【ソッカー(女子)】〈展望〉勝てば入れ替え戦 引き分け以下で自動降格も 初勝利のロマンと勝ち点のそろばんをいかに弾くか/第40回関東大学リーグ1部後期第11節(最終節) 兼第25回早慶女子サッカー定期戦 VS早稲田大学

ソッカー女子

 11月1日13時から、慶大下田グラウンドで関東大学リーグ1部後期第11節(最終節)兼第25回早慶女子サッカー定期戦が開催される。 

 女子サッカーの早慶戦は定期戦通算24試合を慶大の0勝4分20敗。リーグ戦などの公式戦を含めても39試合を慶大の0勝6分33敗。慶大が勝利したことは一度もない。

 1部リーグは9位以上で残留が確定。10位と11位が1部・2部入れ替え戦に進み、12位(最下位)が2部に自動降格となる。

 21年以来5季ぶりの1部を戦う慶大は、10月31日現在11位。入れ替え戦以下(10位以下)が確定していて、最終節で12位に陥落して自動降格となる可能性もある。10位から12位までの3チームは1試合を残し、勝ち点差2の中にひしめき合っている。10位は勝ち点15(得失点差−32)の帝平大、11位は勝ち点14(得失点差−21)の慶大、12位は勝ち点13(得失点差−31)の順大。

 早慶戦初勝利で自動降格を回避できれば、最も美しいリーグ戦の締めくくりとなる。しかし、最終節は全試合同時キックオフなこともあって、そうも単純な話では済まされないかもしれない。

※早慶戦の勝敗記録の出典

伊東武彦,2025,『早稲田サッカー 百年の挑戦』早稲田サッカー 百年の戦績 女子部編,徳間書店,p.103-132.

 

 「どこかいつも近づいているようでなかなか越えられない壁」 。ソッカー部女子のレジェンド・小川愛(令3総卒/現サンフレッチェ広島レジーナ) は早大をそう表現する。ロースコアゲームのサッカーというスポーツで、39試合を戦って一度として勝てていないのだから、運の悪さだけでは片付けられないような差があることは間違いない。

 

 今季の早大は、最終節を残し5位が確定している。インカレ出場を手中に収めているが、なかなか上位争いに絡むことはできなかった。早慶戦に向けた、リーグ戦1試合にかけるモチベーションという意味では慶大とは違うだろうが、2002年の初対戦から無敗を守ってきた誇りを胸に全身全霊で戦ってくるだろう。

 早大は4-3-3システムが予想される。前期の早慶戦で脅威となっていた左WG・小島世里は夏の中断明け以降メンバー外が続いていて、今回の早慶戦も欠場する可能性がある。同じく前期の早慶戦で脅威となっていた右WG・三宅万尋は、前節CFでスタートし、試合途中から右WGにポジションを移していた。前期の早慶戦でCFでスタメン出場していた主将の千葉梨々花はIHやアンカー、CBでの起用も考えられる。10番を背負う﨑岡由真もWG、IH両方を務めるプレーヤー。IHの1枚は福島茉莉花が起用される可能性が高いが、前線の配置は前期での対戦とは大きく異なってくるかもしれない。

 それでも、戦い方の大枠は変わらないだろう。やはり、警戒すべきはサイド攻撃。WGにボールを集め、IHがポケットにランニングし、クロスで攻め込んでくる。「相手は最大限の力を使えるところで、サイドのポケットを使ってくる」(野村亜未(総4・十文字)、前期の試合後インタビューより)

 一つキーとなるのが、アンカーでのスタメンが濃厚な米村歩夏をいかに抑え込むか。慶大はここまで展開力のあるアンカーがいるチームに苦しめられてきた。

 アンカーからサイドへの展開を阻止するためのポイントとして、まずは守備時に5-3-2と5-4-1のどちらのシステムを採用するか。「相手を見ながら自分たちで判断をしていく」(黄大城監督)サッカーを掲げる慶大は、対戦相手の強さ、システム、ストロングポイントやキーマン、次の試合の日程、気候やピッチコンディション、試合状況、さまざまなシチュエーションに応じて5-3-2と5-4-1を使い分けてきた。

