今年1月に行われた国体を最後に、たくさんの人に惜しまれながら現役を引退された昨年度主将・近藤琢哉さん(商卒)。ケイスポでは、木原龍一選手(中京大)とともにペアでソチ五輪に出場された高橋成美選手について、近藤さんにお話を伺った。高橋選手を小さい頃から知る、近藤さんの彼女への思いとは―。
ところで、4月から社会人になられた近藤さん、ご自身の近況はいかがですか?
※このインタビューは、5月10日に行われたものです。高橋成美選手インタビュー(3月29日実施)はこちらから。
「ここ最近の日本のペアを引っ張ってきたのは絶対成美」
―高橋・木原組の演技について、近藤さんはどのように思われますか。
「始めて間もないっていう意味でいうとトップとの差はまだまだありますが、ペアを始めてからっていうペアの成長を見ると、成長のスピードが速くて同じスケート仲間でもすごいと話題になっています。」
―ペア結成1年目にして、個人・団体ともにソチ五輪出場を果たされましたね。
「もともとペアってどっちかがやっていると成長が早いんですよ。成美の場合は経験があって、龍一のほうはシングルからの転向があって、結講成美がリードしてやっているのかなって思って見ています。そこの部分が、成長スピードの速さになっているのかなと思います。龍一も龍一でシングルの技術がすごいんですよ。ずっとシングルのトップでやっていたので、そこがペアにも活きているなと思います。例えばジャンプやステップとかも上手なので、そこがペアの強さになっていますね。」
―高橋・木原組がペアを組まれていなかったら、日本はソチ五輪の団体戦に出場できなかったわけですが、その点についてはどう思われますか。
「連盟から龍一にペア転向の打診があったんですけど、最初はやっぱり龍一本人も、シングルでやりたいとか、未練とかがあったので、結構ぐずっていていました。でもそれが1年ぐらい経って会ったときには、本腰を入れてペアを一生懸命やっていたので、連盟の方針と龍一と、成美のモチベーションがうまく合致したのかなと思います。」
―高橋・木原組の活躍によって、今後日本ではペアの活性化も期待できそうですが。
「ペアって、鈴木明子さんのコーチだった長久保(裕)先生の時代ぐらい前は、すごく盛んだったんですよ。シングルとペアを両方やる人とかもいて。ただそこから一気に人が減っちゃって、今は1組だけって感じですね。その原因は場所がないっていうのがあって、今成美とかはアメリカで練習していますけど、だんだん日本でも盛り上がって練習できる環境も整ったら、ペアの敷居も下がって選手人口も増えると思います。あの二人が引っ張ってくれれば絶対増えると僕は思います。」
―近藤さんは高橋選手との交流はありますか。
「スケートって高橋大輔選手とかが出ているシニアというカテゴリーがあって、そのあとにジュニアという中学から大学1年までのカテゴリーがあり、その下に中学生小学生ぐらいのノービスっていうのがあるんですけど、そのノービスのときに成美に会って、一緒に海外遠征行ったりしたのが、最初です。成美はそこから中国に行ったんですよ。そこでペアを始めたみたいです。だから僕は小さい頃のほうが知っているという感じですね。」
―近藤さんの知る、高橋選手の素顔を教えて下さい。
「テレビでも見たこともあると思いますが、結構あのまま、っていうのが正直な印象ですね。ずばずば言いますし、それでも裏表がないので、話していてもわかりやすくて付き合いやすいです。」
―近藤さんと木原選手は、一昨年度まで男子シングルで一緒に戦われていましたね。
「同世代でずっとやってきて、一番ストイックだったんじゃないかなっていうくらい真面目な選手です。正直、器用なタイプとか、天才型ではないと思うんですよ、彼って。でも、その分を補って余りあるくらい、練習量も半端じゃないです。練習に対してもそうですけど、技術とかに対してもすごくこだわりが強くて、そういうところが彼の強みだと思います。それがペアでも絶対活きています。」
―近藤さんはペアをやろうと思われたことはありますか。
「高校生くらいのときに、成美って(マーヴィン・)トランと組んでいたじゃないですか。二人が組む前に、連盟から実は僕にも「ペアをやらないか」という話が来たんですけど、それを僕断っちゃったんですよ(笑)。シングルをやりたくて。だから、ペアには誘われたことはあるんですけど、やりたいと思ったことはないです。」
