慶應スポーツ新聞会

【競走】特集 義足アスリート 高桑早生

高桑選手。手に持っている義足のお値段は...インタビューをご覧ください!

競走部特集第3弾はパラリンピックを目指す義足アスリートの高桑早生選手(総1)。先日行われた大会では100mで日本記録へ0秒12に迫る13秒96を記録した。そんな高桑選手に陸上に対する熱い思いから障害者スポーツを広めたい大きな志まで、様々なことを語っていただきました。

 また、高桑選手はブログもやられていますので、そちらも是非ご覧ください!

――まずは、Webページを見る方への自己紹介を

高桑早生、総合政策学部1年で出身校は東京成徳大学深谷高等学校です。種目は短距離で100m、200m、走幅跳をやっています。

――その競技種目を選んだ理由は

元々短距離走が好きだったので始めました。走幅跳は周りにやっている方がいらして、それでやってみようかなと思って始めました。

――慶大を志望された理由は

SFCの義足のデザインの研究をしている研究室と縁がありまして、そこのモデルをやらせていただいてから、興味を持って、志望させて頂きました。

――障害者競技を大学でやられているのは一般的なのか

何人かはいます。男子で義足で大学の陸上部でやっている人もいます。あとは視覚障害で大学の陸上部に入っている人もいます。ユース世代があまりいないので多くはないですけど、私と同じ世代で競技をやっている人は大学の陸上部で競技をやっています。

――競走部の雰囲気は

元々1人で練習することが多かったので、自分で考えて練習をやっていくのはとてもやりやすい環境ですね。

――高校の時と比べてどうですか

一番良いのは速い人を近くで見れたり、一緒に走ったりできるのが私にとって一番大きいですね。高校ではあまり無かったことなので。

――キャンパスライフはどうですか

今は部活の方を一生懸命やっていますが、普通に楽しく過ごさせてもらっています。

――勉強の方は

高校の時とは違っていろいろなものに触れられて楽しいです。

――特に力を入れてやっているジャンルは

自分が勉強していきたいこと、将来関わっていきたいことが障害者スポーツであったり、障害者と健常者ということなんです。そこについて考えていきたいので、社会学とか心理学とか、そういったものを意識して授業を取っています。

――1人暮らしでは自炊も大変では

そうですね。自炊もしています。親のありがたみを感じています。

――陸上を始めた経緯は

スポーツはテニスをずっとやっていて続けていくつもりだったんですけど、私の義足を作って下さった方、その方も義足をはいていらっしゃるんですけど。都内に切断者のスポーツクラブがありまして、そこでは主に陸上競技をやっていて、そこに行ってみないかと誘われてですね。そこで特殊な形状の義足をはいていらっしゃる方たちを見て、単純にかっこいいなと思って。ちょうど高校に上がるタイミングでもあったので、新しいことを始めてみようと思って、陸上競技を始めました。

――始めて義足を履いた時はどうでしたか

難しいですね。私たちは歩くところから始めるので。私の場合はこういうの(右の写真)を履いているんですけど、いきなりこれを履いたわけではなくて、これを小さくしたバネで練習して、大きなバネで慣れるのは早かったです。でも、つま先立ちみたいな感じになるので、バランスが取りにくいんです。慣れるのには時間がかかりましたし、使いこなすまでには私は全然至っていないですね。最初はやっぱり難しかったです。

――義足の改良は進んでいるんですか

基本の形状はこれだと思います。改良は進んでいるのかは分かりませんがこれが一般的な形になっています。いろんな部品があって、それを組み合わせて作る感じになっています。

――ブログで大分県が思い出の地と書かれていましたが(高桑選手のブログはこちら)

初めての国体が大分県だったんです。健常者から見たら特殊だと思うんですけど、せっかく陸上部に入ったので「ちょっと障害者の大会に出てみよう」と思って出たのがたまたま国体の予選会だったんです。全然意識していなかったんですけど。障害者の国体には50mっていう競技があって、それに試しに出たらそこそこな記録が出て、埼玉県選手団に選んで頂いきました。そこで今まで自分が出会ったことの無いような色んな人と出会って、いろんな種目を見たりとか、数日間で大きな経験をさせてもらいました。それが本格的に陸上をやろうと思ったきっかけにもなりましたね。こないだは久しぶりに大分に行ったのですごく感慨深かったですね。

