7月15日(土)、等々力陸上競技場にて“第68回早慶サッカー定期戦~早慶クラシコ~”が開催される。己と己のプライドだけを懸けたこの一戦。ケイスポでは、6年ぶり定期戦勝利を目指す慶應義塾体育会ソッカー部の選手・スタッフたちに意気込みをうかがった。
第9弾となる今回は、渡辺夏彦(総4・国学院久我山高)のインタビューをお届けする。これまで2度、定期戦の舞台に立っている渡辺。しかし、未だ勝利の喜びを味わったことはない。最後の早慶戦に懸ける意気込みや、自身のプレーについて語ってもらった。
[取材日:6月24日(土)]
――まずは今季ここまでを振り返っていただけますか?
まあなかなか勝ててこれなくて、自分たちが追求しているサッカーというのも、それを少し体現できた試合と逆に全くできなくて総崩れしてしまう試合というのがはっきり分かれてきた中で、まあなかなか難しい前期だったなと思います。
――チームとしてやりたいサッカーはここまでどれくらいできていますか?
できた試合を数えるほうが少なくて、筑波戦(0△0)だとか、まあ一番できた試合は筑波戦かなと思いますし、その他はできたと言い切れる試合はないですね。
――今季ここまでの渡辺選手自身のプレーはいかがでしたか?
今季意識していたのは、点を取るとか相手にとって怖い選手にならないといけないということで、去年を通して、2年生の時もそうですけど、チャンスを作ったりとかビルドアップの中で自分が起点となってというようなところは得意としてきたんですけど、FWとして出ている以上やっぱりゴールを取らなければいけないし、結果を残さなければチームにとってマイナスですし、そういう意味で4年でもあるし、自分がしっかりとそういうところで結果を出すというところにすごくこだわってやっていて、前期が始まって最初の方のタイミングで2点取れて、自分の中でもゴール前に入っていくイメージとか、シュートに持っていくイメージとかが結構増えてきていた中で決められないシーンだとか、逆に試合の中でそういうチャンスすら作れなかったりというのがあって、すごく悔しいし不甲斐ないなというふうに思います。
――今もおっしゃっていましたが、今季ここまで2得点を挙げている中で得点の意識というのは高まっていますか?
そうですね。高まっています。
――4年生となって、何か変わったことはありますか?
3年生まではチームのためチームのためと思ってはいても、やっぱり難しい部分はあって、でも4年生になったら、本当に自分たちがやらなければいけないですし、自分たちを引っ張ってくれる人はいないわけで、そういう意味でシーズンが始まってから責任感というのは生まれてきましたし、4年としてチームのことをもっと考えないと、というのは思っているので、その部分ではそれが今季一番意識していることだと思います。プレーでも普段の練習でも。
――今季ここまでで印象に残っている試合はありますか?
これはたぶんみんな同じだと思うんですけど筑波戦で、筑波に対しては苦手意識というかそういうところもあった中で、自分たちが準備してきたごとがしっかりと試合の中でできて、かつそれが割とうまく出せたゲームだったので、その中で最後は得点機とかを作りながらも、まあ0-0で引き分けなんですけど、あのゲームができたということは一つ自分たちの中ではキーになる試合だったと思います。
与えられたポジションで全力を尽くすことしか考えていない
――今季はFWからボランチまで様々なポジションで起用されていますが、ポジションが変わる中でやりにくさのようなものはありますか?
まあやりにくさ云々とかは全然関係なくて、与えてもらったポジションで全力を尽くすことしか考えていませんし、今は前節からボランチということで、出ている以上与えられた役割というのを果たすことだけを考えてやっているので、そこにやりづらさとかはあまり関係ないかなと思います。
――今季はケガ人が多くメンバーが固定されない中で、連携面などはいかがですか?
ケガ人が多いというのはやっぱりもったいないことだし、チームにとっても相当痛手ですし、減らさなくてはいけないというのは大前提としてある中で、ただかといって、今後には生かさなければならないですけど、それを今更どうこう言ってもしょうがないのでとにかくいるメンバーの中で最善を尽くすということを意識しないといけないですし、その中で今まで試合に出ていなかった選手も試合に出る機会が増えたりして、その中でもそれぞれが頑張ってやっているところだと思います。
――渡辺選手自身はFWとMF、どちらがやりやすいですか?
それはもちろん、今まではボランチというところで出場することはなかったので、FWかサイドかというところでしたし、そういう意味では適正ポジションはFWということは間違いないんでしょうけど、ただFWだけできる選手にはなりたくないし、言われたポジション、与えられたポジションで全力を尽くすことしか考えていません。
――参考にしている選手はいますか?
勉強しているのはアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード/スペイン)だとか、あとはイスコ(レアル・マドリード/スペイン)とかっていう選手の試合を1試合通して見て、彼らがどういう気の遣い方をしているのか、どういうところで何を見てどういうプレーをしているのかとか、どういうポジションを取っているのかということなどはかなり勉強して自分のプレーの中に落としこんでいます。
――好きなチームはありますか?
