慶應スポーツ新聞会

【ラクロス(女子)】FINAL4直前!慶大ラクロスの原点・大久保宜浩HCインタビュー

いよいよ明日、FINAL4を迎える慶大女子ラクロス部。全国制覇へ向けて、今後はさらなる激戦が待ち受けている。そんな戦いに挑む直前のチームに迫るべく、今回は長きにわたって慶大の選手を見守ってきた大久保宜浩HCにインタビューを依頼した。これまでの戦いぶりや、これからの展望など、日本一を目指すチームのさまざまことについてお話頂いた。

 

(取材日:2018年10月18日)

 

 

――まずは、今月7日から15日にかけて行われたアメリカ遠征について。どのようなことされてきたのですか

目的は2つあります。まずは、FINAL4前のこの時期に得点力をアップしたいということ。アメリカのラクロスはすごくシンプルで、グラウンドボールを素早く奪ってシュートを決めてという風に、日本のラクロスのような攻めだ守りだということよりも、点を取ることにフォーカスしています。準決勝以降は点を取れないと勝てないので、こうしてシンプルなところを突き詰めるという狙いが一つあります。あと一つは、せっかくラクロスをしているので、一番楽しいところを見てきて欲しいという思いです。アメリカのスポーツは日本のスポーツよりも発展していますから。日本のスポーツは、教育とか鍛錬とかの上に成り立っていて、運動が教育なんです。でも、アメリカは自分の楽しみの一つとして、見ても楽しいしやっても楽しむ。スポーツの全部を楽しんでいる。スポーツはそういう楽しむものなんだよ、と言うのを肌で感じて欲しいと思いました。スポーツの価値がすごく高いから施設も良いし、良い環境でラクロスができるので、そういうのも見てきて欲しいなという思いもあります。せっかくなので一番発展しているところに行って楽しみましょうということを目的にやりました。

 

――成果としてはいかがですか

良いんじゃないですかね。みんな楽しんでいましたし。せっかくなので楽しまないと。

 

――試合の面で手応えを感じた部分はありますか

去年から、試合中走って相手を追い掛け回すということをやっています。向こうのラクロスはそこまで動かずゴール前で守る感じなんですけど、日本は駆け回してプレッシャーをかけてという、その辺は向こうの選手も嫌がっていましたね。でもやっぱりボールスピード、サイズですね。リーチの長さとかストライドの大きさとか、そういうところでのこちらのディスアドバンテージは見事にやられますね。

 

――続いてリーグ戦は全勝中ですが、ここまでの戦いぶりを振り返って

なかなか険しいですね。年々レベル差が小さくなっていると感じています。どのチームも走るようになっているし、一定以上のディフェンスができるようになって、大きな差がつかなくなっているんですね。すると、一つの試合で歯車がかみ合わなくなったりすると、どのチーム相手にも苦戦する時間が出てきて、そういう意味合いでは楽な試合が一つもなかったです。反面、やられるっていう試合もなかったです。競っていたり先攻されたりという試合もいくつかあったんですけど、基本的な主導権は握れていて。得点さえ積み重なれば負けないという試合だったんですね。だから、選手たちにまだそこまでやられる危機感がないというところが一つ心配事。逆にあれだけのチーム力を持つチームと試合して、負ける感じが一度もなかったという手応えもある。一長一短です。

 

――「基本的な主導権を握れている」要因として、何か思うところはありますか

去年の全日(全日本選手権)決勝まで行ったメンバーが6人ぐらいそのまま残っていた経験と、基本的な運動量やスピードが高いレベルで維持できているというところじゃないかと思います。

 

――得点力として大きく貢献している伊藤香奈(経4)選手や西村沙和子(商4)選手の活躍はどう映りますか

順当ですね。去年の修羅場を主力として経験しているので。あとは石川のどか(政4)と櫨本美咲(経4)もずっと出ていたので。あとは、それ以外ですよね。それ以外が初めてなので。まあ、良くやっているんじゃないですか。

