【野球】秋季リーグ戦開幕直前特集① 髙多倫正助監督

東京六大学野球秋季リーグ戦開幕まで1週間を切った。春季は優勝を懸けた早慶戦で連勝を果たし見事六大学の頂点に輝いた慶大。そして今、春秋連覇に挑む新たな旅路が始まろうとしている。

開幕直前特集第1弾は髙多倫正助監督。8月に監督代行として就任した新指揮官にチーム状況など、多岐に渡るお話を伺った。

 

「秋にまた勝てる保証は何もない」

 

­­―助監督のオファーを受けた時の経緯をお聞かせください

私は金沢に住んでいて、リタイアしてゆっくり暮らしていたので東京での仕事ということでびっくりしました。ただ、竹内監督が病気で療養されていることは知っていたので、具合がよくなりつつもサポートが必要ということで引き受けました。同級生でもありますし、手助けができればとは考えていました。立場上フリーだったので問題はなかったのですが、もうすぐ61歳なので体力的に自信があったわけではないですね。

 

―春に優勝したチームの指揮をとられるということで、プレッシャーを感じられたりはしますか

春のことに私はまったく関与していないので、自分自身では、プレッシャーを感じないようにしようと思っています。春勝ったから秋も勝てるという何の保証もないので。選手たちには大いに自信にしてほしいですけどね。なんにもソブリゲーションを感じないようにしています。

 

―前任の江藤助監督とはなにかアドバイスをいただいたりはしましたか

江藤監督とは祝勝会でお会いして、その時に激励をいただきました。江藤さんは以前からよく知っていて、もう10数年前鬼嶋監督の時に技術委員(OBがサポートする仕組み)でご一緒したことがあって、その後も何度か顔を合せました。私が土佐高校の監督をやっていた時もキャンプでよくお見えになっていたので、その時にもいつもお会いして、いろいろな話をしていました。

 

髙多助監督の下、春秋連覇を目指す

髙多助監督の下、春秋連覇を目指す

―春までの野球部のことはどの程度気にかけていられましたか

毎シーズン気にはしていますが球場に見に来ることはなかなかありませんでした。ごく一般のファンやOBの方と同じように、応援はしていますが、という感じでした。

 

―今の練習等をみて、春に慶大が優勝できた要因は何であるとお考えでしょうか

練習の量・質という点で慶大が他大よりも勝っていたと思います。それが結果として優勝につながったのだと思います。

 

―夏季キャンプはいかがでしたか

春に優勝したからといって秋にまた勝てる保証は何もないので、チームとして実力をさらに高めていこうという目標は当然のことです。キャンプでは日吉よりもより集中的にできるので、個々の能力が上がった分をどれだけチームの底上げにできるかにかかっています。春の選手がそのままのレベルで戦ったのでは、相手も研究してきますしまず勝てない。どうやって力を蓄えていくか。練習しかないと思っています。自分の今のレベルに満足するのではなく、よく考えて練習し、その先の世界に足を踏み入れる。言ってみれば探究心に近いと思います。ただ、今の大学生の年代は一番伸びやすく、ここで伸ばさないとその先はない時期だと考えています。

 

―夏季キャンプで特に力を入れたことは何でしょうか

私がこちらに来てすぐ合宿だったので、まずはメンバーのことをよく知る機会にしようと思いました。一日中ずっと、10日間あまり一緒に過ごしていたので、まずはそのことを目的にしました。そして各選手がどのような考えを持ってどのように練習に取り組んでいるのか、その様子をしっかり見てさらに意見交換する場にしました。

 

―選手とのコミュニケーションはいかがですか

少しずつコミュニケーションをとれるようになってきて、顔を見たらどんなことを考えているのかが分かりかけてきました。

 

「1週、1週を全力で戦って成果を積み上げていく」

 

―佐藤旭主将(商4)は助監督からはどのようにみえますか

佐藤は人格が優れていますよね。リーダーになるのにふさわしいというか。適度なアグレッシブさを持っていますし、状況判断が優れています。自分自身のコントロールだけじゃなくて、チームのコントロールもしっかり考えています。素晴らしいです。

 

―これまでレギュラーでない選手で、伸びてきたと感じる選手はどなたかいらっしゃいましたか

投手では加藤(政2)、三宮(商3)、加嶋(商3)の3人が春の主力でしたが、彼らは当然として他にも4年生の石崎(総4)や佐伯(商4)、1年生の亀井(商1)といったメンバーがかなり力をつけたなと思います。

 

―4年生の投手が、オープン戦でもかなり活躍していますね

まだまだ4年生も伸びて進歩をしていく時期ですので、基礎的な練習が十分下級生のうちにできていれば、ぐんと成長できると思います。経験や練習量も積めたと思うので、投手陣の底上げにつながりました。4年生は頑張ってくれていますね。

