一般受験を乗り越え、慶應義塾体育会で活躍する塾生にインタビューを行う受験生応援企画。第3弾となる今回は硬式野球部の寳田裕椰(経3・三重)にインタビュー。現役受験時には惜しくも合格を逃したが、一年間の浪人期間を経て6学部に同時合格。今季から副将を務める寳田の受験エピソードや受験から得た糧について深掘りする。
慶應で野球をしたいという思いから、一般受験での進学を目指した寳田裕椰(経3・三重)。父が慶應大学出身だったこともあり、小さい時から慶應に対してぼんやりと憧れを抱いていた。中高と野球をしていく中で、慶應の持っている雰囲気や大学野球を先導していく慶應の存在に惹かれていったと寳田は振り返る。高校時代は3年の8月まで野球漬けの日々だった。しかし、気持ちの切り替えは早く、すぐに受験勉強へと移行。そこからは、朝に学校へ登校してから23時までと長時間勉強に励んだ。インスタグラムも制限時間を1分にし、さらに同期の福井玲侑(商3・三重)にパスコードもかけてもらっていたというほど、ストイックに過ごした。この時の心境について、「高校の周りには一般受験をする人が少なく、日々苦しかった」と寳田は言う。そして、受験本番。寳田は志望校を慶應に一本化して挑んだものの、努力は実らず不合格。現役時について、「高校野球をやめてすぐ勉強を始めたとはいえ、積み重ねが足りなかった。現役で入るためには、野球をやりながらでも基礎的なところを少しずつやれば良かった」と寳田は分析する。しかし、「不合格でクヨクヨしても仕方ない。落ちた時点から次のスタートが始まっている」という考えから、浪人にはすぐに移行した。

浪人時は、インスタグラムも完全にやめて、SNSを見ないようにした。朝8時ごろに予備校に行き、19時まで自習室で勉強。そこから家に帰っても23時まで勉強というサイクルを確立した。行き帰りの電車の中でも単語帳をみて、ストイックに勉強に勤しんだ。ただ、「10〜11月はかなり苦しく、なぜか川柳をつくっていたというほど追い込まれていた」と寳田は話す。それでも、早く野球をしたいという思いが強く、慶應で自分が野球をしている姿を思い浮かべながら、日々を過ごした。さらに、自分の意思を見失わないようにと、勉強の合間には走ったり、壁あてをしたりして、ストレスを発散していた寳田。その結果、このような努力の末に、慶應の6学部に同時合格。慶應といえば経済学部というイメージから、父と同じ経済学部に進学した。野球に復帰したときは、肉離れになったり、野球観が鈍ったりしたというが、寳田はそれを浪人の影響だからというよりは、大学野球をする上での壁だと捉えるようにした。
受験から得られたものについて尋ねると、「課題に対してどういう風にやっていけばいいか指針を立ててストイックにアプローチするといった問題解決のプロセスを体得できた。さらには、やりたくないことに対しても自分の意思を保ち続けることができるといった精神力が今野球をする上で活きている」と語る。
一度は届かなかった「慶應」という場所。しかし、その悔しさから逃げず、「慶應」に行きたいという強い思いで勉強に励んだ日々は、寳田にとって何にも代えがたい時間だっただろう。その過程で培った考えや精神力は、受験会場ではなく次は神宮という舞台で、必ずや結果として示してくれるはずだ。先日、寳田は副将に就任することが発表された。これからは責任ある立場として、そして一人の挑戦者として、慶應野球部をけん引していく寳田裕椰の姿に目が離せない。

(記事:神谷直樹、取材:奈須隆成、柄澤晃希)