 

――リーグ戦では野々垣眞希(商2)選手や日野美咲(商2)選手といった2年選手の得点も見られました

2年は春先からずっとトップチームで引っ張ってきていますね。清水珠理(商2)、野々垣眞希がスタートで出ていて、他のメンバーもその刺激で頑張っています。現レギュラーの4年が8人なので、来年以降のメンバーが2年2人、3年2人という感じで4人しか入っていないです。今、練習試合は前半をスターターでやって、後半はそのスターターを全部外して、来年のメンバーに向けています。

 

――ブロックリーグでは強豪の明大や立大が敗れる一方で、青学大や日大といったチームが勝ち上がってきました。他大学の動向はどう見えていますか

自分が女子のコーチをやって20年ですけど、大きな視点で見ると、最初の10年で男子ラクロスのエッセンスが入ったんですね。要するにチームを組織的に大きくするチーム組織改革と、守備面の徹底で、ある一定以上の成績を出すということがその時期に行われました。そこで立大や明大が出てきて、逆に下がっていったのが東京女子大や日本女子体育大。その辺の古豪はもともと球際の強い個人のラクロスをやっていたんですけど、結局組織立ったディフェンスに負けていった、というのが最初の10年です。それで、今はまた潮流が変わっていて。どのチームもある程度の守備をするようになって、得点力が必要になってきたんです。球際、ボール持ちの強さなどの技術的な面での勝負になってきました。そこで、立大や明大の上に、東海大や日体大などの高校生からラクロスをやっていたり、個の強さを持っているチームがここ1、2年でまた逆転現象を起こしていて。その辺の潮流が変わってきているなと感じています。得点を取れるチームが勝ち残った、そんな感じです。

 

――試合後の選手のインタビューでも「得点力が足りない」ということは良く聞きます

そうですね。2桁得点をした試合が1試合だけなので。他の試合もシュート精度が高かったり、ラストパスの精度が高かったりすれば2桁行っている試合なんですよ。その細かいところでの技術的なミスがまだまだ多いです。準決勝、決勝の勝負はそこの部分で、例年5点勝負なんですよ。でも相手が東海大と日体大でしたら8点勝負かな。そのためにはうちの点数からすると今2、3点足りないという感じです。伊藤選手、西村選手が2点ぐらい決めて、他の攻撃陣で2点を取ってきて。あとは主将の友岡阿美(政4)ですね。ここが2、3点取ってくれたら確実に勝てます。

 

――今季のチームの強みはどこにあると感じていますか

4年を中心に走れる選手が多いんですね。あとはゴーリー(大沢かおり・経4)がランドマークのように背が高い。3年以下にも走れる選手がいて、タレントの強みはあると思います。加えて、去年日本一を取っているというレギュラーメンバーが残っていて、高い水準でラクロスができている。さらに、去年からやっている運動量に加えて、今年は技術力をワンランク上げようというのをやっています。その辺では、去年の遺産だけじゃなくて技術的な積み重ねもあり、得点力で負けないレベルに持っていけているんじゃないかと思います。まだまだ足りないんですけど、目指しているレベルはそこにあるので、それが準決、決勝といい形で積み重なってくれれば良いチーム力になると思います。クラブチームとも勝負できるのかなと思います。いずれにしても勝負は準決勝です。ここでチーム力の上がる勝ち方ができるか、というところです。

 

――現在のチームの状態はいかがですか

けがなどの満身創痍な部分はありますが、この時期になったら大体こんな感じなので。ここから勝負にいかにフォーカスできるかというところです。みんな勝つためのやり方に振り回されて、何をやるためにこのやり方を選んでいるのか、そこが抜けてしまっていますね。やり方ばかりに必死になって、そのいい悪いに振り回されて、プレーが弱くなる。そんなところですね、もがいているのは。だから気持ちがそこに向かえるか、ですね。特に4年はこの時期、「負けたくない」じゃなくて「負けちゃいけない」なんですよ。負けることがタブーみたいになっている。でも、勝つためには負けることを怖がってはいけない。先制点を取られたり、少しでも負けを感じ始めるとみんな怖くなっちゃうんです。でもそれが当たり前、それで戦えないとやっていけないので。「肉を切らせて骨を断つ」。自分の肉を切らせてでも、相手の骨を叩き切れば勝てる。そうしないと相手に致命傷を与えることができない。そんな感じです。

