来たる12月23日に開幕する第27回全日本大学女子サッカー選手権大会。決戦を前に、慶應スポーツ新聞会ではインカレ直前企画として3夜連続でコラムをお届けしていく。第3弾となる今日は中島菜々子(総4・十文字)主将を特集します。
3年前の経験
3年前の12月26日、当時1年生だった中島菜々子(総4・十文字)はインカレの舞台に立っていた。慶應義塾体育会ソッカー部女子史上初の全国大会出場。結果は惜しくも1-2で初戦敗退に終わったものの、慶大ソッカー部女子が全国レベルのチームになったことを示したこの大会は中島にとって「忘れられないほど楽しいもの」だった。しかし「インカレベスト4」という新たな目標を掲げて2年連続での全国出場を目指した翌シーズン、チームはまさかの2部降格という結果に終わった。全国の舞台からわずか1年。この2年間はまさに天国と地獄だった。そして迎えた昨季。インカレへの挑戦権を失った中で副将としてチームを支えた中島は、伊藤洋平新監督が就任して生まれ変わったチームの中心選手として活躍。高いボール奪取能力やリーダーシップで慶大の1部復帰に貢献した。
苦難のスタート
中島にとって大学ラストシーズンとなる今季、「やっとつかんだ1部の舞台」で主将として2度目のインカレを目指したシーズンが始まった。しかしシーズン開幕戦で突き付けられたのはあまりにも残酷な現実だった。関東リーグ開幕節。ライバルの早大を相手に1-9の大敗。「正直予想外だった」と語るこの敗戦はチーム、そして中島自身に重くのしかかった。主将として何をするべきなのか。その後も調子が上向かないチームの中で「正直どうしたら良いか分からない」という時期も続いた。しかしその中でもひたむきに戦う“慶大らしさ”は常に大切にしてきたという中島。主将として、先輩として、後輩たちにもその部分はしつこく伝え続けた。
転機
初戦でライバルに大敗を喫したチームは早大戦後も波に乗れず、開幕4連敗。シーズン後半のインカレ争いにも一抹の不安を感じつつあった。しかし関東リーグ前期第5節の浦和レッズレディースユース戦で一つの転機が訪れる。この日も流れに乗れない慶大は前半を終えて0-4。チームには早くも敗戦ムードが漂っていた。しかしハーフタイムにベンチから檄が飛んだ。やるかやられるか。中島にとって今季のターニングポイントになったというこの出来事でチームは奮起し後半に入り一挙5得点を挙げた。中島も裏に抜ける動きから今季初ゴールを決めた。結果的に負けはしたものの、この試合で自信を取り戻したと中島は振り返る。
成長、そしてチームメイトの支え
その後は取り戻した自信と繰り返してきた課題修正の結果チームは徐々に復調し、大学リーグを7位で終え、慶大史上2度目のインカレ出場権を手にした。正直シーズン序盤は「苦しいの一言」だったという中島。チーム状況が上向かない中で時には自身の不調を表に出せないこともあったという。しかしそんなときに支えてくれたのはチームメイトだった。特に同期の5人は「本当に頼りになる存在」だったという。また、副将の工藤真子(総3・日テレ・メニーナ)を含め後輩たちにも何度も救われた。「後輩とかと話している中で、『本当に菜々子さんが主将で良かった』とかいうそういう何気ない一言とかは本当にモチベーションになりました」というエピソードもまたその中の一つだろう。苦しい状況の中でも一つ一つ課題と向き合ってきた今季。その中で主将として苦悩しながらチームを一つにまとめてきた中島の貢献はチームメイトにも伝わっていた証拠だろう。今思えば今季初戦の大敗があったからこそチームの課題を見つめ直せたと話す中島。苦難の1年を過ごし、今や「プレーにも主将としての生活においても余裕を持っていろいろ考えながら楽しんでプレーをできるようになってきた」と語る彼女は一回りも二回りも成長した。
様々な思いを胸に
そしていよいよインカレが始まる。中島にとっては2度目の舞台。1年生の時は「連れてきてもらったという感じ」だったインカレだが、今回はその何倍もの苦労を重ねてようやくつかんだ出場権だ。当然懸ける思いというのは一入(ひとしお)だろう。また、今大会には過去の先輩たちの思いも背負って臨む。「いろんな先輩方の思いやいろんな人たちの応援のもと、今この結果があると思うので本当にそういうものの恩返しができるように」と語る。とにかく「このチームで何か成し遂げたい」と話す中島。7位での出場にまだまだ課題はあると言うも、ここからは一戦決勝。2年越しの目標である「インカレベスト4」へ。慶應の歴史を変えたいと話す中島がチームを西が丘へと導く。
(記事:岩見拓哉)
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