4年ぶりに慶大が国立の舞台に帰ってきた。セカンドステージでは明大に惜敗したものの、立命大・東海大に辛くも勝利し見事プールCを勝ち上がった慶大がファイナルステージ準決勝の舞台に進むこととなった。その準決勝の相手は王者・帝京大。大学選手権4連覇を達成し、前人未到の5連覇を目指す難敵だ。その大学ラグビーの歴史の中でも出色の強さを誇る帝京大に対し、慶大は「ディフェンスでは規律、アタックでは継続」(和田監督)をテーマに80分戦った。試合は前半こそディフェンスで粘り7-10と王者に対し食らいつくが、後半突き放され14-45でノーサイド。山田章仁(環卒・現パナソニック)らを擁した2008年以来の決勝進出とはならなかった。
大学選手権ファイナルステージ 準決勝 VS帝京大
2014/1/2(木) 14:15 K.O@国立競技場
得点 | ||||
慶大 | 帝京大 | |||
前半 | 後半 | 前半 | 後半 | |
1 | 1 | T | 2 | 5 |
1 | 1 | G | 0 | 5 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
7 | 7 | 小計 | 10 | 35 |
14 | 合計 | 45 |
得点者(慶大のみ)
T=白子、森川
G=佐藤2
慶大出場メンバー | ||
ポジション | ||
1.PR | 三谷俊介(総4・国学院久我山) | |
2.HO | 中尾廣太朗(環4・長崎北) | →17佐藤耀(総2・本郷) |
3.PR | 青木周大(商3・慶應) | →18秋田智樹(総4・川越)
→16吉田貴宏(総3・本郷) |
4.LO | 小山田潤平(経3・慶應) | |
5.LO | 白子雄太郎(商3・慶應) | |
6.FL | 濱田大輝(総4・桐蔭学園) | |
7.FL | 木原健裕(総3・本郷) | →20徳永将(商2・慶應) |
8.No8 | 森川翼(環3・桐蔭学園) | |
9.SH | 渡辺諒介(経4・慶應) | →21猪狩有智(経4・慶應志木) |
10.SO | 佐藤龍羽(環4・茗溪学園) | →22慶田兼紹(商4・慶應NY) |
11.WTB | 服部祐一郎(総3・國學院久我山) | |
12.CTB | 石橋拓也(環3・小倉) | |
13.CTB | 大石陽介(環4・修猷館) | |
14.WTB | 下川桂嗣(商3・修猷館) | →23中村敬介(経2・慶應) |
15.FB | 児玉健太郎(環4・小倉) |
試合開始早々攻勢に出たのは帝京大。慶大のパスミスを見逃さずボールを奪いチャンスを作る。最後は左サイドに展開しWTB磯田が飛び込み先制トライ。慶大は対抗戦のトライ王に早速持ち味を出される結果となった。その後も慶大は中々自分たちのペースをつかめずにいると15分、SH流の華麗なキックパスでディフェンスラインを完全に崩されるとそのままWTB森谷に追加点となるトライを奪われ苦しい立ち上がりとなる。対抗戦の時の慶大であればここで流れをつかめないままさらに追加点を奪われるところであったが、「規律」をテーマにディフェンスから立て直しを図った。相手の激しいアタックを食い止めると、帝京大のセットプレーが不安定だったこともあり、徐々に流れは慶大に。23分、相手の反則から児玉健太郎(環4)のタッチキックが追い風にも乗り22Mラインの内側まで飛ぶ素晴らしいキック。一気に敵陣にまで侵入した慶大は続くラインアウトを成功させモールでゴール前まで進むもノックオンがありチャンスを逸する。27分には木原健裕(総3)のゲインで再び敵陣に侵入すると相手の反則を誘いPGのチャンスを獲得。しかしこれを決めることが出来ず嫌な雰囲気に包まれる。しかし、慶大はそんな中でも再びチャンスをつくった。先ほどPGを外した佐藤龍羽(環4)のブレイクでチャンスを作ると慶大はFwd勝負に持ち込む。緊迫した攻防がゴール前で繰り広げられたが、34分、最後は白子(商3)が押し込んでトライ。ゴールも決まり3点差まで追い上げ前半を折り返す。前半は立ち上がりやや不安定だったものの、徐々にディフェンス面でリズムを作ることができ、オフェンス面でも少ないチャンスを確実に活かす上々の出来。大金星も期待させる前半となった。
夢の決勝進出へ。運命の40分が始まったが、前半と同様に慶大は不安定な立ち上がりとなってしまう。3分、帝京大のハイパントから自陣に押し込まれるとディフェンスラインのわずかなほころびをSO松田が見逃さず中央にトライ。続く10分にも自陣でのマイボールスクラムをターンオーバーされると帝京大の怒涛のアタックを止めきれずHO坂手にトライを奪われる。帝京大の若い力に一気に崩された慶大であったが、苦しい場面で流れを変えたのは児玉。2度にわたり自慢のランスキルをみせつけ大きくゲイン。一気に敵陣深くまで侵入する。さらに帝京大の杉永にシンビンが出て数的優位な状況に立った。そんな中16分に迎えた敵陣深くでのマイボールスクラム。慶大としてはここは確実に生かしたいところ。失敗が許されない緊迫した場面であったが、このスクラムから森川翼(環3)がボールを持ち出しトライ。