関東大学リーグ1部後期第3節。前節およそ3カ月ぶりに勝利した10位・慶大は、ホームで2季連続関東大学女王の2位・東洋大と2−2で引き分けた。
前半の早い時間に先制されるが、28分、低い位置から得意のビルドアップで前進すると、野口初奈(環4・十文字)の縦パスを佐藤凜(総4・常盤木学園)がフリックし、抜け出した野村亜未(総4・十文字)が決めて同点に追いつく。
後半はセットプレーから勝ち越されたが、アディショナルタイムに野村が直近4試合で6点目となる豪快なミドルシュートを決めて同点。選手たちが歓喜する中、タイムアップの笛が吹かれ、格上相手に貴重な勝ち点1を獲得した。
【試合結果】
2026/7/11(土)18:00キックオフ@慶應義塾大学下田グラウンド
O.R.S 第40回関東大学女子サッカーリーグ戦1部 後期第3節
慶應義塾大学2−2東洋大学
【得点(アシスト)】
17分 東洋大 兼崎心里(高岡澪)
28分 慶大 野村亜未(佐藤凜)
67分 東洋大 兼崎心里
90+3分 慶大 野村亜未(福島紗羅メヘル)
【慶大出場選手】
ポジション
背番号 選手名(学部学年・出身高校)
GK
1 四宮里紗(環1・桐蔭学園)
DF
11 森原日胡(総2・作陽学園)
→68分 15 田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)
2 竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)
→87分 3 岡田恭佳(環4・十文字)
5 米口和花(総3・十文字)
4 宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
14 福島紗羅メヘル(政1・昌平)
MF
8 佐藤凜(総4・常盤木学園)
→79分 13 山田葵(総2・聖和学園)
6 木田遥(総1・十文字)
10 野口初奈(環4・十文字)
FW
9 野村亜未(総4・十文字)
7 髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
→87分 25 廣本瑞季(文3・学習院女子高等科)
前節は3カ月ぶりの勝利を手にし、最下位からの脱却を果たした慶大ソッカー部女子。今季初の連勝を成し遂げるべく、ホーム・下田での後期第3節に臨んだ。今節の相手は関東大学リーグ2連覇中の東洋大。直近3試合は2分1敗と本調子ではないが、今季も優勝争いを演じており、侮れない相手だ。
立ち上がりは東洋大にボールを保持される時間が続いたが、慶大も我慢強く対応し、決定的なチャンスには至らせない。
5分には、野口初奈(環4・十文字)がハーフウエーライン付近から右サイドへ展開。野村亜未(総4・十文字)には収まらなかったが、良い攻撃の形を見せる。

攻撃の起点として機能した左ISH・野口
9分にも野口からチャンスが生まれる。東洋大に押し込まれている中、ショートパスを引っ掛けカウンターへ。竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)から野村へとボールが渡ると、ボックスの外から左足でシュートを放つ。これは枠を外れたが、この試合1本目のシュートを記録する。

ボールを落ち着かせる右CB・竹内
ボールを握る時間帯も増えてきた慶大だったが、16分に先制点を献上してしまう。シュート性のボールがボックス内に供給されると、ゴール前でフリーになっていた相手選手にワンタッチで押し込まれる。自分たちの流れを掴みかけていただけに、手痛い失点となってしまった。
その後はゴールに迫るシーンをなかなかつくり出すことができないまま、飲水タイムに突入。戦術を整理し、巻き返しを図る。
飲水タイム明けの25分、慶大は再びピンチを招く。中央から右サイドへ展開されると、東洋大の選手が放った強烈なシュートはクロスバーを叩く。そのこぼれ球に反応されるも、シュートは枠の上へと外れ、難を逃れる。
その直後の28分、野口が中央で宮嶋ひかり(環3・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)からパスを受けると、鋭い縦パスを供給し、佐藤凜(総4・常盤木学園)がワンタッチでそらす。このボールに反応した野村が抜け出すと、体勢を崩しながらも右足で放ったシュートは、ファーサイドのネットを揺らす。前半のうちに同点に追いつくことに成功した。

