1・2年生で挑む、新人戦の2回戦。ここで慶大が迎えたのは、大学バスケットボール界にその名を轟かせる名門校・青学大だった。強敵を相手にどれだけ持ち味を発揮出来るかという意味でも、春シーズンの集大成としてはこれ以上無い相手だ。今シーズンに学んだ技術の粋を持って挑んだ慶大。序盤は1回戦からの良い流れを引き継ぎ互角の勝負を展開したが、後半に大きく失速した慶大は屈辱の大敗を喫し、大会を後にすることとなってしまった。個の試合で春シーズンも終了。関東トーナメント・早慶戦・新人戦と、望んでいた結果を得られたシーズンとは言い切れない3ヶ月だったが、今季で得た課題と収穫を手に、慶大バスケ部は秋シーズンへと進んでいく。
2013/06/13(木) @国立代々木競技場第二体育館 | |||||
第53回 関東大学バスケットボール新人戦 2回戦 vs青学大 | |||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
慶大 | 14 | 10 | 14 | 11 | 49 |
青学大 | 22 | 9 | 22 | 38 | 91 |
◆慶大スターティングメンバー◆ | |||||
選手名(#背番号・学部・学年・出身校) | |||||
PG | #4 福元直人(環2・福大大濠高) | ||||
SG | #18 西戸良(総1・洛南高) | ||||
SF | #5 大元孝文(環2・洛南高) | ||||
PF | #13 真木達(環2・國學院久我山高) | ||||
C | #23 黒木亮(環2・延岡学園高) |
1回戦の勢いをこの試合に繋げたい、迎えた強豪・青学大との大一番。福元・大元・真木らバックコート陣が1対1から得点を狙う慶大だが、青学大の強力なディフェンスを前にフィニッシュの精度を欠くことに。速い展開から積極的に仕掛けてくる青学大の攻撃を止められず、立ち上がりでリードを許す苦しい展開となる。3分が経過したところで大元がジャンプシュートを決め、ようやく初得点を記録した慶大だが、堅いディフェンスを前に攻撃は単発に。対象的に、内外角からテンポ良く得点を重ねて行く青学大に付いて行けず、7分間のランで6-20と、大きく離されてしまう。しかし、タイムアウトを挟んで慶大が息を吹き返す。足を使ったディフェンスで流れを引き戻すと、オフェンスでは「1対1からピッチパスやキックアウト」(佐々木HC)という一連の流れが機能。真木のドライブや福元のフリースローで徐々に盛り返し、14-20の6点ビハインドにまで持ち直す。2Q開始早々、大元の3ポイントがネットを通過した慶大は、続くオフェンスでも大元が3ポイント。遂に射程圏内の2点差にまで詰め寄る。しかしその後、黒木がこの試合3つ目となるファウルを犯してコートアウト。このプレーにより青学大の流れになるかと思われたが、その黒木の代わりに入った清家智(経2・慶應高)が、見事に試合を繋ぐ。交代した直後に相手からオフェンスファウルを奪うと、以降もヘルプディフェンスやリバウンドなど、見えない部分でチームに貢献。2Qの青学大を9得点に抑え込む原動力となる。ここで得点を重ね、リードを得たい慶大だったが、こちらも得点は奪えず。1人目こそかわせるものの、その先に待ち構えるヘルプの処理に手を焼き、10分間で僅か10得点。互いに堅実なディフェンスで相手に流れを与えなかった2Qを終え、24-31で前半を終える。
均衡した状況を打破し、リードを奪いたい3Qだったが、思わぬ落とし穴が彼らを待っていた。ボールマンへのプレッシャーを強めて来た青学大のディフェンスに、慶大は落ち着いて対処することが出来ず。プレッシャーに負ける形でのターンオーバーが増え、簡単な失点を許してしまう。西戸や黒木の得点で何とか応戦しようと試みるも、球際での競り合いで青学大に負けている慶大は、悪い流れを断ち切ることが出来ず。イージーなミスから青学大に点数を積み重ねられ、気付けば32-53。大きすぎるビハインドを背負ってしまう。終盤に西戸のジャンプシュート、黒木の連続得点で反撃したものの、38-53と点差を15にされたまま最終Qへ。何とか意地を見せ、再び青学大の背中を捉えたかった慶大だが、最終4Qは青学大に組み伏せられる展開となってしまう。3Qから引き続いてターンオーバーが減らない慶大は、青学大の速攻によって連続で失点。疲労や集中力の欠如の影響か、足も完全に止まってしまい、集中放火を浴びることに。オフェンスでも、焦りからか無理な1対1が目立つようになり、点数も伸びなくなる。エースの大元や黒木の得点で何とか足掻いていたものの、その黒木も5ファウルで退場して万事休す。後半立ち上がりの悪い流れを引きずり続けてしまった慶大は、結局このQで大量38失点。前半の接戦はどこへやら、最後まで噛み合うことなく、最終スコアは49-91。ダブルスコアの大敗で、新人戦を終えることとなってしまった。
