【ソッカー(女子)】9月2日にリーグ戦再開 8連敗…最下位転落…3カ月ぶりの勝利…苦しみながらも貫き続ける「慶應のサッカー」とは

ソッカー女子

(今季の成績はすべて9月1日時点)

 

 「来シーズンに向けて、力強い抱負をお願いします」。普段のインタビューでは、質問を聞きながらじっくり考えて、一拍置いてから回答することの多い指揮官が、間髪入れずに即答した。「正直なところ、すごく苦しい戦いになると思います。4年生に助けられてきましたし、キーパーがどうなるか分からないという点でも、本当に厳しいと思います。ただ、ここまで確立してきた自分たちのスタイルを来シーズンも貫いていきたいですし、ソッカー部での4年間を通して何を学べるかということは変わらず大事にしていきたい部分です。だからと言って結果が出ない理由には全くならないので、自分の中で掲げているロマンと勝ち点を取るというところのそろばんをどのように弾いていくかを考えて、選手たちと一日一日向き合いながら、1部でも躍進したいです」。

 2025年11月2日。関東大学リーグ2部最終節に勝利し、2部優勝で1部昇格を決めた試合の後、黄大城監督にインタビューをした。昨季は18試合を15勝2分1敗、63得点、12失点という圧倒的な強さで2部を優勝しただけに、選手が2部での勝ちっぷりから1部でもある程度勝てるだろうと油断しないよう、「勝って兜の緒を締める」意図もあったかもしれない。しかし、2部優勝で1部に昇格する、注目されるチームの監督の謙遜から発せられたものでは決してなく、本当に苦戦を予期している、むしろ確信している、そんな語り口だった。

 

 今季は5季ぶりの1部で「インカレ出場」(8位以上)を目標に戦っている慶大。ここまで15試合を戦い、2勝4分9敗で勝ち点10、12チーム中10位で降格入れ替え戦圏内に沈む。インカレ出場ラインの8位チームと、1部残留ラインの9位チームは、慶大より1試合消化が多いが勝ち点18。慶大が勝ち点差8を逆転するために残されているのは7試合。「正直なところ、すごく苦しい戦いになると思います」――指揮官の見立て通りの状況に陥っている。

 

 「4年生に助けられてきましたし、キーパーがどうなるか分からないという点でも、本当に厳しいと思います」――たしかに、TEAM2025の4年生4人の存在感は大きかった。1年時の途中から引退までリーグ戦66試合連続出場した荒鷲の翼・坂口芹(令8総卒)。貴重なDFラインとボランチの選手としてプレーしたテクニシャン・守部葵(令8環卒)。フィードも対人守備もヘディングも、何を取っても絶対的なリベロ・小熊藤子(令8環卒/現RB大宮アルディージャWOMEN)。そして、TEAM2025でたった一人のキーパーだった中村美桜(令8理卒)。「4年生に助けられてきた」。プレーでの貢献はもちろん、4人の濃いキャラクターもチームを支えた。プロを目指すものとして、チームをけん引した主将の小熊を中心に、チームを俯瞰し、足りていないところへのコミュニケーションを取り続けた坂口。常に明るく、しかしときには厳しい言葉を仲間にかけ、持つエネルギーを最大限還元し続けた守部。3年時に未経験からキーパーに転向。とてつもない量の練習を続け、チームの努力の基準すら上げた中村。「四者四様」の濃いキャラクターは、きれいにバランスが取れていた。

 4人が抜けたところから新しいチームをつくるのは、きっと容易ではなかった。ただ、少なくとも試合のプレーを見る限り大きな問題を感じないほどには、完璧な世代交代がされた。チームの心臓・小熊の抜けた穴を埋めたのが、米口和花(総3・十文字)だ。昨季は右WBと右CBを主戦場としていたが、小熊が務めていたリベロに今季からコンバート。圧倒的な個の力でチームをけん引する存在になった。ただ、もちろん米口が務めていたポジション、特に昨季後半定着していた右CBは、守部が引退したこともあり経験のある選手が少なかった。その不安を払拭したのが1年生の木田遥(総1・十文字)だった。抜群の読みを活かしたカバーリング、そして、攻撃時に見せる内側のスペースへの駆け上がりは唯一無二だ。坂口の左WBに定着したのも、1年生の福島紗羅メヘル(政1・昌平)だった。独特なリズムのドリブルを武器に、貴重な打開力のある選手として躍動している。最大の問題だったキーパーも、1年生の四宮里紗(環1・桐蔭学園)が入部。今季もたった一人のキーパーが全試合フル出場している。

