破壊力抜群の慶大のアタッカー陣を活かせるかはこの二人に掛かっている。リベロの前田優(環3)とセッターの野口(環1)。春先は二人でセッターのポジションを争ったが、その後前田がリベロにコンバートされ、コート上に二人のセッターが顔をそろえることになった。前田のレセプションを野口がトスでつなぐ。慶大の攻撃はこの二人によって演出されている。
-秋季リーグを振り返って
前田 自分が初めてスタメンとして出て、しかも今までやったことのなかったポジションとしての初めての公式戦だったので、とにかく自分のことで精一杯だったというのが振り返っての印象ですね。今までよりも高いレベルで1部のチームと張り合えるようになって、通用する部分とそうでない部分がはっきりしたので、通用する部分はもっと磨いて、通用しなかった部分はなぜそれが駄目だったかということを考えて、もっと別の方法を探していけたらなと思います。
野口 自分は高校ではセッターという経験は浅かったから、不安がありました。でも、自分が上げたトスをスパイカーが決めてくれて、それなりの結果が出せたと思うので、その点では良かったと思います。
-1部で6位という結果でした。昨年と比べると大きな成長だったと思いますが、どのような点が変わりましたか
前田 そうですね、個人的な印象なんですけど、柳田(環1)が加入し、岡田(商2)も去年とは比べものにならないくらいに成長したことで、それまで攻撃面でも頼りっぱなしだった間宮(政3)をキャッチに専念させることができ、攻撃力がすごく増しました。なので攻撃面での成長はすごく大きかったと思います。あとは、守備面でもっと上に食い込めるか食い込めないかですね。サーブキャッチもスパイクレシーブも、うちよりも下の順位のチームよりも自分を含めて悪いと感じたので、そこは改善していく必要があるかなと思います。
野口 自分は個人的な部分で精一杯で、キャッチが悪いというより、自分がそれをスパイカーが打ちやすいところに持っていくことが仕事だと思っているので、とりあえず自分のことをしっかりやろうという感じでした。
-東海大や中央大など、1部の強豪校との対戦はいかがでしたか
野口 自分はあまり上手くないので、トスで相手を振ろうというより、こっちの強いところで勝負するしかないと考えていたので、岡田さんやマサ(柳田)に頼りました。その点では自分にあまり余裕が無かったということなので、これからの試合ではもっと落ち着いて、自分がしっかりと攻撃を組み立てられるようにしないといけないというのを実感しました。
前田 リベロとして、六大学交流戦では始めたばかりでできなくて当たり前という気持ちもあったことで精神的に楽だったのかもしれないですけど、自分的には良い結果を出せました。でも、秋季リーグには一つの大会をすでに経験して臨むことで、それなりの責任もついてくる訳で、そのプレッシャーに負けてしまった部分が何回もあって・・・技術面はもちろんですけど、今までやったことのないポジションということに対して精神面でも慣れていかないといけないなと。
-前田選手は間宮選手と共に守備の要としてどのような意識を持っていますか
前田 間宮がキャッチは一番上手いので、間宮に任せるのがいいとは思うんですが、間宮も攻撃陣の一人なので、守備のために入っている自分がキャッチにしろスパイクレシーブにしろ一番良いボールをあげてチームに貢献しなきゃいけないと思いながらプレーしてました。
-宗雲監督が目指している「レシーブの慶應」に近づきつつありますか
前田 意識としては近づきつつあります。結果としてはまだ出ていないのですけど、みんながレシーブをしっかりしようという意識を持っているので、それが実を結ぶかどうかですね。
-野口選手は全試合スタメン出場でしたが、戦い終えたご感想は
野口 六大学交流戦とか早慶戦ではふがいない自分がずっといて、リーグ戦の自分でも駄目だとはわかっているのですが、慶應に入ってセッターになった当初からは成長できたと思います。
-サーブ賞も2位でしたね
野口 そうですね(笑)まあ、一応高校の時からサーブは得意だったので。セッターとして攻撃で点数が取れない分、サーブとかレシーブでチームに貢献できるようにしたいですね。
-柳田選手や稲田選手(環1)など、1年生の活躍は刺激となっていますか
