早稲田アリーナが慶應一色に染まった。第59回少林寺拳法部早慶戦が早稲田大学・戸山キャンパスにて行われ、慶大少林寺拳法部は団体戦・立合評価法にて女子戦/男子戦ともに早大に勝ち越し、完全優勝を達成。接戦の末に敗れた昨年の雪辱を果たした。
日程:12月7日(土)
開催地:早稲田大学 戸山キャンパス 早稲田アリーナ
【対戦結果 女子戦】
先鋒 ●15―25
慶大:三澤結(文1・5級)
早大:今村千砂(文2・2級)
次鋒 ○20―10
慶大:市山怜奈(法2・2級)
早大:坂本結衣(社1・三段)
中堅 ●‐1―30
慶大:高橋華(商1・5級)
早大:秋山果凛(教2・三段)
副将 ○15―10
慶大:宮崎姫愛(文1・5級)
早大:徳永文奈(人2・初段)
大将 ○5―0
慶大:湊夏子(法3・初段)
早大:久保田羽菜(教3・三段)
結果:3勝2敗 ➡ 慶應義塾大学の勝利
【対戦結果 男子戦】
先鋒 ○15―ー1
慶大:市川晴喜(経2・三段)
早大:盧弦柱(政経4・3級)
次鋒 ○10―9
慶大:小杉海斗(商3・初段)
早大:堀口詠冬(社1・三段)
中堅 ○45―5
慶大:田邊千明(経3・初段)
早大:高橋佑(スポ3・三段)
副将 ○35―10
慶大:丸尾紘太朗(経2・2級)
早大:大野伊織(創理2・二段)
大将 ○23―5
慶大:吉井大翔(環4・二段)
早大:門田憲樹(商4・三段)
結果:全勝 ➡ 慶應義塾大学の勝利
【最終結果】
総合優勝:慶應義塾大学
※少林寺拳法における階級(級位・段位)は、強さだけではなく、技術の習得度、精神的成長、武道としての姿勢を総合的に評価する。立合評価法の強さのみが階級に反映されるわけではない。
【戦評】
日本発祥の武道の一つである少林寺拳法は、剛法(突き・蹴り)と柔法(固め技・投げ技・関節技)から成り、護身術としても有名である。少林寺拳法早慶戦では、立合評価法(防具をつけて実際に相手と対峙する)により勝敗決定がなされ、制限時間内に獲得した点の高い者が勝者となる。得点に関係しないが、対戦相手や審判への礼儀、道具の扱い方、構えの美しさなども重視される。
※早慶戦・立合評価法ルール
技あり(防具なしで決まった場合相手を失神させ得るほどの技):10ポイント
有効打:5ポイント
場外:‐1ポイント
・ポイント獲得の有無は主審1名・副審2名の判定により決定
・男子戦/女子戦はともに前後半1分間・2ラウンド制(小休憩あり)
・本戦には部内で選抜された男女各5名が出場
・両戦ともに先鋒戦、次鋒戦、中堅戦、副将戦、大将戦の5試合を戦う
・礼儀作法は“早慶戦のみ”点数にならない
【女子戦】
早大は5人中4人が有段者と実力者を揃えた一方、慶大は5人中1年生3人を選出するフレッシュな陣容で臨んだ。慶大は先鋒戦を落とすも、次鋒の2年生・市山が逆転勝ちでチームを勢いづける。その後、中堅・副将戦と2人の1年生が試合を繋ぎ、2勝2敗で大将戦へ。試合最終盤に有効技を決めた3年生・湊が大将戦を制し、トータルスコア3勝2敗として慶大に勝利をもたらした。1年生たちの懸命なプレーに、上級生が結果で応えた勝利だった。
先鋒:三澤結(文1・5級) ●15―25
女子戦の先陣を切ったのは1年生の三澤。対する早大・今村は昨年の早慶戦でも先鋒として勝利をおさめた実力者だ。相手にリードを許す中でも積極的に前に出るプレーを見せ、後半には中段突きや上段突きで有効を獲得したが、最後まで点差を詰めることができなかった。
次鋒:市山怜奈(法2・2級) ○20―10
次鋒を務めたのは2年生の市山。積極的に技を繰り出す早大・坂本に対し、間合いを上手く使い対応。5-10と先行されてむかえた後半、市山は開始早々に上段突き(有効)で追いつくと、中段突き(有効)で勝ち越し、さらに上段突き(有効)で突き放した。試合はそのまま20-10で勝利し、1勝1敗の五分に戻した。
中堅:高橋華(商1・5級) ●‐1―30
中堅を務めたのは1年生の高橋。大会直前に体調不良者が出たことにより、急遽早慶戦での大役を任された。序盤から早大・秋山の素早い攻撃に苦戦。前に出て積極的に技を繰り出すも、中段突きで技ありを許すなどその後もリードを広げられた。
副将:宮崎姫愛(文1・5級) ○15―10
1勝2敗と後がなくなった慶大の副将を任されたのは、三澤や高橋と同じ1年生の宮崎。早大・徳永との一戦は接戦となった。5-5でむかえた後半、宮崎が上段突き(有効)でリードするも、すぐさま徳永も上段突き(有効)を決め同点に。互いに決め手を欠く中むかえた試合終了間際、宮崎の中段突き(有効)が決まりこれが決勝点。慶大が副将戦を制し、2勝2敗で勝負は大将戦へ!
