劇的な勝利で立大から勝ち点を奪ってから1週空いて迎えた法大戦。法大に8連敗を喫している慶大にとって、法大戦で勝ち点を取ることは優勝への大きな鍵である。何としても勝ちたい初戦であったが、そう簡単にはいかない。1回、3回、5回に大きなチャンスを作りながらも取れた点はそれぞれわずか1点ずつの計3点。それに対し、法大に許したヒットは4回のたった2本であったが、一死一、二塁から西浦に3点本塁打を浴び、ドローという結果に終わった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | ||
法大 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
慶大 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
法大:船本、本多、納富―木下
慶大:加藤、三宮、白村―小笠原、手錢
慶大出場選手
ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) | |
1 | [8] | 佐藤旭(商3・慶應) |
2 | [6] | 山本泰(環2・慶應) |
3 | [3] | 松本大(環4・桐光学園) |
4 | [9] | 谷田(商2・慶應) |
5 | [5] | 横尾(総2・日大三) |
R | 梅野(環2・福岡大大濠) | |
6 | [7] | 渡邊暁(商4・慶應) |
R7 | 大坪(総4・佐賀西) | |
7 | [2] | 小笠原(環2・智弁和歌山) |
2 | 手錢(環4・大社) | |
H | 稲垣(商4・慶應湘南藤沢) | |
8 | [1] | 加藤(政1・慶應) |
H | 高馬(総4・関西学院) | |
2 | 三宮(商2・慶應) | |
H | 藤本知(環3・慶應) | |
2 | 白村(商4・慶應) | |
9 | [4] | 堀野(理4・掛川西) |
H | 植田(商4・慶應) | |
4 | 牧野(商4・千葉東) |
秋季リーグ戦、2戦目のカードはこれまで8連敗を喫している慶大と相性の悪い法大だ。この勝負に勝つことは優勝への大きな前進を意味するが、慶大に立ちはだかる法大は実力者揃いの強豪。前カードで大接戦の末、立大に勝利した慶大の勢いで何としても勝ちたいところである。
初戦の先発は期待の1年生・加藤(政1)。自慢の豪速球と変化球を使い分け、法大打線を3回9人29球で仕留める。1年生とは思えない安定した投球に球場全体が注目する。
先制したのは慶大だった。1回裏、先頭の佐藤旭(商3)の内野安打で塁に出ると、続く山本泰(環2)がきっちり犠打を決め、3番松本大(環4)が左安打を放ち、一死一、三塁と早々にチャンスメイク。秋季リーグ戦から名実ともに4番に定着した谷田(商2)が松本大に倣うかのように同じ方向に適時打を決めると、あっという間に慶大に1点が入る。後が続かず1得点に終わるも重要な先制点を取った。
続く2回、加藤が打撃でも魅了。初球をあわやホームランかと思わせる勢いでセンター後方に運ぶ二塁打を放つ。しかしこれも後続が凡退し、得点にはつながらない。
追加点が欲しい慶大は3回の先頭・山本泰が安打で出塁すると、松本大がこの日2本目となる安打を放つ。一死一、三塁から横尾(総2)が適時打で1点を追加。法大の先発・船本をマウンドから引きずり下ろす。まだまだ点が欲しい慶大だったが代わった法大投手・本多に対し、あと1本が出ない。
開幕カード2連敗といえど、2点を奪われて黙っている法大ではない。4回、ついに法大が反撃に出る。先頭・大城戸が初球をとらえると、法大に
とってこの日初となる走者が出る。2番若林が犠打を決め、続く3番河合に死球を与え、一気に一死一、二塁のピンチに。ここで迎えた4番西浦。2ストライクから加藤の投げた3球目は高めの甘いストレート。打った瞬間に行ったとわかる放物線を描き、打球はそのまま無残にもレフトスタンドに吸い込まれ、一挙に3点を奪われる。
追われる側から追う側となった慶大は5回、総力戦で戦う。先頭の谷田、横尾が立て続けに安打を放つと、無死一、二塁の好機が生まれる。ここで渡邊暁(商4)に代わり、大坪(総4)が代打で起用。犠打を決めるかと思われたが、相手の隙を突くかのような鮮やかな安打を中前に運び、1点を返し同点に追いついた。なおも続く無死一、二塁のチャンスをものにするべく藤本知(環3)、植田(商4)を代打起用するも、凡退に終わる。
5回以降、三宮(商2)や白村(商4)が0に抑える好投を見せたものの、打線がうまくつながらず、決勝点が奪えないまま試合は終了。引き分けという結果に終わった。
「勝てた試合だった」(横尾)(大坪)。それもそのはず、法大の安打数は2に対し、慶大は7倍の14。数字だけみれば圧倒的な試合展開になっていてもおかしくはない。何度も点を取るチャンスはあったもののここ一番で得点に結び付けることができなかった。
またこの試合では野球における「流れ」を感じることができた。試合は終始慶大のペースで進み、一時逆転されるも投手陣筆頭に守りが堅実だったためか流れを渡すことはなかった。「勝負は細部に宿る」というがこの言葉通り、隙のない戦い方をしていけば自ずと流れをつかめるということを感じさせた。隙のない戦いとは何なのか。その答えはどの集団でも全く同じではないだろうが、共通するものもあるだろう。犠打を確実に決める、進塁打を打つ、連係プレーでは大きな声で確認し合うなど細かく挙げていけばキリがない。しかしそういう細部に戦いの焦点を合わせていくことが試合の流れ、ひいては勝利を呼び寄せる最大の要因といえよう。
勝負は振り出しに戻っただけだ。劣勢でもなければ優勢でもない。「第一戦のつもりで」(堀野)部員一人ひとりが実力を発揮すれば必ず勝てる。泥臭く白球を追い、陸の王者の逆襲を果たす慶大野球が見たい。