野口 なります。柳田はもともと高校の時からすごい選手だとわかっていたので、柳田が決められるように自分もしっかりトスをあげなければいけないと思っています。稲田だって実力的にスタメンで使えると思っているので。年齢的には一番下だけど、1年生が引っ張っていけたらチームのプラスになると思うので。
前田 もともとうちのチームは4年生が試合に出ていない、「若いチーム」と言われていて、4年生の出ているチームにはその良さもそれぞれあると思いますが、若いチームには若いチームなりの良さがあると思うので、1年生からチームを盛り上げていけばいいと思います。僕もリベロとしては1年生のつもりでやっているので(笑)
-春先はセッターのポジションをお二人で争っていましたが、負けたくない気持ちはお互いにありましたか
前田 うーん(笑)・・・実際は僕、セッターしかやったことなかったので、「僕がセッターっしょ」っていうつもりでやっていて、(野口)剛志郎がバレー部に入ってきた時も、「僕があげるっしょ」というノリでやっていて。そこで監督からいろいろ話がありまして。まあ、僕にはいかんせん高さがないので、ごまかしながら今までバレーをしてきたのですけど、それでは大学のレベルでは通用しないということで。剛志郎はもともとアタッカーで高さは十分ですし、使えるセッターであれば剛志郎を使うと。そうなると僕には行き場が無くなってしまうので。僕からすると、試合にとにかく出たいという気持ちがあったので、剛志郎にセッターを譲るにしても、何らかの形では試合に出たかったんです。そこでリベロ転向ということになりました。
野口 自分は大学でバレーをやるならセッターしかないと思っていて、高校の監督からも「お前はセッターでやっていけ」と言われていました。反射神経とかがあまり良くなく、リベロは絶対無理だし、小さいからスパイカーとしても無理なので、慶應に入った時はセッターをやりたいという思いしかなくて。セッター力も、レシーブ力も最初から優介さんに負けているのはわかっていたので、どこかで取り返さないと正セッターにはなれないじゃないですか。だから、サーブとかブロックとか少しでも勝てるところを紅白戦などで頑張ろうと、ずっと考えていました。
-前田選手は1年間リベロを続けて、考え方の変化などはありましたか
前田 僕は小学校の時からバレーをやっているのですけど、始めた時からセッターだったんです。セッターというのは陰の存在で、試合に勝ったらアタッカーのお陰、負けたらセッターのせいだと言われ続けてきたので、キャッチが返って来ないとセッターとしてはコンビも組めないしどうしようもないという思いが強くて、今まではキャッチに対してはすごい厳しい目を持っていたんです。なんで今のボールきっちり返って来ないんだって。でもリベロをして初めて、どんだけ返すのって大変なんだ、と(笑)だから、それぞれのポジションに難しい部分が絶対にあるという考え方ができるようにはなりました。
-セッター経験がリベロにとても活かされていると思いますが
前田 リベロには他に中出(環3)と川村(環3)がいて、その二人よりサーブキャッチは下手だということはわかっていて、それでも試合に出させてもらっているということは、それ以外に監督に買われている部分があるということだと思うんです。自分がその買われている部分として感じているのは、相手味方を含めた、周りを見る目です。僕はセッターの経験から、視野が広いということには自信があるので。あともう一つは、やっぱり二段トスですね。これを攻撃に繋げることができるのは、リベロとしては僕だけしかいないと思っているので。その二点は自分の強みだと思っています。
-なかなかあのようなトスをあげられるリベロはいませんよね
前田 確かに(笑)本当はちゃんとあげた方が良いんでしょうけど、そこら辺につい楽しさを求めてしまって。
野口 はははは(笑)
前田 剛志郎が1本目取ると、僕がトスじゃないですか。剛志郎にもここら辺に1本目をあげて欲しいって、毎回指示して。相手を騙したいなっていう気持ちがあって、申し訳ないけど楽しませてもらっています(笑)
-野口選手から見て、リベロの前田選手は
野口 もう、頑張っているとしか言いようがないです。
前田 そうです。
野口 自分も今のポジションとしての経験は浅いわけで、とりあえずスパイカーの打ちやすいところに自分ら2人で持っていくみたいな。無心で頑張っています。
