5月10日(日)、三田体育会は東京・多磨霊園の小泉信三元塾長の墓前に生花を供えました。
三田体育会は慶應義塾体育会41部の各OB、OG団体により構成され、体育会の発展に寄与することを目的としている団体です。
慶應義塾体育会は明治25年(1892)5月15日、福澤諭吉先生ご次男の福澤捨次郎初代会長のもと、柔術(現柔道)、剣術(現剣道)、弓術、操練(現器械体操)、徒歩(現競走)、野球、端艇の7部で創立しました。
小泉信三元塾長は福澤先生の「先成獣身而後養人心」との教育方針を踏まえ、慶應義塾体育会の発展にご尽力されました。自ら庭球部の部長を務め、「練習ハ不可能ヲ可能ニス」という有名な言葉を残されました。
また1943年(昭和18年)10月16日の出陣学徒壮行早慶戦(通称「最後の早慶戦」)は小泉元塾長の「戦地に赴く学生のために野球早慶戦を開催したい」という思いをきっかけに開催されたものです。この功績が評価され、1976年(昭和51年)には野球殿堂入りを果たしました。この出来事は2008年(平成20年)に映画化もされ、多くの人々に感動を与えました。
墓参後、今年4月から三田体育会会長を務める奈藏稔久さん(空手部OB、昭和44年卒)にお話をうかがいました。(以下太字は奈藏会長のお話)
小泉先生はスポーツが与える3つの宝というすばらしい言葉を残しておられて、1つ目が「練習は不可能を可能にする」、2つ目が「フェアプレイの精神」、これはあくまでもルールに則った中で、徹底的に戦う、戦いが終わったら敵ではなく相手はコンペティターであり、競争者ではあるけれども、エネミーではないという考え方です。「果敢なる闘士であれ、潔い敗者であれ」ということですね。そして3つ目が「スポーツは生涯の友を生む」、一緒に戦った友、そして自分の相手方とも生涯の友になれる。スポーツは素晴らしい、ということを体育会70周年記念のスピーチの中でお話しされました。それを当時高校生だった私は記念館で聞き、大変感激し、それを現在まで連綿と体育会の精神的バックボーンとして受け継いできました。
我々三田体育会としてはこれをもう一度再確認する、温故知新。そしてそれを現役の学生さんに体現していただきたいと思います。それは中期的に見れば、2017年の125周年や2020年の東京オリンピックやパラリンピックにつながっていく、スポーツというのは人間形成の1つの文化だという考え方を我々も現実にもう一度再確認し、現役の皆さんに広めたいという強い思いの表れが今日の小泉信三元塾長の墓参ということです。
小泉元塾長が残された3つのお言葉というものは、スポーツにおいてだけでなく、勉学など様々なことに通ずるのではないかと思います。私たち塾生も今一度「故きを温ねて新しきを知る」ことが必要なのではないでしょうか。
過去から現在に至るまで慶應義塾体育会には小泉元塾長の精神が脈々と受け継がれています。この精神を後世にどうつなげていくかも、私たち塾生に与えられた課題と言えるでしょう。
慶應スポーツ新聞会はこれからも慶應義塾体育会への取材を精力的に行っていきます。私たちも慶應義塾体育会と同様、故きを温ねて新しきを知り、日々の取材にまい進していきたいと思います。
最後になりましたが、今回このような貴重な機会をくださった三田体育会会長の奈藏稔久様、副会長の對馬好一様をはじめ、多くの関係者の皆様にこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。
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