反撃ののろしとなる貴重な7点であった。しかし、その後は帝京大に実力の差を見せ付けられる。25分にFLイラウアに決定的なトライを決められる。さらに32分、自陣深くでの防戦で粘りを見せていた慶大であったがライン参加をしたFB竹田にトライを決められさらに点差が離れてしまう。何とかして反撃したい慶大も猪狩有智(経4)のクイックスタートから佐藤耀(総2)・濱田大輝(総4)のゲインで敵陣に侵入するも痛恨の反則。最後は途中出場の野田にトライを決められ14-45でノーサイド。前半同様立ち上がりの不安定さが響き相手に流れを渡してしまう展開に。途中流れを掴む場面もあったが前半ほどディフェンスでの粘りがなく、帝京大の激しいアタックを止めきれず。宮川組の大学選手権での挑戦はここにて終了となった。
「0-75」。12月1日の対抗戦でのスコアだ。当時の慶大はその前の早慶戦で7-69の大敗を喫しており、ディフェンスの修正は必要不可欠となっていた。それからディフェンス面の修正に重点をおいて戦ったセカンドステージの3戦で失った点数は合計しても「49」。1試合あたりにすると16という素晴らしい結果を残し、また運の強さも味方につけこの国立の舞台で戦う権利を得ることができたのだ。
ディフェンス面で大きく成長し王者に挑んだこの一戦。前半は帝京大の激しいアタックをセカンドステージで自信を深めたディフェンスで食い止める。試合後に帝京大の中村亮土主将も「慶大のディフェンスは素晴らしかった」と語るなど、日本代表をも唸らす素晴らしい出来であった。ところが後半になると一転、帝京大の多彩な攻めに対応しきれず35点を失ってしまう。自分たちのラグビーを80分間継続する。これは慶大に限らず、どのラグビーチームにも当てはまることであるが、いかにこれに近づけるかが来年の慶大のテーマになるであろう。とはいえ対抗戦の時には75点もの差があったが今日は31点にまで詰めてきた。ここからの点差を詰めるのは並大抵なことではない。しかし真の目標である大学日本一に向けて帝京大は絶対に倒さなければならない相手。宮川組で成し遂げることができなかったが、来年こそは悲願の大学選手権優勝へ――その道はもう、始まっている。
【ケイスポ的MOM】ラインアウトの要・中尾
この試合で明らかに慶大が帝京大と比べ優っていた点。それはラインアウトであろう。マイボールでの失敗もほとんどなく、相手ボールのスチールも多かった。その中核を担っていたのが中尾廣太郎(環4)。昨年まではAチームはおろかBチームにもほとんど絡むことができなかったが、今季急成長をとげたHOだ。対戦した帝京大のHO・坂手に比べ、知名度も派手さもないが堅実で愚直なプレーは宮川組に必要不可欠なピースとなっている。
(記事・住田孝介)
和田監督
王者・帝京大の前にどれだけ我慢し続けて自分たちのラグビーが出来るかという中で、選手たちは本当に80分間頑張ってくれました。相手に7トライ、こちらが2トライと相手が一枚上手だったのは指導を含め私の責任だったのかなと思います。(帝京大に対しどのようなイメージを持っていたか)ディフェンスに対しては無駄な反則をせず我慢するということを意識しました。アタックでは自陣からボールをしっかりキープすることを心がけました。(ラインアウトでは相手を上回っていたが)学生中心によく研究して実行してくれたと思います。(対抗戦では大敗を喫してしまったが)その大敗でディフェンスの大切さを実感しました。組織的に守ることを徹底しました。アタックに関してはスコアできなかったところが帝京大との差だと感じました。そこでの帝京大の上手さや強さはまだまだ差がありますね。
SO宮川尚之主将 (環4)
(ベスト4進出が決まった時の気持ち)僕たちの目標であるベスト4を達成できてとてもうれしい気持ちでいっぱいでした。(チームの雰囲気はどうだったか)目標達成した後も緩むことはありませんでした。きちんと80分間帝京大さんに挑戦していこうという気持ちがあったのかなと思います。(今日の試合はどんな気持ちで見ていましたか)やはりみんなと同じ国立の舞台に立って80分間思い切り戦いたかったなという思いが強かったです。(結果的に負けてしまいましたが感想としては)75-0の大敗から一人一人が学んで修正して成長して今日の試合でアタックそしてディフェンスという形で体現してくれたのは良かったと思います。(今年のシーズンを振り返って)今年度は負けて厳しい時もあれば、勝って喜んだときもあって、本当に波のあるシーズンでしたが、その中で後輩、同期や和田さんをはじめスタッフの方々が自分たちを支えてくれて22年間生きてきた中で最も充実したシーズンを送れたのではないかなと思います。(日本選手権にむけて)僕自身日本選手権には出たいと思っているのでしっかりけがを治して、トップリーグのチームに思い切り当たって慶應らしいラグビーができればいいなと思います。
FL濱田大輝副将(環4)
今日はアタックでは「継続」、ディフェンスでは「規律」をテーマにやってきました。試合の中でそれを実行できたとは思いますが、王者との差が出てしまいました。しかし、まだまだ慶應義塾は成長できると思います(帝京大に対しどのようなイメージを持っていたか)アタックということに関しては、自陣からでもボールをキープすることを意識しました。(ラインアウトでは相手を上回っていたが)ラインアウトは学生コーチが帝京大のことを研究してくれました
