【レスリング】岡澤ナツラ 決勝は悔しい敗戦も成長の銀メダル 尾﨑はライバル対決完勝で決勝進出 瀧澤は世界王者に惜敗で3位決定戦へ/令和8年度 明治杯全日本選抜レスリング選手権大会 3日目

レスリング

 明治杯大会3日目。フリースタイル86kg級の慶大・岡澤ナツラ(法2・慶應)は、初のシニア日本一とシニア世界選手権を懸けた決勝に出場した。世界ランキング2位の石黒隼士(自衛隊体育学校)に対し、岡澤らしいスピード感のある攻撃やカウンターを繰り出すも、1―12のテクニカルスペリオリティ負けとなった。日本一と、今年のアジア大会、シニア世界選手権への選考はならなかったが、自身シニア全国大会最高成績の銀メダルを獲得した。

 女子レスリング62kg級の慶大OG・尾﨑野乃香(令8環卒)は予選を突破すると、準決勝でライバル・元木咲良(育英大学助手)を8―2のポイント判定勝ちで下し、翌日の決勝に進出した。決勝の相手は尾西桜(日本体育大学)。尾﨑は優勝すると、今年のアジア大会とシニア世界選手権の出場が決まる。準優勝の場合、決勝当日に行われるプレーオフで尾西と再戦し、勝てば今年のアジア大会とシニア世界選手権の出場が決まる。

 フリースタイル74kg級の慶大・瀧澤勇仁(経2・慶應)は、初戦の相手が計量失格で準々決勝に進出。世界王者・青柳善の輔(クリナップ)相手に粘り、終盤に4点を返すも、4―7のポイント判定負け。翌日、自身初のシニア全国大会メダル獲得を目指し、3位決定戦に出場する。

 

2026年5月23日 @東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館

【試合結果】

令和8年度 明治杯全日本選抜レスリング選手権大会 3日目

女子レスリング62kg級

予選

尾﨑野乃香(慶應義塾大学)[VPO 6:00=5-4]稲垣柚香(自衛隊体育学校)

予選

尾﨑野乃香(慶應義塾大学)[VSU 2:49=11-0]岩澤希羽(秋田ノーザンハピネッツ株式会社)

準決勝

尾﨑野乃香(慶應義塾大学)[VSU 6:00=8-2]元木咲良(育英大学助手)

 

フリースタイル74kg級

準々決勝

瀧澤勇仁(慶應義塾大学)[VPO 6:00=4-7]青柳善の輔(クリナップ)

 

フリースタイル86kg級

決勝

岡澤ナツラ(慶應義塾大学)[VSU 2:25=1-12]石黒隼士(自衛隊体育学校)

 

 パリ五輪で女子68kg級銅メダルの尾﨑野乃香(令8環卒)。現在は慶大コーチとして活動している。この日は本来の階級の62kg級に出場した。まずは3選手による総当たりの予選を戦い、上位2名に入れば準決勝に進出する。

 予選の初戦は稲垣柚香(自衛隊体育学校)と対戦。稲垣の堅守に苦戦し、なかなか攻めることができずに第1ピリオドを0―2で終える。第2ピリオドもステップアウトで1点を追加され、残り57秒で0―3と離されるが、直後にテイクダウンからのローリングで一挙4点を奪い、逆転する。終了間際にステップアウトで1点を返されて4―4となり、試合を終えたが、ビッグポイントで尾﨑が勝利した。

 2戦目は岩澤希羽(秋田NH)と対戦。試合開始30秒で相手の背後を奪い2-0とする。さらに相手の足を掴んで回転技を決め切り、6-0とリードした展開に。押し出しで7-0とすると、さらにその後二度相手の背後を取り、第1ピリオド終了間際に11-0のテクニカルスペリオリティ勝ち。難なく準決勝進出を決めた。 

青のシングレット・尾﨑

 準決勝で待ち受けていたのは宿敵・元木咲良(育英大助手)。元木とは昨年の明治杯でも対戦。決勝では惜しくも3-3のラストポイントで敗れ、その後に行われたシニア世界選手権への出場権を賭けたプレーオフでも試合時間残り0秒17というところで逆転を許し、世界選手権への切符を逃した。さらに、尾﨑は昨年の天皇杯でも決勝で元木と対戦。こちらも接戦を強いられたが、3-3のラストポイントで見事ポイント判定勝ち。女子レスリング62㌔級にて天皇杯二連覇を成し遂げた。

 因縁の元木との準決勝。序盤は両者譲らぬ展開が続く。第1ピリオドを0-1で折り返し、迎えた第2ピリオド。開始直後に相手の隙を突く高速タックルで2点を奪うと、足を掴まれながらも上手く対応し、二度背後を取り6-2とする。さらに、もう一度足を掴まれたところを振り払って相手の体勢を崩し、フォールを狙うもここは惜しくもフォールは決め切れず。しかし、試合時間残り約1分で8-2と尾﨑優位の展開に。勝ち切りたい尾﨑は相手の攻撃を巧みに交わし、そのまま試合終了。8-2のポイント判定勝ちで元木を破り、決勝進出を決めた。

赤のシングレット・尾﨑

 昨年度明治杯はけがで出場が叶わなかった瀧澤勇仁(経2・慶應)は、フリースタイル74kg級に出場した。初戦は相手の計量失格で準々決勝に進出する。準々決勝は昨年の世界選手権フリースタイル70kg級王者の青柳善の輔(クリナップ)と対戦。序盤から積極的に攻めるも圧倒され、第1ピリオドを0―5で終える。