 「攻撃からゲームをコントロールするために、前からはめにいく」(黄監督)ことを基調とするだけあって、ローブロックを90分間敷くことは考えづらい。5-3-2の場合、驚異的な運動量を誇る野村、髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)の2トップからプレスをかけ、どちらかのサイドに圧縮し、アンカーを無力化する形になる。前期の早慶戦は5-4-1を採用し、ボールと逆サイドの守備時SHの選手がアンカーを捕まえる守備を試みたが、SHの負担が大きく、どうしてもアンカーを捕まえ切れない場面があった。どちらのシステムを採用し、どんな形の守備をするにせよ、どれだけ連動してボールを奪いに行けるかが最も重要になる。

攻守の架け橋となるファイター・髙松

 スピードのある早大のWGに対し、慶大の3バックの左右、通称レフトとライトの選手がどれだけ1対1で勝てるかということも一つのキーポイント。レフトは宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)のスタメンが濃厚。ライトは竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)、あるいは岡田恭佳(環4・十文字)の起用も考えられる。「自分たちは数的優位をつくってボールを奪う形で守備をしていて、(レフトとライトの選手が)縦を切ってアンカーの選手やウイングの選手が中を消しに来てくれるという共通認識がある」。以前のインタビューで木田遥(総1・十文字)が話していたように、ダブルチームでの対応が肝となる。レフトとライトがディレイしながら、両WB、後期からアンカーに定着した木田が帰陣し、粘り強く守っていきたい。

両足のフィードと対人守備に長けた宮嶋

ビルドアップに落ち着きをもたらす竹内

前線での起用も予想される岡田

中盤でボールを回収する木田

 守備の最重要人物は、やはり米口和花(総3・十文字)だろう。3バックの中央、フィールドプレーヤーの最後尾に米口がいる安心感はとてつもなく大きい。米口は3年生ながら、WEリーグ・三菱重工浦和レッズレディースの特別指定選手に認定されている。大一番でも思う存分実力を発揮してほしい。

圧倒的な能力を持つ米口

 早大の守備はDFリーダー・杉山遥菜を中心に、ここまで21試合で19失点。独走で優勝した山学大と並び、リーグで3番目に少ない数字だ。1試合平均1失点未満の堅守を誇る。

 慶大は守備時5-3-2システムの場合、攻撃時は3-1-4-2の形。守備時5-4-1システムの場合、攻撃時は2ボランチが縦関係になって3-1-5-1の形になる。

 攻撃のキーマンとして佐藤凜(総4・常盤木学園)と福島紗羅メヘル(政1・昌平)の2人を挙げる。佐藤は右IHを主戦場に、ここのところ右WBでの出場も増えている。ボールを落ち着かせ、攻撃のテンポを生み出し、慶大ペースの時間を増やすようなプレーに期待がかかる。福島紗は左WBのレギュラー。もとより得意としていたドリブルに加え、左足のクロスの精度がめきめきと向上している。早大のサイドの選手を押し込み、カウンターを受けない試合展開に持ち込みたい。

止まらないテクニシャン・佐藤

クロスも武器とするドリブラー・福島紗

 得点を奪うのは、言うまでもなく主将の野村だろう。チーム19得点のうち11得点を決めている絶対的ストライカーが、歴史を変えるゴールを決める。前節、待望の今季初ゴールを決めたエース・野口初奈(環4・十文字)のプレースキックも見どころだ。

絶対的ストライカーで主将の野村

10番の意地を見せるエース・野口

 早慶戦は普段以上に4年生の力にかかっている。アタックする守備で流れを変える福島日和(理4・慶應湘南藤沢)、2列目を務めるチャンスメーカー・安達梨咲子(商4・Palos Verdes High School / Fram Soccer Club)の出場も考えられる。右サイドの森原日胡(総2・作陽学園)、山田葵(総2・聖和学園)の2年生タッグや、ハイパーユーティリティー・田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)の起用にも注目だ。

球際の強さが光る福島日

アイデアに期待がかかる安達

カットインで切り裂くオールラウンダー・森原

ここぞで決めるセカンドストライカー・山田

いかなる起用にも応える器用さを持つ田中紗

 

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 2025年11月2日、今回の早慶戦の364日前、TEAM2025は下田グラウンドでのリーグ最終節に勝利し、2部優勝と1部昇格を決めた。試合後のインタビューで黄監督に2026年シーズンの抱負を尋ねると、こう答えた。「正直なところ、すごく苦しい戦いになると思います。4年生に助けられてきましたし、(唯一のキーパーである4年の中村美桜(令8理卒)が卒団するため)キーパーがどうなるか分からないという点でも、本当に厳しいと思います。ただ、ここまで確立してきた自分たちのスタイルを来シーズンも貫いていきたいですし、ソッカー部での4年間を通して何を学べるかということは変わらず大事にしていきたい部分です。だからと言って結果が出ない理由には全くならないので、自分の中で掲げているロマンと勝ち点を取るというところのそろばんをどのように弾いていくかを考えて、選手たちと一日一日向き合いながら、1部でも躍進したいです」。 