―練習中に、他のシングル選手と遊びでペアをされたことはありますか。
「あ、それはやったりします(笑)。男子同士とかでペアやって、ふっ飛ばしたりとかはありますね、ふざけて(笑)。そういうのはよくやります。でもやっぱりさっきも言ったんですけど、日本でペアをやるっていうのが難しくて。学校と両立するっていうのでは難しくて、僕はちょっとやめました。だから、休学とかしてでもやっている成美はすごいですね。」
―シングル経験者の近藤さんから見て、シングルとペアの違いは。
「同じスケートとはいえまるで別物だと思うんですよね。というのは、そもそもやっぱり二人でやるっていうので一番難しいのは、技術もそうなんですけど、モチベーションの部分だと思うんですよ。チームスポーツだと、人数が結構いっぱいいるので、そこまで関知しなくても、例えば背中で引っ張るとか、そういうのでいいかも知れないですけど。二人でやっていると、見たくない部分まで見えてきちゃって喧嘩になるとかいう話をよく聞くので、ずっと向き合うっていうのはすごい精神力がいるんじゃないかなって。シングルは、自分でやって、失敗しても自分で責任を取ればいいんですけど、ペアはそういう部分が難しいと思います。」
―現役時代には国内試合だけでなく、ジュニアグランプリシリーズやユニバーシアードなどの国際大会にも出場されていた近藤さん。高橋選手も世界で戦っていますが、日本の試合と海外の試合との違いは何ですか。
「やることとか、演技っていう意味では全く変わらないですね。でも雰囲気だったりとか、楽しさとかはやっぱり海外のほうが楽しいです。というのは、日本の選手って技術がしっかりしていて、上手い人はみんな同じような跳び方で成功するんですけど、海外の選手って訳わかんない跳び方で、何でそれで跳べるんだろうみたいな、セオリー無視な跳び方でも成功するので、そういう意味のわからなさが面白いです。それはシングルに限らずペアでもあるんじゃないかなって思います。」
―今後の高橋選手に期待したいことは何ですか。
「やっぱり、ここ最近の日本のペアを引っ張ってきたのは絶対成美なんですよ。龍一はまだ始めて日が浅いですし。まあいろいろあってマーヴィンと続かなかったりとか、結構大変なこともあったので、そういうのをひっくるめて次のオリンピックなり、それまでの試合だったりで、目に見える結果が出たら一番やっぱり成美のためにもいいんじゃないかなっていうふうに思っています。ずっと一緒にやってきて見ていた選手全員、そうやって結果が出たらやっぱり嬉しいですね。」
「海外でスケートをしたいな、というふうに思っています」
―話は変わりますが、慶大スケート部フィギュア部門について現在思うことは何ですか。
「今は、歴史的に見てもすごく部員の人数も多いですし、やり方とかそういう面でも、一番盛り上がっている時期にいるのかなっていうふうに思います。というのは、やっぱり7級の選手が何人かいるっていう、それはやっぱり学生スポーツというなかでも有意なことだと思うんですよ。それだけじゃなくて下から未経験者の人も始めてやっているっていう、このバランスはなかなかないことなので、そういう意味でもすごくいい循環が生まれているんじゃないかなって思っています。」
―今後のスケート部フィギュア部門に期待することは。
「一番はやっぱりたくさん部員が入ってきてくれて、どんどん増えることですね。やっぱり人数が多ければ盛り上がりますし。部員を増やすためには2つあって、1つはやっぱり上の選手がしっかり結果を出して、結果でチームを引っ張るっていう。もう1つは、大学から始めた選手が、どんどん上手くなって級を取っていくということです。やっぱり始めるときって最初は「私はできないです」みたいになるんですけど、この伸び幅が大きければ大きいほど、そういう人(大学から始めて上手くなった人)が目の前にいたら「自分もできるかな」っていう気になると思うので。そういうふうに、2つの層がどんどん上手くなっていくっていうのを僕は期待しています。そうしたら絶対、規模は大きくなると思います。」
―では、近藤さんご自身の近況を教えて下さい。
