慶大は昨季の関東大学リーグ1部で最下位に沈み、10年ぶりの2部降格という屈辱を味わった。「再建」を期して2月から始動した新チーム。2部優勝、昇格を目指し、関東リーグ開幕に向けて牙を研いでいる。ケイスポでは、新チームの中心を担う選手、スタッフに意気込みを語ってもらった。
今回は番外編として、小山内慎一郎(総1・青森山田)、篠原新汰(総1・FC東京U-18)の2人の新入生のインタビューをお届けする。高校時代、それぞれのチームで日本一を経験した2人のスター候補がソッカー部に加入した。新たな舞台に飛び込んだ彼らは今、何を感じているのだろうか。
(取材日:3月12日)
――新入生ということで自己紹介をお願いします
(小山内)青森山田高校から参りました、慶應義塾大学新1年生の小山内慎一郎です。……。(篠原)何かないの?一言(笑)。
(小山内)まだ慶應義塾大学に入学してないんですけど、今からでもソッカー部の勝利に貢献できるように頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
(篠原)FC東京U-18から来ました、新1年の篠原新汰です。よろしくお願いします。自分はこの慶應に早慶戦を見て憧れて入ってきて、早慶戦に出て必ず勝ちたいっていう思いと、去年の結果を受けて、まずは今年のチームの目標である「1部昇格」っていうのにしっかり自分の力を出し切って貢献したいなというふうに思っています。
――慶大ソッカー部の練習にはいつから参加されていますか
(篠原)えっと…2月の半ばくらい?(小山内) 2月の6日とかじゃなかったっけ?
(篠原) 6日とかだっけ?全体のシーズンインからなので1ヶ月くらいですね。
――もう練習には慣れましたか
(篠原)そうですね、慣れてきました。(小山内)そうですね。
――お互いの印象を教えて下さい
(小山内)プレミアリーグとか高校のリーグ戦通じて、FC東京とは毎年毎年本当に良い試合をさせてもらってて…。
(篠原)(笑)。(小山内)その上で相手チームに新汰がいたので。それで入試の時とかでも新汰とは色々連絡取ったりして、結構同期の仲には頼ってます。
(篠原)そうですね、ちょっと違うこと言おうかな(笑)。えっと、慎は青森山田っていう伝統あるチームのキャプテンを務めてて、すごいリーダーシップもありますし、まあでもグラウンドではお茶目な一面を全開にして、なかなかキャラの強いやつだなというふうに思ってますけど(笑)。同じセンターバックっていうポジションの中で、プレー中もプレー外でも良いコミュニケーションを取れてるかなっていうふうに思います。
――結構仲が良いんですね
(篠原)仲良いですね。(小山内)そうですね。
――新入生同士での交流はありますか
(篠原)そうですね。AチームとBかCが大体6時半練習とかで、隣になってる時は「この後飯行こうぜ」とか。まあまだ入学してないのでそんな感じですけど、そういう交流はありますね。あとはLINEで話したりとか。直接会う機会がまだ少ないので…。(小山内)少ないですね。
(篠原)これからもっと一般入試組も入ってくると思うので、学年としても仲良くやっていきたいですね。
――4月から大学生になりますが、サッカー以外で楽しみにしていることはありますか
(小山内)楽しみにしていることだと、僕はSFCに入るんですがその授業が先輩から楽しいって聞くので、楽しみにしていることだと大学の授業もあるんですけど、不安も色々あるので…。――不安と言うと
(小山内)例えばまあ、単位が取れるかなとか…(笑)。(一同)(笑)。
(小山内)そういう不安もあるので、そういうところもしっかりうまくやりながら楽しんでいきたいと思います。
――篠原選手はいかがですか
(篠原)高校時代に比べて、大学は自分の時間が本当に増えるなっていう印象があるので、授業ももちろんしっかり単位落とさないようにやりたいなというふうには思いますけど、まあ授業以外のところでも自分の趣味のことだったりとか色々なことに時間を使えると思うので、人間関係も含めてそういうところを有効にやっていきたいなと思いますね。――どんな趣味をお持ちなんですか
(篠原)自分の趣味はですね、本を読むことと、あと本当に人と関わるのが好きで。読書が趣味とか言っておいて人と関わるのが好きっていうのも何か変な話なんですけど、本当に人と何かをしてるのが好きなので、色々なところに旅行に行ったりとか、「夜ご飯一緒に行こうぜ」とかそれだけでも良いですし、まあ人と喋ることは本当に好きですね。色々なコミュニティを広げたいなって思います。――小山内選手は名門・青森山田高校の主将としてチームを率いていましたが、その経験を通じて学んだことがあれば教えて下さい
(小山内)僕がキャプテンに就任する前の年に全国大会2冠を達成して、その次の年の青森山田のキャプテンということで、色々なプレッシャーもあった中でシーズンがスタートして、やっぱり王者として見られるからこそ結果は残さないといけないとか勝たないといけないとか、そういったプレッシャーもあったんですけど、その中で厳しい時にたくさん仲間が支えてくれたので、高校時代に思ったことはやっぱり仲間の大切さっていうのが1番だなと。この慶應義塾大学のソッカー部の先輩方も本当に優しいですし、たくさんのサッカーのコミュニケーションだったり様々なコミュニケーションを取ってくれるので、素晴らしいなと思ってます。
