【What is ○○部?】“日本一”を目指す 声援へ報い、強豪校に一矢報いる/File.35 端艇部カヌー部門(前編)

カヌー
慶大の体育会を深掘りしていく新企画、「What is ○○部?」。第35回は端艇部カヌー部門!今回ケイスポは、埼玉県戸田公園で寮生活を送りながら、荒川で練習を行っているカヌー部門の水上練習を取材し、主将・大久保龍(法3・開成)、女子漕手・松本聖子(政2・武蔵野大高)、前主将・宮本朝瑠(経4・県立浦和)、注目選手・石井蒼馬(理2・小松川)の4選手にインタビューを行った。カヌー部門の土曜一日の流れから、その姿を探っていく。

カヌー部の練習は荒川で行う競技のため、日中しか練習できない。その分、カヌー部門の部員たちは、平日は5時または6時半から練習し、学校に向かう。土曜日は、朝7時に起き、8時から練習を始める。“日本一”を目指す彼らは、午前練を終えると、お風呂に入って昼食を食べ、ミーティングを行い、再び午後練へと向かう。
 
カヌーは経験者が少ないため、大学から始めた初心者でも対等に勝負できる競技である。同じ端艇部のボート部門と比べると、バランスを取るため体幹の安定が求められ、意外ではあるがボート競技同様に足を使うことが中心となる。加えて、腰より上の筋肉や背筋、腕の筋肉も大事である。そのため、週に3回ウイトトレーニングを行っている。また、風を感じながら、水上からでしか見えない景色を眺めながら漕ぐこともカヌーの魅力の一つである。
 
 
――カヌーを始めたきっかけ

大久保まず大学から新しいスポーツを始めようと考えていて、高校までは長距離走をしていたため、心肺機能が活きる競技を探しています。そこで、カヌー部門の一個上、前シーズンの主将を務める朝瑠さんとたまたま新歓で会って話して。競技も楽しそうだったし、チームの雰囲気も良さそうだったので、入部を決めました。インカレは、1000mのレースがメインです。1000m漕ぐのには大体4分程かかります。これはちょうど1500m走に近い時間で、長距離走で有酸素能力を培ったことが有利に働きます。

松本:自分は今まで本気でスポーツをしたことがなく、泳ぐこともできないため、カヌー部門は絶対にないと思っていました。しかし、大学の新歓で未経験でも日本一を取れると勧誘させて頂き、実際見に行ってみると、カヌーという競技と部の雰囲気がすごく良くて入部しました。

主将・大久保龍(法3・開成)

女子漕手・松本聖子(政2・武蔵野大高)

 

 

 

 

 

 

 

大久保龍

関カレ K-1 1000m 準決勝進出、K-4 1000m 準優勝
インカレ K-4 1000m 7位

松本聖子

関カレ JWK-1 200m 優勝、JWK-1 500m 優勝
インカレ JWK-1 200m 準優勝、WK-1 200m 準決勝進出

 

――カヌーに惹かれた点

大久保:川、自然の中での練習です。川での練習なので、自然と近いところでできるというのが魅力です。楽な力で船をポンって進ませられた時は、結構うまく漕げたなという気持ちになります。

松本カヌーって遅いイメージを持たれがちですが、実際は水上のF1とも言われるくらい、0.1秒を競う熱い競技です。みんなこの0.1秒という僅かな差を埋めるために、技術はもちろんのこと、自分の肉体と精神の限界に挑み続ける点に、一番魅力を感じています。

艇を運ぶ大久保

漕いでいる松本

 

 

 

 

 

 

 

――カヌーという存在

大久保以前は意味を持たせようと思ってやっていました。弱い自分に打ち勝てた、結果で家族や支えてくれた人に感謝を示す、色んな意味を持たせることはできますし、勿論そうありたいと考えています。しかし、今はカヌーが自分にとって何を意味するのかを考えるより、ただ目の前の競技を楽しむことだけを意識しています。

松本自分を乗り越え、人生を変えた存在です。唯一の女子漕手として、常に男子と同じメニューを練習することは、体力的にも精神的にもしんどいと感じるときがあります。しかし、そのハイレベルな環境に身を置いてこそ鍛えられるメンタルタフネスがあると感じていますし、みんなと切磋琢磨できるのは貴重な経験です。カヌー部に入らなければ学べないことをたくさん学び、色んな面で成長させてくれた大きな存在です。