「スケートをやめてかなり太りました。5キロぐらい太りました。というのはどうでも良くて(笑)、仕事を始めたわけなんですけど、結構今まではスケート一辺倒でやってきて、勉強していませんでした。あとは、フィギュアってどれだけ自分と向き合って突き詰めてやるかというのが一番大きかったんですよ。コーチとかとは意見交換するんですけど、やっぱり自分の課題は何だろうとか、自分の弱いところは何だろうとか。そういうふうに、どんどん掘り下げて掘り下げてやっていました。そういう部分では確かに役に立っているんですけど、例えば人とコミュニケーションをとって人に指摘したりとか、人から指摘されたりとか。そういうふうに人と一緒にやるという部分がちょっと弱かったな、と今思っています。そういう壁にぶち当たっています(笑)。仕事しながら、そういうのも頑張っていきたいなと思います。同期は頭が良くて怖いです(笑)。同期が12人しかいないんですよ。だから、できないと目立つのでちょっと恥ずかしいです。」
―しかし、フィギュアスケートを通して培ってきた体力は活かされているのではないですか。
「それはもう、ダントツです(笑)。」
―現在、朝は何時に起床されていますか。
「朝は6時前ぐらいに起きています。」
―フィギュアスケートは早朝練習が多いそうですね。ここでも、培ってきた朝の強さが活かされているのでは。
「はい。朝は全然余裕です。朝起きるだけならラクです(笑)。」
―現在、フィギュアスケートとの関わりはありますか。
「今は全然もう滑っていません。入ったばっかりなので、なかなか今ちょっとゴタゴタしていて。落ち着いたら、もしかしたら連盟とかに入ってやろうかなという気はあります。でもちょっとまだ落ち着かないので、先が見えないんですけど。だけど一番はやっぱり、部に対して、今までやってきてもらった分の恩返しをしたいなというのはあります。」
―やはり、今でもスケート部フィギュア部門の試合結果は気になりますか。
「はい。ケイスポのツイッターあるじゃないですか。あれとかで見ています。あ~ボロったのか~…とか(笑)。この間(5月3日)四大戦がありましたよね。慶應じゃないんですけど、立教の友達が引退して。」
―中村健人選手ですか。
「はい。」
―近藤さんは最近、アイスホッケーをされたそうですが。
「そうです。アイスホッケーを僕は始めようかなと思っています。フィギュアはどうしても1日休むと3日下手になるとか言われるぐらい、間が空くとできないので、ホッケーやりたいなと。お金がないので、今防具をコツコツ集めているんです。揃ったら始めようかなと思います。日吉でときどきシュート練習を陸でやっていたりするので、会うかも知れないですね(笑)。」
―今まで、アイスホッケーを少しやってみられたことはあったのですか。
「全然ないんです。本当は僕はホッケーをやりたくてスケートを始めたんですけど、やっとできますね(笑)。」
―実際にやってみて、フィギュアスケートとの違いはありますか。
「全然違います。刃の前方がギザギザしているのがフィギュアで、丸くなっているのがホッケーというイメージだと思うんですけど、意外と前方の違いというのはあまり気にならないです。後ろ側のほうが、ホッケーのほうが短くて、ストンときそうですごく怖いですね。」
―スケート未経験者にとっては氷上で滑ることさえ難しいかと思いますが、近藤さんにとってはホッケー用の靴で滑ることは簡単ですか。
「最初は全然滑れなかったです。1時間ぐらい経って、やっとちょっと滑れるかな、ぐらいになりました。でもやっぱり楽しいですね。」
―最後に、近藤さんご自身の今後の目標を教えて下さい。
「やっぱり仕事が大きいですね。海外駐在が3人に1人ぐらいあるので、一番は早く海外に行きたいなと思います。海外でスケートをしたいな、というふうに思っています。海外のリンクとかでちょっと練習できたらな。それを目標に、仕事を頑張っています。」
(取材:脇田直樹、須佐奈月、窪山裕美子)
近藤さん、お忙しいところ本当にありがとうございました!
なお、5月31日発行の「慶應スポーツ春季早慶戦野球号」では、高橋成美選手の特集面をカラーで掲載いたします。「慶應スポーツ春季早慶戦野球号」は、試合が行われる5月31日・6月1日に、ケイスポ部員によって神宮球場周辺にて1部100円で販売させていただきます。
是非お手に取ってご覧ください!
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