最後に、涙をのんだ。降格圏の11位で最終節を迎えた慶大は、3位・流経大と対戦。他会場の結果が大きく慶大の運命を左右するとはいえ、彼らが目指すのは勝利のみだ。前半を0-0で折り返してラスト45分に勝負をかけたが、76分に痛恨の失点を喫すると、一度は追いついたもののその後さらに2点を献上。1-3で試合終了のホイッスルを迎え、2008年以来10年ぶりとなる2部降格が決定した。
第91回関東大学サッカーリーグ戦 第22節
2017/11/18(土)14:00KO@味の素フィールド西が丘
【スコア】
慶應義塾大学 1-3 流通経済大学
【得点者】
0-1 76分 新垣貴之(流通経済大学)
1-1 81分 渡辺夏彦(慶應義塾大学)
1-2 84分 渡邉新太(流通経済大学)
1-3 89分 ジャーメイン良(流通経済大学)
◇慶大出場選手
GK上田朝都(総2・横浜F・マリノスユース) |
DF鴻巣良真(総3・国学院久我山高) |
DF野村京平(総2・国学院久我山高) |
DF八田和己(総2・桐蔭学園高)→72分 渡辺夏彦(総4・国学院久我山高) |
DF佐藤海徳(政2・桐光学園高) |
MF岩崎湧治(商3・ベガルタ仙台ユース)→65分 松岡瑠夢(総1・FC東京U-18) |
MF落合祥也(商2・横浜FCユース) |
MF手塚朋克(環4・静岡学園高) |
MF松木駿之介(総3・青森山田高)→59分 小谷春日(環3・藤枝東高) |
FWピーダーセン世穏(経2・FCトリプレッタ) |
FW田中健太(法4・横浜F・マリノスユース) |
前節、負ければ降格もという中で駒大を下した(2○1)慶大は、首の皮1枚つながった状態で最終節を迎えた。10位・日体大と同勝ち点で並び、最下位・専大との勝ち点差も「1」と残留争いは大混戦。他会場の結果も慶大の運命を大きく左右する状況だが、荒鷲軍団が目指すのはもちろん勝ち点3のみだ。
ファーストシュートは慶大。3分、松木駿之介(総3・青森山田高)がドリブルで左サイドからPA内に侵入してシュートを放ったが、これはサイドネットへ。11分には左CKの流れから最後は田中健太(法4・横浜F・マリノスユース)が右足でシュートしたものの、相手GKの正面を突く。その後は互いに幾度かシュートチャンスを作ったものの精度を欠き、スコアは動くことなく前半を終えた。
一方他会場では前半を終えて10位・日体大が2点リード、最下位・専大も1点を先行。仮にこのまま進むと、慶大が2校を上回るには日体大との得失点差の関係で3点が必要となる。非常に厳しい状況だが、荒鷲イレブンはこの逆境をはねのけることができるか。
後半立ち上がり、前掛かりにならざるを得ない慶大に対して流経大もボール奪取からスピード感ある攻撃で応戦。ヒヤリとする場面が続く。52分、ゴール正面で直接FKを与えてしまったが、これはGK上田朝都(総2・横浜F・マリノスユース)が何とかセーブ。右CKもギリギリのところで防ぎ、失点は免れた。ここから慶大は小谷春日(環3・藤枝東高)、松岡瑠夢(総1・FC東京U-18)、渡辺夏彦(総4・国学院久我山高)と攻撃的な選手を投入。とにかくゴールだけを狙う。しかし、76分だった。流経大に左サイドからシュートを放たれると、これが慶大ゴールに決まる。痛すぎる失点。それでも、慶大も必死に食らいつく。81分、渡辺がドリブルで相手ゴール前を切り裂いてそのままシュート。魂のゴールが決まり、もう1点――。だが、すぐにその希望を打ち砕く1点が生まれてしまう。84分、再び左サイドを崩されると、折り返しを沈められて1-2。89分には決定的な3点目を許し万事休す。最後まで闘志を見せ続けた慶大だったが、試合終了のホイッスルが2部降格を告げた。
2008年以来10年ぶりとなる2部降格。加えて、他会場の結果により慶大は最下位で2017シーズンを終えることとなった。“1部で一番弱いチーム”。慶大に突き付けられたこの現実から、目を背けてはいけない。その事実を受け入れることから、1部復帰への道のりは始まるのだ。須田芳正監督が「1年で1部昇格を目指していきたい」と語った通り、来季は1年での1部復帰が至上命題となる。だが、2部もそれほど甘い世界ではない。アミノバイタルカップ1回戦・神大戦(0●3)や早慶定期戦(1●5)での惨敗で、そのことを痛いほど感じたはずだ。これまで、1年での1部復帰から即日本一に輝いたチームもあれば、1年で戻ることができずにもがき苦しんでいるチームもある。慶大ソッカー部の未来がどのようなものになるか。それは全て、来年1年間の戦いに懸かっている。2017年11月18日。この日流した涙を、無駄にしてはいけない。
(記事 小林将平)
