昇格争いに加わっていくための重要なポイントとなると目された立正大との一戦。慶大は前半プラン通りに試合を有利に進めながらも、28分に相手のロングボール1本から先制を許す。以降は引いて守る相手をなかなか崩し切れないまま65分には追加点を奪われる苦しい展開に。終盤に松木駿之介(総4・青森山田)のPKで1点を返したもののすぐにカウンターから3点目を献上し、1-3で敗れた。痛すぎる1敗だ。
第92回関東大学サッカーリーグ戦 第14節 vs立正大
2018/09/30(日)11:30KO @立正大学グラウンド
【スコア】
慶應義塾大学1―3立正大学
【得点者】
0-1 28分 見原慧(立正大学)
0-2 65分 人見拓哉(立正大学)
1-2 83分 松木駿之介(慶應義塾大学)
1-3 87分 金浦真樹(立正大学)
◇慶大出場選手
GK上田朝都(総3・横浜F・マリノスユース) |
DF井出悠介(環4・桐蔭学園) |
DF鴻巣良真(総4・国学院久我山) |
DF岩崎湧治(商4・ベガルタ仙台ユース) |
DF野村京平(総3・国学院久我山) |
MF増田皓夫(商4・桐蔭学園)→70分 江本優貴(総3・大宮アルディージャユース) |
MF八田和己(総3・桐蔭学園) |
MF山田盛央(総3・藤枝東)→70分 内桶峻(政2・国学院久我山) |
MF松木駿之介(総4・青森山田) |
FW小谷春日(環4・藤枝東) |
FW沼崎和弥(商3・暁星)→82分 福本拓海(総3・済美) |
後期に入り2連勝、関東リーグ7戦無敗とした慶大にとって、この日の試合は非常に重要な意味を持つものとなった。相手は3位につける立正大。昇格を目指すには避けて通れないライバルであり、開幕戦で1-4の惨敗を喫しシーズンを難しくした原因とも言える相手だ。数字的に後がない慶大には、ライバルとの直接対決で勝ちを重ねるしか昇格への道は残されていない。夜から台風24号の直撃が心配される中、嵐の前の静けさと言うべき無風の曇り空の下、試合は始まった。
ロングボールを多用する立正大に対し、立ち上がり慶大がやや硬さを見せたことで、序盤はボールの蹴り合いとなった。徐々に慶大が落ち着き始めると、ボールポゼッションを高めると同時に、4-1-4-1のフォーメーションで1トップと2シャドーがロングボールの供給源である相手の3バックにプレッシャーを与え、主導権を握る。攻撃では相手の3バックの脇のスペースに小谷春日(環4・藤枝東)らが走り込み、崩しを試みた。17分には山田盛央(総3・藤枝東)の自陣からのロングパスに反応した小谷がGKと1対1の決定機。シュートは枠を捉えきれなかったものの、慶大は立正大の強み、弱みを分析して対策を立て、「狙い通りのゲームプラン」(松木)を遂行していた。しかし、28分、自陣へのロングボールに競り負けると裏のスペースをカバーし切れず、走り込んだ相手FWに先制弾を許す。その後も展開は変わらなかったものの、1チャンスを生かした立正大に対し、慶大は最後の局面で精度を欠き、得点には至らなかった。37分には小谷のクロスに沼崎和弥(商3・暁星)がフリーで飛び込んだもののヘディングは上手くミートせず。0-1で前半を折り返した。
後半立ち上がりの51分、立正大がカウンターから決定機。ここはGK上田朝都(総3・横浜F・マリノスユース)がファインセーブで救ったものの、先制したことで引いて守りカウンターを狙う立正大に対し、慶大は有効な打開策を見出せなくなっていった。そして65分、自陣ペナルティエリア内でカバーに入った増田皓夫(商4・桐蔭学園)がスライディングタックルを引っかけてPKを与えてしまう。上田はキックのコースを読んでいたものの、ボールは上田の手をかすめてネットに突き刺さり、痛恨の追加点を許してしまった。2点差とされたことで冨田賢監督は70分に2枚替えを行い、流れを変えようと試みる。ボールは支配し続けながらもゴールが遠い慶大だったが、83分、小谷が左サイドの裏に抜け出しマイナスのクロスを入れると、走り込んだ松木が倒されPKを獲得。本来はPKキッカーは八田和己(総3・桐蔭学園)だが、「主将として、エースとしてチームに勢いを与えたかった」とキッカーを志願した松木がこれをど真ん中に沈め、1点差に詰め寄った。大黒柱の関東リーグ4戦連続得点で勢いづき、攻勢を強める慶大。しかし、これが裏目に出る。87分、全員が敵陣に侵入し前掛かりになったところで、センターバックの鴻巣良真(総4・国学院久我山)がトラップミスから痛恨のボールロスト。懸命の帰陣もむなしくカウンターで3点目を叩き込まれ、勝負は決した。1-3で試合終了。関東リーグ8戦ぶりの敗北となった。
後期に入り、2戦連続の圧勝で順位を上げていた慶大。もしこの試合に勝利していれば、昇格圏内である2位との勝ち点差は5になっていた。しかし、この敗戦により、慶大は7位に後退、2位に浮上した立正大との勝ち点差は10に広がった。「本当に大事なゲームだった」(冨田監督)。あまりに痛く、悔しい1敗だ。そして次節の対戦相手は、首位を独走する中大。前期の対戦では0-3の完敗を喫している相手だが、慶大はここで踏ん張り切れなければ、昇格はおろか降格圏が再び忍び寄って来かねない状況だ。上位争いか、下位争いか。慶大はまさに、今シーズンの行方を占う分岐点を迎えようとしている。少なくとも10月が終わるころには、その行方は明確になっているだろう。
(記事:桑原大樹 写真:髙橋春乃)
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試合後コメント
冨田賢監督
――試合を振り返って