-野口選手はワンセッターに専念するのは今年が初めてだそうですが
野口 高校の時はツーセッターでスパイクもレシーブもしていた訳で、別に自分がしっかりあげられなくても、その分主将でもある自分がしっかり決められれば良いという考えでした。今は全てをスパイカーに託すという感じですね。
-打ちたいと思ったりは・・・
野口 まあ、あります(笑)ありますけど、体があまり動かないというか、スパイクの感覚を忘れちゃっている気がします。最近練習でもたまに打っているのですけど、思うようにいかないです。
-前田選手から見て、野口選手のトス回しはいかがですか
前田 自分としては、セッター時代の僕と剛志郎は真逆のタイプのような気がして。僕の考えている方とは違う方にあげたりしますね。考えは人それぞれなので、僕の意見を押し付けたりはしませんけど。あと、トスがすごくきれいです。僕は手が小さくてトスには限界を感じているので。剛志郎があげたトスにきれいだなーって見とれちゃって、ブロックフォローを忘れたっていうことも・・・(笑)
-セッターとしてのお二人のポリシーは
前田 セッターは陰と言われていますが、僕がセッターをやっていた時は、「エースよりも僕が目立ちたい」という気持ちがやばくて。だから、なるべくアタッカーに楽に打たせるというか、ノーマークにさせたらアタッカーは打つだけで決まるじゃないですか。だから、その状況を作り出した僕がすごいというか。縁の下の力持ちっていう感覚は全く無くて、自分がチームを勝たせるというポリシーを持っていました。
野口 全く同感です。セッターなくしてアタッカーはなしと言わせたいですね。
-プレーとは関係なくなりますが、お互いのコート外での印象は
野口 え、コート外・・・・優介さんいいですか?
前田 いいよいいよ、でも僕の人格が壊れないぐらいにしてよ!
野口 好きなことに一直線という感じの人ですね、優介さんは。ある分野においてはめちゃくちゃ好きで、こだわりを持っていますね。
前田 マンガとか!・・・・少女マンガとか!
野口 言っちゃった(笑)
前田 まあ、少女マンガくらいなら大丈夫です。それ以上はちょっと・・・(笑)
-前田さんから見た野口さんの印象は
前田 僕も剛志郎もSFC(湘南藤沢キャンパス)なんですけど、僕、結構人見知りで、バレー部以外の友達が少なくて・・・でも剛志郎は入った時から友達多くて、他の部の誰がどうとか、友達をめっちゃ作ってて。
野口 正直、人見知りですよ、むちゃくちゃ(笑)
前田 それを見て、「ああ僕、入り方間違えたかな」みたいな。もちろん僕も友達いますけど、そういうの良いなって思ったりします。
野口 友達の友達になるのが得意です。自分からいきなりこの人に友達になろうというのは無理ですけどね。
-ここから全日本インカレに向けての話題を伺います。秋季リーグ終盤にかけ、アタッカー陣とのコンビが増えていきましたね
野口 そうですね。自分のトスが落ち着いてきたということは昨日監督からも言われました。最初から比べたら自分でも成長を実感しています。前はトスをあげた後に「なんか違うな」と感じていて、でもなぜそうなるのかがわからなくて・・・でもリーグ戦を通じて、指の感覚かどうかわかりませんが、クイックとかは前に比べたら安定してきたと思うので、さらにそれをどれだけ高められるかがこれからのチームの勝敗のカギだと思っています。最高の状態でインカレに臨めるようにしたいですね。
前田 そうですね、本当にそうです。順当にいけばベスト8で東海大と当たるということで、秋季リーグではサーブキャッチで嫌というほどボコボコにされたので、速いフローターサーブに対するキャッチを重点的に練習しています。インカレまでには自信を持って返せるようにしたいです。
-宗雲監督は慶應がもう一段レベルアップするためには「野口がもっとセッターらしくなる必要がある」とおっしゃっていますが
野口 自分でも痛いほどわかっています。リーグ戦でも自分のトス回し次第で勝てた試合がたくさんあったので・・・
前田 いやー、まだアタッカーとしての名残が出ちゃっていますよね。これだけのアタッカーがいるということに楽しみを見出して欲しいです。「これだけのアタッカーがいるんだから、勝たせなきゃ俺のせいだ」と抱え込むのではなく、「これだけのアタッカーがいるんだから、振り方次第じゃ俺が目立てる」という気持ちで臨めばいいと思います。