――篠原選手は昨年のクラブユースサッカー選手権日本一に主力DFとして大きく貢献しましたが、ユースでの活躍はどのような経験になっていますか
(篠原)そうですね。自分たちの1個上のユースの代も全国で2冠を達成して、その次の年、まあ青森山田高校と同じようなシチュエーションの中で、自分たちは前年に達成できなかった3冠、高校年代の3冠を目標にやってやろうっていうふうにシーズンに入って、今年の自分らの代も2冠で冬のトーナメント戦を取れなかったんですけど。その勝負にこだわるっていう中でどれだけ1つ1つのことにこだわれるかって、それはもうピッチの中のプレーも含めてですけど、ピッチ外のいつもの行動からどれだけその週末の試合に向けてこだわれるかっていうそのこだわりの部分を、勝手なイメージですけど高校って結構質もそうですけど運動量とか量を求めるイメージがあって、その量に対してJユースは質で覆いかぶさっていこうっていうふうに話をしていたので、1個1個のこだわりの部分は大事にしていたかなと思います。慶應のソッカー部でも引き続きそこは自分でもチャレンジしていきたいと思いますし、そういう文化をこのチームに自分から発信して根付かせていきたいなというふうに思ってます。――高校年代トップレベルで活躍するなかで、刺激を受けた選手はいますか
(小山内)同年代だと、高校時代一緒にやってた中村駿太(モンテディオ山形)、郷家友太(ヴィッセル神戸)は本当に素晴らしい選手だなと思いましたし、色々なプロの練習参加会とか日本代表とかに行った時に色々な情報を聞いたりサッカーのこともたくさん教えてもらったので、すごく刺激を受けました。(篠原)自分は同じセンターバックっていうポジションのなかで、相手チームだったんですけど(浦和)レッズのトップチームに今年昇格した橋岡(大樹)選手っていう人がいて、彼は本当に背もあって上も強いし下も強いっていう何でもできるセンターバックで、自分たちのチームからしても、あいつがいたら嫌だなっていう、いるだけで相手に圧をかけられるっていう選手だったので、すごく対戦する時もしない時も刺激になりましたし、常に頭の片隅にいるような選手でした。今彼とは違うカテゴリーでやっているんですけど、今も気にはしていますし、常にライバルというか心の中にいる存在ですね。
――FC東京の久保建英選手とも同じチームでプレーしていましたが、どのような選手なのでしょうか
(篠原) 久保はですね、うまいですね。うまいし、ボールの置き所だったりとかボールタッチの繊細さだったりとか、そういうのはもうずば抜けているし、彼がスペインでやっていたというのもあって、ちょっと日本人離れしたというか、感性も日本人とはちょっと違うなっていう感じはあって、私生活の部分も結構やんちゃなやつだったんで、先輩に対しても全然遠慮することなく来てたし、それが逆にピッチの中でも良いふうに影響していたからこそ、自分らの代でも出たんですけど、カテゴリーや年も関係なく自分のプレーを発揮できるっていう、そこが強みの選手でしたね。――お二人の得意なプレー、ストロングポイントを教えてください
(小山内)僕のストロングポイントはまず、高校から変わらず声を出して戦う姿勢を前面に出すこと、あとはヘディングの部分は見て欲しいところではあります。(篠原)自分もヘディングの部分で、守備では負けないと思ってますし、もちろん攻撃参加の部分でセットプレーでも自分のヘディングは強みになるかなっていうふうに思っています。あとはしっかりゴール前で周りも動かしつつ、チームとして失点をしないためのプレーを選択するっていうことが大事だと思ってるので、それの中心にいられるような選手になろうと思っています。
――高校サッカー、ユースと大学サッカーの違いは感じていますか
(小山内)高校サッカーでもフィジカルが強い人はいるんですけど、それよりもやっぱり大学サッカーの方がフィジカルが強い選手がたくさんいるなという印象を受けました。(篠原)そうですね。自分はJユースから上がってきたので部活っていうくくりが初めてで、学校と一体となってるので、学校を背負ってるっていうそのプレッシャーもあるし、懸ける思いっていうのがやっぱりクラブと同じようにあると思うんですけど、また違った重みで、ましてや慶應は本当に歴史と伝統のあるチームなので、本当にその重みっていうのはすごく感じていますね。
――慶大に進学した理由を教えてください