「情けないですし残念です」(佐々木HC)。指揮官が苦虫を噛み潰したような表情で語った通り、点差以上に厳しい敗北となってしまったこの試合。特に、慶大バスケの根幹を成している「ルーズボール」(佐々木HC)の面で青学大相手に完敗してしまったことは、悔やんでも悔やみ切れない。課題が多く残る一戦となってしまった。だが、春シーズンを通して慶大のバスケットボールは大きな成長を遂げたと言えるだろう。特に、今季から取り組んで来た新たなディフェンスシステムは、試合を経る毎に進化。東海大や大東大、早大といった強豪相手にも通用することを証明した。攻撃面でも、蛯名涼主将(法4・洛南高)、矢嶋瞭(環4・福大大濠高)、本橋祐典(環4・佼成学園高)の4年生トリオが牽引。上級生が引っ張ることで、チームを活性化させている。後は、「課題を挙げてしっかり秋に向けて修正」(福元)し、最高の準備をしてリーグ戦に備えるだけ。2ヶ月後、運命の秋季リーグ戦を迎えた時、一回りも二回りも成長した慶大の姿が、コートの中にはある筈だ。
(記事: 大地一輝)
◆試合後コメント◆佐々木HC
毎回の反省なんだけど…入りで気迫が無くて、ああいう姿は一番良くないですね。(入りに失敗した要因は)やることは練習で確認をちゃんとして、こういうオフェンスやディフェンスをしよう、ということはやっているので。それを選手が試合前にちゃんと確認をして、自分はこういう仕事をやらなきゃいけないよね、というシミュレーションが出来てないんじゃないかな。何となくボーッとしてて、こっちから言ってることも、頭の中で具体化出来てないんじゃないかなと思います。もっと言うと、理解力なのかなと。ディフェンスだって、春にやって来たことをやろうと言っていても、スクエアに付いてやられてしまいますし。オフェンスも、ジャブステップを入れて、相手が出して来た足に対してプレーしようと言ってるのに、出来てないですし。その為の練習は随分やっている筈なんですけど、それが出ないということは、頭の中でキチンと整理が出来てないのかなと思います。(1対1を積極的に狙っていたが)1対1からピッチパスやキックアウトをして、という練習しかしていなかったので。ボールサイドがそれをやるから、逆サイドはスクリーンをして前を切って合わせなさいと。前がスイッチをしたら、スラッシュしてパスを受けなさいという練習しかしていないので、それをしつこくやればいいと思うんですけど…。それが全然出て来なかったですし、逆に青学にやられてしまっていました。(後半に球際での弱さが見えたが)試合後にミーティングで同じことを言ったんですけど。青学が2部で、ウチとの1部の入れ替え戦の権利を取りたいっていう時代に、青学の反省は、「慶應のルーズボールの取り方を真似しよう」、「慶應以上にそういうことをやらないと勝てない」という所から青学のバスケの再強化は始まっているんです。でも今日の試合では、元祖ルーズボールだった筈のチームがボコボコにやられて、パスミスをした後にハリバックもしないですし。そういうことは練習でも言っているし、約束事にもなっている筈なのに出来ていなかったです。ミーティングでも話したんですが、そこを無くされたんじゃあチームの特徴が無くなるよ、と。我々が相手に気付かせて、未だに相手は大事なこととしてやり続けている姿を見たら、情けないですし残念ですね。(リーグ戦に向けて)1回戦で東京成徳大とやって、やらなきゃいけないオフェンスとディフェンスというのはある程度実感した筈で、2回しか練習出来なかったんですが、3・4年生とやった練習では、ある程度実感出来た筈なんで。今日の1Qの5分間をもうちょっと精力的に打ち込んで行けば──勝った負けたはあると思うんですけど、財産までなくすほどボコボコにやられることは無かったんじゃないかなと思います。春を総括すると、早慶戦にしてもトーナメントにしても今日にしても、もしかしたらチャンスがあるかな、という兆しがあるにも関わらず、それを掴み切れない。それは去年もそうでしたし、中々乗り越えられないというのは現状なんで、リーグ戦に向けてはそこらへんの強さを求めたいですね。それと、タイトなスケジュールになっちゃっているので、それは随分前から選手達には言っているんですけど、それを現実として準備をしてもらわないといけないです。プレーにしろそうでないにしろ、どうも準備が出来ないみたいなんで、その反省及びそこの修正が、リーグ戦への目標です。
[G] 福元直人(環2・福大大濠高)