大将:湊夏子(法3・初段) ○5―0
勝負の行方は大将に託された。大将・湊は今大会チーム唯一の早慶戦経験者。昨年は次鋒を任されるも敗北を喫し、その後チームも接戦の末に敗れていた。早大大将・久保田との試合は終盤まで膠着状態となった。“前に出る久保田、その隙を狙う湊”の戦いは、0-0でむかえた残り時間5秒、一念攻撃に転じた湊が上段突きで有効を決め切り、これが決勝点。大将戦を制し、慶大に2年振りの早慶戦勝利をもたらした。
【男子戦】
女子戦の興奮冷めやらぬ中行われた男子戦。2勝3敗で惜敗した昨年の雪辱を果たすべく、大将・吉井を筆頭に総合3位となった先日の全日本選手権の主力級を揃えこの一戦に臨んだ。先鋒・市川の快勝に始まり、次鋒、中堅と3連勝で勝ち越しを決めると、その後も攻撃の手を緩めることなく大将戦まで5連勝で締めくくった。攻撃だけではなく、間合い/フェイント/技のかわし方など一人一人の防御の巧みさも随所に垣間見えた勝利だった。
先鋒:市川晴喜(経2・三段)○15―‐1
先鋒を務めたのは2年生ながらチーム屈指の実力者である市川。中学生から少林寺を始めていた彼の動きには無駄がなかった。前半には上段突きで技ありを決めるなど、独特の間合いから繰り出す素早い攻撃で得点を重ね、15--1で勝利。チームに勢いをもたらした。
次鋒:小杉海斗(商3・初段)○10―9
次鋒は、昨年も先鋒として早慶戦に出場した経験豊富な3年生・小杉。対する早大・堀口も中学生から少林寺を続ける実力者であり、試合は接戦となった。5-10とリードを許してむかえた試合終了間際、小杉が中段突きで有効を獲得し、同点。更にその際に場外に出た堀口が1点の減点を受け、10-9と逆転勝利をおさめた。
中堅:田邊千明(経3・初段)○45―5
勝利へ王手となりむかえた中堅戦。慶大・田邊と早大・高橋は昨年の早慶戦でも次鋒戦にて対戦しており、その試合では田邊が勝利していた。試合は終始田邊のペースに。左右どちらからも強烈な突き/蹴りを繰り出す彼の攻撃は相手につけ入る隙を与えなかった。
副将:丸尾紘太朗(経2・2級)○35―10
副将は、演武での実績をもつ2年生・丸尾。大会直前にインフルエンザに罹り、1週間練習ができない中試合に臨んでいた。「試合中に感覚を取り戻していった」と本人が語るように、試合が進むに連れて動きにキレが増し、次々に技を決め相手を突き放した。
大将:吉井大翔(環4・二段)○23―5
後輩4人が繋いだ勝利のリレー。そのアンカー大将戦を託されたのは主将・吉井。早大主将・門田との主将対決は、序盤は膠着状態となった。しかし中盤以降、先に有効を獲得し主導権を握った吉井が隙を突いた速攻やカウンタ―の上段突きなどで得点を重ね、23-5で大将戦に勝利。自らの拳で慶大完全優勝を決めた。
今大会では、優勢時/劣勢時どんな時でもチームメイトを鼓舞する部員たちの姿が印象的だった。大学から競技を始めた初心者が部員の8割である慶大少林寺拳法部では、今年度から“中心(幹部)から外(部員)へ”幹部が原動力となり周りを巻き込みつつ、 “外から中心へ”部員全員の意見を取り入れる「一丸運営体制」を運営方針とし鍛錬を重ねてきた。
少林寺拳法には「組手主体」という修行の基本ルールがあり、技や間合いの見切りなどを実践するにあたり、2人1組で練習をおこなう。技の上達には、自身の事ばかりではなく相手の事も考えて練習すること、その上で互いが切磋琢磨して助け合うことが大切となる。強い仲間と共に練習するからこそ個人が、そしてその練習相手が成長し、部全体の強さに繋がってきた。
学年を越えた絆と日々の練習で培った自信がもたらした完全優勝だった。少林寺拳法部は、経験の浅い下級生/模範を示す上級生その誰もが支えを受け前向きに挑戦できる、そんな温かさ溢れる部活である。
吉井主将の試合後インタビュー記事も併せてごらんください!
【少林寺拳法】「辛く、楽しく、最高の4年間でした」早慶戦優勝インタビュー 吉井大翔主将 | KEIO SPORTS PRESS
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(取材:竹腰環)