«早慶定期戦直前企画»
第一弾
7月12日(金)、第18回早慶女子サッカー定期戦が開催される。過去の対戦成績は0勝13敗4分と未だかつて、一度たりとも勝利を挙げたことがない。史上初の快挙を目指すソッカー部女子。早慶定期戦直前企画では今季の戦いを振り返ると共に、運命の大舞台に挑む選手、監督、マネージャーの意気込みや今の心境を伺った。
第18回早慶女子サッカー定期戦
7/12(金)15:30Kickoff @等々力陸上競技場
第一弾となる今回はソッカー部女子を率いて三年目を迎える伊藤洋平監督の単独インタビューをお届けする。インタビュー前半では関東リーグ前期の振り返りを、インタビュー後半では一昨年、昨年を経た指揮官の”三度目の正直”への熱い想いを垣間見ることができた。(インタビュアー:柴田航太郎)
【取材日:6月25日】
自己肯定感が得られなかった前期リーグ
――今季これまでの戦いについて雑感を頂けますか
結果の通り(前期リーグ1勝5敗)なんですけど、なかなか苦しいシーズンが続いています。
――開幕戦後には、「覚悟が足らなかった。パスコースが明らかに少なかった。」という言葉があったが、開幕戦は思い描く形では無かったということですか
まあ、ああいうサッカーをしていてビルドアップの段階でミスが出てしまうと、パスコースを作りたがらない。そういう責任転嫁の方に走ってしまう傾向があるので、やっぱり開幕戦での敗戦っていうのは痛かったですね。
――今季もフィールダーからGKを出しましたが、精度の高いロングボールでプレッシャーを上手く回避する場面を数多く見せています。この辺は、想像以上といったところでょうか
加藤も尾崎も想像以上の成長を見せていますし、ハタから見たら今年から始めたとは思えないほど上達してくれているので、本当に彼女たちの努力に感謝したいと思います。
――以前、ロングキックを見せることでショートパスが活きると仰られていた。今季の組み立ての部分に関して手ごたえはいかがですか
そこが難しいところで、必ずしもシステムのせいにしたくないんですけれども。今季から3バックに変更したのは、初期配置が変わっただけだと僕は思っていてサッカーを変えたわけじゃないんですけど、やっぱり何かが変わったと。そこで判断の遅れとかちょっとズレが出てしまっていて、本来の目的であるゴールとか背後への飛び出しといったところが、ちょっと疎かになってしまったかなというのはありますね。
――第3節、第5節と相手を圧倒する時間を作りながらカウンターに屈しました。この辺は手応えを得つつも、攻撃時のリスク管理で課題が見つかったのでしょうか
これもやっぱり配置の問題になってしまうんですけど、どうしても1トップで後ろに3枚いるということでアタッキングサードに入る時に人を割きづらい。そこでボールを持っているけども、崩しきれないっていう現象が生まれてしまったかなと分析してます。
――第4節は球際の弱さが目立ち、続く最終節はチームに元気がなかった。直近2試合は第3節・第5節の敗戦とは意味が違うのではないでしょうか ※第5節は第4節より前に行われた
最終節にいくにつれて戦術というよりは自己肯定感が得られなかったので、思い切ってプレーできなかったというのが本質的な原因だったと思ってます。
見る人を楽しませるリスクを冒すアクションを
――国士舘大学戦のあとに「サッカーは11対11の”闘い”だ」という発言がありましたが、そういったマインドは早慶戦にも通ずるものがあるのではないでしょうか
そうなんですよね。ボールを大切にするっていうことと、相手陣地にリスクを冒して入ってシュートを打つ、というのは一見相反するようなことなんですけど、本来の目的っていうのを見失ってしまうとボールが前に進まなくなってしまうところはあったので、やっぱり根底には”闘い”だと。相手の嫌がることをしなければいけない、というところをもう一回立ち返ってみんなに伝えたかったですね。
――4連敗中の全試合で序盤に先制点を奪われている特徴がありますが、伊藤監督はこの傾向をどう分析されていますか
先制点を取られたら七割が負けるというデータが世の中にも出てますし、決して「先制点を食らってもいいよ」とは言ってないですけども、ボールを大事にするというゲームプランの中で失点しない事とボールを大切にするっていう事の両方を天秤にかけた時に、やはり失点しないっていうのが上位概念にあると思っています。ただ我々はボールを大事にするっていう方が勝ってしまっていて、そこの判断基準がチームとして統一できない。そういう時に失点を食らってるなというのは分析して感じてますね。