 

――これからの勝負についてお伺いします。先ほどお話していた「勝負は準決勝」というのはどういう意味ですか

準決勝の方がサバイバルゲームなんです。決勝は勝っても負けても次に試合はないですが、準決勝は勝てば決勝に進めるけど、負けたら決勝を見なければならない。だから本当に厳しい戦いは準決勝なんです。よく選手に言うのは「ラクロスなんかできないよ、準決勝で」ということ。精神的な戦いでもあるし、身体的な戦いでもある。本当に削り合いだし、それでも最後まで勝ちを信じてボールを追いかけた方が勝つのだと思います。その一番タフなゲームの相手が、今年は東海大で。2年連続引き分けている相手ですね。去年東海大は唯一慶應に負けていないチームという自負もあると思うし、春先の練習試合で東海大はうちに大勝しているし。その辺が勝負ですね。勝てばだいぶチーム力が上がるかなと思います。

 

――今後のプランは

基本的にオフェンス時間が長ければ戦いは勝てます。だから、どっちの方が長くなるかが勝負だと思います。ポイントの一つは、スタートのドローをどれだけ取れるか。基本的な目安は60%と見ています。こちらが60%だと相手は40%、だから1.5倍のオフェンス時間を獲得できることになる。力が拮抗している中での1.5倍は相当なアドバンテージになると思います。あとは、ミスが出たときに早くボールを奪い返せるか、敵にボールを持っていかせないこと。そうすると、オフェンスサイドでのボールキープが長くなるんです。多少のミスをしても早く処理できれば相手のオフェンス時間も短くなる。ここでも自陣でのキープ時間が60%であれば1.5倍のオフェンス時間を確保できる。単純計算ですけど、60%のポゼッションを獲得できれば勝てるかなと思います。

 

――注目する選手はいますか

先ほども言いましたが友岡阿美、彼女が決めれば勝てると思います。あとはゴーリーの大沢。かなり厳しいシュートが来ると思うので、それを半分くらいに抑えてくれればチームにとっても良いですね。その二人ですね。

 

――社会人チームとの対戦もありますが、そこでのポイントはどんなところですか

去年僕らは社会人チームを2つ倒していますが、「学生は運動量で勝つ」ということをブログなどでかなり発信していました。それでクラブに火がついてしましましたね(笑)「まだ走れないことはないんだけど」みたいな感じで、今ものすごくトレーニングしています。だから、去年ほどそこのアドバンテージがなくなっていて、なかなか強敵だと思います。今年頂点を取るのはこの準決、決勝で相当成長していかないと厳しいと思います。僕はクラブとの対戦は、異種格闘戦みたいなものだと思っています。土俵が違いますし。

 

――最後に、応援している皆さんへひとことお願いします

たくさん点を取って、「慶應のラクロス面白いな」って思ってくれたらいいなと思います。「つまらない試合だったね」と言われるのは嫌で。勝ち負けも大事ですが、やっぱりガンガン点を取りに行くシーンとか、パスワークとか、ダイナミックなプレーとか。ラクロスの醍醐味みたいな試合にしたいです。

 

 

――お忙しい中、ありがとうございました!

(取材:堀口綾乃)

 

 

◇大久保宜浩HC◇

慶大入学後、仲間と共に日本初のラクロス部を設立。その後もラクロス協会の立ち上げなど、ラクロスの発展に大きく貢献した。現在は慶大女子ラクロス部のHCを務める。

 

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