関東大学リーグ1部後期第2節。リーグ戦8連敗中で、前期第2節の順大戦からおよそ3ヶ月勝ちがない最下位(12位)・慶大は、アウェイで11位・順大に0−2で勝利した。
シーズン序盤はけがに苦しんだ髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)が今季初スタメン。野村亜未(総4・十文字)との2トップで出場した。
42分、福島紗羅メヘル(政1・昌平)のグラウンダーのクロスに野村が合わせ、先制する。その2分後、森原日胡(総2・作陽学園)のパスに反応した野村が2点目を挙げ、前半を終える。
後半はなかなかチャンスをつくることができなかったが、チーム全体でハードワークを続け、盤石の試合運びでリードを守り切った。
チームとしては今季初の複数得点。他会場の結果もあり、10位に浮上した。
【試合結果】
2026/7/5(日)18:00キックオフ@順天堂大学さくらキャンパスサッカー場
O.R.S 第40回関東大学女子サッカーリーグ戦1部 後期第2節
順天堂大学0−2慶應義塾大学
【得点(アシスト)】
42分 慶大 野村亜未(福島紗羅メヘル)
44分 慶大 野村亜未(森原日胡)
【慶大出場選手】
ポジション
背番号 選手名(学部学年・出身高校)
GK
1 四宮里紗(環1・桐蔭学園)
DF
11 森原日胡(総2・作陽学園)
→68分 18 岩田理子(総3・十文字)
2 竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)
5 米口和花(総3・十文字)
4 宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
14 福島紗羅メヘル(政1・昌平)
MF
10 野口初奈(環4・十文字)
6 木田遥(総1・十文字)
8 佐藤凜(総4・常盤木学園)
→88分 13 山田葵(総2・聖和学園)
FW
9 野村亜未(総4・十文字)
7 髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
前節、試合前時点で11位の慶大は9位の十文字大相手に痛すぎる敗戦を喫し、最下位(12位)の順大が勝ち点1を獲得したため最下位に転落した。
リーグ戦の大会形式は、12位のみが2部に自動降格、10位と11位は入れ替え戦に臨む規定。12位・慶大は今節、11位・順大と戦う。慶大は勝ち点6、順大は勝ち点7。勝てば自動降格圏の最下位を脱出できる。
前期の対戦では、両WBを中心としたサイド攻撃から試合を支配した。流れの中からの得点はなかったが、後半に米口和花(総3・十文字)がCKを頭で合わせて先制。虎の子の1点を守り抜き、1−0で勝利した。

前期での対戦は優勢に進めながら1得点のみだった
この大一番で黄大城監督は大きく動いた。普段の攻撃時3−1−5−1、守備時5−4−1のシステムではなく、試合前日から試したという攻撃時3−1−4−2、守備時5−3−2のシステムに変更。前節まではけがの影響でスタメンはなく、3試合のみの出場に留まっていた頼れる副将・髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)が待望の今季初スタメン。昨季は左ISHを定位置にしていた髙松を、絶対的ストライカーの主将・野村亜未(総4・十文字)との2トップで起用した。さらに、前節まで全試合アンカーでスタメン出場していた竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)と右CBでスタメン出場していた木田遥(総1・十文字)のポジションを交換。右ISHは前節までトップ下を主戦場としていた野口初奈(環4・十文字)、左ISHは変わらず副将・佐藤凜(総4・常盤木学園)が務める。

3分、左WB・福島紗羅メヘル(政1・昌平)が相手DFと入れ替わると、キーパーとDFラインの間へグラウンダーのクロスを供給。野村のシュートはキーパーの正面を突いたが、福島紗が「意識して今週の練習に臨んだ」と語った形からいきなりチャンスをつくる。

クロスが光った福島紗
5分、デザインされたFKからミドルシュートを浴びるが、四宮里紗(環1・桐蔭学園)が難なくキャッチ。得点を許さない。
順大は攻撃時4−3−3、守備時4−2−3−1のシステム。プレス時は慶大3バックとアンカーにマンツーマンで守備をかけてくるが、佐藤が低い位置でボールを引き出し、数的優位をつくってビルドアップを展開する。

