関東大学リーグ1部後期第9節。自動降格圏内の最下位(12位)・慶大は、アウェイで10位・帝平大に3−1で勝った。他会場の結果もあって最下位を脱出した。
10位と11位が1部・2部入れ替え戦に進み、12位が自動降格となる。23日時点で全チーム2試合を残し、10位は勝ち点15(得失点差−27)の帝平大、11位は勝ち点14(得失点差−19)の慶大、12位は勝ち点13(得失点差−28)の順大。
試合は田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)と佐藤凜(総4・常盤木学園)のゴールで早々に2点を先行。1点返されるが、2−1で前半を終える。
後半も優勢に試合を進めると、宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)のクロスのこぼれを野村亜未(総4・十文字)が押し込み、今季最多の3得点目。黄大城監督が「パーフェクトゲーム」と語る抜群の内容で快勝した。
【試合結果】
2026/10/17(土)17:00キックオフ@帝京平成大学千葉キャンパスうるいどグラウンド
O.R.S 第40回関東大学女子サッカーリーグ戦1部 後期第9節
帝京平成大学1−3慶應義塾大学
【得点(アシスト)】
9分 慶大 田中紗莉(森原日胡)
13分 慶大 佐藤凜(野村亜未)
22分 帝平大 西尾唯花(辻彩花)
56分 慶大 野村亜未
【慶大出場選手】
ポジション
背番号 選手名(学部学年・出身高校)
GK
1 四宮里紗(環1・桐蔭学園)
DF
15 田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)
→60分 10 野口初奈(環4・十文字)
2 竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)
5 米口和花(総3・十文字)
4 宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
14 福島紗羅メヘル(政1・昌平)
MF
11 森原日胡(総2・作陽学園)
→79分 13 山田葵(総2・聖和学園)
6 木田遥(総1・十文字)
8 佐藤凜(総4・常盤木学園)
→89分 3 岡田恭佳(環4・十文字)
7 髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
FW
9 野村亜未(総4・十文字)
慶大は10/10・11週末はリーグ戦空き週となり、今節は2週間ぶりの試合となった。10/10に、試合前時点で勝ち点12の11位・帝平大と、勝ち点13の10位・順大が対戦し、帝平大が4−0で完勝。勝ち点を15に伸ばし、勝ち点11の最下位・慶大との勝ち点差を4としていた。
慶大にとって今節の帝平大戦は、「落としたら正直厳しい」(宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18))、自動降格に限りなく近づいてしまう状況で迎えた。
スタメンは攻撃時3−1−5−1、守備時5−4−1システムを採用。左CBのレギュラー・宮嶋が復帰。佐藤凜(総4・常盤木学園)が攻撃時の1トップ下、通称フリーマンのポジションで2試合ぶりにスタメン。田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)が右WB、森原日胡(総2・作陽学園)が右IHに入った。

帝平大は5−2−3。前節の順大戦で2得点を挙げた左WBのスピードと左足を起点に手数をかけずに攻めてくる。「きょうは相手の左サイドに特徴があった」(田中紗)。
2分、右サイドを突破され、ゴールエリア付近まで侵入されるが、絞ってきた左CB・宮嶋がシュートブロック。失点の大ピンチを防ぐ。
ファーストチャンスは4分、リベロ・米口和花(総3・十文字)からダイアゴナルランでフリーになった左WB・福島紗羅メヘル(政1・昌平)にフィードが渡る。こぼれ球を右IH・森原が右足アウトサイドにかけたボレーシュートも、ゴール右に外れる。

正確無比なロングフィードを持つ米口

守備でのハードワークも光った森原
その後は一方的に押し込む時間が続く。右の森原、左の髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)の両IHが帝平大2ボランチの脇を突きながら前進していく。9分、FW・野村亜未(総4・十文字)が前線で五分五分のボールをキープすると、ボックス内で森原につなぎ、森原から落としを受けた田中紗が右足でシュート。ボールはゴール右隅に収まり、幸先よく先制する。