前期ああいう負け方をしたから結構準備して迎えて、前半は結構自分たちがやろうとしてきたことがトライできて、ただ1本でああいう形で失点しちゃって、そこからはちょっと難しくなっちゃったかな。選手たちはやろうとしていたしトライしていたけど……まあ試合は続くから、今日の試合は本当にポイントだと思ってたけど、こういう結果になったから、また中大戦に向けてしっかり準備して良い戦いをしたいと思います。
――前半はこちらのペースで戦えていた中で、1本で先制を許してしまった
そうだね。俺の手応えとしたは結構準備してきたことができて、ある程度自分たちのペースで戦えていた中で、本当に1本のロングボールで、カバーできなくてやられたっていう。でも勝負を分けるのはそういうところだし、立正大が上位にいるのはやっぱりそういうところでしっかり決め切れるところだと思うかな。
――ロングボールを多用する相手だった
そうですね。だからそこに対して、4-4-2でやっていたのを4-1-4-1にして、相手の(DF)3枚のところにシャドーの選手が行こうと。前半はそれが良い形でハマって、自分たちで奪うっていうシーンも何回か出せてたから、手応え的には良かったんだけど、まあ甘くないなと。
――2点目を奪われた直後に2枚替えをした
迷ってたけど、あの状況でまあ変えるしかない、流れを変えたいと。
――昇格を目指す上では本当に大事な試合だったと思うが
そうだね。本当に大事なゲームだったね。まあもう謙虚に、まず明確に残留っていうのを決めないといけないから、そちらにしっかりシフトして、まず中大戦でしっかり勝ち点が取れるように、良い準備をしていきたいと思います。
松木駿之介(総4・青森山田)主将
相手はチャンスを3本決め切って結局1-3で負けて、上位に行くチームと僕たちの差を見せつけられた試合だったと思います。
――台風の影響もあり試合の有無が前日まで分からなかったが
そこは全然問題なくみんな良い準備ができていましたし試合の入り方も良かったので、そこは学連さんに感謝したいです。
――今日の狙いは
狙いは、相手は3バックでその脇が開いているということはリサーチの人たちと話をしていて、そこに前半から小谷とかが抜けたりしてリズムを作れていたので、そういったところでは狙い通りのゲームプランだったかなと思います。
――得点シーンを振り返って
前半はずっと小谷がサイドに流れてクロスを上げるときにマイナスが空くということはハーフタイムの話でも出ていて、僕も考えていましたし、そこに遅れてスピードに乗って入っていけたところがまず良かったところと、まあ試合を通してレフリーのジャッジのところがすごく難しかったですけど、我慢してやり続けることができたことで最後にPKを取ってもらえたと思うので、あのシーンは良かったと思います。本当は八田がPKキッカーというふうにチームでは決まっているんですけど、チームに勢いを与えたかったし最後に主将として、エースとして自分がチームを盛り上げるんだという気持ちで蹴りました。
――敗戦の中で見つかった課題は
立正と勝ち点が4離れていて勝てば勝ち点を詰めてターゲットオンできた中で、負ければ離されて昇格が遠のくということは見えていましたし、リベンジするためにも昇格するためにもこの90分に全力で準備してやってきましたけど、まあ自分たちのやりたいことはできた中で、相手のしたたかさというか、そういった部分がまだまだ足りないなというふうに捉えています。
――次節に向けて
首位の中央なので、もう目の前の相手に勝つことだけを考えて、気持ちの整理が難しいですけど、全力で向かっていきたいと思います。
岩崎湧治(商4・ベガルタ仙台ユース)副将
一言で言うとすごく悔しいですね。前半は自分たちの狙っていた戦いが結構できていた中で、1チャンス、2チャンスで得点を決められてしまって、そこからは引いて守ってカウンターという相手の狙いに少しハマってしまった部分があったので……。悪くなかった試合だけに本当に悔しいです
――前期にもやられたロングボールを多用するチームだったが、対策は
前節の東海大さんもすごく蹴ってくるチームだったので、むしろ東海大と比べると少しつないでくる印象で、自分たちとしては東海大対策を残しつつ、楔であったり間へのパスも警戒する形で、前の試合が東海大だったことで少し対策しやすさはありました。
――狙い通りの戦いができていた中での前半の失点を振り返って
自分が競り負けたところから失点が生まれてしまったので……。試合の中で1回や2回のミスはあると思うんですけど、自分のポジションであったり、(鴻巣)良真のポジションや(上田)朝都のポジションは、1回のミスが失点に直結してしまうので、それは自分たちでカバーし合うことと、まずは一人ひとりが勝つ、守るというところはもっと高めていかないと、上位争いには食い込んでいけないかなと思います。
――後半を含めてもそこまで多くのチャンスを与えたわけではなかった中での3失点となった
相手の狙いがおそらく引いた中で少ないチャンスをモノにしてセットプレーを狙ってくるというところだったので、カウンターの対策であったり、1点目なら自分が競り負けたところだし、3点目も、自分のマークもいたんですけど、自分がもう少し詰めてれば体に当たったんじゃないかとか、もっとうまくすれば守れるところはあったと思うので、これからの試合は本当にこの悔しさを生かすしかないかなと思っています。
――次節は首位の中大が相手となる
そうですね。自分たちはもう後がないので、逆にここで中大を食うぐらいの勢いじゃないと目標の昇格に食い込んではいけないと思うので、相手が中大であろうと勝ち点3を取りに行くだけです。
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