【バレーボール】秋季開幕直前特集 特別対談 宗雲健司監督×泉水智コーチ

いよいよ9月10日より開幕する関東大学バレー秋季リーグ。秋の開幕直前特集は文字通り“Big”な対談となりました。慶大を40年ぶりの関東1部リーグ復帰に導いた宗雲健司監督と昨年から就任した泉水智コーチ。現役時代は実際に選手として関東1部リーグでプレーした経験もあるお二人。現役当時の楽しい話から、今期の慶大の躍進の背景、そして秋季に向けた意気込みまで熱く語って頂きました。

―六大学優勝、早慶戦勝利、東日本インカレベスト4と、ここまでのチームの成績をどう評価していますか
宗雲 結果そのものは、出来過ぎっていうと学生に怒られるけど、順調ではなかった。局面局面でラッキーなプレーがあったりだとか、怪我したけどリザーブの選手が頑張ったりだとか、かなり運にも恵まれたっていうのがあったと思います。
泉水 今年セッターに1年生の新人の野口(環1)が入っているんですけれど、セッターが変わったっていうことはやっぱりチームにとって一番難しいことだと思うんです。だけどそういうことがあったのにもかかわらず結果的にはそれなりの良い結果が残せているかなっていうのは思っていますけれど、やはり監督の言ったように中はいろいろまだまだ調整していかなくてはいけないことがいっぱいあると思うんですよ。まだこれからだなというのは感じています。
―昨年秋季リーグは1勝も挙げることが出来なかったチームがここまで劇的に勝てるチームに変わった要因はどこにあるんでしょうか
宗雲 ひとつ去年と全然違うのはそうとう冬の間、それから春、この夏も守備の練習ばっかりしていたこと。守備の良いチームを目指すっていう目標でやっていて、それがゲームの土台となってそんなに大崩れしない、最近ディグ、ディグって言いますけど、まあレシーブがよく上がるようになってきたのが去年とは大分違うんじゃないかなっていう風に思います。
泉水 そうですね。やっぱりさっきも言ったんですがセッターがまず変わったんですけれど、それ以外のベースは去年からあって。そのメンバー個人個人が成長したんじゃないかな。2年生の岡田(商2)、星谷(理2)っていうのはかなり成長してきたなっていうのは感じています。
―次にポジションごとに振り返っていただきたいのですが、まずはサイド陣、間宮(政3)、岡田、柳田(環1)選手の働きは春はどうだったでしょうか
宗雲 個人個人でいうと間宮に関しては試合に関しても期待通りの働きはしてくれているんですけれど、それ以上に3年生になってから彼の練習に対する態度とか、モチベーションとか実際の行動とか、そういうのが本当に良くなった。1日もサボることがないのでそういうのを個人的にはすごい評価しているんですよ。それと試合で力を出すことはまた別なんですけれど、普段の練習のチームのモチベーションというか、練習の質が良くないとチームは勝てないので、そういう意味では間宮が引っ張ってるんだなっていうのは感じていますね。岡田に関してはまだちょっと良い時と、良いところが出ないときと多少の波があって。ただこれは本人にも話していますけど、どうしても岡田はうちのエースなので、ほかのチームは1番大きい選手がマークして岡田のブロックに来るので、きついわけですよね。それでもやっぱり決めてほしいんだよっていうことは本人にも言ってあって、本人はそれを自覚してきて一皮も二皮もむけてきたかなっていうのは最近よく感じています。1年生の柳田に関しては、ひざの故障とかはあるんですけど、高校時代の彼を見るともっともっと出来る。打つほうに関してはもっともっと目立てると勝手に考えていますけどね。
泉水 まあ監督の言った通りなんですけど、間宮は3年生になってチームの中でも中心のほうなのですごい今チームをまとめて引っ張って行ってるなっていう感じは受けていますね。岡田に関しては去年1年生で何もわからない中ただがむしゃらに自分のプレーをしてたんですけど、今年はそれなりに自覚も出てきて、非常に自信を持ってプレーしているなっていうのは感じます。まだまだ波があるっていうのはありますが、悪い時をどれだけ良くするかっていう課題はあるんですけれど、それなりに成長してきたかなっていうのは感じていますね。柳田に関しては高校時代騒がれたいい選手だと思うんですが、まだ1年生で遠慮している部分があるのかな。その辺は試合に出たら関係ないんでね。中心選手になるようにもっと自分を出して行ってくれたら、もっと良いチームになるんじゃないかなという気はしますね。