 たしかに、苦しい戦いになった。8連敗もあった。ここまで21試合でわずかに3勝。きっと開幕前に想定していた以上に苦しいシーズンとなっただろう。それでも、自分たちのスタイルを貫き続けた。たった一人のキーパー、1年生の四宮里紗(環1・桐蔭学園)が体を張ってゴールを守り続けてきた。26人全員が、出口の見えないトンネルを少しでも光の差す方へ止まることなく歩いてきた。

1対1のセービングに自信を持つ四宮

 今回の早慶戦も、ロマンと勝ち点のそろばんという命題と向き合うことになるかもしれない。

 ロマンは慶應のサッカーを貫くこと、勝ち点は1部残留を目指すこと。ここまでのシーズン、慶應のサッカーを貫いた上で勝ち点を取ることに挑んできたし、今回の早慶戦でもそれは変わらないだろう。ただ、「早慶戦初勝利」というのもロマンの意味合いになり得る。

 もちろん、点差としても内容としても余裕のある展開で進むことが最も望ましいし、1ファンとしてそういう試合を見たいと思う。ただ、そう簡単に進まない可能性も大いにある。負けることは絶対にできないし、当たり前だが負けるメリットは何もない。一方、具体的なシナリオを言及することは控えるが、「引き分けOK」のような戦い方が、場合によっては1部残留への最適解になるかもしれない。得失点差で残留を争う他のチームより優位に立っていることも、どこかメンタルに影響してくるかもしれない。

 同時キックオフの他会場の経過をチーム全体で共有しながら、1部残留への最適な戦術やプレーを選択することは、このチームが貫いてきた「相手を見ながら自分たちで判断をしていく」サッカーに何ら矛盾しない。ただ、他会場の経過をベンチのスタッフだけに留める選択をしたとしても、あるいはベンチのスタッフさえも他会場の経過を頭に入れないという選択をしたとしても、誰も否定することはない。ただの残留争いの1試合ではない。リーグ戦最終節で、40戦目で初勝利を目指す早慶戦で、4年生にとっては最後の早慶戦で、やっとの想いで掴んだ1部の舞台を後輩たちに残すための試合で、あるいはホームでのラストマッチになる可能性も、大学ラストマッチになる可能性も、サッカー人生ラストマッチになる可能性だってある。今回の早慶戦はTEAM2026のリーグ戦のエピローグであり、TEAM2027以降のプロローグでもある。この試合を構成する要素はあまりにも多い。

 TEAM2026が目指してきたのは、共通認識を持ち、同じ方向を向いて戦うこと。9月2日の後期第8節・国士大戦に敗れ、インカレ出場が絶望的になった中で、1部残留という目標にはっきりと切り替え、4年生がチームを引っ張ってきた。黄監督が大切にしている「みんなで頭を揃えて戦うことによって得られる成長幅」を、この2カ月見せてくれている。

 ロマンに振り切るのか、勝ち点に振り切るのか、両方取るのか。何を共通認識とし、どんな戦い方を選んだとしても、最後までこのチームの選択を尊重する。

 

 改めて、結果のついてこない悔しいシーズンだった。前期の早慶戦の完敗、8連敗、3試合を残してインカレの可能性が消えたこと、苦い思い出の方が多い。それでも、慶應のサッカーは強いと思う。相手を動かす組織的なビルドアップ、3人目の動きが織りなす中央での連続したワンタッチパス、個人技と連係が融合したサイドでの崩し、素早いネガティブトランジション、体を投げ出すような執念の守り、そして、自分たちのサッカーを信じ続けるメンタル。たしかに早稲田は強い。それでも、慶應も強い。いやきっと、慶應は早稲田より強い。慶應のサッカーに自信を持て。

 11月1日13時、下田グラウンドは黄色と臙脂の炎で燃え盛り、シーズン1の熱狂の渦に包まれる。荒鷲の誇りを胸に、慶應の強さを証明してくれ。

 

(記事:柄澤晃希)