(記事:堀越 ゆかり)
選手のコメント
堀野 真主将(理4)
(今日を振り返って)有利に進んだというのはあったんですけど、ここ一番で一本が出なかったです。逆に言えば負けなくて良かった、明日勝ちたいです。(良い流れで先制した試合でした)2死からとか、走者が居ない時からの安打が多くて、かみ合いそうでかみ合わなかったです。打線になれるように頑張ります。(今日も14安打で雰囲気は良いですか)打つ方は個人個人良いと思うので、あとは勝てるようになれば良いと思います。(法大をあと一歩まで追い詰めた)法大から勝ち点を取ったら優勝してることが多いので、法大から勝ち点を奪うことが当初からの目標になっています。あと2つ勝てるように、気持ち引き締めて頑張ります。(明日に向けて)今日勝てなかったと思うより明日勝つために何をすればよいかをもうみんな考えています。また明日第一戦のつもりで頑張ります。
大坪 兼士(総4)
(今日を振り返って)勝てた試合だなという感じですね。(同点タイムリーについて)何も考えずに打って、抜けてくれたので、とりあえず同点にできたので本当に良かったです。(代打を告げられたときの心境)1,2塁だったのでとりあえずランナーを進めて次につなぐという意識で立ったのですが、結果的に抜けてくれてランナーがホームに返ったので良かったです。(明日に向けて)明日は引き分けではなく勝って、勝ち点を取りに行きたいです。
松本 大希(環4)
(今日の試合を振り返って)八回の僕の打席がすべてだと思います。(今日の相手は引き分けを挟んで8連敗、苦手にしている法政)グラウンドに入ってキャッチボールをしているときから試合が始まっているようなイメージで、集中していこうという気持ちでグラウンドに入りました。そういう意識のなか初回に良いかたちで先制できて、2-0になるまでは良い流れで試合ができたのですが、逆転スリーランを浴びてからは、あれ?おかしいな、みたいなかんじになって、ずっと優位に進めていたのですけど、決定打を打てなくて、勝ちゲームを引き分けにしてしまったな、というかんじですね。(今日3安打の猛打賞)夏の間、バッティングに関してはレベルアップできるように相当数振ってきたので、今は自分のスイングをする、ということだけを頭においていて、それが結果的に、良い結果につながっているのではないかな、と思います。(明日の先発は左腕の石田が予想されるが)どんなピッチャーでも、六大学のピッチャーは良いピッチャーばかりなので、喰らいついていくだけです。何としても喰らいついてヒットを打ってゆく。ぼてぼての内野安打でも、どんなかたちでも良いので、僕らしく気持を出したプレーでチームの勝利につなげたい、と思っています。
佐藤 旭(商3)
(今日の試合を振り返って)ヒットはあれだけ出たんですけどなかなか繋がらなくて、決定打に欠けた試合だったかなと思います。そこだけですね。本当に残念だなと思います。(立大から劇的勝利で勝ち点を奪ってそこからのチームの雰囲気や自身の調子は)立教戦で良いスタートを切ることが出来てチームの雰囲気はすごく良くていい状態だったと思いますし、一週間ですごくいい練習が出来たかなと思います。ただ個人的には立教戦では良くなかったので、それなりに練習して法政戦に臨めたかなと思います。(各打者粘ってボールに食らいついていく姿勢が見て取れたがチームとしての対策は)ファーストストライクからどんどん振っていこうという感じで、何とか食らいついて後ろに後ろに繋いでいこうという気持ちがあれだけのヒットを生んでくれたのじゃないかと思います。本当に最後の一打だけですね。(明日以降も法大戦が続くが)この法政戦が山場だと思っているので今日は勝ち切れなかったですけど、すごくいい雰囲気でやれているので明日明後日しっかり勝って勝ち点取りたいと思います。
谷田 成吾(商2)
(今日を振り返って)勝たなきゃいけない試合だったなということ、ただそれだけです。(第1打席のタイムリーについて)1アウト1・3塁だったので、バットに当てれば何とかなると思って、追い込まれてから必死に当てました。(チーム全体の雰囲気は)雰囲気は非常に良くて、打線も繋がっていますし、ヒットも多く出てるので、後はもう一本というところと、大事なところで誰かがあと一本打てばチームにとっても勢いに乗っていけると思います。(明日以降の意気込み)試合の内容ではうちの方が全然いいんで、このままの勢いで集中していけば、必ずうちに勝利が転がってくると思うので、集中を切らさずにやっていこうと思います。
横尾 俊健(総2)
(今日の試合を振り返って)勝てた試合だったと思います。(2安打放ったが)チームの為にと思いながら打ちました。(14安打で勝ちきれなかったが)悪いチームの流れになっているので、明日は気を引き締めて頑張っていきたいです。(明日に向けて)実力にはあまり差がなくて、勝ちたいという気持ちが強い方が勝つと思うので、気持ち勝負で頑張っていきたいです。
加藤 拓也(政1)
(今日を振り返って)今日は結果的に引き分けだったんですけど、自分が与えてしまった失点で勝ちきれなかったのでそれが本当に残念です。(第一戦の先発を任された心境は)第一戦第二戦関係なく、チームが勝てればいいと思っているので、自分のピッチングをしようと思ってそれに合わせて調整しました。(立ち上がりは完璧でしたが)そうですね、立ち上がりは本当によかったんですけど。4回に点を取ってもらった後に、本当に抑えようと思ったのですがそれが逆に力みにつながって崩れてしまったという感じです。(明日以降の抱負)自分が丁寧に投げることだけ考えてチームが勝てるように精一杯のピッチングをしたいです。
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