 開幕戦の十文字大戦は、米口と1年生3選手の躍動、エース・野口初奈(環4・十文字)のスルーパスから生まれたストライカーで主将の野村亜未(総4・十文字)の先制弾など、後半アディショナルタイムに追いつかれて引き分けに終わったことを除けばほとんど文句のつけようがなかった。前期第2節で昇格組の順大に米口の決勝弾で1−0で今季初勝利。前期第3節は1部2連覇の東洋大と1−1で引き分け、開幕ダッシュは合格点だった。

 流れが変わり始めたのは前期第4節の日体大戦。開幕から3試合すべて途中出場ながら攻撃で存在感を見せていた田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)が、けがでベンチを外れた。開幕戦当日の手術で長期離脱していた山田葵(総2・聖和学園)、前期第2節から離脱していた髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)、そして田中紗で2列目の選手の3人目の離脱。昨年6月末の右膝前十字靭帯断裂からの復帰が遅れていたDF・岡田恭佳(環4・十文字)も合わせると、4人がプレーできない状況だった。当時、選手は21人(5月に佐々木彬乃(文1・大和)が加わったため現在は22人)。ベストコンディションでない選手が複数人強行出場するなど、苦しい台所事情での戦いを強いられた。日体大戦は押していたが、相手キーパーのビッグセーブ、クロスバーに嫌われるシーンもあり、とにかくゴールが遠かった。1点リードの後半、自陣でのロストからWBの裏を突かれ、クロスから失点。1−1の引き分けだったが、「勝ち点3を取らないといけない試合だった」(佐藤凜(総4・常盤木学園))。けが人の増加もあり、先が思いやられるような一戦だった。

 続く前期第5節の山学大戦で1−4で敗れると、長い連敗が始まる。前期第6節から前期第8節にかけては3戦連続の完封負け。前期第9節では順位を争う帝平大に痛恨の逆転負け。前期第10節の日大戦では一度追いつきながらも勝ち越され1−2で負け。前期第7節の試合後のインタビューで、竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)が「監督にも言われましたが、『90分の物語をどう進めていくか』というのが自分たちの課題」と話していたように、ゲームコントロールの問題を解決できない状況が続いた。

 前期第11節(前期最終節)の相手は宿敵・早大。2002年の初対戦から勝利したことのない早慶戦。6連敗を止める格好の舞台で、黄監督は大きく動く。「『4年生の生き様をピッチで表現する』ことが一番分かりやすいですし、この代は人数が多い代なので、人数が多いからこそできる状況の変化を、彼女たちの学年の色でつくることに期待して起用しました」。開幕から全試合スタメンで出場していた佐藤、竹内、野口、野村に加え、2年時以来のスタメンとなる安達梨咲子(商4・Palos Verdes High School / Fram Soccer Club)、大けがから復帰し、1年ぶりのスタメンとなる岡田、そこまで今季1試合しかスタメン出場のなかった福島日和(理4・慶應湘南藤沢)の4年生全7選手をスタメン起用。しかし、警戒していたサイド攻撃を止められず、3失点。終了間際に野口のCKを宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)が折り返し、野村が押し込んだが反撃及ばず。1−3で「完敗」(黄監督)を喫した。

 後期第1節の十文字大戦。この試合の結果が今も重くのしかかっている。試合前時点で慶大は勝ち点6で11位、十文字大は勝ち点9で9位。何が何でも勝ち点3が欲しかった。開始早々、今季の強みとなっているショートカウンターが炸裂。岩田理子(総3・十文字)のクロスに野村が合わせ、幸先よく先制したが、終わってみれば1−3でまさかの大敗。内容としても先制弾の後は防戦一方で、ダメージの大きな試合だった。試合後、ミーティングで黄監督からまずは残留することを目標に切り替えるよう話があった。同節の他会場の結果もあって最下位(12位)に転落した。