水上の練習風景

波光揺れる川面

 

 

 

 

 

 

 

――寮生活での日々

大久保:人数が少ないというのと寮生活をしているので、学年関係なく仲良くなれるっていうのが一番大きな魅力だと思います。16人部屋なので、自然と距離が近くなる感じです。目の前に練習場があり、それは寮生活をしている分、いつでも自主練習できる環境なので、他の大学にはない魅力だと思います。

松本まず、先輩後輩の距離がすごく近く、すぐに仲良くなれるのが一番の魅力なのかなと思います。みんなが競技者だからこそ、生活面でも助け合えて、誰か疲れてそうとか、ちょっと落ち込んでいるなと感じるときは、すぐにみんなが気づいてくれて、話しかけてくれたり、相談に乗ってくれたりします。この連帯感が、チーム全体の絆を強くしてくれていると感じます。また、マネージャーがご飯を作ってくださるので、栄養管理も心配ないし、消灯時間も決まっているため、アスリートとして必要な生活リズムも自然と身につきます。競技と生活が一体化しているからこそ、自分の成長を最大限に加速させてくれる良い環境だと感じています。

食事を用意するマネージャー

男子部員の部屋

 

 

 

 

 

 

 

――将来的漕手えたいこと

大久保慶應のカヌーは大学からスポーツを始めた人もいるし、大学からカヌーを始めたという人もいるので、どんな人でも受け入れているコミュニティになります。とりあえず試乗会に来て、試しに来てみてほしいです。

松本カヌーは個人種目だけじゃなくて、二人乗りや四人乗りもあるので、チームとしても戦えるのが魅力です。普段の練習はみんなでやっていて、お互いに励まし合ったり、時にはライバルとして競い合ったりしながら、全員が同じ目標に向かって頑張っています。マネージャーの存在も大きくて、隣を並走しながら一緒に駆け抜けて行く感じなので、勝ったときは選手と同じくらい、マネージャーも一緒に喜んでくれます!大学4年間に本気で何かに挑戦してみたい人は、ぜひ一度、戸田公園に来てカヌーを体験してみてください!部員一同、心から待っています!

「未来のカヌー部門へ繋ぐ」の『繋』を受け、「声援へ報い、強豪校に一矢報いる

「今年のインカレで、普段はあまり感情を見せない大久保が感情を抑えきれない姿を見て、本当に必死でやってきてくれて、本気で悔しかったんだろうなというのが伝わってきました。チーム全体がそんな本気で練習に取り組める大久保の練習態度を見習って、いいチームになっていくと思うので、大久保が主将なら大丈夫かなと思っています」

前シーズンの主将・宮本は、今シーズンの主将・大久保についてそう語り、深く信頼を寄せた。

 

「全員が自分だけじゃなくてチームのために頑張ってほしいっていうのと、あとは親とか保護者とかOBとOGとか先輩とか、そういう応援してくれている人の恩に、報いってほしいっていう意味があり、また、慶應はまだカヌーがそんなに強いチームではないけど、他の大学に『一矢報いる』というそういう意味があって決めました」

そう語る大久保の思いを軸に、カヌー部門の新たな章が幕を開けた。

大久保に信頼を寄せる前主将・宮本朝瑠

宮本の思いを受け継ぐ大久保

 

 

 

 

 

 

 

大久保が描くチームは、

「まず一つは競技力があるチームです。大会で結果を残せるチームっていうのと、もう一つは誰かが結果を残したときに、それをチーム全員が自分のことのように喜べるようなチームを作りたいです」

その願いは、宮本が語った思いと期せずして重なる。

優勝した一連の出来事で印象的なのは、チームメイトが、部員がみんなすごく喜んでくれたことです。それが一番嬉しくて、 それが優勝して一番良かったことかなと思います」

大久保以上に宮本の思いを受け継ぐ人物は、ほかにいないだろう。

 

明日は、今年の大会で活躍した宮本朝瑠、石井蒼馬の2選手のインタビューをお届けします!

 

(取材・記事:蕭敏星)
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