――いまチームで意識統一をするというお話がありました。定期戦は監督の声が届きづらく、事前のゲームプランの周知が大切になってくるのではないかと思います
本当に全く通らないです(笑)これに関しては徹底して準備していきたいと思います。
――PK戦の末に2回戦で敗れた皇后杯。同じように先制されるも、後半に追いつきました。これは1つ、4連敗中の試合展開の流れを止めるキッカケになりそうですか
あの試合追いついたことは評価しています。ただやっぱり先制点を奪われている事実は変わってないので、そこを改善しないと大学リーグや早慶戦でも苦しくなると思うので、まずはそっちを解決したいと思います。
――では、いま重点的に取り組んでいることがあれば教えてください
今はアタッキングサードでの崩しのところを徹底してやっていて、リスクを冒すとかボールホルダーを追い越すとかオーバーラップ・インナーラップと、見る人を楽しませるようなリスクを冒すアクションをいま練習しています。
忘れかけていた部分を思い出した
――話は変わりますが、先日、指導者B級ライセンスの前期研修合宿を終えられたとお聞きしました。そこで何か感じたことはありますか
あ、そうなんです(笑)僕はゲームモデルとか戦術的なところに走りがちだったんですよ。ただやっぱりJFA(日本サッカー協会)の講習なので本当にサッカーの原理原則、本質とは何かというところを改めて学ばしてもらって、僕が忘れかけていた部分を思い出させてもらいました。
――それは、他の受講者からの刺激もあったということですか
本当に色んな関係者の方、若い世代の指導者たちとか色んな方と関わり合えました。
いよいよ歴史の変わる瞬間っていうのが訪れる
――早慶戦まで2週間と少し、いよいよだなという実感はありますでしょうか
そうですね。もうみんなの中でも早慶戦という言葉が節々に出てくるようになりましたし、運営面でも色んなところで水面下で動いてくれてる人もたくさんいます。レギュラー争いもユニバーシアードで工藤もいない中、誰がそこに入るかとか怪我人も戻ってきたりだとか、今は色んな競争が芽生えていてチームとしては良い状況だと思います。
――監督として3回目の早慶戦ということで、試合展望などもイメージしやすかったりするのでしょうか
去年の早慶戦はセットプレー三発でやられてしまい、後半はボールを持つシーンも増えて、まあ今までの早慶戦とは少し違った形を見せられたのかなと思ってまして、そういう意味では今年は去年の経験を生かして前半からしっかりとボールを握ろうと思ってます。
――伊藤監督が就任してからの2戦は流れの中での失点が0です。悔しいところがあるのではないですか
そうなんですね(笑)うーん、なのであんまりやられたっていう感覚は無いというか、”やれる”という自信の方が今も強いですね。
――早慶戦という独特の舞台は、関東リーグとはまた別の戦いになるかと思います。この苦しい時期に定期戦を迎えることはチームにとってプラスに働くのでは
おっしゃる通り、早慶戦は別物で直近何試合の成績とか関係なく本当にプライドとプライドのぶつかり合いだと思ってるので、そこにはあんまり不安はないですね。
――今季の早稲田も一部で首位争いをしている強敵です。先程、「今季は前半からボールを保持して」という言葉がありましたが、具体的にはどのように戦いたいとお考えでしょうか
やっぱり先程言ったように先制点というのがカギになると思いますし、後半追い上げたけど頑張ったけど負けちゃったっていう展開は去年で十分だと思ってるので、立ち上がりから圧倒できるようなサッカーをしたいと思っています。
――定期戦初勝利の瞬間を見ようと等々力に訪れる方々に、熱いメッセージをお願いします!
本当に三度目の正直ということで、いよいよ歴史の変わる瞬間っていうのが訪れると僕は思っています。ぜひ生でその目で我々のサッカーを楽しみ、そして一緒に応援して、最後に感動を分かち合って頂ければなと思います!
――お忙しいところ貴重なお話ありがとうございました!
第18回早慶女子サッカー定期戦
7/12(金)15:30Kickoff @等々力陸上競技場