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試合後コメント
須田芳正監督
(最下位での2部降格という結果をどう受け止めているか)全て僕の責任なんで。なかなか1年間安定してチームをコントロールすることができなかった。良い時というのはほぼなくて、試合に勝ってもその後の試合でちょっと悪くなったりっていうことがあって、本当に1年間通して良い時がなく、なかなかそうすると勝ち点も積み重ねていけなくて。全て僕の責任なんで。彼らにも話したんですけど、彼らは本当に堂々とね、最後まで戦ったんで、胸を張って、ロッカールームから出てきてもらいたいし、4年生は特に堂々と卒業してもらいたいと思います。(このような結果に至ってしまった原因は)やっぱりディフェンスラインがなかなか安定しなかったことが一番の原因かなとは思っていますね。あそこの特にセンターバックのところがなかなか安定しなかった。メンバー的にもケガ人だったりいろいろな選手を試したということもあるし、なかなか安定しなかった。ディフェンスラインが安定しなくて攻守にわたってゲームをうまくコントロールできなかったというところが一番の原因だったかなと思います。(監督自らの責任を問う声も出てくると思われるが)その辺は強化委員会と話して。こっちの責任なんで、その辺をいろいろと話して決めていきたいと思います。(試合後選手たちにはどのような声を掛けたか)「1年間良く頑張った」と。まあ残念な結果だけどよく頑張ったという言葉は掛けました。(今年1年間を通して下級生の選手が多く試合に絡んだがそれは今後につながる部分では)そうですよね。非常に苦しい中で下級生がたくさん出てそういう経験をしたんで、(1部に)残ったら最高だったんだけど、また2部でね、非常に2部も厳しい戦いだと思うんで、1年で上がれるように頑張ってもらいたいと思います。(これで引退となる4年生について)彼らはいろいろな経験をして、優勝争いもしたしインカレ争いも2回して、まあ最後残念ながら落ちたんだけれども、本当に4年間良く頑張ったと思うし、さっきも言ったんですけど胸を張って卒業してもらいたいと思います。「お疲れさまでした」と言いたいです。(最後に今年1年間応援し続けてくださった方々にメッセージを)残念な結果だったんですけど、熱い声援を本当にありがとうございました。来年2部で厳しい戦いですけれど、1年で1部昇格を目指していきたいと思います。
手塚朋克(環4・静岡学園高)主将
(今の気持ちは)降格してしまったのは本当に残念です。ただ、ラスト2試合、下級生も3年生も同期も、本当に必死になって一つになって戦えたことは、この1年間の収穫だったんじゃないかなと思います。(全てを懸けた試合だった)正直前半は、これだけ力のある流経大に対して負ける気がしないくらい押し込んで、強い気持ちを持ってワンプレーワンプレー集中できていたので、そういう意味ではすごく良い試合だったと思います。(得点が必要な試合だったが)他会場の結果は僕らは聞いていなくて、勝ちしかないと思っていたので、流経大は立ち上がりが悪いからそこで1点取ろうと言っていたところで取り切れなかったのが、一つ良くなかった点だと思います。(点が取れない中で、焦りは感じていたか)焦りは特に感じていなかったし、あれだけ前に押し込んでいたらいつかは得点が入ると思っていたんですけど、全員で押し込みに行く勢いが少し足りなかったんじゃないかなと思います。(最下位に終わってしまったが、今年1年間を振り返って)個人的には本当に辛い時期が続いて、キャプテンを交代したり、勝てない時期が続いて思い悩んだりしたこともあったんですけど、仲間を信じてここまでやってこれたことで自信がつきましたし、全員が信じてくれたことで僕は1年間主将をやってきて良かったなと思うので、本当に全員に感謝してます。(4年生が須田監督に苦言を呈されるような時期もあった)まあ須田さんもいろいろ考えて激を飛ばしていたと思うので、そこで僕らが踏ん張りきって力に変えることができなかった、未熟だったということです。ただ最後は本当に全員が須田さんのことを信頼してやっていましたし、最後こうして全員が一つの目標にベクトルを向けられたっていうのは、僕の人生にとってもとても重要な経験になったんじゃないかなと思います。(ソッカー部でのブログにも綴っていたが、明大戦、駒大戦と終盤は雰囲気も上向いていた)須田さんが言うように、全ては自分だったので、自分が腹をくくったのがあの明大戦の後で、全員の姿勢が、僕がやってきたことは間違ってなかったと証明してくれたので、それが個人的にはすごく嬉しかったし、この1年やってきて良かったなとその時感じることができて、そこで自分が腹を割りきって行動に移せたんじゃないかなと思います。