今季初の右ISHでアシストを記録した佐藤

副将・佐藤(左)のアシスト、主将・野村(右)のゴールで先制
このまま逆転へと攻勢を強めたい慶大は、31分、アンカーの木田遥(総1・十文字)を中心とした抜群のパスワークで相手のプレスを回避すると、野口のもとへボールが渡る。野口からのボールを髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)がダイレクトでシュートを放つ。これは上手くミートしなかったが、ビルドアップからシュートまで持ち込む形を見せる。

アンカーで存在感を発揮する木田
その後は東洋大が慶大のゴールへ迫るシーンが続くが、DFリーダーの米口和花(総3・十文字)や守護神の四宮里紗(環1・桐蔭学園)を中心に、集中した守備を見せゴールを許さない。

絶対的リベロ・米口
そして44分、慶大に再びチャンスが訪れる。野村が前線からプレスをかけると、相手DFのボールコントロールが乱れたところを見逃さず、ボールを奪取。そのまま右足でシュートを放つも、これはキーパーの正面へ。逆転とはならなかった。
前半終了間際には東洋大にCKを与えるが、体を張ったプレーでゴールを死守。上位相手に1ー1のタイスコアで前半を終える。
47分、ボックス内で強烈なシュートを浴びるが、クロスバーに直撃。さらにこぼれ球を打たれるが、佐藤のブロックでしのぐ。
この日は守備時5−3−2のシステムでスタートしたが、前半の同点弾の後から髙松を左SHに下げ、左ボランチ・野口、右ボランチ・木田、右SH・佐藤の中盤4枚で守備時5−4−1のシステムへと変更した。試合後、黄大城監督は「ゲームコントロール」の一環だったと振り返った。敵陣で回されることは厭わず、ブロック守備で粘りながら、反撃の機会をうかがう。

前半途中から守備での立ち位置が変わったFW・髙松
56分、野口と福島紗羅メヘル(政1・昌平)の素早いネガティブトランジションから奪回すると、木田、佐藤、髙松へとつながり、アタッキングサードに侵入。ボックス内で森原日胡(総2・作陽学園)から佐藤にラストパスが送られるが、わずかに合わずシュートには至らない。その直後、福島紗が華麗なドリブルで相手を引きつけると、オーバーラップした野口が受け、左足でクロスを供給。こぼれたところを木田が拾い、落としを受けた髙松がミドルシュートを狙うが枠を捉えられない。

惜しいパスを供給した右WB・森原
徐々に保持する展開となり、63分、敵陣左サイドでFKを獲得する。野口のキーパーとDFラインの間への絶妙なボールに福島紗がダイレクトで合わせるが、シュートは枠を外れる。
チャンスを生かせない場面が続くと、67分、CKから二次攻撃を受ける。ボックス内でバックスピンのかかったボールが不運にも東洋大の選手の目の前にこぼれ、勝ち越し点を許す。
68分、右WBの森原に代えて、今季は右サイドのアタッカーとして起用されている田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)。79分、右ISHの佐藤に代えてここぞの場面で決めるセカンドストライカー・山田葵(総2・聖和学園)を投入。

昨季のユーティリティ起用から今季は右サイドのアタッカーに転身した田中紗

試合終盤の活躍が目立つ山田
80分頃からは守備時に髙松を前に出す形に戻し、5−3−2でプレスをかけるが、攻め手を見出せない時間が続く。枠内シュートを浴びる場面も多くあったが、宮嶋の安定した対人守備や四宮のセービングで防ぎ続け、1点ビハインドのまま終盤に突入する。

枠内シュートの雨あられを防ぎ続けた四宮
87分、最後の交代機会で2枚代えを敢行。FW・髙松に代わり、バスケ上がりのポストプレーヤー・廣本瑞季(文3・学習院女子高等科)。右CB・竹内に代わり、前期第11節の早大戦(2026/6/13)でのひざの大けがの再発が心配された岡田恭佳(環4・十文字)が3試合ぶりのピッチに入る。