-どんなトス回しをインカレではしたいですか
野口 コンビをすることはもちろん大事ですが、まずはしっかり打たせることが大事だと思っていて、そこからコンビを組むということが大前提だと考えています。今まで柳田とかは全て平行トスで、岡田さんもライトばっかりだったから、前衛をマークさせておいてバックアタックを良いところで使うとか、今までとは違ったコンビを使わないと相手もついてくるので。トスを速くしながらもしっかり打たせることを意識したいです。
-宗雲監督・泉水コーチ共に前田選手の負けん気の強さは不可欠とおっしゃっていましたが
前田 負けることは大嫌いなので。実力が無いとわかっていても、気持ちでは相手に勝つというか、そういう気持ちで臨めば、返らないボールも返ったり・・・わかんないですけど、弱気になるよりはマシじゃないですか。だからいくら強い相手でも、とにかく気持ちは強く持っていくことを僕の中では大切にしています。
-昨年の全日本インカレの中央大戦では、前田選手はセッターとしての出場でしたね
前田 急な出場だったのですごく緊張したのもあったんですけど、自分のプレーもできなかったですし、すごく悔しい思いもあってセッターをもっと頑張ろうとも思ったのですが、それ以上に、大きな舞台で強い相手に対してコートに立つということにすごい楽しみを覚えました。この頃から、とにかくコートに立ちたいという思いが強くなりました。
-今年の全日本インカレの組み合わせについては
前田 僕の中では、ベスト8以上はどこと当たろうが差は無くて、どこと当たっても自分たちの精一杯のプレーをして、それが上手く噛み合えば優勝もできるのではないかと思っています。東海大に対しても、近大に対しても自分たちの戦いが100%できるかが大切だと思っています。
野口 優勝を目指している時点でどこと当たっても勝たなければいけない相手だとわかっているし、優介さんが言った通りにどこと当たろうが自分たちの最高の戦いをすれば結果は後からついてくると思っているので。全員が精一杯の力を出すことを意識して。相手がリーグ戦で負けた相手だと意識するのではなく、当たって砕けろ的な思いで。
-近大とは夏合宿での対戦がありましたが、印象は
前田 やっぱり関東とは違った戦いをしてくるので、前に対戦したからといって手こずる部分はあると思うんですよ。そういうところに対して柔軟に対応して、とにかく勝ちをとりにいきたいです。
-リーグ戦で敗れた東海大・中央大とも当たりますが・・・
野口 試合中の3セット目とかは、向こうがサーブ打ってくる時に相手ブロッカーが、あまり大したことないなとか話しているのが聞こえてきて、相手は油断しているところもあると思うので、そこにつけ込めば勝てると考えています。なめられたくないです。
前田 この2チームにはほとんど自分たちのプレーができなかったというのがあって、他の負けた試合に比べて悔いの残り方が尋常ではなかったです。もっとできたんだっていうところを周りにも、東海大にも中央大にも見せてやりたいですね。
-最後になりますが、全日本インカレへ向けての意気込みをお願いします
野口 4年生がコートに立っていない分、4年生の思いを自分たちが慶應の代表としてしっかり持って、最後に4年生から「勝ってくれてありがとう」とか「お前たちがそこまで頑張ってくれて負けたなら仕方ない」とか、そういう言葉をもらえるくらいに、1・2・3年生でしっかり戦いたいと思います。
前田 内容はもう抜きにして、とにかく勝ちにこだわりたいと思っています。僕の調子が悪くても、試合に勝てればそれで良しで、自分の調子うんぬんでテンションとか試合に対しての思いを変えるのではなく、最後の1点が終わるまでその試合に対して勝つという思いを絶対に消さないで精一杯頑張りたいと思います。
-前田選手、野口選手お忙しい中、ありがとうございました
ByTakuma Furuoya
♦前田優介
168センチ、63キロ。最高到達点305センチ。宮崎・日向学院高出身。環境情報学部3年。ポジションはリベロ。
♦野口剛志郎
174センチ。72キロ。最高到達点315センチ。福岡・東福岡高出身。環境情報学部1年。ポジションはセッター。
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