僕たち2年生は試合に出ることが多く、練習した日数関係なしにやるべきことは今までと変わりません。それにも関わらず、成徳戦を除いて、入りも悪くて、気持ちの面でも1対1だったりスペーシングだったり、気持ちが入ってなかったと思います。(後半に離されたことについて)プレーに関して言うと、ドライブしたあとの周りの動きというのが全く止まっちゃってたので、そこかなと思います。ミスした後にしっかり走って戻って、ミスの穴埋めをするというのができませんでした。そこからチーム全体が崩れたのかなと思います。(4番を背負ったことについて)任せてもらったんで、精一杯やってみようとは思ったんですけど、なかなか上手く引っ張ることができなかったと思います。(新人戦でやろうと思ったことは)特別何かやろうというのはなくて、早慶戦からの延長だったので、1対1を主体にして、ディフェンスと1対1というのがチームとしての共通認識だったと思います。(春シーズンを振り返って)僕はスタートで出してもらうことが去年よりも多かったかなと思います。去年まではシックスマンとか途中から出るシーンが多かったんですけど、入りからプレーの選択という面でまだまだ未熟だなと思い知らされました。(秋に向けて)チームとしての目標はあと一つ、1部昇格というのがあるので、個人としても今日の試合であったり、早慶戦を反省しなおして、課題を挙げてしっかり秋に向けて修正していけたらなと思います。
[G] 大元孝文(環2・洛南高)
ディフェンスも相手の方が数倍洗練されて、完敗でした。(青学の強さ)ディフェンスでのチームルールがしっかりしていたのと、やっぱり体が強かったのでどうしてもそういう時に体の当たり負けというところでミスが多くなってしまいました。(敗因について)個々の能力としては劣ってなかったと思うんですけど、5対5になるとオフェンスが孤立してしまって、苦しい時間帯が続いてしまったことがオフェンスで点をとれなかった原因ですし、ディフェンスでは相手の機動力に対応できなかったというのが原因だと思います。(1、2年生のチームでやってみて)1、2年生のチームになって福元に任せてた部分があって、そういう時に福元だけじゃきつい部分もあったので、自分もやらないといけなかったんですけど、どうしてもチームを引っ張れなかったのが自分の中でこれからの課題だと思いますし、福元がチームを声とかでリードしてくれている分、プレーで引っ張りたかったのですがそれも上手くいかなかったので、悔しいです。(今後に向けての抱負)青学と対戦してみて、あれだけ強いディフェンスをされると、こちらもすごいやりにくくて、これが1部と2部の差なのかなと思いました。あれぐらいの激しいディフェンスを慶應もやっていかなければならないなと1部には上がれないと思うので、これから頑張りたいです。
[C] 黒木亮(環2・延岡学園高)
早慶戦と近かったということで、新人チームだけで練習する機会が3回しかありませんでした。今日の試合は入りの部分をしっかりしていこうっていうことだったんですけど、思い通りに上手くいかなくて…。ファールが混んでしまってチームがあまり機能せず、思ったより上手くいかなかった感じです。(最上級生としてプレーしたことについて)去年の新人戦は伊藤さん(伊藤良太・環3・洛南高)や権田さん(権田隆人・政3・慶應高)が引っ張ってくださった部分もあったんですけど、今年は僕が新人戦の中で最上級生として出場した試合だったんですけど、やっぱり苦しい時間帯に自分や試合に出ているメンバーが黙ってしまう部分がありました。そういうところでもっと自分や他の2年生や、試合に絡んでいるメンバーもそうですし、ベンチメンバーだったりがまだリーダーシップを発揮できていない面があって。もっと引っ張っていける部分があったんじゃないかと思いました。(センターとして意識していたことは)僕がスタメンで一番大きいので、他の4人が1対1とかをする分、自分がもっとリバウンドに絡んでいけるようにっていうことを心掛けていました。抜かれないことをすごく意識して今日は臨んだんですけど、その分ヘルプの際に下らないファールをしてしまって重い雰囲気になってしまったので、そのことが心残りです。(今後への意気込みは)ここで意気消沈しているというか、沈んでいる場合ではないです。もう終わってしまったことは変えられないので、まだ新人戦が続いている他のチームの上手さとかを見て、研究して、その上で自分がどれだけ自主練とかウェイトトレーニングとかで追い込めるかだと思うので。延世大との定期戦も、やはり相手が大きいので、練習しないとやっぱり駄目だと思います。それに向けて自主練もしていきたいと思います。
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