プレス回避に貢献した佐藤
20分、中盤でボールを奪われるが、髙松が素早い切り替えからカットし、タッチに逃れる好守備。カウンターを未然に防ぐ。

攻守に頼れる髙松
27分、センターサークル付近でボールをキープした野口から福島紗に渡る。福島紗は相手を引きつけ、左CB・宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)に落とすと、宮嶋がワントラップからセンタリング。反応した右WB・森原日胡(総2・作陽学園)のシュートはインパクトできなかったが、惜しい場面をつくる。

中央から打開した野口
33分、米口から髙松にくさびのパスが入ると、髙松がダイレクトで野口に落とし、野口からダイレクトで野村に渡る。野村もダイレクトで竹内に落とすと、竹内はワンツーリターンで野村へスルーパス。相手キーパーにキャッチされるが、テンポの良いパス回しを見せる。

右CBでもビルドアップで存在感を示した竹内
前半終了間際の42分、宮嶋のフィードを受けた髙松がポストプレーで福島紗につなぐ。福島紗は縦に仕掛けると、キーパーとDFラインの間にアーリークロスを供給。野村がいち早く反応し、相手キーパーの鼻先でつついて先制点を挙げる。

得点を喜ぶ主将・野村(右)と副将・髙松(左)

3試合連続ゴールの野村
その2分後、佐藤が中盤でルーズボールを拾い、髙松につなぐと、髙松から右の森原へ渡る。森原はダイレクトで相手DFのギャップを通すパスを野村へ供給。野村は冷静にボールをコントロールし、ゴール隅に流し込んで追加点を挙げる。


求められていた得点に絡むプレーを見せた森原
この2点目が大きな意味を持った。「複数得点取ることでそれぞれの心理的な状況にもプラスの影響を及ぼせた」(野村)。今季チーム初の複数得点となり、その後のプレーに大きなゆとりが生まれた。
後半は序盤に立て続けのCKがあったが、大きなチャンスはほとんどなかった。しかし、米口を中心とした安定した守備で大きなピンチもほとんどなかった。
特に光ったのはアンカー・木田の守備力。ピンチの芽をことごとく摘むカバーリングで、中盤を支配する。

抜群の読みでピンチの芽を摘み続けた木田
68分、森原に代えて岩田理子(総3・十文字)を右WBに投入。この試合最大のピンチは72分、左サイド深いところからセンタリングを入れられ、頭で合わせられるが、シュートは枠を外れる。

クロスが持ち味の岩田
85分、ペナルティアーク付近から強烈なシュートを浴びるが、宮嶋がブロック。守備の時間が続く88分、佐藤に代えて山田葵(総2・聖和学園)を投入。山田は右ISHに入り、野口が左ISHへとポジションを移す。

対人守備の強さを発揮した宮嶋

終盤に強い山田
後半は苦しい時間が続いたが、選手たちに焦りは一切なかった。アディショナルタイムが3分経過した頃、長いホイッスルが鳴り響いた。前期第2節のホーム・順大戦(2026/4/11)以来の今季2勝目。皇后杯東京都予選も含め、公式戦12試合ぶりの勝利となった。先制しながら勝てなかった試合が6試合あったが、今節は完璧に近いゲームマネジメントを見せた。同節、勝ち点7の10位・帝平大が敗れたため、勝ち点を9に伸ばした慶大は10位に浮上した。
開幕以来アタッキングサードでのアイデア不足が課題だった。福島紗のアーリークロス、森原の意表を突くワンタッチパスから得点につながったことは、前向きな要素となる。そして何より、野村のコメントにもあったように今季初の「2点目」が大きかった。後半は攻め手に欠いたが、フィードを野村と髙松がキープし、時間をつくる場面も見られた。
守備は攻撃以上に修正された。被カウンター時にWBと中盤3枚が素早く帰陣し、CBがボールにチャレンジできる状況をつくった。ラインも整い、可能性のないロングボールを蹴らせるシーンも多かった。押し込まれた際には相手中盤に対する2トップのプレスバックが機能。ここまでの課題を複数解決した。四宮は2度目のクリーンシートをマークした。