(今季印象に残っている試合は)個人的にはやっぱりその後期の明大戦で、ピッチ外で見て、全員の応援の姿勢だったり、ピッチで戦う姿勢を客観的に見て、責任だったり覚悟から逃げていたんじゃないかと全員に気づかされたこと、それが個人的にはターニングポイントでした。少し遅かったかもしれないですけど、僕にとっては大きな収穫だったと思います。(慶大での4年間を振り返って)毎年毎年違う感情でできて、1、2年生の時は自由にやらせてもらえて、選抜とかにも入ったり多くの人から評価されて、気持ち良くプレーできました。それは先輩たちが築いてくれた環境で、自由にやらせてくれた先輩たちのおかげだと思っていて、それを今季下級生にしてあげられたかって言うと、個人的には全然できなかったと思っていて、後輩たちの未来を少しでも明るくできるようにと思ったんですけど、自分が未熟で何も残してあげられなかったことは悔いが残ります。ただ、その後輩たちを信じて戦えたことは、一生残るものだと思うので、自信を持って今後の人生を生きていきたいと思います。(チームメイトに伝えたいことは)本当に感謝の気持ちでいっぱいで、自分がこれだけ打ち砕かれて、いろいろな局面で支えられていたので、同期も下級生も全員に感謝の気持ちを伝えたいと思います。(最後に応援してくださった方々にメッセージを)今季は本当に苦しいシーズンで、最後は降格という形になってしまったんですけど、OBや応援してくださる皆さんがいたからこそ、すごく力になりましたし、最後までその声で諦めずに戦えたので今後も慶應のために応援してもらえればと思います。
田中健太(法4・横浜F・マリノスユース)
(試合を振り返って)試合に出ている4年生として、同期のみんな、170人のみんなが最高の環境を作ってくれて応援してくれる中で勝てなかったというのは、単純に自分の実力不足であり、不甲斐なさを感じています。(負けられない試合で先発出場したが)自分のサッカー人生でラストの試合になると思っていたので、もう失うものはないと思って、裸でサッカーをしようという気持ちで、その表れとしてシュートとか積極的なプレーができたのかなと思います。(今季を振り返って)今季は2月からシーズンインをしたんですけど、そのシーズンインの時には大きなケガをしてしまい、首の神経がだめになって右手が上がらないところから始まったんですけど、その中で就活とか色々な葛藤があったんですけど、いま1年終わって思えるのは、プレーヤーとして結果を残すことはできなかったんですけど、最高の同期や仲間に恵まれたことっていうのは自分にとって財産だなと素直に感じて、そこには本当に胸を張って誇りを持って最高の仲間がいたと言えるんじゃないかと思います。(慶大での4年間を振り返って)まず一つ目は、親だったり監督、170人の仲間に本当に支えられてこの4年間全力でサッカーをできたと思っているので、そこは心から感謝の気持ちを伝えたいのと、自分がプロを目指して門を叩いた慶大ソッカー部の中で、その夢を実現できなかったことというのは、自分自身に負けたと思っているし、自分の力不足だと思っているし、そこは悔しい気持ちがとりあえずあるんですけど、自分のセカンドライフが始まるので、それに向けてこの4年間を糧にというか色々なことを経験してきて思うことがたくさんあるので、今後のセカンドライフでは強く生きたいなと思っています。(この4年間で学んだことを一つ挙げるなら)根拠のない自信を持つことかなと思っていて、誰でも良い時と悪い時の波があると思うんですけど、そういう時でも自信を持っているやつはいると思うし、そういう根拠のない自信、夢を持てる人間というのが結局は悪い状況からチームを救う救世主だったり、自分の悪い流れを脱却する唯一の力だと思うので、それを持つこと、それを持てるように地道に自分を信じて努力することが本当にサッカーだけじゃなくて、人生においても大切なことだと感じています。(これまでたくさんの人たちが応援してくれた)本当に小さい頃から応援してくれた人だったり、大学の友達だったり、保護者やOBの方々だったり、本当に全ての方々に心を込めて「ありがとうございました」と伝えたいのと、まあこういう結果になってしまって、自分の力不足、こういう結果になってしまったことを本当に申し訳ないということを伝えるとともに、「今後も頑張ります」という気持ちを伝えたいです。(後輩たちにメッセージを)後輩たちは本気で日本一になることであったり、自分がプロになることであったり、CチームからAチームに上がることであったり、そういう大きな夢を持った、目がキラキラしている後輩、芯の強い後輩がたくさんいると思うので、だからこそ慶大ソッカー部を1部の舞台に残してあげたかったんですけど、でもその後輩たちはきっとその夢をつかめる強い人間だと思うので、そこは変わらず自分がOBになっても心から応援したいと思います。
