【ソッカー(女子)】プロに進む者として 組織のためにこだわり続けた主将/4年生卒業企画「光るとき」 No.37・小熊藤子

ソッカー女子

 25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第37回となる今回は、ソッカー部女子の小熊藤子(環4・山脇学園/スフィーダ世田谷ユース)。下級生の頃からDFラインの大黒柱として活躍した小熊。WEリーグ・RB大宮アルディージャWOMENに進む彼女が、こだわり続けてきたものとは。

 藤の花が美しく咲き乱れる頃。小熊は生を受けた。2人の兄がおり、3人兄妹の末っ子。兄たちの影響を受け、気がつけばサッカーを始めていたという。

 幼い頃から優れたプレイヤーで、中学時代は現WEリーグにトップチームがあるスフィーダ世田谷のジュニアユースに入団。中学生ながら高校年代の試合に出場するなど、高いレベルでプレーしていた。高校もスフィーダのユースに進んだが、高校卒業のタイミングでサッカーには区切りをつける。当初はそう考えていた。しかし、高校2年生の頃、コロナ禍もあり思うようにプレーすることができず。物足りなさを感じ、サッカーを続けるという選択肢も出てきた中で、高校3年生の全国大会で3位に輝く。そこでようやく、高校卒業後もサッカーを続ける決断を下した。

 慶大を目指したのは、スフィーダのトップチームにいたソッカー部のOGたちの人間性に惹かれたことが大きかった。「自分もこんなかっこいい大人になりたい」。地道に重ねてきた勉強と、小さい頃から意識していたスケジュール管理が功を奏し、チームでハードな活動を続けながら合格を果たした。

 この時はまだ、プロに行くというプランはまるでなかった。大学を卒業したら、サッカー人生に終止符を打つ。そう考えていた。

 高校まではクラブチームに所属していたため、慶大で初めて部活動を経験した。準備や試合運営を主体的に行う環境。組織のために率先して動く仲間たちの姿を見て、自分の至らなさに気づかされたルーキーイヤーだった。プレー面では存在感を発揮し、センターバックのレギュラーとなった。対人守備の強さやロングフィードを武器に後方からチームを支えたものの、勝利もたらすことは容易ではなかった。

 2年目。小熊の取り組みの質は変わっていった。組織のために戦うこと。それが原動力となっていった。大好きな4年生を笑顔で送り出すために全力を尽くした。この年、すでに絶対的な存在となっていたが、チームの結果は伴わず。苦しい1年となった。

 副将に就任した3年目。組織のために戦う気持ちは、より強くなっていった。そんな中で負った肩のけが。リーグ戦は前年までの半分程度の出場試合数にとどまった。「副将なのにピッチに立っていない自分が許せなかった」。この年も勝てない日々が続き、サッカー人生の中で最も苦しい1年となった。しかし、このけがは大きな転換点となった。肩の手術をするべきか否か。日々考える中で、自分のサッカーへの想いに気づかされた。「サッカーを続けたい」。それは、大学サッカーでの残りの時間を全うし、そして、その先もプレーし続けたいという想いの芽生えだった。

 最高学年となり、幹部を決めるミーティングで小熊は主将に立候補した。高校まで主将を務めた経験はなかった中で、その決断を下した背景には、同期の姿があった。度重なる故障に見舞われても、決して諦めずに戦う守部葵(環4・十文字)。常に万全の準備をして、ピッチに立つ者の使命を示し続ける坂口芹(総4・仙台大附明成)。“キーパー転向”という決断を下し、努力を重ねる中村美桜(理4・慶應湘南藤沢)。チームのために戦う同期がいる。そして、その同期のために貢献したい。

 組織のために戦う。入部当初はなかったその気持ちが、小熊を変えた。ミーティングの末、小熊は主将となった。

 例年、ソッカー部女子はチームスローガンを決める。話し合いは4年生が主導して行う。小熊ら4年生は、チームに必要なことが「こだわる」ことだと導き出した。練習で一本一本のショートパスにこだわり、どんなボールスピードで蹴るのか、相手のどちらの足につけるのか、厳しく声をかけ、要求し合う。日常生活やピッチ外の仕事も、勝利のためには一切妥協しない。小熊が率先して取り組んだ「こだわる」ことは、チームに伝播していった。

 主将になったタイミングで、プロを目指すことを決心した。黄大城監督に伝えられたことがある。「プロとしての覚悟を見せ続けろ」。小熊は自らの姿勢でチームをけん引することを決めた。練習での取り組みにとどまらず、食事のコントロールや身体づくりなど、ピッチの外でもチームの手本となっていった。

 チームのサッカーは変わっていった。もとより得意としていたパスサッカーは、精度に磨きがかかった。徹底したショートパスへのこだわりが、大きな成果として現れたのだ。また、小熊がもとより兼ね備えていた対人の強さに加え、ディフェンスリーダーとして仲間を統率する能力が日に日に向上していき、チームの守備力も上がっていった。リーグ戦では、破竹の13連勝を達成。それまでの3年間、最大連勝数は3だった。間違いなく、主将となり、そしてプロを目指す小熊の姿がチームを変えた。

 小熊が入部して以降、チームは毎年“1部昇格”を目標としてきたが、3年間手は届かなかった。最終学年で、ついにそのチャンスがやってくる。最終節。勝てば、1部昇格が決まる。そして、勝てば4年生は大学ラストゲームとなる。小熊は先発出場し、チームをけん引した。「とにかく楽しもうと思っていた」。後半の試合運びは圧巻だった。一糸乱れぬ連携。正確なパス回し。ボールを奪われた後の素早い切り替え。こだわり続けてきたことが存分に発揮された一戦だった。8―1の大勝。入部以降、小熊が追い求め続けてきた、しかしなかなか掴めなかった”勝利”で、4年間を締めくくった。「全員で喜べたのはすごく嬉しかったと同時に、このメンバーでするのは最後なんだと思うとすごく悲しかった」と振り返る。名残惜しさは、最高の組織をつくったことの証だ。背中で語る主将と、その背中を支える仲間。チーム小熊は、これ以上なく美しいフィナーレを飾った。

 大学ラストゲームを終えたのち、内定先のRB大宮アルディージャWOMENに合流してトレーニングを積んでいる。小熊には、目標を実現させる力がある。必ずや、プロの舞台で成功を掴んでくれるはずだ。

 小熊ら4年生がのこした1部の舞台。TEAM2026が勝利へのこだわりを受け継ぎ、戦い抜いてみせる。

(取材・記事:柄澤晃希)

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