岡田が待望の復帰
その後も大きなチャンスはなく、刻一刻と試合終了に近づき、アディショナルタイム目安の3分まで残り20秒、最後の攻撃の機会がやってくる。左CB・宮嶋が左サイド、ハーフウエーラインを少し越えた位置で前を向いてボールを持つと、FW・廣本が右CBを引き連れながら左サイドに流れる。宮嶋は左のタッチライン際でマークを外した左WB・福島紗へのパスを選択し、すぐさまアンダーラップで前線に走り込む。受けた福島紗はダイレクトで右足インフロントにかけたボールを前線に供給。東洋大右CBがカットを試みるが、廣本が体の強さを生かしたスクリーンでボールに近づかせない。福島紗のパスの先には、東洋大左CB、そして、慶應の絶対的ストライカー・野村。五分五分のボールに競り勝ったのは野村だった。左サイド、ボックスのわずかに外、角度は30°、野村はフリーで前を向く。左には最終ラインから駆け上がった宮嶋、中央には再び野村をサポートする廣本、右には味方のシュートチャンスで必ずゴール前に詰める山田。目安の3分まで10秒を切った。ミスは許されない。「亜未いけ!」。黄大城監督の声が響く。野村に迷いはなかった。右足を全力で振り抜くと、若干カーブのかかった強烈な一撃がキーパーの頭上を襲い、文字通りネットへと突き刺さった。

足が攣る選手もいる中、最後まで攻撃に参加した宮嶋

難易度の高いパスを通し、2試合連続野村とのホットラインで得点創出の福島紗

起用に応えた同点弾の陰の立役者・廣本

両手を掲げてガッツポーズをつくる主将に仲間たちが笑顔で駆け寄り、輪ができる。下田グラウンドが歓喜に沸く中、試合終了の長いホイッスルが吹かれた。2−2の引き分けで2試合連続の勝ち点を獲得した。



