいたんですけど、やっぱりラウンドが上がっていくにつれて相手のリターンが上手くなっていくと、ファーストが入らなければ攻められてしまうので、ファーストサーブをもっと大きくというか、今日はネットのミスが多かったので、そういうことを明日からは意識していきたいです。(明日の試合に向けて意気込みをお願いします)実は明日は部内戦で、一個下の渡邉将司とやるんですけど、彼はリーグ戦でシングルスに出たことがあって、僕は逆に出たことがないので、これはチャンスだと思っていて、後輩とはいえ実績や経験は相手が上なので、自分は引くものがないというか、相手の地位を奪うぐらいのつもりで、ストレートになぎ倒しにいきたいと思います。
谷本真人(環2=名古屋高)
(今日の試合を振り返って)そんなに悪い内容ではなかったと思っています。相手もいい調子で打ってきたんですけど、そこであまり無理せずしぶとくいけたので、この先を戦っていく上ですごくいい試合になったと思います。(相手も強い打球を武器にしたプレースタイルでしたが、どのように自分のペースを作っていきましたか)相手もいい球をすごく打つんですけど、ミスもあったので、キツいときに一球深く返すということをしつこく繰り返していけば相手が崩れるということが分かっていたので、それがしつこくできたと思います。(二セットとも相手に4ゲームずつ渡しましたが、ミスがあったのでしょうか)ミスもあったんですけど、相手のいいプレーで取られた部分が多くて、そこで一本踏ん張るか踏ん張れないかというギリギリの部分でのミスはありましたが、そんなに自分のプレーが良くなかったというわけではなく、相手が良かったということです。(明日の二回戦に向けて意気込みをお願いします)トーナメントを勝つ上ではここらへんであんまり競っちゃいけないので、ロースコアでストレートで勝つことを意識してやっていきたいと思います。
矢野隆志(環3=八雲高)
(今日の試合を振り返って)初戦でダブルスパートナーである高田と当たるということで、お互い意識する部分はあったと思うんですけど、やっぱり後は正々堂々と戦って、この試合に勝ったほうが次に進むというだけだったので、結果的に勝てたということは良かったです。でもやっぱり明日のダブルスのペアでもあるので、しっかり切り替えて、明日は明日で二人で話し合っていつものプレーをして、今回は優勝を取りに来ているというスタンスでこの大会に臨んでいるので、そこだけはブレずにいきたいです。やっぱり今までは、下級生だったので、チャレンジャーであって、勝っても負けてもっていう感じで、優勝するということを考えていなかったんですけど、今回は本当に優勝するという覚悟と自信をもって今大会に入ったので、しっかり明日は明日で、自分たちがやらなきゃいけないプレーをするだけです。(今日の試合では第1セット0-6からの逆転勝利でしたが、勝因は)ファーストセットは相手がかなりいいプレーをしていて、僕のプレーを全くさせてくれなかったんですけど、ペアということもあって、お互いに嫌なところは知っているので、そこを突かれてしまって、相手のほうが攻撃がワンテンポ早かったです。ファーストセットを取られて、このままじゃ終われないという気持ちが自分の中にあったので、しっかり相手を見て、相手の嫌なところをひたすら突いていきました。戦略としてはファーストも同じ戦略で行ってはいたんですけど、自分のミスもあって上手く行きませんでした。第二セットではそこを曲げずに信じて、やることをやる、貫き通すということが、競った場面で相手のミスや自分の決め球につながったんだと思います。(長丁場の試合になって足元が悪かったですが、そういった影響はありましたか)ないって言ったら嘘になるんですけど、でも相手も同じ状況だし、そこがクレーの醍醐味というか誰もが経験しなきゃいけないことなので、技術だけじゃなくて、そういうメンタルな部分の勝負でもあるので、そこはもう始めから割り切っていて、試合への影響はそれほどなかったです。(実力拮抗した激戦を制したことで、自信につながりましたか)そうですね。過去の戦績を比べると相手の方が上で、新進という冬場の大会でも準優勝しているし、ATPという世界ランキングのポイントも獲得して、右肩上がりの状態できている選手なので、ここで勝てたっていうことは一つの自信にしていいと思います。でも、目指す所はもっと上にあるということを忘れずに、一発屋ではなくて次に向けての準備を切り替えてやっていきたいと思います。(次はダブルスの一回戦もありますが、二人でどんなこと確認して改善して臨みたいですか)コミュニケーションを取るということが僕たちの課題の一つなので、やっぱり悪くなるとどうしてもお互い口を閉じてしまって淡々とプレーに入ってしまうので、そこはもう意識的にでもしっかりコミュニケーションを取って、お互いに切磋琢磨してやるだけだと思います。
髙田航輝(環2=湘南工科大附属校)
(今日の試合を振り返って)ファーストセットは自分から相手を振り回していくっていうことを意識してやっていって、その意識でやっていたおかげで、いきなり相手のサービスゲームのブレークからつながっていってファーストを6-0で取ることができていい流れだったんですけど、セカンドセットで3-1になったところから相手の球が深くなってきて、そうなったときに自分が一歩後ろに下がって守りに入ってしまって、「堅くいこう」とか「1ポイント1ポイント大事にいこう」と考えすぎてしまって、それで自分から悪い流れを作ってしまって、攻めの姿勢というものを終始出せなかった。結局相手の方がリスクを負ってでも攻めてきていたので、そこが勝ち負けを分けたのかなと思います。(昨年も同士討ちで加藤前主将(環卒)にストレート負けでしたが、今回はそれから成長したと思われますか)自分の中では成長できていたつもりだったんですけど……。まあ、去年は最後の方で諦めていたりとか、気持ちの部分ですぐ落ちてしまっていたんですけど、今日は、まあちょっとイライラはしちゃったんですけど、できるだけ最後まで諦めないでプレーしました。(お互いにラインを主張する場面もありましたが、明日のダブルスに影響はないですか)シングルスとダブルスは別物で考えているので、大丈夫です。結局今日負けちゃったのは自分が弱いだけなので、そこは受け止めてダブルスを頑張りたいと思います。(明日のダブルスに向けて一言お願いします)シングルスは負けちゃったので、後はダブルスだけに自分の力を振り絞っていきたいです。自分たちは第2シードなので、絶対決勝には残りたいなと思っています。そして決勝で、早稲田の古田・今井組と当たって、つぶして、早稲田にプレッシャーを掛けたいと思います。
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