【アイスホッケー】半世紀ぶり悲願の大金星/第88回早慶アイスホッケー定期戦

アイスホッケー

今年で88回目となる早慶戦は100年以上の歴史を持つ両チームによる毎年恒例の伝統の一戦である。試合は第1ピリオドから両チーム一進一退の攻防の末0-0で終わる。第2ピリオド、早大に先制を許すも芝田光希(経1・都市大付属)がイーブンに戻し、振津青瑚(政4・埼玉栄)の一振りで1点のリードとなる。さらに、第3ピリオドでは開始早々、勝見斗軌(法3・Ontario Hockey Academy)の追加点で突き放すと、返されるもGKの及川寿暉(経4・慶應)を中心とした全員で体を張る守備で粘り、有馬龍太(経3・武修館)のだめ押しのゴールで4-2で勝利した。

慶大は幾度となくこの戦いで苦汁をなめてきた。前回、慶大が優勝したのは1975年の第38回であり、実に半世紀前のことである。そして、今シーズン早大が待つ関東大学アイスホッケーリーグ最高峰であるディビジョン1部Aへ全勝で昇格を決めた勢いに乗る慶大は50年という時代の壁をついに打ち破った。

 

2024年1月5日(日)@東伏見ダイドードリンコアリーナ

 

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慶大

早大

両校の多くの観客、応援団が詰めかけた

開会式ではこの日を待ちに待った両校多くの観客や応援団が選手たちを拍手と歓声で迎えた。一丸となった慶大選手たちは引き締まった表情で、円陣を組み、指揮を高めあう。

三色旗を掲げる荘敬大

華やかな開会式で観客席のボルテージが高まる中、闘志がみなぎった両校選手のフェイスオフ。氷上では空気が殺伐とする。パックが審判の手から離れた瞬間、選手たちがリンク内を縦横無尽に駆け巡る。試合は第1ピリオドから手に汗握るゴール前の激しい攻防となった。試合開始3分、早大が反則を取られると、慶大は今季成功率が高い得意のパワープレイを生かし、荘晶大(商4・慶應)が鋭いミドルシュートを二度放つもいずれも相手GKに阻まれる。早大もパック奪取時に猛烈なカウンターで慶大陣地に迫るも、DFの体の張ったプレーでゴールまで持ち込ませない。

積極的にゴールを狙う荘晶大

               

第1ピリオド7分31秒、ゴールに迫った際の激しいぶつかり合いから熱くなった両校選手が押し合いの一触即発の場面となり、両校1人ずつがペナルティを取られ、一時4対4での戦いを挟む。第1ピリオド後半、慶大は早大の持ち味である切り込む攻めでピンチの場面を幾度か迎えるも、ゴール前を5人で固める守備を展開し必死に凌ぐ。また、及川寿暉(経4・慶應)の数多のシュートブロックも功を奏し、このピリオドを0-0で終える。

ゴール前を固く閉ざす

第2ピリオドからこのゲームは大きく動き出す。ピリオド開始7分3秒、早大は期待の1年生・樋口能乙(スポ1・八戸)が、GK及川が前に守りに出て空いたゴールに対して隙をつき、ど真ん中に先制打を放つ。しかし、慶大もこの失点に対して意地が伝わる積極的な切り込みやミドルシュートを連発する。そして、先制点が入ってからわずか3分後の第2ピリオド10分、栖原大河(経2・慶應)が放ったショットを相手GKが弾くも、小島佑太(法3・慶應)がこぼれ球をワンタッチし、つながった芝田光希(経1・都市大付属)がゴールに流し込み試合をイーブンに戻す。

ゴール後に喜ぶ1年生ながら大抜擢の芝田

慶大の攻めはまだまだ止まらない。16分10秒、有馬龍太(経3・武修館)がゴールめがけて一直線に切り込んでいき、こぼれ球に反応した振津青瑚(政4・埼玉栄)が至近距離から相手GKの右肩を抜く技ありのシュートで決め、2-1とリードに成功する。

得点でもチームを引っ張る振津主将

1点リードのまま迎えた最終第3ピリオド、開始直後、早大がハイスティッキングでペナルティーを取られると、慶大の数的優位の中、有馬の放ったミドルシュートのリバウンドをゴール前に待機していた勝見斗軌(法3・Ontario Hockey Academy)が即座に反応して放ったシュートがネットを揺らす。これにより慶大は3-1と早大を突き放す大きな1点を得ることとなった。

