日本時間22日、慶大の岡澤ナツラ(法2・慶應)がスロバキア・ブラチスラバで開催されたレスリングU20世界選手権のフリースタイル86㌔級で銅メダルを獲得した。
初戦から3試合続けてテクニカルスペリオリティで勝ち上がる。準決勝では6点リードから逆転され、6−7でポイント判定負けも、3位決定戦でテクニカルスペリオリティ勝ち。昨年のU20アジア選手権(フリースタイル79㌔級)銅メダルに続き、2年続けての国際大会でのメダル獲得となった。
2026 U20世界選手権@スロバキア・ブラチスラバ
2026年8月20日(現地時間)
フリースタイル86㌔級
1回戦
岡澤ナツラ(日本)○[VSU 1:52=10-0]●Arun ARUN(インド)
ベスト16
岡澤ナツラ(日本)○[VSU 1:37=10-0]●Tejvir S. DHINSA(カナダ)
ベスト8
岡澤ナツラ(日本)○[VSU 1:37=13-2]●Dachi PAPINASHVILI(ジョージア)
準決勝
Aeoden J. SINCLAIR(アメリカ)○[VPO 6:00=7-6]●岡澤ナツラ(日本)
2026年8月21日(現地時間)
3位決定戦
岡澤ナツラ(日本)○[VSU 4:53=10-0]●Askhab KHAJIYEV(カザフスタン)
大学1年時の夏、非五輪階級の79㌔級から五輪階級の86㌔級に変更し、以降目覚ましい成長を遂げている岡澤。昨年12月の天皇杯(明治杯と並ぶ国内最大の大会)で銅、今年5月の明治杯では銀メダルの好成績を残した。
今年4月のJOCジュニアオリンピックU20のフリースタイル86㌔級で優勝し、今回のU20世界選手権の出場権を手にしていた。今大会は高1時から5年連続となる国際大会の出場となった。
初戦はインドの選手と対戦。「今まで国際大会に出たことのない選手で、結果がなかったので、(ベスト8までの)3試合の中では結構緊張しました」と振り返る。序盤は静かに立ち上がるが、開始50秒、タックルから投げ技で相手をコントロールし、4点を先制。さらにローリングで2点を追加する。直後にタックルから得意の「もつれ」に持ち込むと、相手の体に覆い被さり2点、そのままローリングを決め2点を追加し、10−0のテクニカルスペリオリティで勝利した。
ベスト16は「もともと97㌔の選手だったみたいで、身長が高かった」カナダの選手との対戦。開始早々、右手の差しで相手の懐に入り込むと、タックルからコントロールし2点を先制。開始55秒頃には完璧なタックルから3度の2点技で6点を追加。最後もタックルから2点を追加。2戦連続完封のテクニカルスペリオリティで勝ち上がる。
ベスト8はメダル獲得に向けた大一番。「ジョージアの選手は去年の欧州選手権で優勝していて、山場はジョージアの選手との試合だと思っていました」。開始1分過ぎ、タックルを試みるが、課題の一つとして語る「入った後の処理」で決め切れず。2点を先制される。しかし、すぐさまカウンターで相手の背後を取り、1点を返すと、相手の両足の間に頭を入れ、足首を掴んでローリングを開始。驚異の6連続ローリングで圧倒し、13−2のテクニカルスペリオリティで勝った。「練習していた『アンクル』というグラウンドの技が決まって、思った以上に楽に試合を運べました。競る試合になると思っていたので、『よし』という気持ちでした」。
準決勝は、大会前から警戒していた第1シードのアメリカの選手との対戦。「コーチから『アメリカの6分間攻めてくるレスリングに合わせちゃダメだよ』というアドバイスをもらっていました」。
開始25秒頃、ステップアウトで早くも先制。さらに開始1分5秒頃、タックルから相手をコントロールし、2点を挙げると、ローリングで2点を追加。さらに、ステップアウトでもう1点を追加し、6−0のリードで第1ピリオドを終える。しかし、「前半で6対0までいって、でも前半終わったあたりで体力的にしんどくて、向こうのペースに合わせてこっちもカウンターにいったり攻めたりしていたのでペースが狂っちゃって、点数は取れたけど思い描いていた作戦とは違う展開でした」。