―3人の配置という点では春先は岡田選手がオポジットに入るのか、間宮選手が入るのか試行錯誤をしているという印象を受けたのですが
宗雲 実は今現在も考えているところではありまして。まだ変わるかもしれないんですけど、間宮には昔ながらのセッター対角の仕事をしてほしい。ようするに打つのは岡田と柳田が軸となって、センターも大きいのがいるので、間宮にはもっともっと守備に重点を置いてやってほしい。昔のセッター対角のイメージで置いてるつもりなんですよ。ただその岡田が今バックアタックの主軸で多めに打っているんですけれど、岡田のバックアタックはまだトスが高いので、どうしても2枚ブロック3枚ブロックつくんですよ。そうすると自分たちの2枚攻撃の時に3枚あるように見せかけられないので、ちょっと今考えています。低いバックアタックを打てる柳田とかをライトにしたほうがいいのかっていうのはやるかどうかは別として頭の中で模索はしています。
―センター陣についてはどうでしょうか
泉水 去年からずっと村上(法3)がセンターとして出ていたんですけれど、ちょっと怪我もあって急遽山本(環3)をコンバートして。非常にやはり器用な選手でクイックのタイミングであるとか打ち方もきれいなので、逆にそれが良いお手本になって星谷とかほかのセンターのクイックもけっこう力が伸びてきてるんじゃないかなと思います。
宗雲 山本に限らず、これはセンター云々じゃなくてたとえば前田優介(環3)しかり、中出(環3)なんかもそうなんですけど、ポジションをコンバートしたんですよね。それに関しては一切彼らは不満を言わないでとにかく試合に出たいと、とにかく勝ちたいと前面に言ってくれるので、そういう選手がたくさんいるっていうのはありがたい。山本に関してはセンターに戻したっていうよりも、彼は去年体育会本部に入ったんですよ。それが何か彼の人間的な幅を広げたような気がします。すごく前向きになったしいろいろ発言するようになった。そういう意味でも彼は全然波がない選手なったという風に思いますね。助かります、彼には。
―セッターの野口選手はどうでしょうか
泉水 そうですね。高校時代もセッター経験があるっていうことは聞いていたんですが、ちょっとまだまだ調子の波があると思うので、やはりセッターの出来不出来が試合に直接関わってくるので、調子の悪い時にでもどれだけあげていくかっていうところに取り組んでもらいたいなって思います。アタッカーとのコンビネーションだとかそういうのをもっともっと精度を高くしていけるような練習を毎日しているという段階です。
―宗雲監督は1部復帰直後、「慶大のコンビネーションは良い意味で古い、主流じゃない」とおっしゃっていましたが、現在はどうでしょうか
宗雲 まあ間宮がまだいるので中に入る攻撃っていうのはあるんですけど、岡田とかはそんなに打てないので、いまは当時とやっぱり少し違いますね。基本的には私の場合はチームスタイルに選手を合わせていくんじゃなくて、選手の個性でその年その年のチームスタイルを変えるつもりなので。今はバックアタックを打てる選手が三枚いるので、その子たちがどこからでも常にラリー中いつでもバックアタックにつっこんでいくっていう、そういうバレーを目指しているんですけど、ちょっとそれこそ古いですけど3Dみたいにどっからでも飛び込んでくるようなそういうバレーをしたらどうっていう話をしていて、本人たちもセンター陣とバックアタック、パイプなんかをからませるのを一応目標にはしてるみたいですけどね。
―その中で前田選手をセッターからリベロにコンバートして、ここまで上手くはまっていると思うのですが、コンバートの決断にいたった理由は
宗雲 もともと泉水コーチと話していて、来年セッターどうしようかと。1年生は計算が出来ないので前田で来年はいこうっていう話はもともとしててね。身長は小さいけど前田はトス回しが上手いので、そこに期待しようっていう話をしてたんですよ。ただ野口が春練習来る中でなんとかセッターとして使えそうだっていう目途がたったので、じゃあ前田をどうしようかと。そういった中でうちのチームはおとなしい選手が多いんですよ。だから負けん気の強い子をコートに入れたくて。で前田優介にそれがちょうど当てはまるかなっていうのでリベロに試してみたら非常にいきいきとしてね。かれはすごい負けず嫌いなんですよ。しかもつなぎも出来るので、今この夏の時点では中出や川村(環3)をリベロとして出しても遜色はないですけども、春の時点では非常に前田のつなぎがチームを救ったというか、新しい慶應のスタイルだなっていうのを感じていますね。良かったと思います。 