LO白子雄太郎
(試合を振り返って)前半は競ったゲームをしていただけに、後半崩れてしまったのは残念です。でも最後の国立の舞台に立つことができたのは大きな経験になりました。プールマッチのときは国立には行けないだろうと言われていて、明治さんが負けてラッキーな形での国立でしたが、いい経験をさせてもらえたなと思います。(国立の雰囲気は)すごく気持ちが高揚してくる感じがありました。ラグビーの聖地でもありますし立ててよかったです。いつもと違う雰囲気があって、気持ちが引き締まりました。(最初のトライについて)あれは青木とか、その前のプレーヤーが頑張って運んでくれたので、僕はただ置くだけでした。東海大戦で決められなかった分、しっかり決められてよかったです。(Fwdでフェーズを重ねてのトライだったがFwdで攻めるプランだったのか)外の方でポイントを作ってしまうと相手のブレイクダウンが強烈でプレッシャーがかかるので、なるべく10mから15mの狭い範囲で回して余り切ったときに外に回すということでした。Fwdは特に辛抱する時間が多かったですが、そこは頑張れたのかなと思います。(大学選手権ベスト4
で終えて)今年の当初の目標は達成できて、決して満足というわけではないですが、来年に向けてという意味でもよかったと思います。(日本選手権に向けて)帝京さんと同じで格上の相手なので、気持ちの面では思い切りやるということと、技術面では一年間やってきたことをしっかりと出したいです。新しいことというよりは、今までやってきたことや基本スキルをしっかりとやりたいです。
NO.8森川翼(環3)
(今日の試合にかける意気込みは)チームとしては「我慢」、ディフェンスで相手の重さをどれだけ我慢できるかということで臨んだんですけど、個人的にはアタックでどれだけ自分が優位に立てるかということを目標に臨みました。(国立競技場での準決勝の雰囲気はどうだったか)この間の早明戦ですごくお客さんが入っていて、(今日は)そこまでは入っていなかったんですけど、独特でした。ラグビー場ではやるんですが、こういった競技場で、トラックがある広いところではあまりやらないので。独特な国立競技場の雰囲気があって、緊張もしたんですけど、それが逆にいいように自分に影響してくれました。いい緊張感で臨めたので、会場の雰囲気も良かったなと思います。(相手チームの印象は)とにかく見ても分かると思うんですけど、重くて強くて、ブレイクダウンのプレッシャーも強くて、すぐ球も出て、どんどんリズム良く出してきました。そこを低いタックルで止めてテンポを崩そうっていうように臨みましたが、なかなかそうもいきませんでした。(自身のトライシーンを振り返って)正直攻めても、(ボールを)回しても(トライを)取れないと思っていました。白子のスクラムもそうでしたし、自分でFwdがどんどん近場で行くべきなのかなと思って。マイボールのスクラムになった時から絶対自分で決めてやるぞと思っていました。なかなかスクラムも安定しなかったので、SHも少し(ボールを)出せないというのもあって、これは自分が行くしかないと思いました。(大学選手権をふまえて、今後に生かしたいことは)本当に貴重な経験が、準決勝、しかも最後の国立で経験できたのはすごく良かったです。相手が帝京という最高の強い相手だったのも個人的には本当にいい経験だったなというように思っています。強い相手に対して今日も1トライ取れたので、自分が積極的にアタックできたことが僕の中では大きな収穫かなと思います。今年もまだ日本選手権がありますけど、僕らの代も今メンバーが多いし、僕もNo.8という立場でもあります。来年はFwdのチームになるのかなと思っているので、Fwdをまとめて積極的に、Fwdからアグレッシブなプレーで前に出ていけたらなって思います。
SH渡辺諒介(経4)
(今日の試合を振り返って)前回はキックを多めな試合をしたんですが今回は攻めようと決めていました。アタックでボールキープ出来て接戦ができたんですが、最後はフィジカル面で負けてしまい帝京さんの方が一枚も二枚も上でした。(素早い球出しで流れをつくっていたが)相手にボールを渡すと取り返すのに時間がかかってしまうので自分達からどんどん攻めようと言っていたのでそれは出来て良かったです。(帝京大の印象)前回と戦い方が違った面もありますが相変わらずフィジカルは強いなと印象です。ただボールを動かしながらだとチャンスは作れていて、あとはブレイクダウンの強さだと思いました。(大学選手権を振り返って) 僕自身は出るのが初めてですごく厳しい試合でしたがベスト4に残れたことは良かったです。ただ上の壁はまだまだ高く大変だなと思いました。(次は社会人との戦いになるが)相手はプロで圧倒的にレベルは上なので学生らしくチャレンジするだけです。
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