真夏の戸田に小学生から大人まで、慶應生が集まった。8月6日、コロナ禍で中止になっていた塾長杯 慶應義塾 水上運動会が久しぶりに開催された。年齢などによって6つの部門に分かれ、4人1チームとなってボートを漕ぎ優勝を狙うイベントだ。参加賞も用意され、優勝チームには豪華賞品も渡された。200人以上(人数は推定)に「1日ボート部員」の体験を提供した端艇部。その取り組みや思いに迫った。
※写真はすべて慶大端艇部提供
ソフトボール大会が行われていたことに対抗して始まり、今年で26回を数える水上運動会。企画・運営を行ったのは慶大端艇部ボート部員だ。8月に行われたイベントの準備は12月ごろから始め、体育会事務室や慶大への企画書提出や一貫教育校への周知に取り組んだ。本格的に準備が始まったのは5月。準備段階では大変だったことは貫教育校への周知だという。チラシを制作し、自分たちで学校へ行って宣伝する。多くの人々を集めたイベントの裏側には地道な努力があった。
当日も朝6時ごろからセッティングを始め、受付や誘導、記録、補助としてボートに乗る補助コックス、水辺での対応など選手・マネージャーを含めて全員で行い、イベントを盛り上げた。参加した小学生も、部員と一緒に漕いで、一緒に遊んで、ボートの乗り方にも興味持ってくれていたという。「みんなにボート競技の楽しさを知ってほしい」という部員の思いは、みんなに伝わっていた。
水上運動会開催のために中心的になって尽力した浅見悠成さん(経3・慶應志木)は、「コロナで途切れてしまっていたイベントでしたが、久しぶりに開催するとなったときに、来てくれる人がいるんだな」と多くのお客様を前にした感想を語った。その上で、「自分がビラを配りに行った効果がちょっとあったのかなと思うとうれしかった」と、達成感を口にした。井染竜之介選手(経3・慶應)も「学生やOB・OGの方々にたくさん来てもらい、改めていろいろな人に応援されているのだと実感しました」と話してくれた。
「26回も続いているので、コロナで中止にはなってしまいましたが途切れさせたくない」。そして、「塾や応援してくれている人の還元する機会がない。体験会も新入生の時のみで小中高はないですし、そういうのを体験できる機会を提供したい」。水上運動会に懸ける思いを浅見さんはこう語った。ボート部員にできる最大の恩返しは、ボート競技の楽しさ多くの人に知ってもらうこと、そしてボートを始めるきっかけとなる場をつくりだすこと。実際に現役部員の中にも、過去にこの水上運動会へ参加した経験を持つ人もいる。普段部員たちが生活し練習に励む戸田の地でボートに乗るという「1日ボート部員」の場を提供し、人々にワクワクを届けた。同時に部員たちが周囲からの応援を実感する1日でもあった。競技に取り組む選手やマネージャー、それを支えるOB・OGや応援する人たち、未来の端艇部員など、過去・現在・未来をつなぐイベントだったのかもしれない。
来月には全日本大学選手権大会(インカレ)が控えている。マネージャーとして選手を支える浅見さんは「一つの事に向かっていける環境、インカレに向けて意識が高まってきている」と部の雰囲気を教えてくれた。そして井染選手は「水上運動会でもらった活気をインカレに引き継いで優勝したい」と意気込む。残り1か月、全力で漕ぎ切るだけだ。
(記事:長沢美伸)