渡辺夏彦(総4・国学院久我山高)
(最下位での2部降格という結果をどう受け止めているか)素直にこれまでこの歴史を作ってきたOBの方々に申し訳ないですし、3年生以下にもそれを残せなかったというのが本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。(試合後には呆然と立ち尽くす姿も見られたがあの時考えていたこととは)実感がなかったというか。実感がなかったですね。何も考えていなかったです。(このような結果に至ってしまった原因は)うーん…。一つは単純に実力が足りなかったところと、それにプラスして4年としてチームを引っ張る力が足りなかったというところかなと思います。(慶大での4年間を振り返って)苦しい4年間でした。うまくいくことなんか1日もなくて。まず入学してすぐにケガをして1シーズンサッカーができず、2年生の頃も思ったようにできず、3年生はもっと苦しんで、4年生はこういう結果になって。ずっと苦しい中で4年間過ごしました。(特に最高学年となった今季は一つひとつのプレーに気持ちがこもっていた)そうですね。(チームメイトへの思い)チームメイトっていう言葉を聞いて一番最初に思い浮かぶのは、意外と試合に出ていた仲間というよりは、4年生の中で試合に出ていなかった同期もいますし、サポートしてくれた4年生も多くいて。これだけサポートしてもらって送り出してくれたにも関わらず、最後“半自力”っていうこの試合で最後また不甲斐ない結果になってしまって本当に申し訳ないなっていう。それでもとにかく「ありがとう」っていう気持ちですね。3年生以下にも本当に申し訳なくて、結果を残せなくて1部の結果も残せなくて。ただその中で本当に頑張ってほしいという思いです。(卒業後の進路は)サッカーは続けます。それはまた、追って。改めて。今後また発表もあると思います。(高校時代から名を知られた存在で、慶大でも注目された4年間だったが)苦しもがきんだ4年間でした。別に僕は「苦しもがきんだ」っていうのが全然悪い意味だとは思っていなくて、むしろものすごくポジティブに良い意味でものすごく苦しんだし、本当に良い経験をさせてもらった4年間だったと思っています。その形が苦しかっただけで、苦しい辛い4年間だったけど、自分にとってはものすごく価値のある4年間になりました。(後輩たちには何か声を掛けたのか)申し訳ないしか言えないですけど、「頑張ってくれ」と。そういうことは伝えました。(苦しもがきんだというのはこの4年間で得られたことか)そうですね。須田さんっていう監督も僕が出会った中で一番厳しく接してくれる監督だったし、その中でも苦しんだし、やっぱり今まで自分が所属していた環境とは全然違う環境での体育会ソッカー部というのはそういうところで、戸惑いも最初はあったし、葛藤もあったし。すごくもがいた中で成長できました。(ラストゲームでのゴールはいろいろな意味で今後忘れられないものになるのでは)いや、もうあの1点には何も意味はなくて。結局今日勝てなかった、勝利をもたらせられなかった。「今日は出られるか分からないな」って思っていて、須田監督に「俺が出たら点を取るから出してくれ」っていうふうに言って、須田さんも応えてくれて。それで勝たせられなかったというところで、ものすごく責任を感じています。(ユニサカ代表・渡辺夏彦としてもこれで一区切りとなるのか)そうですね。まあこの場では正直あまり答えたくない内容ですけど、しっかりと今後も。まああくまでも学生が主体として進めている団体なので、サポートしていきたいと思います。(今年1年間応援してくださった方々にメッセージを)本当に苦しんだ4年間であったと同時に、すごく多くの人が温かく応援してくださったというのもすごく感じて、それはおそらく高校の時よりも支えてくれる人が多くて、試合を見に来てくれる人もいて。やっぱり今日も終わった後にこれだけ多くの人が「ありがとう」って言ってくれて…。本当にこちらが「ありがとうございました」っていう気持ちですね。
※2017シーズンも我々の取材に快く応じてくださった慶應義塾体育会ソッカー部の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。誠にありがとうございました。また、この試合をもって引退される4年生の皆様、4年間本当にお疲れさまでした。皆様の今後のご活躍を、慶應スポーツ新聞会サッカー取材班一同、心より期待しております。