――いろんな選手と触れ合うという話もありましたが、目標としている選手は

今、日本の女子のスプリントで私と同じ下腿義足でやっている方が2人いらっしゃって、1人はロングジャンパーなんですけど。陸上を始めた時はお二方とも素晴らしい選手で、憧れていました。でも、今は私もその2人の近付けているなって思うので、目標と言うよりは2人と競えるようになりたいですね。特に1人の方は100m専門でやられているので、今度一緒にレースする時は勝ちたいくらいです。今までは勝ちたいなんておこがましいくらいだったんですけど、今は目標としている選手たちと競えると。ライバルは言い過ぎですけど、自分がそのくらいの選手になってきたので、意識する存在ではあります。

――今シーズン、記録を大きく伸ばされていますが、経験はこの競技において重要か

重要ですね。この義足を使いこなすのが本当に大変なので。私も記録を伸ばしてこれたのは高校とは違う慶應の競走部っていう環境で毎日練習させてもらうが大きな力ですし、それによってやっと使いこなせるようになってきたと思います。使いこなせるようになってきたのが記録が出てくるようになってきた要因ですね。

――使いこなすようになるには時間が掛かる

私の場合は3年ということになりますね。3年やってきて、やっと今の結果に繋がったので。でも、まだまだ自分の足になっているっていう感覚ではないですね。こいつに自分の血が通う位にしたいと意識しています。

――高校時は健常者の大会にも出いらしたんですよね

はい。高体連の大会にも出させていただいていました。高体連の大会ってエントリーすれば出られる大会なので、突破とかそんなとこまでは行かないんですけど、健常者の学生と走るのはすごく刺激にはなりますし、出れる大会には出させて頂いていました。

――障害者と健常者の大会の両方に出てみて感じる違いは

やっぱりまずは競技人口ですね。障害者の大会ってカテゴリー別で分かれるんですよ。義足の人と車いすの人で同じ着順を付けるわけにはいかないので。下腿切断は下腿切断、大腿切断は大腿切断って。そうなると、下腿切断でレーンって埋まらないんですよね。私が出る大会は下腿切断は私一人で、あとは大腿切断の人とか上腕切断の人と一緒に走るんです。だから、同じ競技レベルの人と一緒に走る機会って無いんですね。健常者の大会に出ると、確実に私より速い人たちと走るので、とても刺激になりました。

――共通点は感じますか

障害者の大会でもレベルの高い大会に出ると、健常者のアスリートの方と全く変わりは無いと思います。練習内容とか練習量、意識だったりも。

――日本の障害者競技の現状は

練習中の高桑戦選手(写真提供:ご本人)

まずはメジャーじゃないですね。障害者競技って広まってきたとは思いますけど、根本を言ってしまうと、健常者のスポーツと障害者のスポーツって管轄が違うんですよ。普通のスポーツって文科省ですけど、私たち障害者スポーツって厚生労働省なんですよね。その時点でいろいろと摩擦があって、障害者がどれだけスポーツを頑張っても、どれだけ上を目指そうと国の制度的な見解はリハビリとか趣味なんですよ。だから、あんまり広まっていかないのかなって思います。パラリンピックも北京からダイジェストを取り上げてくれるようになったくらいで、メディアもあまり取り上げてくれないですし、行政側もあまり協力してくれないのが現状です。いろんな方の力が無いと知ってもらうことはできないですし、今は頑張っているんですけど個人の力で盛り上がりを保っています。欧米とかだと同じ扱いなんですよ。障害者も健常者も同じアスリートとして練習できたりするので。元々競技人口が少ないのもあるんですけど、目立たなさすぎる感じがしますね。障害者スポーツっていうのは。

――そこを盛り上げていきたい気持ちはあるか

ありますね。自分が頑張るのももちろんですけど、将来大学を卒業して仕事をした時に障害者スポーツを絡めて仕事ができたらいいなと思っています。

――早い話ですが、卒業後は競技を続けられるんですか

何年かはやりたいですね。私の場合は漠然となんですけど、多分自分の体にタイムリミットが来ると思うんですよね。障害者スポーツって長くできるって言われているんですけど、私の中では「ここでやめ!」っていうタイミングが来るかなって思っているので、そんなに長くやるつもりはないんです。やめたとしても自分が生かせる部分なので、なんかしらに関わって生かしていきたいと思います。

――次に今シーズンについて伺います。今シーズンの調子はどうでしょうか

すごく良いですね。良い練習をさせてもらっているので、とても伸びます。

――メニューは自分で決めているのか

基本的には自分で決めたりだとか、先輩と一緒にやらせてもらったりですね。

――障害者スポーツで関係のある方にアドバイスをもらったりは

アドバイスももらったりします。仲間内でアドバイスし合ったり。あとは、埼玉県で良くしてくれるコーチがいらっしゃるので、その方にアドバイスをもらったり、調整メニューを出してもらったりしています。