見るからに息の上がっていた岡澤。第2ピリオド開始50秒頃、バックに回られ2点を献上。さらに失点を重ね、1分以上を残して1点差まで迫られる。そこから粘り、1点リードで残り時間は30秒。大きな選択を迫られた。「後半残り30秒の時に6対5で、攻めるか守るかすごく悩んでいて、足は動かないけど攻めにいかないと点数を取られる流れだったので、守っちゃダメなのは分かっていたけど、体が全然動かなくて、下手に攻めてカウンターで取られるくらいなら守り切ってやろうと思っていた」。膝立ちになり、守りの姿勢を取ったが、タックルに入られると2失点。ついに逆転されると、相手に自由を与えてもらえないまま試合終了を迎えた。「いつもは息が上がってから粘るのが自分の持ち味でもあるのですが、その上をいってしまって、粘りすらもできないくらい体力を全部使ってしまいました」。
3位決定戦の相手は、昨年のU20アジア選手権の3位決定戦でも対戦したカザフスタンの選手。「去年のアジアでは残り1・5秒でぼくが逆転して勝って、去年は実力がほぼ変わらなかったので、今年の3位決定戦も勝っても負けてもおかしくないと思っていました」。
開始2分頃、相手がアクティビティタイムで得点できず、岡澤が1点を先制。さらに第1ピリオド残り10秒頃、場外際の激しい攻防で岡澤が相手の足を取り、相手の背中をマットの外側につける。一時は岡澤の2点と判定。岡澤の体が場外に出ていたと考えた相手陣営がチャレンジを要求するが、結果的に岡澤の4点技に覆る。第1ピリオドの最後には、またしても岡澤の体がギリギリラインの内側にとどまり、ノーポイント。相手陣営が再びチャレンジを要求したが、判定は変わらず。相手のチャレンジ失敗で岡澤に1点が追加され、6−0で第1ピリオドを終える。
「準決勝も3位決定戦も前半終わって6対0(岡澤リード)で、トラウマじゃないけど、前日に6対0から負けた記憶があったので、3位決定戦ではしっかり守ってチャンスがあるときに攻めようと思っていました。前日は無理に攻めて、バテて、負けたので、3位決定戦はしっかり相手を見て、適材適所でカウンターをうつ自分のレスリングを貫こうと思っていました」。第2ピリオド、積極的にがぶりを仕掛けてくる相手の攻撃をかわし、優位な体勢からテイクダウンで2点を追加。最後も同じ形で2点を追加し、4分53秒で10−0のテクニカルスペリオリティ勝ちを決めた。「ポンポンと2点取れて、テクニカル(スペリオリティ)で終わって、準決勝の負けも生かせたし、去年の(U20アジア選手権3位決定戦の)1点差じゃなくて最後に10点差つけられたこともあって、気持ち良く終われていい締めくくりになりました」。
今年10月には繰り上げでシニアの世界選手権に出場。今年12月の天皇杯からはロス五輪の出場権をかけた争いが始まる。
天皇杯では、今年5月の明治杯決勝で1-12のテクニカルスペリオリティ負けを喫した石黒隼人(自衛隊体育学校)との再戦を目標としている。「チャレンジャーとして、何が通じるのか、今の自分の位置はどこなのか」。明治杯決勝の前にも「チャレンジャー」の立場と語っていたが、その時とは意味合いが違う。未知のレベルとの対戦だった明治杯決勝と、トップレベルを知ったうえで全力をぶつける天皇杯。「観客を沸かせたい」、「観客に魅せたい」をモットーに築き上げてきた「何をしてくるか分からないレスリング」に加え、「基礎的な部分」を研ぎ澄ませた新たなスタイルで、夢の舞台への第1ラウンドに挑む。
(以下のすべての写真は、岡澤選手のご家族が現地で撮影されたものをご提供いただきました)









左から、高橋侑希コーチ(山梨学院大学)、岡澤、保坂健コーチ(自衛隊)
インタビュー全文
――銅メダルという結果について
素直に嬉しい気持ちと、自分が準決勝で逆転負けしたアメリカの選手が優勝したので、あそこで守り切れていたら自分があの立場になれていたと思うと嬉しさ半分悔しさ半分という気持ちです。
――国際大会でのメダル経験
高校1年生の頃から国際大会に出続けていて、去年のアンダー20のアジアの(フリースタイル)79(㌔級)で銅メダルを獲ったのが初めてで、今年も同じ色だけどメダルを獲ることができました。
――初戦、ベスト16、ベスト8の3試合は簡単に勝ち上がった
組み合わせが発表されて、気をつけていたのがイランの選手と、アメリカの選手と、ロシアの選手と、トルクメニスタンの選手で、結局今挙げた国の選手たちがぼく以外の1位(アメリカ)と2位(ロシア)と3位(トルクメニスタン)でした(イランの選手はベスト8にアメリカの選手に敗れ、敗者復活戦でカザフスタンの選手に敗れた)。組み合わせを見た時に準決勝まではその国とは当たらなかったので、「いけるな」と思ったのと、逆に準決勝までいかないとメダルが見えない(敗者復活戦に出られない可能性が高い)と思っていました。
