大会前夜の天気からは一転、今年の早慶レガッタは春の陽が差し込む青空の下で開催された。現在、早大に連敗を喫している慶大の対校エイト。両者の実力が拮抗(きっこう)した激しいレースは、わずか0.87秒、1/4艇身の差を制して、見事、慶大が5年ぶりの王座に返り咲いた。
〈メンバー〉
C:梅津貴大(文4・慶應志木)
S:橋本健之介(法3・慶應)
7:亞厂拓海(経4・慶應)
6:朝日捷太(経4・慶應)
5:石田新之介(法3・慶應)
4:赤堀太一(商3・学習院)
3:勝野健(経4・慶應)
2:大下陽士(法3・慶應)
B:野村瑛斗(総3・Claremont Secondary School)
〈タイム〉
1着 慶大対校エイト 12:24.14
2着 早大対校エイト 12:25.01
〈艇差〉
1/4艇身
今大会、慶大が漕ぐのはインコースとなる墨田区側のレーン。早大の10メートル後ろからスタートしなければならないため、序盤に相手の様子を捉えることが難しいコースだ。これに対して彼らは、「両国橋までは自分たちに集中」(朝日捷太=経4・慶應)することを意識したという。
結果として、早大が掲げていた「両国のカーブまでに慶大と水をあけて、波をかぶせる」(船木豪太=スポ4・浜松北)というレースプランを打ち崩すことに成功。900メートル地点では慶大が3/4艇身のリードを奪い、レースの主導権を握った。
しかし、4連覇を掲げる早大も簡単には引き下がらない。彼らに有利な蔵前橋、言問橋でのカーブを利用し、徐々に差を縮め、言問橋通過時点では1/4艇身を先行するなど、確実に慶大を追い詰める。だが、ここでの慶大のコース取りが奏功した。最短のコースに導くことで、早大との差を最小限にとどめ、覇権争いから落ちることは決してない。
両者の実力が拮抗したまま、レースは最終盤に差し掛かった。レートを40まで上げてきた早大が、桜橋をわずかなリードを保ったまま通過すると、最後まで勝敗が分からないレース展開となる。
勝負が決まったのはゴール直前。ラストの漕ぎで慶大が大きく前進し、混戦を抜け出すと、そのまま船首がゴールラインを通過した。レースは、どちらが勝ってもおかしくない大接戦であった。
「(2年前のことが)ちょっとよみがえってきていた」。試合後、朝日がそう話すように、僅差で敗北したおととしの一戦を思い起こすような展開だ。それだけに、喜びもまたひとしおである。
今大会、慶大がつかみ取った勝利。この瞬間を多くの人が待ち望んでいただろう。選手だけでなく、早慶レガッタ開催に向けて尽力してきた主務・マネージャー陣、また歴代のOBたち。中でも、この結果に涙を流す前主将らの姿は印象的だった。そして、彼らがそうであったように、「いつかこの舞台に立ちたい」、そんな風に思った高校生も少なくないはずだ。今大会の勝利が象徴するのは、水の王者の帰還。新たな歴史の幕開けを感じさせる一戦だった。
試合後に行われた会見で、今回の結果について朝日は、「気を抜けば、1秒差というのは簡単に覆ってしまう。これからも頑張りたい」と話した。彼らが目指すのはさらに高み。すでに次の舞台を見据え、端艇部は「日本一」へとかじを切っている。今後の活躍から目が離せない。
(記事:宮崎柚子 写真:慶應スポーツ新聞会)
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