ビルドアップの出口となった髙松


田中紗が今季初ゴール
さらに13分、宮嶋のパスを髙松がフリックし、受けた佐藤が左WB・福島紗に展開。福島紗は得意のドリブルから左足でグラウンダーのクロスを供給すると、中央で待つ野村がダイレクトで落とし、走り込んできた佐藤がダイレクトでゴール右隅に流し込んで追加点を挙げる。「ずっと練習から狙っていた形」(佐藤)というサイドからのクロスとFWのポストプレー、2列目の選手の関与まで完璧な崩しだった。


佐藤が今季3ゴール目
しかし22分、ロングボールで攻め込まれると、キーパーとDFラインの間への絶妙なクロスに合わせられ、失点。2点リードが1点リードに縮まるのは今季初めてだったが、選手たちに焦りはさほどなかった。「2点入って若干の気の緩みみたいなところからの失点になって、ここでさらに失点を重ねてしまうとこれまでの試合といっしょになってしまうと思いました。失点したけどやられる感じはそんなになかったので『慌てなくていい』というのを、自分に言い聞かせて、周りにも伝えて、その後は焦らずにできたと思います」(宮嶋)。
1点差となった後も変わらず押し込んでいく。アンカー・木田遥(総1・十文字)が相手3トップのギャップでボールを引き出し、攻撃のペースをつくる。

攻撃をコントロールする木田
32分、右CB・竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)の縦パスを起点に、森原、竹内、野村、森原と4本のダイレクトパスで攻め込むと、佐藤がボックス内でシュート。DFにブロックされるが、持ち前のパスワークを見せる。

パスセンスに長けた竹内
38分、野村の落としを受けた木田がダイレクトで森原に送り、森原が巧みなターンからボックス内まで駆け上がった宮嶋にスルーパス。宮嶋が混戦から木田につなぎ、木田がミドルシュートを打つが、枠を外れる。直後には、宮嶋のクロスを森原がヘディングシュート。得点には至らなかったが、良い形の攻撃が続き、2−1のまま前半を終える。
後半も立ち上がりに大きなピンチを迎える。47分、自陣ボックス内でクロスのこぼれを拾われ、シュートを打たれるが、宮嶋が胸トラップでブロック。再び好守を見せる。
その後は安定して試合を支配する。54分、野村、髙松、福島紗、木田が連動したプレスをかけると、木田がスライディングでボール奪取。野村が受け、ボックス内で強烈なシュートを打つが、キーパーのセーブに遭う。
56分、森原からスルーパスを受けた野村が前線で時間をつくり、福島紗へ横パス。福島紗のシュートはDFにブロックされるが、福島紗が自らこぼれを拾うと、ステップオーバーで相手を翻ろうし、宮嶋に落とす。宮嶋は左サイドから高い弾道の右足クロスを供給すると、相手キーパーが弾いたボールがゴールへと向かい、最後は野村が押し込んで再び2点差とする。

2得点の起点となった福島紗

得点につながるクロスを上げた宮嶋

11得点目の野村
最初の交代は60分、先制弾の右WB・田中紗に代わり、体調不良の影響でベンチスタートとなっていたエース・野口初奈(環4・十文字)が入る。野口は佐藤が務めていたフリーマンのポジションに入り、佐藤が右WBに入る。右WBでの起用について、佐藤は試合後、「もちろん攻撃でリズムをつくるのは自分の良さでもあると思いますが、自分があの時間帯に右のウイングをやるというのは守備で相手のキーマンとなる選手を潰すことが求められていると思うので、きょうも足が攣りそうな中で『絶対にやらせないんだ』という思いで最後まで守り切れたと思います」と話した。

エース・野口が後半から登場
63分、相手CKからシュートを浴びるが、ポストに当たってゴール方向に飛んだボールをキーパー・四宮里紗(環1・桐蔭学園)がかき出し、なんとか失点を免れる。
70分頃から帝平大は5−2−3から5−3−2にプレス時のシステムを変更。アンカー・木田やフリーマン・野口、両IHはマークされるようになったが、3バックが2トップに対する数的優位を生かし、ゆっくりとボールを横に動かしていく。「後半の途中から相手のFWの守備が変わって、得点的にも3−1だったので、そんなに慌てなくていいとテソンさん(黄大城監督)からの声かけもありました。後ろとしては相手が来たタイミングで空いているところにつければいいという共通認識があったので、慌てて刺すとかもなく、後ろでゆっくり回せたことは良かったと思います。その中でもミスがあったので、そこは次節に向けて改善すべきだと思います」(宮嶋)。
79分、森原に代えて山田葵(総2・聖和学園)を右IHに投入。81分、野口がキーパーとDFラインの間にクロスを供給すると、髙松が2列目から抜け出し、頭で合わせる。シュートは枠を外れたが、チームの形の一つを見せる。