 痛恨の敗戦から2週間、後期第2節の順大戦。勝ち点6で最下位(12位)の慶大と、勝ち点7で11位の順大の直接対決。負ければ自動降格に近づく背水の陣で、黄監督はいくつも勝負手を打った。そこまでけがでスタメン出場のなかった頼れる副将・髙松が今季初スタメン。昨季は3−1−5−1の左IHでの出場が多かったが、この日は野村との2トップで起用した。さらに、それまでトップ下を務めていた野口が右IH、アンカーを務めていた竹内が右CB、右CBを務めていた木田がアンカーへとポジションを変えた。この試合の選手たちの顔つきはそれまでと明らかに違った。球際の強度と運動量はタイムアップまで全く落ちなかった。攻撃でも、前半終了間際に福島紗のクロスに野村が合わせて先制。直後に森原日胡(総2・作陽学園)の意表を突くワンタッチパスを受けた野村が追加点。チームとして今季初の複数得点を記録した。ゲームコントロールに加え、もう一つの大きな課題の「ゴール前の精度」(黄監督)も解決。2−0で勝ち、最下位を脱出した。

 続く後期第3節の東洋大戦、前半に先制されるが、得意のビルドアップで魅せる。宮嶋の横パスを受けた野口から佐藤につなぎ、佐藤からラストパスを引き出した野村のゴールで同点。勝ち越されたが、後半ラストプレーで野村が前期最終節から4試合で6ゴール目となる強烈なミドルシュートを決め、引き分けに持ち込んだ。格上相手に善戦し、今季初めて先制されながら勝ち点を取った。

 明らかに状態が上がってきた中で、後期第4節の日体大戦は1−3の敗戦。開始早々に先制される、ビッグチャンスを決め切れない、1点差に迫った直後にダメ押しを許す。課題が凝縮されたような試合だった。翌後期第5節の山学大戦は、両チームの選手がピッチサイドに整列していたキックオフ5分前に天候が大きく荒れ始め、試合延期。夏の中断期間に突入した。

 苦しいシーズンだが、嬉しい出来事もたくさんあった。昨季ノーゴールに終わった佐藤が前期第4節で待望のゴールを記録するなど、ここまで全試合スタメンで出場している。廣本瑞季(文3・学習院女子高等科)は2年間勝負所での出番がほとんどなかったが、今季はポストプレーヤーとして強みを発揮し始め、初のスタメン出場含む4試合に出場。岡田は右膝前十字靭帯断裂から復帰。長期離脱していた山田、田中紗、髙松も復帰し、選手22人全員がプレー可能な状態で夏の中断期間に入った。昨季途中に塚田まりや(総4・横浜国際)が入部するまで一人もいなかったマネージャーに、重永亜美(政1・戸山)、馬場絢子(環1・慶應湘南藤沢)の1年生2名が新しく加わった。8月中旬には、米口がWEリーグ・浦和レッズレディースの特別指定選手に認定された。

 

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 「4年生に助けられてきましたし、キーパーがどうなるか分からないという点でも、本当に厳しいと思います。ただ…」5秒ほど、少し間が空いて指揮官の次の言葉は紡ぎ出された。「ただ、ここまで確立してきた自分たちのスタイルを来シーズンも貫いていきたいですし、ソッカー部での4年間を通して何を学べるかということは変わらず大事にしていきたい部分です」――「自分たちのスタイル」「自分たちのサッカー」「慶應のサッカー」「慶應のスタイル」「慶應らしさ」「やることを変えずに」……黄監督と選手の口から何度こういった言葉を聞いただろう。むしろインタビューで聞かなかったことの方が少ないし、部員ブログにもこれらの言葉はかなりの頻度で登場する。