勝見を中心に抱き合う慶大選手たち

観客席からの「若き血」が場内を包み込み、会場のボルテージはマックスになる。後がない早大はここで今試合最大の大攻勢に入る。分厚いオフェンスラインから次々にミドルショットを連発し、慶大に抜け出す隙を与えない。これにはGK及川にも大きなプレッシャーがかかるも第3ピリオド後半になってもなお集中を切らさない。ところがついに綻びが出る。第3ピリオド15分19秒、早大の4年生、上山響平(スポ4・駒大苫小牧)がゴール横から抜け出し、パスを受けたところに切り込み、バックハンドから追撃のゴールを決める。

ファインプレーを連発する守護神・及川

しかし、未だリードしているのは慶大であり、試合は残り5分を切る。その後何とか凌ぎ切りたい慶大は残り1分54秒まで耐えぬく。早大はタイムアウトを使い、捨て身の作戦としてGKをベンチに下げさせ、エンプティネットのまま6人で攻撃に出る。慶大は数的不利の中、必死に体で守り、驚異的な粘りを発揮する。そして、慶大がパックを奪取した直後、壁からのリバウンドを有馬がゴール前まで引きずり、がら空きの早大ゴールにダメ押しの追加点を決めた。

最後まで全力で守り抜く慶大は試合終了を知らせるブザーが鳴ると、慶大選手たちは防具を投げ捨て、ベンチのチームメイト、マネージャーがリンク内になだれ込む。観客席からは惜しみない拍手と歓声が響き渡り、歴史的勝利を感じさせる情景がそこにはあった。

試合終了直後、感情を爆発させる選手たち

 

【選手インタビュー】

引退を迎える4年生

◇振津青瑚(政4・埼玉栄)

――今日の試合を振り返って

振津:そうですね。試合前から全員の気持ちが1つになって、すごく良い準備をして試合に臨むことができたな、ということを試合前に実感しました。60分間を通して今年やってきたことを全て発揮することができました。

――改めてこの4年間を振り返って

振津:勝てない時やトレーニングが辛い時など、決して4年間ずっと楽しかったというわけではありませんでした。でも、最後みんなで笑って終えられたっていうのもそうですし、 4年間このチームでみんなで活動できて、本当に良い思い出をたくさん作ることができました。4年前にこの部に入るという決断をして、心から良かったなと思います。

――最後に後輩へのメッセージを一言お願いします

振津:来年は一部に復帰して、今年よりも高いレベルの相手と戦います。今年の4年生の人数が多くて、来年は客観的に見たら戦力的になかなか大変だと思いますが、今年1年間通して3年生以下の成長には目を見張るものがありました。彼らだったら今年以上のチーム作ることができると個人的には期待しているので、今日の成功体験を忘れずに、また1年間走り切ってほしいなと思います。

――ありがとうございました!

 

◇及川寿暉(経4・慶應)

――MVPにも選ばれましたが、今日の試合を振り返って 

及川:でも、全員の1つ1つのプレーの積み重ねが、結果的に4対2で終わったのかな、と思っています。全員が最初から、勝つ勝たないとかではなく最初の5分、次の5分、またその次の5分と、5分区切りでスコアを積み重ねていく。そして0対0で我慢して、なんとしてでも1点を取るために、集中力を切らさなかったことがこの勝ちに繋がったのかなと思っています。

――最後の粘りが素晴らしかったですね

及川:今まで全員でこのようなピンチを守り抜くことができていたので、自信を持って守ることができました。

――改めてこの4年間を振り返って

及川:今思いつくのは、「ありがとう」という気持ちです。アイスホッケーはチームスポーツなので1人でできるスポーツではありません。送迎や資金面など親の支えも大きかったです。マネージャーは半年前ぐらいから、この60分のためだけに自己犠牲を伴って早慶戦を作ってくれていますし、監督・コーチもプライベートの時間を使って戦略などを分析してくれて。1人では何もできないというのがアイスホッケーだなと思っています。今勝利して感謝の気持ちが1番大きいです。

――後輩たちへのメッセージをお願いします!

及川:今年早稲田に勝って、来年は追われる立場にはなると思いますが、そういう時こそチャレンジャー精神を忘れないでほしいです。そうすれば、勝利はついてくると思います。後輩たちの試合を本当に楽しみにしています。

――ありがとうございました!

 

最後までご覧いただきありがとうございます! 

【アイスホッケー】慶大圧巻の全勝で昇格を決める 早慶戦インカレ前の大一番/エイワ杯2024年度関東大学アイスホッケーリーグ戦 第5節vs 立教大  | KEIO SPORTS PRESS 

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(取材:吹山航生、岩切大志)   

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