直近4試合連続ゴール、2試合連続2ゴールで4戦6発
説明不要の絶対的ストライカー・野村
先制されて勝ち点を獲得するのは今季初。ビハインドを追いついたケースも前期第10節の日大戦(1−2で敗戦)の一度しかなかったが、今節だけで2度の同点劇を演じた。試合後のインタビューで髙松は「粘り」という言葉を複数回口にした。これまでになかった強さを発揮した試合だった。
前期の対戦では右SBが偽SBのように振る舞う2−3−4−1のフォーメーションでポゼッションされたが、今節は右SBが最終ラインに吸収され、左SBが高い位置を取る3−2−4−1のフォーメーションを東洋大は採用してきた。しかし、「相手のディフェンスの立ち位置、右は中に詰めてくるところなどはみんなで頭を揃えて認識するようにしていました」と髙松が語ったように、東洋大の強みの創造的なビルドアップには問題なく対応していた。試合中の5−4−1と5−3−2の守備システムの使い分けも今後のポイントとなってきそうだ。
課題はデザインされた前線の連携に対する守備。前期の試合中に黄大城監督から指摘があったように、東洋大シャドウがボールを受けに下りた際、左右CBがついていくとその背中にランニングされ、裏を取られる場面は今節もあった。左右CBが中盤にマークを受け渡す、受け渡せないときはWBやCBが絞る、DFラインを整えるなど、何かしらの修正が必要な状況だ。
夏のリーグ戦中断期間まで残り2試合。目標のインカレ出場圏の8位・東国大を勝ち点差5で追っている。東国大とは9月のリーグ再開初戦に直接対決を残しているため、逆転の可能性も大いにある。「きょうみたいに最後まで粘り強くみんなで戦って、勝ち点を少しでも多く積み重ねて中断に入れるようにみんなでまた準備していきたい」(髙松)。
「少しいい流れというか、自分たちにまた自信というか、そういう力がまたチームとして湧いてきた」(野口)。2試合連続の勝ち点と複数得点。試合後のみならず、試合中の選手たちの表情からも自信が見て取れる。この流れに乗り、まずは残りの2試合での勝ち点獲得を目指す。
次節はホームで7位・日体大と戦う。
【次節の試合予定】
2026/7/18(日)18:00キックオフ@慶應義塾大学下田グラウンド
O.R.S 第40回関東大学女子サッカーリーグ戦1部 後期第4節
慶應義塾大学対日本体育大学
【試合後インタビュー】
野口初奈(環4・十文字)
――きょうの試合を振り返って
前期(での東洋大との対戦)は引き分けだったとはいえ、リーグ戦上位に立つチームだったので、勝ち点1でも取れたら嬉しいというところ、1取りたいというところだったたので、0ではなくて1にできて良かったなと思います。
――攻撃の起点となるプレーが目立っていたが、どのようなことを意識してプレーしていたか
前回からフォーメーションが変わって(攻撃時3−1−5−1から3−1−4−2)、自分のポジションも少し変わった(トップ下からISH)ので、慣れないところではありましたが、自分のポジションの原則は事前に言われていたので、プレスバックであったり寄せるといったところは意識してできていたので、良かったと思います。
――上位の東洋大に対して、終了間際に追いついて勝ち点1をもぎ取るという形になったが、この結果をどう捉えているか
中断まで2節というところで、一時は最下位にはなってしまったんですけど、前回は勝ち点3が取れて今回は1取れてという形で、これまで連敗が続いていたので、少しいい流れというか、自分たちにまた自信というか、そういう力がまたチームとして湧いてきたかなと思うので、今回の勝ち点1は大きな勝ち点1かなと思います。
――次節への意気込みを
次節は日本体育大で前回は引き分けでしたが、勝てる可能性が割と高いと思っているので、勝ち点1は絶対に取りつつ勝ち点3を狙えるところはちゃんと狙いたいと思います。
髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
――きょうの試合を振り返って
持たれる展開が続くことを想定していた中で、粘り強く戦って最後に亜未さん(野村)が取ってくれて、粘り勝ちじゃないですけど追いつけて良かったと思います。
――前期とは相手は違った戦い方に見受けられたが、スカウティングで対策していたことや、スカウティングとのギャップがあったこと
スカウティングの部分だと、相手のディフェンスの立ち位置、右は中に詰めてくるところなどはみんなで頭を揃えて認識するようにしていました。どっちに(プレスを)かけるかという部分は話しましたが、(前期とは)選手が変わっていたこともあって、テソンさん(黄大城監督)にも試合の中で相手のやり方を見て自分たちも変えていくように言われていたので、粘り強く戦えたと思います。
――前半の途中、守備の際に髙松選手が左SHの位置に下りて5−3−2から5−4−1に変更するよう監督から指示が出ていた
(1−1に)追いついた後にその立ち位置に変えました。相手は前に焦るというよりかはボールを持って動かしてきて、自分たちも慌てて奪いに行く必要がないという話し合いの中で、自分が落ちてしっかりとブロックを引くことに変えました。
――ご自身としては早慶戦で復帰してから4試合、現在のプレーやコンディションは
復帰して2試合は(途中出場で)ISHをやらせてもらって、2トップに変わってから2試合スタメンで出させてもらっていますが、去年1年やってきた(ISHとは)違う動きを求められるので、そこは器用に対応しないといけないと思っています。もっとボールを収めないといけないし、亜未さんとの動きの部分で関係性をつくらないといけないので、まだまだ足りないとは思いますが、その中でも守備だったり貢献できるところはやりつつもっとコンディションを上げていければと思います。
――中断までの2試合に向けて
次の日体はたぶんなでしこリーグのメンバーが出てきて、その次が首位の山学なので、あと2試合きつい試合が想定されるんですけど、きょうみたいに最後まで粘り強くみんなで戦って、勝ち点を少しでも多く積み重ねて中断に入れるようにみんなでまた準備していきたいと思います。
(取材・記事:柄澤晃希、奥秋柚生)


