 「慶應のサッカー」とは一体なんなのか。黄監督はサッカーのスタイルについて、「相手を見ながら自分たちで判断をしていく」ことだと話す。慶大の特徴は、キーパーもビルドアップに参加し、特に中盤の選手がポジションチェンジを繰り返しながら、スペースを突いてショートパスで前進すること。しかし、黄監督は「個人的にはパスサッカーを志向しているつもりはあまりなくて、相手を見て、自分たちの中でロジックを持って崩していく上でパスが必要になっていて、『相手がこうだからこれが効果的だよね』という原則があります」と語る。選手たちが思考を繰り返し、結果的にパスをつなぐプレーが出力されることが多いが、最終ラインから大胆なフィードを送り続けたっていい。ベンチからの「ボールを捨てるな」という声掛けはよく聞くが、無理なビルドアップを義務付けているわけではないし、むしろ相手のプレスがはまっているのにも関わらず自陣で無闇矢鱈につなぐのは「相手を見ながら自分たちで判断をしていく」スタイルに反する。とにかく、「相手を見る」、そして「判断する」ことを黄監督は重視している。攻撃に目が行きがちだが、それは守備局面でも変わらない。今季の後期第3節の試合後インタビューでは、髙松が守備について「(前期での対戦とは相手の)選手が変わっていたこともあって、テソンさん(黄監督)にも試合の中で相手のやり方を見て自分たちも変えていくように言われていた」と話していた。「相手がどう来るかという事と、自分たちがどうしたいかという事とのせめぎ合いがサッカーだと思う」という言葉は、黄監督がサッカーという競技をどう捉えているのか最もよく表している。

 

 「もちろん結果が大事だし、みんな結果を出すために頑張っていますが、サッカーを通して何を学ぶかという事と、サッカーがうまくなるために、みんなで頭を揃えて戦うことによって得られる成長幅を僕自身すごく意識していて、サッカーを通して得てきたものはフィールドが変わっても礎となる部分で、自分がサッカーから離れてサラリーマンになっていろんな挫折とか経験とかをした時に、サッカーによって得てきたことが活きてきましたし、特に女子の場合はプロを目指す人が少ない分、大学まで来てサッカーをやることの意味をしっかりと考えて、結果を出すことと同時に、社会に出ても役立つ考え方とかマインドは、自分が現役時代に得られたからこそ、選手たちに伝えていきたいです」。慶大ソッカー部で活躍し、大卒でJリーグ・京都サンガF.C.に入団も、4年で引退。一般企業に就職した後、サラリーマンを続けながらソッカー部に指導者として復帰。現在はサラリーマンの職を辞し、指導者に専念している黄監督。人生を支えてきたのは常にサッカーでの経験だった。プロ出身の監督としてはもちろん、決して平坦ではない人生を歩んできた教育者としての理念も、チームのスタイルに反映されている。「(黄監督は)解決策を全部言う感じじゃなくて、ヒントを与えて選手に考えさせてくれる」(宮嶋)。選手が語る指導の仕方からも、指揮官のこだわりが垣間見える。

 昨季の最終節のコメントに戻る。「だからと言って結果が出ない理由には全くならないので、自分の中で掲げているロマンと勝ち点を取るというところのそろばんをどのように弾いていくかを考えて、選手たちと一日一日向き合いながら、1部でも躍進したいです」。「慶應のサッカー」を貫くことを、結果を出せないことの言い訳や免罪符にしているわけではない。一方で、「慶應のサッカー」を諦めれば勝てるのかと言われると、たぶんそうでもない。どうしても、1部の他チームに身体能力では負けることが多いが、技術では全く劣らない。だから、「慶應のサッカー」の根幹になる思考と、スタイルを貫くというメンタリティで戦うのが、きっと勝利への最適解だし、監督のみならず選手も「慶應のサッカー」を大切にしている。スタイルを貫くと言っても、決して意固地になるわけではない。どんなときも「相手を見ながら自分たちで判断をしていく」柔軟性を持つことを突き詰めた先に、普遍的な強さが生まれるのだ。

 「慶應のサッカー」もそう簡単なものではない。プレースピードの速い1部の中で、判断が間に合わない場面も、判断を誤る場面も当然ある。試合を重ねるうちに黄監督も選手もそれを痛感しているはずだ。それでも、このチームは絶対に折れない。

 

