【神宮塾生動員プロジェクト】野球部×應援指導部 「早慶戦文化」を取り戻すために(前編)

應援指導部

神宮球場への塾生の動員を増やすため、野球部と應援指導部が「神宮塾生動員プロジェクト」を立ち上げた。早慶戦という文化を肌で感じている両部員の取り組みや理想像に迫る。

 

発足

「早慶戦が行われていることは知っている」、「一貫校の行事として見に行ったことはある」。このような塾生は多い一方で、自主的に応援に行く学生は年々減ってきている。特にコロナ禍で急激に減少し、早慶戦という文化が失われつつある。この状況を打破するために、野球部と應援指導部が「神宮塾生動員プロジェクト」を立ち上げた。企画・実行段階から両部が合同で行う画期的なプロジェクトだ。

演奏する應援指導部員と盛り上げる野球部員

メンバーは、野球部からマネージャーの河野陽波(政3・慶應女子)さん、田村早絵(理2・慶應NY学院)さんの2人、應援指導部から吹奏楽団のT(経3・慶應)さん、チアリーディング部のK(総3・慶應湘南藤沢)さんとS(政3・慶應湘南藤沢)さんの3人。さらに應援指導部元三将の乃坂龍誠(R5政卒)さんをはじめOB・OGも巻き込んでいる。

河野さんは慶應女子高時代にチアリーダーとして満員の早慶戦で応援した経験があり、「その時の早慶戦に近づける、さらには越していけるように頑張っていきたい」と語った。Tさんは、部内の担当者や他団体と野球部をつなぐことが自身の役割だと話した。メンバーは全員一貫校出身だが、慶應NY学院高出身の田村さんは早慶戦について「内部生ばかりが盛り上がっていて遠ざかってしまう一面もある」と感じており、「大学から入った層も引き入れられるような伝え方を積極的にしていきたい」と多くの塾生に届く方法を模索している。各メンバーがそれぞれのバックグラウンドや立場から、プロジェクトに貢献したいと意気込んでいる。

 

施策

このプロジェクトでは事前告知から試合当日まで、動員に向けての「流れ」を作ることを目標としている。その中でも中心となる取り組みが公式ラインの作成や校内でのチケット販売だ。自主的に行く塾生が少ないことやチケットの手配が難しいという課題を解決するため、キャンパス内での対面形式・SNS等のオンライン形式双方での事前周知活動を強化し、チケットを団体ごとに売るなどして塾生の動員を図る。そしてTシャツを作成し、スタンドカラーを制定することで当日の試合も盛り上げる。野球部・應援指導部という2軸で進めているため、幅広い施策に挑戦できるようになった。

一方で様々な属性の学生がいるため、一つのアプローチの掛け方では効果的に周知できないことや、多種多様な関係者がプロジェクトに参加している中で、同じベクトルに進んでいかないといけないことが難しさであるとTさんは言う。さらに、Sさんは「時間がない中ですべてを一から見つけて手探りでやっていかないといけないということ」が課題だと述べた。応援も動員もノウハウがなければ早慶戦をサークルの新歓に使うという文化も継承されているか分からない。この3年間で失われたものは大きい。それでもSさんは「その分やりがいもある」と前を向いている。

このようなプロジェクトとしての活動はもちろん、河野さんは「まずは優勝したい、その上で早慶戦が優勝決定戦になれば」と野球部としての使命も感じている。Kさんも應援指導部員として「来てくれた塾生の応援を先導するのは私たち、最終的に野球部に勝ってもらうということが野球サブ(野球応援担当)としてもプロジェクトのメンバーとしてもゴールだと思う」とプロジェクトによって塾生を動員できた先の景色も見据えている。

 

文化

「春だったら新入生が初めて「慶應」を感じられる場所、秋で言えば卒業していく人たちの最後の共通の思い出」(田村さん)。早慶戦は「慶應で良かった」と感じられる場所だ。また、Kさんは卒業後についても「慶早戦に行けば誰かに会える、ずっと会えていなくて連絡を取れていなかった人でも会えるかもしないという場」にしたいという思いを抱いている。そんな「共通の想(おも)いを全員が持って集える場所」(Tさん)である応援席が復活し、本来の姿が神宮球場に帰ってくる。途絶えかけた文化が再び蘇る。

そして両部にとって早慶戦は特別な試合だ。昨秋、勝ち点を取れば優勝という状況の中、早大に2連敗して涙をのんだ野球部。観客と共に選手に思いを届けるため、野球のルールから向き合い直し、選手目線での応援を追及している應援指導部。死に物狂いで努力してきた部員の思いが詰まっているからこそ、ドラマが生まれる場所であり、そこには野球を知らなくても慶大生なら楽しめる空間が広がっている。

慶大生が一つになって応援する

早慶戦という両校が世界に誇る文化に、満員のスタンドは必要不可欠だ。5月の早慶戦ではどんなドラマが待っているのだろうか。その舞台を作り上げるのは神宮球場に足を運ぶ塾生一人一人の存在なのだろう。

 

(記事:長沢美伸)

 

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