【野球】執念実った!逆転サヨナラ勝ちで先勝 法大①

5月10日(土) 法大1回戦

逆転サヨナラ勝利で無傷の5連勝だ

逆転サヨナラ勝利で無傷の5連勝だ

何が起こるか最後までわからない、野球の面白さを凝縮した試合だった。大事な第1戦の先発・加嶋(商3)が5回まで二塁を踏ませない快投を見せる。一方の打線は、4回、藤本知(環4)の適時打で先制に成功。しかし、6・7回に失点し逆転を許すと石田の前に打線も沈黙。しかし土壇場の9回、横尾(総3)の適時打で同点に追いつくと、最後は今季、絶好調の竹内惇(商4)の打球が相手のエラーを誘い逆転サヨナラ勝ち。劇的な幕切れで、勝利を飾った。

   
法大
慶大 2x
 法大:●石田、玉熊―安本

 慶大:加嶋、○三宮―小笠原

◆慶大出場選手

ポジション 選手名(学部学年・出身高校)
[7] 佐藤旭(商4・慶應)
[6] 山本泰寛(環3・慶應)
[9] 谷田成吾(商3・慶應)
[5] 横尾俊建(総3・日大三)
[8] 藤本知輝(環4・慶應)
[4] 竹内惇(商4・慶應)
[3] 齋藤大輝(商2・慶應)
  梅野魁土(環3・福岡大大濠)
近藤俊(環4・國學院久我山)
[2] 小笠原知弘(環3・智弁和歌山)
[1] 加嶋宏毅(商3・慶應志木)
三宮舜(商3・慶應)
 

横尾の激走が光った

横尾の激走が光った

ここまで4勝1分けと無敗街道を走り続ける慶大。今週の相手は、すでに優勝戦線からは脱落してしまっている法大。しかし法大先発の石田には慶大打線は辛酸をなめる場面が多く、苦戦を強いられている。一方慶大先発は、明大3回戦で緩急を使った投球で白星を挙げた加嶋。この日の神宮球場は風が非常に強く、コントロールが生命線の加嶋にとって、失投は許されない試合となった。

 

初回の加嶋は、すべて直球を打たせて三者凡退に抑える最高の立ち上がり。その裏、最初の慶大の攻撃。「どうしてもチームに勢いを与えたかった」という佐藤旭(商4)が、石田の初球を教科書通りのセンター返しでヒットを打ち、出塁する。続く山本泰(環3)の打席でヒットエンドランを仕掛けるなど、初回から積極的な攻撃を見せるが、後続が続かず無得点に終わる。

「今日はストレートが良かったんで、他の変化球も生きた」と本人も振り返るように、この日の加嶋はストレートが走っていた。普段130km/h台中盤のスピードだが、この日は140km/hを計測する場面も何度も見られた。それに加えて持ち前のコーナーワークと緩急で、法大打線に的を絞らせず、4回までヒット1本に抑える快投を見せる。

早く加嶋を援護したい打線は4回裏一死、横尾が放った右方向の打球は、強風に乗ってぐんぐん伸びていき、フェンス直撃。ボールがグランドを転々とする間に、横尾が懸命に走り三塁打となる。このチャンスに「高めに浮いてきたらそれを狙ってやろう」と意気込んだ藤本知が、その言葉通り高めに浮いた変化球をたたき、タイムリーヒットを放つ。宿敵・石田から幸先よく先制点を取ることに成功した。

援護点をもらい、順調にアウトを重ねていた加嶋だったが、6回、2死三塁のピンチを背負うと、迎えたバッター・細川の放った打球はボテボテのショートゴロ。これを懸命に山本泰が処理するも間に合わず、この間に三塁走者が生還し、同点に追いつかれてしまう。続く7回にも齊藤秀と畔上に連打を浴び、1死一,三塁のピンチを迎えたところで、ここまで防御率0点台と抜群の安定感を誇る三宮(商3)に投手交代。しかし代わった3球目、伊藤諒の放った打球は三宮の右足を直撃する強襲適時打となり、勝ち越しを許してしまう。打球が直撃した三宮は、一度ベンチに下がるも、根性でマウンドへ戻る。そして続くピンチを三宮が気迫で抑え、この回を最少失点で切り抜ける。