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 2018年12月25日。慶大が最後にインカレを戦った日だ。優勝候補相手に善戦したが、ミスからの連続失点で1−2で敗れた。「選手は本当によく頑張ったと思いますし、我々らしく負けたかなと。こういうサッカーをやらせたのは僕の責任ですし、選手たちはそれに応えて本当によく頑張ってくれました」――伊藤洋平前監督は試合後のインタビューでそう振り返った。当時はポジショナルプレーを掲げ、「ミスありきでボールを大事にするサッカー」(伊藤前監督)を武器に関東大学1部7位(10チーム中)の好成績。全国の舞台でも自分たちのサッカーを続け、敗れたが「我々らしく」終わった。どこまでも自分たちのスタイルを貫くのは、黄監督就任前から続くこのチームの伝統だった。そして、絶対に曲げることなくスタイルを貫くからこそ、「慶應のサッカー」が表現されるし、スタイルを貫くこともまた「慶應のサッカー」という言葉に含まれる意味の一つなのかもしれない。

 

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 改めて、リーグ戦は残り7試合。インカレ出場の8位まで勝ち点差8、残留確定の9位までも勝ち点差8。簡単に覆せる差ではないのは誰もがよく分かっている。むしろ自動降格の12位(最下位)とは勝ち点差2。上よりも下の方がはるかに近い。昨季の最終盤は、2部優勝、1部昇格までほとんどウイニングランのような戦いだったが、今季はまるで違う切羽詰まった展開になるだろう。

 2勝4分9敗の内容ではない。押している試合も多くあった。しかし厳しい見方をすれば、ここまで同じ負け方が続くと不運ではなく実力なのかもしれない。連敗中、選手たちは「状況を変える」ために行動を見直してきたと話すが、個人としても、チーム全体としても、まだ何かが足りていない。

 ただ、昨季は2部だったとは言え13連勝したチームだ。「ちょっとしたきっかけで自分たちが自信を持ってやれたり、いいゾーンに入れたりするのは、学生スポーツの魅力」と黄監督が語るように、今季のチームもゾーンに入る可能性を秘めている。問題は誰が「きっかけ」となる結果を残すのか。1年生のエネルギーか、レギュラー組の成長か、出場機会に恵まれない選手がチャンスをつかむか。何だっていい。米口の言葉を借りるなら「一人ひとりが主人公になれる」チームなのだから、選手22人全員がきっかけをもたらし、チームの雰囲気を変えるヒーローになるチャンスがある。

 最大のきっかけとなり得るのは、やはり、4年生の意地か。「『4年生の生き様をピッチで表現する』ことが一番分かりやすいですし、この代は人数が多い代なので、人数が多いからこそできる状況の変化を、彼女たちの学年の色でつくることに期待して起用しました」――今季の前期第11節の早大戦後の黄監督の言葉が耳に残っている。4年生の「学年の色」、もちろん最高学年として、練習や、ピッチ外での貢献もある。ただ、今季の4年生にはやはり試合での絶対的な結果に期待したい。「サッカーが好きな選手が多いなって。自分たちの学年は強豪出身の子も多くて、だけど、そうじゃない選手もいて結構バラバラなんですけど、それでも共通してみんな練習好きだし、ピッチ内ファーストと言うか、学年でミーティングしても『私たちの学年はピッチ内で存在感出していきたいね』みたいな話もよくするから、本当にサッカーが好きっていう感じ」(佐藤)。「強豪校(出身)の選手とか、さまざまなバックグラウンドある選手とか集まってると思ってて、だからこそ3年生(インタビュー当時)の色が出てると思うし、みんなの考え方が違うからこそ、『そういう考えもあるんだ』って視点が広がるというか、自分にないものを持ってる選手が多い」(竹内)。

 ここまでの戦いぶりを形容するなら、「不完全燃焼」。折れることなく勇敢に戦い続け、こんなにも魅力的なサッカーをしているチームがこのまま終わってしまうのはあまりにも惜しい。チーム全員、まだ諦めていないだろう。だから、燃え尽きるくらいまで、やり尽くしてくれ。プライドを持って貫いてきた、慶應のサッカーを。

(記事:柄澤晃希)