――初戦
インドの選手は今まで国際大会に出たことのない選手で、結果がなかったので、その3試合の中では結構緊張しました。
――ベスト16
カナダの選手はもともと97㌔の選手だったみたいで、身長が高かったですが勝つ自信はありました。
――ベスト8
ジョージアの選手は去年の欧州選手権で優勝していて、山場はジョージアの選手との試合だと思っていました。練習していた「アンクル」というグラウンドの技が決まって、思った以上に楽に試合を運べました。競る試合になると思っていたので、「よし」という気持ちでした。
――準決勝のアメリカの選手との試合
アメリカのレスリングは6分間ずっと攻めてくるのが国としての特徴で、日本は細かい技術とスピードで戦うのが特徴的で、コーチから「アメリカの6分間攻めてくるレスリングに合わせちゃダメだよ」というアドバイスをもらっていました。前半で6対0までいって、でも前半終わったあたりで体力的にしんどくて、向こうのペースに合わせてこっちもカウンターにいったり攻めたりしていたのでペースが狂っちゃって、点数は取れたけど思い描いていた作戦とは違う展開でした。すごくバテてしまって、後半は足が動かなくなって、後半残り30秒の時に6対5で、攻めるか守るかすごく悩んでいて、足は動かないけど攻めにいかないと点数を取られる流れだったので、守っちゃダメなのは分かっていたけど体が全然動かなくて、下手に攻めてカウンターで取られるくらいなら守り切ってやろうと思っていたけど守れなくて逆転されてしまいました。
――息が上がってしまうケースは今まであったか
いつもは息が上がってから粘るのが自分の持ち味でもあるのですが、その上をいってしまって、粘りすらもできないくらい体力を全部使ってしまいました。体力強化も含めて、練習の内容を見直すいいきっかけになったと思います。
――3位決定戦のカザフスタンの選手との試合について
敗者復活戦でイランの選手とカザフスタンの選手が試合していて、イランの選手は今年のアンダー20アジア選手権のチャンピオンだったので、トーナメントの中で一番強いと思っていました。
イランの選手とカザフスタンの選手は今年のU20アジア選手権の準決勝でも戦って、イランの選手が競り勝っていました。去年ぼくが79㌔級でU20のアジア選手権で出た時も、イランの選手とカザフスタンの選手が戦って、去年もイランの選手が勝って、準決勝でぼくとイランの選手が戦って、ぼくが1点差でイランの選手に負けて、その後の3位決定戦でぼくがカザフスタンの選手に1点差で勝っていました。
イランの選手が上がってくると思っていましたが、敗者復活戦でカザフスタンの選手が投げ技からフォール勝ちを決めて、カザフスタンの選手が来ました。イランの選手は強いし、相性も悪かったのですが、カザフスタンの選手には一回勝っていたこともあって絶対勝たなきゃと思っていました。去年のアジアでは残り1・5秒でぼくが逆転して勝って、去年は実力がほぼ変わらなかったので、今年の3位決定戦も勝っても負けてもおかしくないと思っていましたが、思いのほか試合がうまく進んで、テクニカルスペリオリティで勝つことができました。
面白かったのが、準決勝も3位決定戦も前半終わって6対0(岡澤リード)で、トラウマじゃないけど、前日に6対0から負けた記憶があったので、3位決定戦ではしっかり守ってチャンスがあるときに攻めようと思っていました。前日は無理に攻めて、バテて、負けたので、3位決定戦はしっかり相手を見て、適材適所でカウンターをうつ自分のレスリングを貫こうと思っていました。ポンポンと2点取れて、テクニカル(スペリオリティ)で終わって、準決勝の負けも生かせたし、去年の(U20アジア選手権3位決定戦の)1点差じゃなくて最後に10点差つけられたこともあって、気持ち良く終われていい締めくくりになりました。
――5月の明治杯(12月の天皇杯と並ぶ国内最大の大会)の決勝で、石黒隼人(自衛隊体育学校)選手に1-12のテクニカルスペリオリティ負けを喫した。その試合から何か変化はあったか
