2025年10月23日(木)プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD
「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が10月23日、東京都内のホテルで行われ、慶大野球部OBの増居翔太(令5総卒・現トヨタ自動車硬式野球部)が東京ヤクルトスワローズから4位指名を受けた。一方、慶大からは外丸東眞(環4・前橋育英)、常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)、荒井駿也(商4・慶應)、小川琳太郎(経4・小松)の4名がプロ志望届を提出も、吉報は届かず。慶大からは2年連続で現役からの指名は見送られた。
最終カード・華の早慶戦を残し、迎えたプロ野球ドラフト会議。慶大からは外丸、常松、荒井、小川の4名がプロ志望届を提出した。現役からは2023年の廣瀬隆太(令6商卒・現福岡ソフトバンクホークス)以来となる2年ぶりの指名実現に期待がかかる。
ドラフト会議は17時過ぎに開始すると、「大学ナンバーワン野手」と評された立石正広(創価大)は3球団競合の末、阪神タイガースが交渉権を獲得。法大・松下歩叶(営4・桐蔭学園)は東京ヤクルトスワローズ、明大・小島大河(政経4・東海大相模)は事前公表していた埼玉西武ライオンズから単独指名を受けると、2度の抽選に漏れた北海道日本ハムファイターズは明大・大川慈英(国日4・常総学院)を1位で指名。六大学の舞台でしのぎを削るライバルたちが、次々とプロの扉を開く。
1巡目指名が終わり、早大・伊藤樹(スポ4・仙台育英)が楽天、田和廉(教育4・早稲田実業)が巨人から2位指名。3位以降も高校生や大学生を中心に指名が続く中で、18時15分ごろ。4巡目最初の指名として、東京ヤクルトスワローズから全体37番目に「増居翔太」の名前が呼ばれた。

真剣な表情で指名を待つ増居

指名を受け、花束を受け取る増居
増居は彦根東高校から慶大に進学し、1年春からリーグ戦に登板して初勝利を記録。通算44試合登板で17勝2敗、防御率2.32で3年次には最優秀投手賞を受賞。慶大34年ぶりの全日本大学選手権優勝に貢献する。卒業後は社会人強豪・トヨタ自動車に進むと、昨年の日本選手権では福井章吾(令4環卒)と”慶大バッテリー”を組んで3試合に先発。24イニングを投げ、自責点1と圧倒的な成績を残して最高殊勲選手賞に輝き、チームを優勝に導いた。

慶大時代は17勝(2敗)を記録した
指名の瞬間について「今年も指名がないかもしれないと思っていた中での指名だったので、すごくホッとした」と振り返り、「今までお世話になった人や一緒に頑張ってきた仲間に、いろんな気持ちを伝えたい」と安堵の表情を浮かべた。

チームメイトから祝福を受ける増居
最速149キロの直球に加え、多彩な変化球で勝負する左腕。その武器は何よりもゲームメイク力だ。「社会人野球という一発勝負の場で、学生時代とは全く異なるレベルで一球への意識を磨くことができた。本当にいい経験になった」と振り返る。
大学、そして昨年の社会人と2度の指名漏れを経験。それでもその悔しさを糧に、心技体を磨きぬいた増居が来春からついに夢のプロ野球へ。目標は「開幕ローテーション入り」と「最多勝」。そして、憧れの和田毅氏(元・福岡ソフトバンクホークス)のように「長く活躍できる投手になる」ことだ。成長を遂げた増居が、学生時代に腕を磨いた神宮球場のマウンドに、プロ野球選手として戻ってくる。

「最多勝」の目標をかかげる増居
【増居指名会見一問一答(抜粋)】
――過去に2度の指名漏れを経験。指名をされた瞬間の気持ちは
正直、3巡目が終わってまた今年も去年と1回目のドラフトと同じようにここで気まずく、何も起きずに終わる光景を正直想像したんですけど、そこから自分の名前があって、すごくホッとしたっていうところが正直なところです。
――その今の想いを誰に伝えたい
1人に絞ることはできないんですけど、両親だったりこれまで各ステージでのチームメイトもドラフトを気にかけてくれていたので。友人含め、今までお世話になった人や一緒に頑張ってきた人に、いろんな気持ちというか、伝えることができたらいいなと思います。
――東京ヤクルトスワローズのチームの印象は
チーム全体というより大学時代(=木澤尚文、令3商卒)、社会人時代(=松本健吾・亜大卒)の先輩がいらっしゃるので、そういう意味ではすごく心強いのかなと思っています。
――今回のドラフトの指名につながる大学時代の経験は
大学時代も本当にリーグ戦という形でいろんな経験ができましたし、あと一番共通点あるなというのは、大学時代に投げた神宮球場のマウンドにまた立つことができる。そういう意味では今日につながったかどうかはちょっとわからないですけど、すごく大学時代とつながる部分があるのかなと思います。
――慶大の先輩・木澤投手に影響を受けた部分は
木澤さんは2つ上の先輩なんですけど、練習に取り組む姿勢であったり、そういうストイックなところっていうのは間近で見てきたので、今でも影響を受けているところなんじゃないかなと思います。
――トヨタ自動車で磨いてきた、成長してきた部分は
まずは土台のところ。3年間かけて、身体の強さだったり、ボール1つ1つの質だったり、そういうところも成長したと思います。あとはマウンドでの立ち振る舞い、姿みたいなところもこの3年間すごく意識してきたところだったので、そういったところはすごく成長したのかなと思います。
――社会人時代に一番印象に残っている試合とそこから学んだこと
僕自身の社会人野球での経験という意味では、やはり昨年の日本選手権。特に決勝を最後まで投げきった瞬間っていうのは、これまで感じたことのない成果を感じましたし、自分がマウンドに立ち続け、最後勝つ瞬間にマウンドにいることの喜びっていうのはすごく感じることができたので、とても印象に残っています。(学んだことは)重なる部分もあるんですけど、最後までマウンドに立つためにはどんなことが必要かっていうところと、どれぐらい体力が必要で、技術が必要で、どれぐらい信頼をする必要があるのかっていう、そういったところを実際自分が投げきることができて、改めていろんな意味で学ぶことができたかなと思います。
――理想のプロ野球選手像、憧れの選手は
ヤクルトじゃなくて大変恐縮なんですけど、元ソフトバンクの和田毅さん。同じ左投手として、昔からピッチャーとして憧れていた選手の1人だったので。球速表示以上のストレートの球威であったり、空振りが取れるストレートは1番かなと思っています。
――自身のアピールポイント、強み
一番はやはりゲームを作れるところ。先発ピッチャーとして、試合を作ることが一番の役割でもあり、それを強みにやってきたということはあるのかなと思います。
――プロ野球に入ってからの目標、意気込み
まず開幕ローテーションというところが、一番近い目標になるのかなと思います。その先にやっぱり先発として勝ち星をたくさん積み重ねていく。タイトルとしては”最多勝”というところを1つの目標に頑張っていきたいなというふうに思います。そして長く活躍できる選手になれるように、また一から頑張っていきたいなと思います。
本会議では本指名73名、育成43名の計116名が指名されたが、最後まで慶大選手の名前が呼ばれることはなかった。現役選手の指名漏れは2年連続となり、ドラフト会議の幕は閉じた。
(記事:加藤由衣、取材:工藤佑太、林佑真、奈須龍成)