泉水 非常に運動能力の高い選手だなっていうのは思っていたので、ただやっぱり背が高くないのがもったいないと思っていて。ただそれ以外はね、何をやらせても良いプレーをするので、ほんとに見てて楽しいと言うか、何かしてくれるんじゃないかっていう期待感がある。レシーブってけっこう狙って出来るものではないと思うんですが、それをバンバンあげてくれるので非常に頼もしいですよね、リベロとして。
―こうしてメンバーを見てみると小中高と日本一を経験したメンバーが多いですよね
宗雲 ただ確かに間宮とか(山本)悠登とかは中学で優勝したりだとか、高校で優勝したりっていうメンバーもいるんですけど、その子たちがけっしてサボらない。よくあるのがけっこうキャリアがあって、高校のキャリアだけでやっている大学の選手ってやっぱりいるんですよ。そういう選手は全然伸びない。ただ彼らには自分を上げていこうという姿勢がすごくあるので、たぶんそういうのにキャリアの無い子達も引っ張られて、良い相乗効果になってるんじゃないかなっていうのは思いますね。
―お二方も大学時代に日本一をかけてインカレ決勝で対戦したことのある仲だとお聞きしたのですが
宗雲 記憶に無いね(笑)
―少し現役時代を思い出して頂いて、今と当時で大学バレーの環境の違いはありますか
泉水 自分が当時どれだけ出来たかっていうのは忘れてしまっているんでね。それこそ今の岡田のスパイクほど打てたのかなっていう気もします。ただ宗雲さんはすごかったですけどね。2年生上の日体大のキャプテンで、僕が東海大の2年生のときに全日本インカレの決勝であたってるんですよね。僕が勝ちましたけど。
宗雲 何が言いたいんだよ(笑)
泉水 上級生は怖かったって言うイメージがずっとあるので。挨拶しても返してくれなかったり。
宗雲 絶対うそだよ(笑)でも他の大学のことはわかんないですけど、今の慶應だけに限って言えば、ほとんど学生主体でやってるし、こんな伸び伸びやって1部でやれるんだっていうことはうらやましいですけどね。ほんとに学生だけで伸び伸びやって1部上がって戦えて、東日本でもあれだけ頑張って、ある意味学生だけで勝ってるんですよ。僕らはほとんど何もしてないし。だからそういう意味では自分達の現役のときとは少し違うのかなっていうのと、でも悪く言えば大学の看板をしょってない。私が泉水コーチの東海大と試合したときも対東海大学っていう燃えるものがあったりしたんですよね。そのときに大学の看板をしょってるっていう使命感でやっていたっていうのがあったので、そういう面で言えば今の彼らにはそれがないのかなと。今自分達の時代を明るく楽しく、勝てれば良いなっていう。
泉水 そうですね。もう少し厳しさがあっても良いのかなっていう気はしますね。試合とか負けても悔しいと思ってると思うんだけど、その悔しさを感じられないようなときがあるような気がしなくもない。
宗雲 でも今の学生も悔しいとは思うんですよ。去年とか悔しさ云々よりもチームがごたごたしているっていうのが先にあって、でも今年なんかは全タイトルとろうって言ってたのに、オール早慶明で明治にあと1点で勝てるところをずっこけちゃったときのみんなの悔しさぶりとか。あとこの間の東日本のときの法政に勝ったんだけれども最後苦戦したんですよね。そのときに彼らは全然喜んでなかったんですよ。私は泉水コーチに「ベスト4すごいよね。慶應がベスト4入るなんて俺らのときは考えてもみなかったし、ベスト4って彼らにとってすごい価値あるよね」っていう話をしてたのに彼らは全然喜んでなかったんですよ。だからそういう悔しさはにじみ出てきているんじゃないかなっていうのは思いますね。
―泉水コーチはコーチングキャラバンなどでもたくさんのチームを指導されてきていると思いますが、そうした経験から見て、今の慶大のチームをどのように見ていらっしゃいますか
泉水 バレーボール強いチームっていうのは出来る選手がそろっているかそろってないか。十分今は選手もそろっているし、これから先が楽しみだなっていうのは感じています。そうはいってもレギュラーメンバーはそろってきてはいるんですけど、あとは7番目8番目の選手。そういう選手がもっともっと上がってこないとさらに上っていうのはいけないんじゃないかなと思いますね。