中学・高校くらいまでは単純に好きなサッカーという意味でバルセロナ(スペイン)の試合とかはずっと見ていましたけど、今はそういうところではなくてもっといろいろなものを勉強しようとか取り入れようという意味でいろいろなところのサッカーを見るようにしていて、それこそさっき言ったアトレティコ・マドリードとかレアル・マドリードとかリーガ・エスパニョーラも見ますし、ドルトムント(ドイツ)とか、あとはライプツィヒ(ドイツ)とか、ブンデスリーガも結構幅広く見ますね。
――今ではサッカーを見る時は勉強するために見ているという感じですか?
そうですね。もうそういう目線で見ることが多いですね。
――入学当初と4年生になった今を比べて変わったことは何ですか?
入学当初は本当に1年生から試合に出て、なんならできるだけ早いタイミングでプロを目指そうとか、ということをすごく意気込んで入学しました。ただ、1年目はすごくケガでも苦しみましたし、2、3年でもおそらく自分が入学当初に思い描いていた通りには行かなかったですし、まあそういう意味で大学ここまで約3年ちょっと、まあひたすら苦しい3年ちょっとだと自分は思っている分、本当にいろんなところで成長できているかなというふうに思っていて、まあ人間的な部分でももちろんそうですけど、サッカーの部分でも、高校時代までは自分の好きなプレーというか、多少は考えていたんでしょうけど、そこよりももっと追求して、さっきの好きな選手の話もそうですけど、もっともっともがいて勉強していろいろなことを取り入れようとか、自分をもっと向上させようとか、っていうことにひたすら考える時間を増やすようになったというのが、今までは純粋に楽しくやっていたのが少しずつ変わってきたのかなというふうには思っています。
――今後の目標や将来の夢を教えていただけますか?
プロを目指しています。今でも目指していますし、何が何でもなりたいというふうには思っていて、それはもうずっと変わっていないし大学に入ってからも1ミリもブレたことはないし、「やっぱりプロは厳しいのかな」とか、「J3だと稼げないからやめようかな」とか、そういう人が大学、特に慶應だと多いですし、「J3やJ2だったらここより下なら就職を考えようかな」とか考える人はやっぱり多いですけど、そういうふうに思ったことは1秒もなくて。もうそれしか考えていないですね。
僕らの早慶の中で、一生この結果が、この一発が残っていく
――ここからは早慶戦についてお伺いしたいのですが、まず早大の印象はいかがですか?
一言でいうと、本当にもう負けたくない。早稲田の印象というか僕から見た早稲田というのは本当に負けたくないチームで、早慶の対立というか、何でお互いが意識しあったり、何でそこまで負けたくないのかなというのは入学当初は全然わからなくて、早稲田に負けても普通に負けたくらいな感じだったんですけど、2年生で早慶戦に出て、その時に早稲田が自分たちの前で優勝カップを掲げているのを見た時に、何か本当に心から込み上げてくるものがあって、「こいつらには一生絶対に負けたくないな」とそこから思うようになりました。
――今季はリーグ戦で当たることなく一発勝負の早慶戦となりますが、例年に比べて気持ちの違いなどはありますか?
そうですね、まあアミノで当たるかどうかはちょっと分からないんですけど、基本的には一発勝負だと考えていて、去年だったらリーグ戦は勝っているみたいに思ったりもしますけど、本当にこの一発なので、この一発が多分一生、僕らの早慶の中で、今後も続いていく早慶の中で、一生この結果が、この一発が残っていくと思うので、本当に懸ける思いは強いですね。
――今年の早慶戦ではどのようなプレーでチームに貢献したいですか?
具体的に何かというのは難しい部分もありますけど、やっぱり普段やっていることと変わることはなくて、まあいつも以上にモチベーションが上がるということはあると思いますけど、だからといっていつも以上のプレーをしようという発想はたぶん違って、というよりはしっかりやっていることをコツコツ積み重ねていって、さらにそこでそのモチベーションの高さと合わさった時に良いパワーが出るのかなというふうに、良いパフォーマンスができるのかなと思うので、ちょっと抽象的ですけど、モチベ―ションは確実に上がりますし、という意味ではそういうふうに考えています。
――ストロングポイントという意味ではどんなところを出していきたいですか?
ポジションも、出られるかどうかも分からないですけど、やっぱり相手のゴール前で怖さを発揮できないと自分の良さはないと思っていて、「よく分からないけどちょっと上手いな」みたいな印象で終わったら相手にとって全然怖くなくて、というよりは相手のゴールの前で怖さを発揮するという言葉に尽きると思います。そういうことができればどこのポジションで出てもそれを発揮していきたいと思います。
――それでは、自身最後となる早慶戦に向けて意気込みを教えてください!
さっきもちょっと言いましたし対談の時も言ったんですけど、例えばリーグ戦の1試合に勝った負けたって、多分おじいちゃんになった時にそんなに覚えているか分からないですけど、ただこの4年で迎える早慶戦というのはおそらく一生忘れなくて、一生この仲間とも話し続けるし、それだけやっぱり価値のある試合だと思いつつ、それだけの試合に向けてできる準備は全てしたいですし、本当に何としてでも勝ちたいと、これまで負けてきて、何でもいいから勝ちたいと思っていて、まあ本当にその言葉に尽きると思います。
(取材 岩見拓哉)