 

―投手の選手起用についてどのようにお考えでしょうか

今のところオープン戦を少し残していますので、その様子も見ながら決めていこうと思います。リーグ戦に入ってからもその間他の投手も含めて練習していますので、調子が上がってきて実力がついてきたとみればリーグ戦中でも新たな投手を投入できればと思っています。

 

―野手はどのように起用しようとお考えでしょうか

オーダーとしてはだいたい固まっています。春のメンバーそのままと言っても構わないかもしれません。ただ下位打線についてはこれまでレギュラーだった選手と新たに伸びてきた選手で、競争させたいと思っています。それから野球は相手をみながら選手を入れ替えて戦う要素があるので、今まで控えだった選手も試合にどんどん出ていって活躍できるように。そのための準備を促すようなオープン戦での選手起用もしていこうと思っています。

 

―須藤選手(環2)と小笠原選手(環3)の、二人の捕手を積極的に起用しているように見受けられます

捕手というのは1人が育つとなかなか次が育ちにくいポジションです。1人だけでは何かあった場合絶対に困ります。怪我も多いポジションですし、学生野球では投手との相性をいう段階ではないので、誰が捕手をやってもチームの戦術や投手のリードがほとんど変わらないように準備しておくのが非常に大事だと思います。その点で、小笠原と須藤がほぼ互角のレベルで捕手としての技量を持ち、なおかつ投手のリードもお互いに差が出ないように起用しています。加藤だから須藤、三宮だから小笠原という固定観念は持たないようにしています。

 

―春の慶大は打撃に力を入れていましたが、秋以降はどのような方針で戦っていこうとお考えですか

江藤さんがそのような方針で臨まれたことはうかがっていますし、逆にいえば守備にそれほど気を使わなくてよい段階にチームとしてはなっているのかなと思います。少なくとも、レギュラーが守れば内外野、バッテリーも含めて守りの大きな破綻はきたさないと思います。となれば後は打撃をどのように伸ばしていくか。打てる選手はいるので、彼らが打席の中で実力を発揮できるかという狙いがあったと思います。その通りの結果に春はなりました。ただ相手も研究してきますし、打撃そのものをこちらもレベルアップしていかないといけないので、秋も打撃をさらに生かせるような練習を続けてきましたし、リーグ戦中もしていこうと思います。

 

新監督の手腕に注目だ!

新監督の手腕に注目だ!

―積極的に次の塁を狙う采配や指示も継続していかれますか

根本的に野球は点を取りあう競技なので、当然ランナーになれば次の塁を狙うことが大切だと思います。これはベンチからのサインもありますし、ランナーとバッテリーの呼吸によってノーサインでも走るケースもあると思います。積極的に前の塁を狙う姿勢は継続していきます。

 

―今のチームで充実していることは何でしょう

バッテリーを中心とした守りと、攻撃のどちらかに偏っているのではなく、バランスよく力があることが試合では一番の武器になります。局面ごとにうまくいったり精彩を欠いたりということは、リーグ戦ではあってはならない。他の5校との対戦の積み重ねなので、ここには負けて、ここには圧倒的に勝つというのではダメなのですね。こうした点で、大学野球としての勝ち方があります。とにかく各校から勝ち点をとれるような力を持つこと、そのような試合展開をしていくことが大切です。仮に1敗しても2つは勝つ、という意識でやっていきます。

 

―今年は他大に好投手が揃っていますが、そのなかでどのように戦っていきますか

打力中心とはいえ、良い投手が出てくるとなかなか大量得点は期待できず、どうしても競り合いになっていきます。競り合いでも1点差で勝つ、あるいは劣勢でも追いついてひっくり返す。そのためには、ただ勝ちたいと思うのではなくどうすれば勝てるか、今年のチーム目標である〝How to play, How to win〟が鍵になってくると思います。

 

―注目している他大学の選手、チームはいらっしゃいますか

これから教えてもらいます(笑)。対戦していく前に戦力分析をしていきますし、リーグ戦が始まっていくので、そうした意味では東大から分析していきたいですね。

 

―助監督にとって理想のチームとはどのようなチームでしょうか

常にテーマを持ってそれにチャレンジすることで、自分たちが到達したところからさらに一歩二歩と、挑戦していくチームが理想です。

 

―秋季リーグの目標をお願いします

六大学は対抗戦で、1つ1つの大学と三回戦勝負、2つ勝つ勝負をしていきます。これは、もう1週、1週を全力で戦って成果を積み上げていく。これしかないですね。調子が良いとか悪いとかは関係ないです。

 

―お忙しい中、ありがとうございました!

(取材 赤尾大 砂川昌輝 由谷咲)

 

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