(小山内)慶應義塾大学を選んだ理由としては、まずはサッカーの部分でプロを目指しているので、サッカーも強いですし、活躍してプロになりたいっていう気持ちもあって。あとは先輩方、松木(駿之介=総4・青森山田)さんだったり北城(俊幸=総3・青森山田)さんだったりが来てるっていうので僕も入学したいなって思ったのが一番の決め手です。(篠原)自分もプロを目指してここに来て、あと高校が勉強もスポーツもやる「文武両道」を掲げている学校(都立駒場)だったので、それで3年間やってきた分、4年間ある大学生活の中で勉強の部分を捨ててしまうのももったいないなというふうに思いました。慶應義塾大学はそこの部分でも両立してますし、常に高いレベルがあるっていうふうに松岡瑠夢(総2・FC東京U-18)くんからも聞いていました。あとは自分が強くなるためにって考えた時にやっぱり早慶戦っていう大きな歴史的な戦いがあって、それに対してのモチベーションというのも自分が実際に見てすごく感じて、本当にここでやりたいなというふうに引き込まれて、早稲田に慶應がずっと負けていて、自分は早稲田に行くより慶應に行って「早稲田を負かしてやろう」って気持ちになったので、慶應を選びました。
――ソッカー部には青森山田出身、FC東京U-18出身の先輩も数多くいると思いますが、目標にしている選手はいますか
(小山内)僕と同じポジションでは、4年生の鴻巣(良真=総4・国学院久我山)さんは本当に全てがうまいと思いますし、リーダーシップだったりとか、色々なセンターバックとしての技術っていうのが本当に素晴らしいので、そこを目標に頑張りたいと思います。(篠原)自分は2個上、新3年生の野村京平(総3・国学院久我山)くんです。野村くんももちろん対人の部分では絶対負けない強いところを持ってますし、あとは人とコミュニケーションを取るのがすごくうまい選手なので、自分もここに入りたてで全然チームに馴染めていない時は、野村くんがすごく「来い」みたいな感じで引っ張ってくれてチームに溶け込めましたし、そういったところもサッカーをする上でも本当に大事なスキルだと思うので、本当に尊敬して見習いたいと思いますし、まあ先の話ですけど、来年新入生が入って自分が先輩という立場になった時に、ああいう振る舞いをしたいなって思います。
――ソッカー部の雰囲気はどうですか
(小山内)やっぱりさっきも言った通り先輩方が優しいし、練習とかの雰囲気もすごく良いので練習していて楽しいですし、私生活も先輩と会話していても楽しいことばかりなので充実してます。(篠原)オンオフがはっきりしている印象があって、グラウンドの外ではみんなで、それこそさっき小山内が言ったように、先輩が本当に優しいのですごく取り込んでくれますし、逆にピッチの中に入ったらスイッチがすぐに切り替わって、厳しいところは厳しくやるし、アイディアがあったらどんどん言うしっていう活発なコミュニケーションもあるので、その切り替えがすごく良いチームだと思います。
――お2人ともプロを目指す上で、大学4年間でどのような選手になりたいですか
(小山内)個人的にはまだまだ足りない部分があって、フィジカルの部分というのは本当に一番劣っている部分だと思うので、そこの部分をしっかり時間をかけて強化したいです。(篠原)自分はもう1年のうちから遠慮することなく関東リーグの舞台で戦える選手になりたいなと思っていて、そのためにはフィジカルの部分もそうですし、技術も判断も全ての部分においてもっとレベルアップしていかないといけないなというふうには思っています。
――関東リーグ2部からのスタートとなりますが、1部昇格に向けて新入生としての役割はどこにあると考えていますか
(小山内)関東リーグ2部でもすごくレベルが高いと思うので、新汰が言った通り1年生でも遠慮することなくどんどん練習でもアピールしていって、関東リーグに出れるように頑張っていきたいと思います。(篠原)2部も間違いなく厳しい戦いになると思いますし、そんなに簡単な相手ではないと思うので、1試合1試合毎週の試合に向けて、シーズンが始まってからでもどんどん個人としてもチームとしてもレベルを上げていかないと戦い切れるリーグではないと思っているので、日々1試合1試合の結果にとらわれることなく積み上げていくことが大事かなと思います。
――今季のスローガンである「リスペクト」について
(小山内)やっぱりシーズンインのミーティングでも話した通り、審判に対しても仲間に対しても指導者に対しても、たくさんの人にリスペクトすることが自分たちの成長につながると思うので、そういう素晴らしい今年のスローガンをもとに1年間で1部に上がれるように頑張っていきたいなと思います。(篠原)リスペクトって本当に大前提の部分だと思っていて、慶應に限らずこうやってサッカーをやっていることが当たり前だなっていうふうに思ってしまったら終わりで、周りに支えてくれる人がいて初めて成り立つスポーツで1人では絶対にできないスポーツなので、そういった周りへの感謝っていうのは常に持ちながらやらなきゃいけないなと思いますし、そういったリスペクトを持った上で、遠慮する方には走らず、自分たちの強みとかはどんどん出していけたらなと思います。
――今季の目標、意気込みをお願いします
(小山内)今年の目標としてはまず関東リーグに出場することが一番の目先の目標なので、それに向けて1日1日大事にしていきたいと思います。(篠原)自分も今年関東リーグに出場して、出場するだけじゃなくてしっかりチームの結果に貢献するっていうのを目指してやっていきたいと思います。
(取材:髙橋春乃 写真:岩見拓哉)