ターンで魅せる山田
88分、カウンターを受け、ミドルシュートを浴びるが、四宮が落ち着いてセーブする。89分、貴重な2点目を挙げた佐藤に代えて岡田恭佳(環4・十文字)を右WBに投入。試合を締めにかかる。

冷静に守り続けた四宮

復帰から3試合連続出場の岡田
終盤は押し込まれ、守備の要・米口が負傷で1分間ピッチを出るアクシデントもあったが、集中を切らさずに守り抜いた。3−1の勝利。後期第2節以来、7試合ぶりの今季3勝目となった。
攻守の切り替えの早さが随所に見られたことも、開幕当初から続く「ゴール前の精度」(黄監督)の改善も、もちろん前向きな要素だが、この試合で最も光ったのは攻撃の再現性だった。
木田が3トップのギャップで受ける。森原(山田)、髙松の両IHが相手の2ボランチの脇を使う。IHに対して3バックが一枚出てきたら、野村や福島紗が裏へランニングし、米口のロングフィードで速攻を仕掛ける。相手が2トップになると、竹内が浮く。コミュニケーションを絶やさず、どこが空いているのか共有し続ける。黄監督が掲げる「相手を見ながら自分たちで判断をしていくサッカー」を90分通して体現した。
黄監督は試合後の取材に対し、満足げに「パーフェクトゲーム」とひと言。
同節、勝ち点13の順大が敗れ、勝ち点14とした慶大が入れ替わりで11位に浮上した。