 

つなぎの役割を果たした山本泰

つなぎの役割を果たした山本泰

中盤以降、石田の伸びのある直球、左打者に対する高速スライダー、タイミングを狂わせるチェンジアップのコンビネーションの前に慶大打線は沈黙。今秋ドラフト1位候補の実力者を前に二塁をも踏ませてもらえないまま、9回までズルズルといってしまう。

しかし迎えた9回にドラマが待っていた。直前の守備で好守を披露した先頭・佐藤旭がライト前ヒットで出塁。さらにここまでノーヒットの山本泰も続き、無死一,二塁のチャンスを迎える。ここで谷田(商3)が、「なにも難しいことは考えずに、ヒットを打つことだけを考えて」打った2球目。放たれた谷田の打球はライト前に抜ける。ここで二塁走者の佐藤旭が一気に本塁突入。しかし若林の送球で佐藤旭は無念のタッチアウト。さらにこのプレーで佐藤旭は足を負傷してしまう。得点できず、負傷者も出す展開に、やや不穏な空気が慶大ナインに流れる。しかしそんな空気を一変させたのは、頼れる主砲へと成長した横尾だった。代わった法大2番手の玉熊の2球目をフルスイング。この慶大の未来と希望を乗せた打球は、どんどん伸びていき、タイムリー二塁打となり、土壇場で同点に追いついた。盛り上がる一塁側スタンドを背に、サヨナラの機運が高まる中、二死後迎えたバッターは、今季目覚ましい活躍を見せる竹内惇。何か起こるんじゃないか。そう誰もが期待を寄せた5球目。竹内惇が放った打球はセカンドゴロ。延長戦か――そんな空気に球場がつつまれようとした次の瞬間、二塁手・皆川がまさかのファンブル。三塁走者の谷田がサヨナラのホームを踏み、まさかのサヨナラ勝利。ベンチから選手が飛び出し歓喜の輪が広がった。

 

佐藤旭主将の状況が心配だ

佐藤旭主将の状況が心配だ

先発の加嶋は非常にテンポがよく、四球を出さない素晴らしい投球を見せた。後を継いだ三宮も好調を維持、9イニングを2失点にとどめる投手陣が意地を見せた。打線は数少ないチャンスを活かすことができる集中力が、今季の慶大には備わっていることを証明した。しかし、今季は積極的な走塁も見せているが、この日は3つの盗塁死や本塁憤死など、精彩を欠いてしまった。積極的な走塁は、明大戦の1回戦のように上手くはまればチームに活力をもたらす、素晴らしい起爆剤である。しかしこの日はその積極性の危険を感じる試合でもあった。石田のような好投手から出した、貴重なランナーをどのように活かすかが考えさせられた。しかしこのような展開でも勝利が転がり込んできた今の慶大には、その悪い流れを跳ね返すだけの良い雰囲気があるには間違いない。優勝へ向かうレールを走っているのは、すでに選手たちも確信しているだろう。勝利に対する執着心を切らすことなく残り試合を戦い、優勝というゴールへ突き進む。

 

【Keispo pick up】進化遂げたKEIOの4番 横尾俊建

横尾はこの試合右方向への長打を2本放つ

横尾はこの試合右方向への長打を2本放つ

先制点の足掛かりとなる三塁打と、値千金の同点二塁打を放った横尾俊建。本人は「ただ振り遅れただけ」だと謙遜するが、振り遅れて逆方向のフェンスまで飛ばすパワーは一級品だ。鳴り物入りで日大三高から入学したが、去年までは悔しいシーズンを過ごした。打撃フォームの改造など試行錯誤を繰り返し、今年はOP戦から好調を維持。谷田・藤本知と共に組むクリーンアップは六大学屈指の長打力を誇るまでに成長、脅威となっている。今季はまだ神宮での本塁打は生まれていないが、横尾の一発が神宮を沸かせるのも時間の問題だろう。  

 

(記事 荒川智史)

 