DFリーダー・米口が守備を統率した

2度目のクリーンシートをマークした四宮
試合後の野村と福島紗のコメント、部員の表情からは安堵感と幸福感がにじみ出ていた。連敗中、大切にしてきた「勝ちたい」という純粋な気持ちがようやく形になった。
夏のリーグ戦中断期間まで3試合を残している。次節は2位・東洋大戦。次々節は6位・日体大戦。関東大学リーグに加え、なでしこリーグにも所属する日体大。6/27になでしこリーグが中断期間に入ったため、慶大戦ではなでしこリーグメンバー(Aチーム)の出場も考えられる。そして中断前最後は首位・山学大戦。慶大にとって格上との3試合だ。
今節は残留争いに向けては間違いなく大きな1勝だったが、中断までの3試合の結果次第で中断明けの6試合の目標が大きく変わってくる。「まだ(インカレ出場=8位以上を)諦めたわけじゃないので、目標達成までチームに対してできることを突き詰めてやっていきたいと思います」(野村)。
2トップへのシフト、髙松の復帰、そして、元より出場していた選手たちの成長。この1試合で慶應のサッカーは確実に一つ上のレベルへ進化した。荒鷲イレブンは真夏の上昇気流に乗り、ここから飛躍していく。

【次節の試合予定】
2026/7/11(土)18:00キックオフ@慶應義塾大学下田グラウンド
O.R.S 第40回関東大学女子サッカーリーグ戦1部 後期第3節
慶應義塾大学対東洋大学
【試合後インタビュー】
野村亜未(総4・十文字)
――今の気持ち
(感慨深げに)嬉しいです。まだ終わったわけじゃないですけど本当にいろんなことがあって、勝てない時期も自分自身も点を取れない時期もあって、勝利の瞬間はやっぱりいいなってすごくグッと来ました。嬉しいです。
――この2週間のチームの雰囲気や取り組み
オフもありながら気持ちをリセットして、純粋に勝ちたい気持ちや楽しむ気持ちで、それぞれが新鮮な気持ちでこの一戦に備えてきました。一個リセットしつつも、それぞれが何か変わろうとする意識や練習からの雰囲気づくりはすごく良くできていたので、それが結果につながった部分も少なからずあったと思います。
――ご自身の2得点で、チームとしても今季初の複数得点となった
自分の中でも1点しか取れていないところは課題としてありました。前半のラスト数分のうちに2点入れられて、チームとしても「いけるぞ」という雰囲気をプレーから感じる部分はあったので、複数得点取ることでそれぞれの心理的な状況にもプラスの影響を及ぼせたことは良かったと思います。
――夏の中断まで残り3試合、どんな戦いをしていきたいか
まずは勝ち点3を掴み取れたという成功体験をそれぞれが認識した上で、来週の取り組みだったり雰囲気づくりだったりというところをしっかり練習から全員が体現していければと思います。それに加えて、まだ下位の中にいるので、一つでも多く勝ち点を積み重ねて、まだ(インカレ出場=8位以上を)諦めたわけじゃないので、目標達成までチームに対してできることを突き詰めてやっていきたいと思います。
福島紗羅メヘル(政1・昌平)
――今の気持ち
ずっと連敗が続いていて、勝てていない状況がここ最近続いていたんですけど、やっぱりチームで一体感を持って勝てたことが何よりも嬉しくて、勝つことは最高だなと思いました。
――アシストのクロスの場面
テソンさん(黄大城監督)からも求められていた部分でしたし、亜未さん(野村)からも「ボール欲しい」と求められていたので、それを意識して今週の練習に臨んで、いい形で出て良かったです。
――前節の試合後、Instagramの注目選手のコメントにこの試合に向けて「個人としても必ず結果を出します」と力強い意気込みを書いていた
「自分がやらないと」という気持ちが大きかったので、そこで結果を出すことができて良かったです。
――いつもと違うシステムだったが、同サイドの佐藤選手や髙松選手との関わりで意識していたこと
2トップで、そこにボールが集まることは分かっていたので、入ったときの関わりだったりとか、自分がボールを持ったときにそこの動き出しを見ることは意識していました。
――次節に向けて、力強い意気込み
やっと勝てたので、次もこの流れに乗って勝つしかないと思いますし、自分もアシストという形でいい流れができたので、次こそ自分が点を取ってチームを勝たせたいと思います。

(取材:柄澤晃希)