――関東大会の結果は

100mが14秒19で200mがほとんど初レースだったんですけど、31秒82くらいでした。100mは一度13秒台を出してしまったので、セカンドベストではあるんですけど、悔しかったですね。自己ベストを出した大分の時のような勢いが感じられなかったので。200mも不完全燃焼で終わってしまって、悔しい試合でしたね。ただ、反省点とか気付いたこともあったんで、200mも出て良かったと思います。

――今後のレースは

今週末に障害者の国体があるので、それに出場します。

*この取材は10月11日に行いました。

――毎週レースがある

そうですね。ここ1カ月1週間刻みでレースがあるんですけど、山口が終わったらひと段落して冬季に入る感じです。

――毎週レースがあることは今まであったのか

ここまで続くのは初めてですね。それも大きな大会ばかりが続くのは初めてです。障害者の大会って日付が移動しちゃったりして、今回はその結果でもあるんですけど、初めてのことですね。調整とかは大変なんですけど、勉強になりました。

――疲れは溜まりますか

それはありますね。でも、疲労との付き合い方とかも今回勉強になりました。

――遠征に思い出はありますか

いろんなとこにいかしてもらうのは良いですね。やっぱり大分県が思い出深い意味で、行くと「大分来たな」って感じがして良いですね。

――来年のパラリンピックは意識しますか

がっつりしますね(笑)こないだの関東大会が標準記録の突破の大会になるので、そこに合わせてやってきました。来年の3月まで選考になるんですけど、この後も意識しつつ練習していきたいと思います。

――陸上をやっていて良かったなと思う瞬間は

こんなに一生懸命になれるのがテニスもやっていたんですが、とにかく初めてですね。自分の体を目一杯使える競技なので、そこが自分にとって楽しいですね。

――周りの方のサポートは

親の存在は本当に大きいですね。義足はとても高くて、これは基本的に自費なので親には助けてもらっています。

――おいくらくらいなんですか

これ一本で60万とかです。下腿義足なので60万で収まっているんですけど、板バネも消耗品で割れてしまったりするので、お金が掛かる競技です。競走部のみなさんもとても理解があって、興味を持ってくれたりするので、すごく嬉しいですし、感謝しています。みんな暖かいですね。いろいろ指導してくれたり、興味持ったりしてくれるので。そういった部分も嬉しいです。

――今後目標にしているタイムは

今シーズン中に13秒台を出すのが短期的な目標でした。それをこないだのジャパンパラリンピックで達成したので、今後は13秒台を出し続けるのが目標です。中期的な目標としては日本記録を狙いたいと思っています。日本記録は13秒84なので、こないだのタイムを出せるようになれば不可能ではないと思うので、狙っていきたいと思います。

――世界と比べると日本の記録は

日本のトップの方が世界ランキング4位に付けている人なんですけど、外国人選手はポテンシャルが半端ないです(笑)でも、努力次第では日本のレベルも肩を並べることは不可能ではないと思います。

――好きな言葉や印象的な言葉は

自分が心の隅に置いているのが「初志貫徹」です。中学時代に病気のこととか、切断のことで思い悩んだ時期にお世話になった先生に頂いた言葉なんです。自分の中で切断してからは第二の人生と思っていて、歩くとこから始めたんですよ。人間って生まれてからは歩くことが最初の目標じゃないですか。それをもう一度経験して、人間が自然にできる走ることも意識しながらやらなければいけない。そこから始めたんで、そういう歩きたい、走りたいっていう気持ちを忘れたくないなと思っていて、先生に頂いた「初志貫徹」という言葉を心の隅に置いて、何事にも取り組もうと思っています。

――Webを見ている方へメッセージがあればお願いします

自分が言うのもおかしいんですけど、慶應競走部っていう伝統ある部活に障害者スポーツっていう新しい風を持ってこれたと思っています。障害者スポーツには陸上だけじゃなくていろんなスポーツがあるので、興味を持って頂けたら、見に来ていただけたらと思います。障害者スポーツってどんなものも本当にエネルギッシュでパワフルなんですよ。私も障害者スポーツの世界に慶應の名前を轟かせていきたいですし、慶應には推進の先頭に立ってもらいたいです。運動やっている方だけではなく、慶應にいる方みなさんに障害者スポーツを知って頂けたらいいなと思います。

――高桑選手、お忙しい中ありがとうございました!

 



By Tomoki Kakizaki

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