―ではこの夏、韓国合宿から始まり、近大、豊田合成、FC東京と実戦を重ねてきたと思うのですが、チームとしての仕上がりはどうですか
宗雲 韓国行って強い大学とやらせてもらって、それから近大ではちょっとダメで、また豊田合成のときに少し上がってきたんですけど、ようするに彼らの試合に対するモチベーション、この相手には絶対に勝ちたい、セット取りたいっていうのが強ければすごい力を発揮すると思う。向かっていけるときはすごい強いです。実業団相手でも良い内容でセットを奪うぐらいの勢いがあります。だけどいったんその試合に目標を見失ってしまうと極端に弱いんですよ。極端に弱くなったときにこれはどこのチームもあるんだろうけど試合中に立て直せない。この間はちょっと立て直せなかった。なので不安も残ります。正直に。だからいろんな指導者は今年は勝ちます、優勝しますっていう人はいっぱいいますけど、私は不安のほうがいつも大きい。期待は2割。あとは彼らがリーグ戦中ずっとモチベーションが続くかどうかだと思います。
泉水 監督の言うとおり良い時と悪いときの差がありすぎるので。良い時は誰が何をやってもうまく進んでいくんですよ。悪いときにどうやってそれを打開していくかっていうのをチームとして考えなければいけないなと思います。ただモチベーションが高ければ非常に良い内容になっているので、楽しみかっていうと逆に僕はすごい楽しみですね。
―夏に伸びてきた選手、状態の良い選手は
宗雲 もちろんみんな良くなったんですけれども、岡田もすごく良くなって、秋に向けてっていうよりも来年の秋ぐらいにはひょっとするとほんとに大学を代表するようなエースになるんじゃないかなっていう風にすごい期待してるんですね。そういうポテンシャルは十分に有ると思ってるんですよ。それから星谷も、セッターの野口がもっともっと成長して十分に使えるようになったら、星谷も大学を代表する、もっと言えば近い将来Vリーグでも十分活躍するような選手になると思っていますね。それ以外にはスタメン以外で1年生のセンターの稲田(環1)。彼がすごい良くなって、この間韓国行ったときもちょっと試合に出したんですけど、戦力に十分なるいいブロックをしている。それから丸谷(環1)。彼もサイドをやらせているんですけどすごく良くなってきた。
―秋はどんな戦いになると予想されていますか
宗雲 極論を言うと全勝もあるが全敗もある。わりと団子になるんじゃないかなと思っています。みんな強いので。だからいろんな可能性があるので一戦一戦、特にリーグ戦なので1点1点とってとにかく取りこぼしのないようにというか、そういう風に考えているんですけどね、自分の都合のいいように(笑)
泉水 まだまだ成長途中のチームだと思うので、リーグ戦一戦一戦成長していってもらいたい。それで成長することによって勝ち星を増やしていってくれたらなっていう風に思います。十分上位とも戦えるような戦力はあると思っているので、いかに自分達でそのバレーを展開できるかっていうところにかかってくるんじゃないかなと思います。
―最後に秋に向けて意気込みをお願いします
宗雲 試合するのは学生なので、36人の部員を代表して本コートでとにかく一番良いパフォーマンスを見せてほしいし、みんなが納得する動きをしてほしいと思います。あとはリーグ戦が終わるまで2ヶ月近くあるんですけれど、チームとしても、いつも言ってるけど、チームは組織なので、バックアップする部員達ももっともっと伸びるだろうという風に思うので、そういう部全体が成長してほしい。結果はもう真摯に受け止めるので。そういう風に思っています。
泉水 とにかく出てる選手出てない選手関係なく、みんな一生懸命やると思うので、その場その場で適切なコメントを与えて、少しでも良い思いが出来るよう貢献していきたいなという風に思います。
―宗雲監督、泉水コーチお忙しい中有難うございました
                                      By Hideki Tsubonuma
関東大学バレー1部秋季リーグは9月10日より早稲田大学戸山キャンパス記念会堂にて開幕します。みんなでバレー部を応援に行こう!

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