待ちに待った日が訪れた。3月16日、遂に開幕を迎えた慶大バスケットボール部。昨季は関東2部リーグで8位と苦しいシーズンを送った慶大だけに、今年はその雪辱に燃えているだろう。昨季3年生ながら副主将を務めた蛯名(法4・洛南高)を主将に、田中(環4・福大大濠高)を副主将に据えて動き出した13年度の慶大バスケ部が目指すは唯一つ。4年前に獲得した大学バスケットボール界の頂だ。その慶大が長く険しい道のりの最初の相手として迎えたのは、因縁の相手である早大。勝負の年の開幕戦にふさわしい好カードによる一戦は、両チームの技術とプライドがぶつかり合う、激しい点の取り合いとなった。
2013/03/16(土) @明治大学和泉キャンパス | |||||
東京六大学バスケットボールリーグ戦 第1試合 vs早大 | |||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
●慶大 | 20 | 18 | 24 | 24 | 86 |
○早大 | 27 | 19 | 21 | 33 | 100 |
◆慶大スターティングメンバー |
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選手名(#背番号・学部・学年・出身校) | |||||
PG | #16 伊藤良太(環3・洛南高) | ||||
SG | #4 蛯名涼(法4・洛南高) | ||||
SF | #19 福元直人(環2・福大大濠高) | ||||
PF | #10 矢嶋瞭(総4・福大大濠高) | ||||
C | #7 本橋祐典(環4・佼成学園高) |
1Qは慶大が積極的なオフェンスを仕掛ける形で幕を開けた。序盤は怪我から復帰を果たした矢嶋のス3ポイントや、本橋のバスケットカウントにより上々の立ち上がりを見せる。一進一退の攻防が繰り広げられる中、インサイド・アウトサイドともに強力な早大の猛攻が慶大を苦しめる展開に。早大の合わせや速攻に手を焼きつつも蛯名主将や福元が安定して得点を量産し、慶大は必死の追随を見せた。しかしながら細かなミスが仇となり、27-20というスコアでこのQを終える。続く2Qの主導権を握ったのは一貫して早大だった。慶大の十八番ともいえるトランジションバスケットは鳴りを潜め、苦しい状況が続く中、伊藤がガッツ溢れるプレーでチームを牽引。強力な早大インサイド陣を機動力で翻弄し、着実な得点を重ねた。下級生も主にディフェンスでチームに貢献したが、点差を縮めるには及ばず38-46という8点のビハインドで前半を終了した。
3Qの序盤は、早大の素早い切り替えを生かした速攻を封じきれず、苦しい立ち上がりを見ることになる。悪い流れを断ち切るきっかけを作ったのが、大元の持ち味ともいえる3ポイントだった。この得点が起爆剤となり、投入された山崎哲(環2・秋田高)もセカンドチャンスを得点に結びつける。流れを手繰り寄せた慶大は相手のファンブルから速攻を生み出し、「堅守速攻」の理想的なプレーを炸裂させた。終盤に権田が3ポイントを決め、62-67で3Q終了。大元のスリーから始まった4Qでは、慶大にイージーミスが若干見られたものの、福元らが積極的な姿勢で得点を重ねる。一時は2点差まで早大に詰め寄った慶大だったが、焦るあまり不要なファールがかさんでしまい相手にフリースローのチャンスをもたらしてしまう。最後まで矢嶋のプレーなどで会場を沸かせた慶大であったが、早大に逃げ切られてしまい最終的に86-100と点差を広げられて試合を終えることとなった。
東京六大学バスケットボールリーグ戦 第2試合 vs東大 | |||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
○慶大 | 22 | 22 | 26 | 23 | 93 |
●東大 | 8 | 15 | 21 | 22 | 66 |
◆慶大スターティングメンバー |
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PG | #13 吉川治瑛(環3・世田谷学園高) | ||||
SG | #14 大元孝文(環2・洛南高) | ||||
SF | #12 中村滉平(理3・慶應高) | ||||
PF | #22 山崎哲(環2・秋田高) | ||||
C | #7 本橋祐典(環4・佼成学園高) |
リザーブメンバーがスタメンに多く名を連ねた東大との一戦。早大戦から引き続き出場した大元の正確なアウトサイドシュートを決めて良いスタートを切ると、その後は終始慶大のペースに。技術で勝る東大に対して積極的な1対1を仕掛けて、フリースローを獲得。これを確実に決めて試合を優位に進めていく。ディフェンスでも吉川や田中が気迫溢れるプレーを見せてチームに勢いをもたらすなど、相手にリズムを与えなかった慶大。1Qを22-8で終えると、続く2Qでは新2年生達が躍動する。ミスが立て込み流れが悪くなった時間帯に中島一樹(総2・高崎高)、山崎健詞(経2・慶應湘南藤沢高)の連続スティールで相手の勢いを削ぐと、「合格圏まで行って欲しい」と佐々木HCも期待する山崎哲も華麗なレイアップから得点。44-21で試合を折り返す。後半に入るとシュート制度の低下、イージーミスなどから東大の反撃に遭い相手に得点を重ねられてしまう慶大。しかし、苦しい状況のチームを救ったのは「チームを勝利に導かなければいけない」という強い意志を秘める、新副主将の田中だった。「ディフェンスを頑張ろうと思っていた」との言葉通りの堅守から幾度もチームの好機を演出すると、自身はクイックかつリズミカルなフォームから繰り出される高確率のジャンプシュートで確実に得点。この田中の活躍に呼応するように、本橋の力強いリバウンド、吉川の3ポイントシュート、平石健斗(環4・慶應高)のミドルシュートなどで一気に東大を突き放し、93-66という大差で試合を終えた。田中は勝利に大きく貢献し、チームを支える副主将としての姿を示してくれた。