本当にトップを知れたのは良かったですが、逆にトップとの差がありすぎて、正直何を伸ばせばあそこに追い付くのか分からない時期がありました。ただ、幸いなことに明治杯の1週間後に全日本合宿があって、そこで石黒さんに胸を借りて、打ち込みとかスパーリングとか技術も教えてもらって、試合で変わったというよりかはその合宿で自分のレスリングスタイルについて石黒さんやナショナルのコーチからアドバイスをもらったことが大きかったです。やっぱり自分のレスリングは柔らかかったり変則的な部分が多いけど、基礎的なところがちょっとできていない、たとえばタックルの入り方は人と違って面白いけど、入った後の処理が通じなかったり、「もつれ」、粘る絡みの動きが好きなんですけどそこに頼りすぎていてナショナルの人に通用しなかったりとか、組み手でいいところを取らせたりとか、レスリングの基礎的な部分が疎かになっていたので、徹底的に見直す機会になりました。前まではインスタでロシアの選手とかアメリカの選手の面白い技を見て研究していたけど、日本の選手の試合を見てタックルに入った後の腕、足、頭の位置とか細かいところを重点的に練習するようになって、世界選手権に出た時も外国の選手に対して細かいところを意識してやって、失点少なく点数重ねられたので、練習の成果が出て嬉しかったです。やっぱりまだシニアの世界選手権で通用するレベルではないけれど、自分がやってきたことは現時点では間違いじゃないと思っているので、もうちょっと信じて極めていこうと思っています。
――岡澤選手のレスリングスタイルはどの国と近しいか
ロシアのレスリングかなと思います。個人的には、「何をしてくるか分からないレスリング」をしたくて、アメリカの選手みたいにガツガツ攻める体力もないし、イランの選手みたいに組み手がうまくないし、日本人みたいにタックルが速くて正確でとか、そういうタイプではなくて、技が面白かったりとか、自分のレスリングのモットーが「観客を沸かせたい」、「観客に魅せたい」ということなので、ロシアの選手のような技は盛り上がるし、参考にしています。アンダー20の世界選手権でロシアの選手と対戦したいと思っていましたが、反対側の山で決勝まで行かないとできなかったので、シニアで当たりたいと思います。
――2年後のロス五輪に向けて
今年(12月)の天皇杯からオリンピックトライアルがスタートして、今年の天皇杯と来年(例年5〜6月)の明治杯を両方優勝すると(2027年のシニア)世界選手権に出られて、世界選手権でメダルを取るとオリンピックが決まります。たとえば、今年の天皇杯で優勝できなかったとしても、来年の明治杯で優勝すれば別日にプレーオフ(天皇杯優勝者vs明治杯優勝者)が行われて、そこで勝てば世界選手権代表になれます。
――つまり、今年の天皇杯か来年の明治杯のどちらかで優勝するのは必須になる
そうですね。世界選手権でメダルを逃したとしても、その後にアジア選手権があって、そこで決勝に行くと…とか、まだ発表されていない(9月17日に正式発表予定)けどいろいろなルールがあるかもしれないです。
――今思い描いているプラン
ちょうど1年前に(非五輪階級の79㌔から)86㌔に上げて、正直今のレベル、世界3位とか明治杯2位になれるとは全然思っていなくて、いい意味で自分が思い描いていたプランとは違うので、何が起こるか分からないけど上を向いていきたいです。去年12月の天皇杯で髙橋さん(=髙橋夢大 (三恵海運株式会社))に負けて(2-8のポイント判定負け)、今年5月の明治杯でリベンジできて(3-1のポイント判定勝ち)、そこでもまだ髙橋さんに勝てると思っていなかったけど勝てて、12月の天皇杯で決勝まで行けば石黒さんとできるので決勝にはいきたいです。(4カ月後に)石黒さんに勝つのはかなりハードルが高いので、プランとしてはもう一回(天皇杯で)戦って、明治杯で勝つ、でその後のプレーオフも勝つというのが現実的かなと思っています。2カ月後のシニアの世界選手権でまた得られるものもあるだろうし、今年の集大成として石黒さんにぶつかっていきたいです。焦って準備して自信をなくすよりかは自信を持って試合にいきたいので。天皇杯は負けにいくわけじゃないけど(笑)、チャレンジャーとして、何が通じるのか、今の自分の位置はどこなのか見たいと思います。
(取材・記事:柄澤晃希)