【試合後インタビュー】

この日のヒーローは3人!左から1得点目の田中紗、2得点目の佐藤、3得点目につながるクロスを上げた宮嶋
田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)
――今の率直な気持ち
嬉しいです!やっていてすごくワクワクするというか、勝ちに向かっていけていることを感じられた試合が長らくなかったので、それがすごく楽しかったです。
――4試合連続スタメンだが、左のWB、左のCBで出ていた中で、今節は右のWBでの起用となった
きょうは相手の左サイドに特徴があったので、自分の役割は明確でしたし、試合の入りとしてもチーム全体でボールを持てる時間も多かった中で、ゴールに向かっていく意識を出せたことは良かったと思います。
――相手の左WBの6番の選手が前節2点取っていたが、6番の選手に対する守備は
速いと聞いていたし縦を抑えようという中で、剥がされちゃうこともあったので、そこはもっと戦えたかなと悔しい部分ではあるものの、チーム全体として意識高く、全員で守ることと全員で点を取ることを出せたのは良かったと思います。
――ゴールの場面
もともとゴールへの意識としてクロスの入り方は、日胡(森原)と亜未さん(野村)のポジションを見て判断してたところで、あのシーンでは亜未さんが流れてボールを受けていたので、外で待ってるよりマイナスに入った方がボールが来るかなって思って、来たのを打つだけでした。
――シーズン序盤にけがで長期離脱し、復帰後はまとまったプレータイムはなかなかなかったが、ここのところ4試合連続スタメンとなっている
全部ポジションが違うので、チーム状況次第ではありますが、やることはいっしょというか、チームのために声を出し続けるところや常に全力でやることは一貫してやってきたので、今後もどんなポジションにおいても出せたらと思います。
佐藤凜(総4・常盤木学園)
――今の率直な気持ち
本当に「勝てて良かった」というのが一番で、ずっと勝てなくて苦しい時間が続いていた中での勝利だったので、すごく嬉しいです。
――前節から2週間空き、野村主将が国スポでチームを離れる期間もあったが、佐藤副将が取り組んだことやチームの雰囲気は
やっぱり普段亜未(野村)がチームの先頭に立って声をかけたりリーダーシップを取ってくれている中で、全体で声をかける場面が少なくなると思ったので、亜未がいない分意識していこうと思っていました。自分は普段は前で発信するようなタイプではないけれど、亜未がいない期間は自分が亜未の代わりをやらないとと思って発信していましたし、4年生もその空気感を分かっていたのでいっしょに練習をつくってくれていました。
――攻撃の中心となる野口選手がベンチスタートとなったが、ビルドアップを振り返って
普段初奈(野口)がやっているフリーマンのポジションは自分はあまり慣れていないし、そんなに得意な意識もないのですが、求められていることははっきりしていたので、とにかくゴール前で絡むことができて良かったと思います。
――ゴールの場面
紗羅(福島)がいい感じで抜け出してくれて、あれもずっと練習から狙っていた形だったので、それを紗羅がやってくれて、ゴール前で亜未が体を張って落としてくれたので、思いを乗せてシュートできたと思います。
――後半途中から右WBでプレーしたが、ここのところ右WBに入るようになってきて、どんな意識でプレーしているか
もちろん攻撃でリズムをつくるのは自分の良さでもあると思いますが、自分があの時間帯に右のウイングをやるというのは守備で相手のキーマンとなる選手を潰すことが求められていると思うので、きょうも足が攣りそうな中で「絶対にやらせないんだ」という思いで最後まで守り切れたと思います。
――前期の日体大戦と帝平大戦で先制点を決めたが、いずれも勝利にはつながらなかった。前期の日体大戦の試合後に「勝ち点3に導けるような得点がほしい」と話していて、今節のゴールはついに勝ち点3につながった
前期は2点決めたけど、どちらも勝ち切ることができなかった試合だったので、今回のゴールは勝ち点3につなげることができたゴールで、率直に嬉しいし、自分がチームの力になれたことを実感できるゴールだったと思います。
――残りの試合に向けて
まず残り2試合リーグ戦があって、何が何でもこの1部の舞台を残さないといけないというのは4年生として思うので、後輩のためにも慶應が1部にいなければいけないことを証明できるような2試合にしたいと思います。
宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
――試合の総括
率直な気持ちで言うとひと安心しているというか、この試合を落としたら正直厳しいところもあったので、しっかりと今シーズン最多得点で勝てたことは何より良かったと思います。内容としても、得点の形も慶應らしい得点だったと思うし、テソンさん(黄大城監督)も仰っていたのですが「今年の一番いい試合」だったと思います。
――早々に2点取った後、すぐさま1点差とされたが、その時に宮嶋選手がチームにかけた言葉やチームの雰囲気
2点入って若干の気の緩みみたいなところからの失点になって、ここでさらに失点を重ねてしまうとこれまでの試合といっしょになってしまうと思いました。失点したけどやられる感じはそんなになかったので「慌てなくていい」というのを、自分に言い聞かせて、周りにも伝えて、その後は焦らずにできたと思います。
――3点目の場面
紗羅(福島)から受けて、中に(慶大の選手が)いっぱいいることは分かっていたので、とりあえずファーのサイドネットを狙ったら何か起きると思って上げたらゴールにつながったので、そこを狙えたのは良かったと思います。
――5−2−3の相手に対し、前半は森原選手と髙松選手の両IHがフリーになっていた。後半は相手の左WGの「10番が落ちているぞ」と黄監督から声が飛んでいたが、試合の中でのビルドアップの移り変わりは
後半の途中から相手のFWの守備が変わって、得点的にも3−1だったので、そんなに慌てなくていいとテソンさんからの声かけもありました。後ろとしては相手が来たタイミングで空いているところにつければいいという共通認識があったので、慌てて刺すとかもなく、後ろでゆっくり回せたことは良かったと思います。その中でもミスがあったので、そこは次節に向けて改善すべきだと思います。
――次節に向けて
今節で勝ち点3を取れたけど何があるか分からないですし、あと2節をチーム一丸となって勝ちにいくだけなので、来週からまたつくっていきたいと思います。

(取材:柄澤晃希)