新チームの門出は白星発進とは行かなかったが、俯く者は誰一人としていないだろう。一部リーグの強豪でありライバルである早大との激戦のお陰で、「ディフェンス面が特に良くなかった」(蛯名)と語る通り、反省すべき点は明確になった。後は、残る3試合の中で「やりながら修正」(佐々木HC)していくだけだ。そして、その中でも「とにかく勝つことだけ」(蛯名)と勝利への意欲だけは忘れない。内容という点においても結果という点においても、明日の試合は彼らにとって重要な意味合いを持つものになるだろう。
(記事: 埜村亮太、大地一輝)
佐々木HC
早稲田との試合はいい所まで行ったんだから、あれで引っくり返すくらいの元気さというか勢いがなきゃいけないですね。(シーズンインから取り組んで来たこと)体力を元に戻すこととディフェンスのフットワークを少しやったので、ディフェンスをやって欲しいなと思ったんだけど、90点以上取られるんじゃあやり様がないですね。ガードが縦に抜かれたら駄目です。(ハーフコートオフェンスの組み立てに苦しんでいたが)一応5人の動きしか今はやってないんで、オフェンスとしてはあんなものかなと。ただ、セットオフェンスの動きだけは何回もやっているので、その動きが出来ないというのはいただけないです。(矢嶋選手の復帰)弱いですね。まだコンディションが整っていないです。ただ、矢嶋が20点以上取れば何処とやっても試合になると思っています。安定したスコアラーがいないんで、彼がスコアラーになってくれれば他は他で仕事が出来ますし。結局去年勝ち切れなかったのはガードの伊藤が20点取らないと勝てないっていうことなんで。スコアラーに対してどれだけ得点のチャンスを作れるかっていうのがガードの仕事でもあるんで、矢嶋が20点以上取れる様になれば、戦えるかと。(東大戦に出場したメンバーで期待する選手)中村が繋いでくれると、チームとして相当違うと思ってます。彼は2番から5番まで出来るので、ああいう子がそういう働きをしてくれるとすごくチームは助かるので、それを要求しているんですが、スイッチが入るのが遅すぎますね。(山崎哲選手を積極的に起用していたが)山崎にしてもそうで、彼が出て相手が嫌がって流れが変わって…ということを繰り返せば、ということは分かってくれたかと思います。出て行って一回リバウンド取るとか、一回シュートを決めてしてくれれば、彼については現状では○。今は△です。合格圏くらいまで行って欲しいですね。(六大学で試して行きたいこと)ゲーム勘、ゲームスピードがどういうものだったかっていうのを思い出して欲しいです。それでまた3週間練習をし、電鉄杯・トーナメントという風な三段構えなので、今日も言ったんですが、やりながら修正するべき点を見つけて。それをもう一度電鉄杯でやって、また修正をして突入しようという目算なので。そういう予定です。
[G] 蛯名涼 主将(法4・洛南高)
全体的にダメでした。ディフェンス面が特に良くなかったです。(新チーム初の公式戦だったが)とにかく勝つことだけを心がけました。今までやってきたことを発揮するだけです。(自身のプレーを振り返って)体を張れましたが、ミスが多かったです。ディフェンス面での改善点が多かった試合です。結果から見ても、内容から見ても良くなかったです。(冬に重点的に取り組んできたこと)体力強化とディフェンス面の強化です。(明日に向けて)今までやってきたことが出来ていないので、意識してやっていきたいです。
[G] 田中貴啓 副主将(環4・福大大濠高)
流れが悪いときに四年生がしっかりとしたプレーができていなくて、それでまた離されたことが反省点なので、次の試合では四年生が役割を果たして、チームを勝利に導かなければいけないと思いました。今まで一ヶ月はディフェンスの練習をしてきたので、そこを意識して、オフェンスはセットプレーの中でも自分の持ち味を活かして、強気にやろうと思いました。(どんな目標をもって試合に臨んだか)ディフェンスでワンプレーやいいプレーができると、自信を持ってできるので、今日はとにかくディフェンスをやろうとしました。ディフェンスができると、気持ちが上がってきて、自ずとオフェンスもうまくいくことが多いので、ディフェンスを頑張ろうと思っていました。(どのような練習を積んできたか)対人プレーはほとんどせず、基本的なことをやりました。足の運びや切り返したときの一歩を出すとか、細かい部分を先生からご指摘、ご指導頂きました。しかし、それをコート上で体現しないと意味ないので、そこは意識していたんですけど、まだ意識が足りないので、これからの修正点だと思います。(明日に向けて)去年の六大はいい結果ではなかったのですが、シーズンの入りとして、上位にいくためにも明日は2勝して最終日に繋げたいと思います。
*学年・学部は六大学リーグパンフレットに基づき、2013年度で表記しています。
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