10月17日に開催される箱根駅伝予選会。本企画では、予選会での活躍が期待される9人の選手にインタビューを行いました。
今回お話を伺ったのは、今年度駅伝主将を務めるチームの精神的支柱・安田陸人(商4・開成)選手と、昨年の予選会ではチームトップの成績を叩き出すなど急成長中の熱き漢・田口涼太(法3・慶應志木)選手。昨年も予選会で出走した経験を持ちますが、今年度はチームを引っ張るエースとして出走します。先頭に立つからこそ見える景色とは。

左:田口涼太(政3・慶應志木)
右:安田陸人(商4・開成)
田口→安田:
あまりこういう風に扱いたくはないのですが、安田さんは「天才」だと思っています。競技の特性上、継続して練習する必要があり、途切れ途切れでもしっかり結果を出したり、大きい舞台で結果を出したりということは難しいことなんですけど、安田さんはそういうことをしっかりできています。うまく論理的には説明できない凄さ、という点では、天才なのかなと思っています。

安田→田口:田口と僕に共通しているのは「チームを引っ張っていく立場」というところだと思っています。責任を負う立場で、自分の熱い思いだけではどうにもならない時にも、田口は純粋にチームに対する情熱的な思いをぶつけてくれています。そういうことを自分はセーブしてしまっていた部分がありました。そういう意味で、田口はチームにとってエネルギーを与えてくれる存在です。来年も、このエネルギーを存分に生かして、もっと活力のあるチームにしていってほしいです。
田口→安田:チームの立場から見ると、「きっとやってくれるでしょ」という頼りがいのある選手です。一方で、競争相手として見ると、非常に戦いがいのある選手です。試合は、お互い良い状態でぶつかったことはないんですが、練習では全然勝たせてくれないという、いい意味で面倒くさい選手です。
安田→田口:田口は大学1年生から陸上競技を始めています。未経験の部活に大学から入ろうという選手がなかなかいない中、勇気があるなと思います。もう一つは、この有り余る情熱です。やはり大学から始めて、レギュラーになったり、大きな舞台に出たりするのは、そんな簡単なことではないですが、箱根という舞台においても、経験がないからこその怖いもの知らずで立ち向かっています。実際に、彼は今年標準を突破して関東インカレに出ていますし、普通の人なら「無理だろう」と思うことも実現してしまう、実行力もある選手だと感じています。

昨年の予選会はチームトップだった田口
去年の予選会でも「誰も僕がチームトップでゴールすると思ってないだろうけど、僕はトップでゴールします」とみんなの前で宣言していました。その時は、僕も正直「こいつに絶対トップは渡さない」と思ってたんですけど、実際にはチームトップでゴールしました。悔しさを与えてくれるというか、いろんな選手に火をつけてくれる着火剤みたいな存在だと思ってますね。
田口:1年生の時には、自分の思いを口にしたら、それをうまく再現してくれる3、4年生がいてくれましたが、自分が先輩の立場になると情熱だけではどうにもならないという部分も感じてきています。みんなの意見を聞くことが大事ですね。「みんなが一つの意見に定まることはないんだな」ということは思っています。

「規律を大事にしないと」
一方で、守らなければいけない規律はあるので、自由と規律の双方が大事ですが、引っ張る立場は規律を大事にしないとチームは成り立たないのかなと思いました。他の人たちが多少自由を与えるくらいのバランスがいいのかなと今は思ってます。
安田:みんな自分の考えを持っていて、それぞれの考えがどうしても相反するところもある中で、それをどうやってまとめるかが、この2年チームを引っ張ってきてすごく難しいなと感じました。最低限の規律を守るところは一緒に合わせる。その上で必要なこと・やりたいことは認めていかないと、縛られすぎてしまってチームメンバーのストレスにつながり、返ってチームとして状況が悪くなってしまうところもかなりありました。田口はいろんな人の意見をすくって僕に持ってきてくれるので、そういった意見を大事にしながら、1人でも多く「自分が成長できる」と思える環境を提供していきたいなと思っています。