青のシングレット・瀧澤

 第2ピリオドも主導権を握られるが、最少失点に抑え続けると、残り39秒、タックルからステップアウトに持ち込み、1点を返す。その後も2度のステップアウトと青柳の場外逃避もあり、残り12秒で4―7とするが、惜しくも及ばず敗戦した。

 翌日、シニア全国大会初のメダルを懸けて3位決定戦に出場する。相手は山下凌弥(日本体育大)。昨年8月のインカレでは瀧澤が1―6のポイント判定負けを喫している。

 前日の大会2日目の準決勝で、昨年度天皇杯2位の髙橋夢大(三恵海運株式会社)から大金星を挙げたフリースタイル86kg級の岡澤ナツラ(法2・慶應)。この日は石黒隼士(自衛隊体育学校)との決勝に臨んだ。岡澤はすでに今年8月のU20世界選手権への出場を決めていて、この明治杯で優勝すれば今年9〜10月のアジア大会、10〜11月のシニア世界選手権への出場も決まる。

 開始15秒、タックルから石黒を場外際に追い込むが、返されて2点技で先制されると、さらに2点を失う。その後、投げを狙ったところで投げ返されて2失点。バックを取ってカウンターで1点を返すが、1―6となると、最後はテイクダウンから連続ローリングで一挙6失点。1―12で敗れ、自身初のシニア日本一には届かなかった。

 今年のアジア大会、シニア世界選手権の選考は逃したが、今年度明治杯優勝者の石黒、昨年度天皇杯優勝者の高谷惣亮(拓殖大学職員)がコンディション等により両大会に出場しないことを表明した場合、明治杯2位の岡澤に出場権が回ってくる。

 翌日の大会4日目(最終日)は、フリースタイル74kg級の3位決定戦に瀧澤、女子レスリング62kg級決勝に尾﨑が出場する。尾﨑は優勝した場合、今年のアジア大会とシニア世界選手権への出場が決まる。準優勝となった場合は、アジア大会とシニア世界選手権を懸けた尾西とのプレーオフに臨む。

 試合後の岡澤は涙が止まらず、表彰台でも笑顔はなかった。しかし、昨年8月のインカレからオリンピック階級の86kg級に転向し、努力を重ね、今大会準決勝で挙げた髙橋からの勝利は、間違いなく大きな成長の証だ。メダルの色も、昨年度天皇杯の銅から一つ良くなった。吾田鉄司監督が話すように、12月の天皇杯でリベンジを果たし、さらに良い色のメダルを獲得してほしい。今大会の岡澤の健闘を、いちファンとして心から称えたい。

 

【インタビュー】

尾﨑(囲み取材から抜粋)

・(準決勝について)前回(昨年度天皇杯)のような2点や1点の差ではなく、大差をつけて勝つことができたのは収穫でした。

・元木選手は最初からプレッシャーと力強さで来て、やはり力が強いなという印象で、そう思いながらも体がしっかり対応していましたし、心も「やられているな」という感覚ではなく、「今はしっかり耐えていけるところでいこう」という意識でいたので、後半戦すごくいい流れに持っていけたと思います。

 

岡澤

――今感じていること

(石黒は)トップクラスの相手で、練習したことはあるんですけど、実際に試合して差は歴然で、すごく悔しいです。逆にこれからの練習を見直す糧にもなったので、とてもいい経験をこの大舞台でさせてもらったことに感謝しています。

――良かったところ

最初から受け身にならずに、自分から展開を起こそうとしたことは良かったと思います。カウンターですけど、点数を取れたことも良かったと思います。大体相手のペースに呑まれちゃったので、良いところは少ないですけど、挙げるとしたらそのあたりですね。

――課題点

86(kg級)にして約1年経つんですけど、まだトップクラスの人と比べると小さい方なので、ただ単に大きくするんじゃなくて使える筋肉を増やしたいですし、それに合う戦い方も見直さなきゃいけないですし、今まではカウンターレスリングと言うか相手を上手く使ってレスリングやってたんですけど、一筋縄では86キロのトップレベルには効かないので、一からレスリングスタイルを見直していきたいと思います。

――昨日を含め、今回の明治杯はどんな大会になったか

ほんとうにいい経験をさせてもらいました。準備の段階から作戦を立てたりとかして、ただ戦うだけじゃなくて、6分間のために費やしてきたプロセスが大事なんだなというのが得られる時間でしたし、もっと時間をより濃い、質の高いものにしていけば、少しずつ差も埋まるかなと思える大会でした。

――来月にはリーグ戦、8月にはU20世界選手権が控えている

リーグ戦は団体戦なので、自分がチームを引っ張る存在として、昨年は入れ替え戦で負けて2部に残ってしまったので、今回は上がれるように。U20は最初で最後のアンダー20の世界選手権で、アンダー17の時は左手を骨折して不甲斐ない結果になってしまったので、今回は準備万端でこの大会の悔しさも生かして優勝できるように頑張ります。

 

吾田監督

――岡澤選手の決勝戦を振り返って

世界の壁を感じたというところだと思いますが、非常にいい経験をできたと思います。

――岡澤選手にどんな言葉をかけたいか

準決勝で勝った相手は半年前に歯が立たなかった相手なので、同じように今日負けた相手にも半年後必ず雪辱を果たしてくれると信じています。今まで通り、引き続き頑張ってほしいです。

 

(取材:柄澤晃希、塩田隆貴)

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