カヌー部門は、今年の大会で素晴らしい結果を残した。前シーズンの主将・宮本朝瑠(経4・県立浦和)が、インカレの優勝、関カレで三冠を見事に果たした。他の部員も健闘し、良好な結果を収めた。それは、日々全身全霊で練習に励む彼らと、一意専心でサポートしてきたマネージャーがつくり出した、確かな追い風となっている。優勝の裏側や彼らの思いを探る。
◇宮本朝瑠(経4・県立浦和)
関カレ K-1 200m、1000m、K-2 1000m 優勝
インカレ K-1 200m 優勝 k-1 1000m 5位
2024 FISU World University Championship Canoe Sports (世界大学選手権)出場

――今年の大会で素晴らしい結果を残しましたが、その裏でどのような練習に取り組んできたのですか。
特別何かをやっていた、他の人と違うことをやっていたっていうのはあまり思いつかないですけど、当たり前のことをちゃんとやるということを大切にしていました。練習だったら1時間前後のメニューとかが多いですけど、一本一本の練習をしっかり最初から最後まで全力でやるっていうことを意識してやっていました。
あとは考えるというところを特に取り組んでいました。どういう漕ぎ方をしたら速くなるかなというのを考えながら練習することで、同じ練習時間でも質が高くなり、その分自分の実力も上がっていくと思っていました。
今自分にここが足りないなと感じたところがあったら、追加で自主練をしてそこを補えるようにしていますが、メインは全体練習を、頭を使って全力でやるというところです。
――カヌー部は近年、大きく成長し、着実に強くなっていますよね。先輩として、その成長を見てどのような思いを抱きましたか。
自分が1年生の時、4年生に最後のインカレで優勝した先輩がいて。その人のことをすごいなと思いながら、4年間ずっと過ごしていましたが、自分も同じくらいのレベルに最終的にはなれたと思っています。でも練習では大久保などの部員にずっと勝ち続けることはできなくて、本当に一緒に練習している、いろんな部員に負けることとかもありましたが、仲間が成長しているというのはすごく嬉しいですし、やっぱりそういう仲間を見ていると、目標になり続けたいなと思ったので、仲間が速くなっているのが嬉しいと思うと同時に、自分ももっと速くなって目標であり続けなきゃいけないなとも思っていました。
練習に対する姿勢というか、練習でしっかり速くなってきているなというのを4年間ですごく感じたので、そういう日々の小さな成長というのが、長い目で見たら大きい成長になってきているのかなって思います。

――今はもう引退され、OBとして活動されていると思いますが、今後はどのような形でカヌー部門に関わっていきたいと考えていますか。また、部に対してどのような期待をお持ちですか。
自分が優勝している姿を見せたら、こうなりたいなと自分から思ってくれるのではないかなと思って、 そういうところを目標にやってきて、実際にその姿を見せることができたのが一つ良かったことですけど、 それが『繋』の一つかなと思っています。これからOBになって、部員に直接何かできることっていうのはあまり多くはないと思いますが、でも自分はすごく部員たちには感謝しているので、これからも頑張っている部員たちの応援をしたいです。
――最後に、後輩たち、そしてこれからカヌー部に入る人たちへ、伝えたいことがあればお願いします。
4年間カヌー部で生活するにあたって、一番後輩たちに望んでいることは、引退した時にやっきてよかったなと思ってほしいっていうのが一番です。やっぱり結果を出すことも大事ですけど、それ以上に、自分は今年(のインカレに)1000mという種目で優勝を目指していましたが、1000mでは5位に終わってしまって、それはすごく悔しかったですけど、満足っていうか後悔はしてなくて。というのも自分ができることは全部やって、それでも負けてしまったので、それはもう相手が強かった、と割り切ることができました。やっぱり結果を出すことも大事だけど、それ以上に自分ができることを最大限にやったと思って終わってくれれば、後悔しない4年間を過ごすことができるかなと思うので、全力で頑張ってほしいなと思っています。
◇石井蒼馬(理2・小松川)
関カレ K-2 200m 4位、K-2 1000m 優勝
インカレ K-2 200m 8位、k-2 1000m 4位

――今回の関カレ優勝についてですが、入部された当初、まさか2年生で優勝するという姿を想像していましたか。
正直なことを言うと、大学では楽しみつつできたらいいかなと思って最初入部しました。いざ入部してみたら、環境も良くて、みんな切磋琢磨してやっていたので、それに引っ張られる形でしっかり頑張るようになりました。今シーズン始まってからも、過去にいい結果を出した先輩のタイムトライアルとかと比べて、そんなに良いタイムが出ていたわけではなかったので、関カレ優勝できるかは全然分からなかったですね。ただ、どのペアよりも息が合っていて、完成度が高い自信はありました。
大学入学した時は何かしらの形でチームに貢献できたらいいなと思っていました。高校までは学校所属じゃなくてクラブチームでやっていたので、あまり学校対抗とかを意識したことがなくて。大学に入ってからは大学対抗でポイント取る、というようなところを意識するようになったので、それで部に貢献したいなというのが目標でした。
――優勝が決まった瞬間、どのようなお気持ちでしたか。また、宮本さんはどのような存在だと思われますか。
ペアの決勝がシングルの決勝の後だったので、宮本さんがシングルで優勝する姿を見て。そこで覚悟を決めたというか、勝たなきゃいけないなっていう風に思ったので、優勝したときはほっとしました。
宮本さんは、本当に頼りがいがあって、先頭に立って引っ張るタイプではなかったと思いますが、それでも自分に喝を入れながら頑張っていたので。それに引っ張られる形で部員が自然と後についていく感じでチームがまとまっていたと思います。宮本さんが主将だったからこんなに頑張れたんじゃないかなと思います。
――今は2年生ですが、来シーズンに向けて、どのような目標を掲げていますか。
来年は今年よりいい結果を出したいです。今年の結果の方が良かったなっていうふうにならないように、 来年またさらに上を行けるように頑張っていきたいです。
――将来的に漕手の皆さんに伝えたいことがあれば、教えてください。
自分はずっとカヌーが好きで、勝ち負けとかよりもシンプルに漕ぐことが好きで続けてきて、大学に入ってから毎日漕げるようになって、すごく楽しいなと思いながら練習しています。
なかなか経験者はこの部活に入ってこないので、 みんな初めての状態からですけど、みんなカヌーを好きになって、楽しんでくれればと思います。

「あの人は競技に対し真摯に取り組んでいた人だから、みんなあの人のことを応援したかったから、あの人が引っ張っていたチームは、あの人を中心にチームが一つになっていった感じが去年はありました」
今シーズンの主将・大久保は、前シーズンの主将・宮本について、そう振り返った。
誰かの喜びを、チーム全員が自分のことのように喜べるカヌー部門。そこには、主将が描く理想と、部員が受け取った思いが重なり合う空気がある。日々切磋琢磨する彼らの姿は、川面に揺れる波光のように、力強く輝いている。“日本一”を目指す挑戦は、これからも続いていく。どうかこれからも、ご声援をお寄せいただきたい。
前編では、カヌー部門の様子や魅力について紹介しました。
【What is ○○部?】“日本一”を目指す 声援へ報い、強豪校に一矢報いる/File.35 端艇部カヌー部門(前編)
(取材・記事:蕭敏星)