「成長できる環境を提供したい」
もう一つ大事にしているのは、保科コーチ(=保科光作ヘッドコーチ)とのコミュニケーションです。保科コーチとのコミュニケーションが得意な選手もいれば、自分から積極的にコミュニケーションを取るタイプじゃない選手も多くいます。僕や田口が積極的にコミュニケーションを取って、保科コーチが考えている練習の意図や要望を伝えるようにしています。
安田:陸上長距離は我慢のスポーツですね。結果が出るまで、どれだけ地道に練習しても結果が必ず返ってくるとは限らないし、しかもその結果は絶対に数字で出てしまいます。どれだけ自分が正しい努力をしたと思っていても、それが悪い数字で結果として出たら、人からそれで評価されてしまう。注目されている大きい大会でしっかり結果を残せないと、「何のために大学で陸上をやってたのか」と思われることもあります。

昨年の予選会後の集合にて
それらを全部我慢して毎日地道な練習を行い、結果が出るかわからない競技をずっとやっているような感覚ですね。ただ、大きな舞台で結果を出した時の喜びもあり、その振れ幅が大きなスポーツなので、そういったところが我慢してでも続けられる要因だと思っています。
田口:「大学スポーツの頂点」という言い方があっているかわからないですが、箱根駅伝は高校の甲子園に匹敵するような存在かなと思っています。
本当にくだらない理由ですが、大学で長距離を始めたのも、「何かしら残したい」「頑張りたい」と思った時に、色々な選択肢がある中で、「箱根駅伝を走れば有名になれる」と思ったからなんです。全国に名が知れるかは置いといて、クラスの友達やゼミの友達くらいにはちょっと自慢できるなと思ったので。
(田口選手はハーフマラソン、安田選手は3000mSCに出場)
田口:別日開催(4月5日)で、みんなの応援があるわけでもないので、関カレというより普通の試合のような感じでしたが、戦う選手はレベルが違いました。「箱根に出る」ということはこういうことなんだと、何個も壁を感じました。ただ、彼らと自分が戦っている絵も想像できて、壁はあるけれど諦めるほどではないな、と思いました。
安田:去年は状態も良く「自分が優勝でもできるんじゃないか」と思っていた結果、5位だったのですごく悔しかったのを覚えてます。それをきっかけに、去年1年はスランプに陥り、苦しいシーズンになりました。今年の関カレは、自分がしっかりとチームを明るくしなければいけない中で、直前に去年の悪いイメージがつきまとい、暗い雰囲気が漂ってしまったとすごく感じています。自分でも「8位に滑り込めば上出来じゃないか」と思っていました。予選を終えた時点でかなり力を使ってしまって、翌日の足の状況もあまり良くなかったです。
正直勝負できる状況じゃないと思っていたのですが、大会最終日、200mで林明良(政4・攻玉社)が優勝したり、中距離の市村(=市村瞭太郎、経3・慶應志木)が 800mで入賞したり、チームがすごく勢いに乗っていました。自分もその流れに乗らせてもらって、「もしかしたら自分もしっかりと走れるかもしれないな」という思いに徐々に変わりました。応援に駆けつけてくれた高校の同期など、応援してくれる人たちのためにも、かっこいいところを見せたいなと思って、ラスト1周で5、6人抜けました。
最後の馬鹿力みたいなものが出てきて、去年よりも1つ順位を上げて4位、自己ベストを更新し塾記録で入賞することができました。それをきっかけに、少し自信を取り戻すことができましたし、チームを頑張って引っ張っていって、少しでもチームの状況を良くしていきたい、という前向きな気持ちになれたので、今年の関カレは転換点の試合だったなと思います。
取材:稲垣遥河、中島冬奈
記事:稲垣遥河、片山春佳、中原亜季帆
編集:中原亜季帆