◆打撃成績

[7] 佐藤旭 中安   空三振 中飛   右安
[6] 山本泰 中飛 空三振 二直 右安
[9] 谷田 捕邪飛   三直   右安 右安
[5] 横尾 遊ゴ 右越3 空三振   右越2①
[8] 藤本知   左飛 左安① 左飛 遊ゴ
[4] 竹内惇 二ゴ 空三振 空三振 二失
[3] 齋藤 四球 死球 左安
R 梅野
3 近藤
[2] 小笠原 遊ゴ 空三振   空三振
[1] 加嶋 遊ゴ 投併打
1 三宮 空三振
◆投手成績
投球回数 打者数 球数 安打 三振 四死球 失点 自責
加嶋 6 1/3 23 96
三宮 2 2/3 11 39
◆監督、選手コメント

江藤省三助監督

(今日の勝利は)大きいね。あんなことがあるから怖いよね、野球は。(加嶋・三宮が試合を作った)頑張ってくれているよね本当に。最高だよ。(打線も土壇場での集中打、勝利に対する気持ちの表れでは)ほんと、その通りだと思います。(佐藤旭選手のけがの状況は)うーん、まだどうなるかわからないです。(明日に向けて)勝つしかないかな。せっかく勢いに乗ってるしね。頑張ります。

 

佐藤旭主将(商4)

(今日の試合を振り返って)なかなかヒットが出なくて苦しい展開だったですけど、最後みんながつなげてくれて、誰も負けるという雰囲気はなかったですし勝てるという自信があったので、その自信が最後の9回につながったかなと思います。(先週の空き週ではOP戦も組まれていたが)OP戦3試合やって試合勘もなくなりませんでしたし、すごく法政戦に向けていい調整をしていこうと心掛けていたのでいい2週間を送れたかなと思います。(1打席目は初球を安打と持ち味である積極性が出た)どうしてもチームに勢いを与えたかったというか、個人的にもヒット、出塁がしたかったのでとにかく思い切りいこうと思って、思い切ってストレートを張っていったのが良かったかなと思います。(9回表の好守後すぐの9回裏の安打について)9回表の守備で個人としてもチームとしても波に乗っていけて盛り上がったプレーだったので、チームに勢いが出たかなと思いますし、この勢いを裏の打席につなげられたかなと思います。(サヨナラの場面について)本当にみんながつなごうという意識を持ってくれて、次へ次へという思いがサヨナラを呼んでくれたかなと思います。(足の状態は)明日になってみないと分からないので、とにかく明日出られるようにしっかり準備していきたいです。(明日に向けて)今日すごくいい形で勝つことができたので、「勝って兜の緒を締めよ」ではないですけど、明日に向けてしっかり準備していきたいです。

 

竹内惇(商4)

(今日の試合を振り返って)最初苦しい展開だったんですけど、加嶋と三宮、特に三宮が打球をくらったにも関わらず、その後無失点に抑えてくれて、それで最終回良い雰囲気で臨むことができました。 (前回の明治戦から二週間空いたが)空き週の土日に試合(OP戦)があって、それをしっかり戦って3連勝できたので、良いかたちで法政戦に入ることができたと思います。(相手先発は慶應相手に良い成績を残している石田)僕自身石田投手と対戦するのは初めてだったんですけど、インコースも使ってきて、結構攻略するのが難しい投手ですね。(9回サヨナラのかかる場面で迎えた打席)それまでに2つ三振していたので、とにかく三振しないように当てればなんとかなるかな、と思って当てにいって、結局最後サヨナラできたので良かったです。(明日に向けて)チームの空気も凄く良いかんじなので、この勢いのまま勝ち点を取りにいきたいです。

 

藤本知輝(環4)

(今日の試合を振り返って)勝ったので、何もないです。勝って嬉しいというだけです。(4回の先制タイムリーについて)最悪外野フライでという気持ちで打席に入ったらあのような結果になったので、本当によかったです。(その打席、2球同じ球が続いたところを打ち返したが、狙い球は)狙い球は特になかったんですけど、高めに浮いてきたらそれを狙ってやろうと思っていました。(9回サヨナラ機ではどんな気持ちで打席に向かったか)僕が決めたいという気持ちが強すぎて力んでしまったので、次からはそういった場面で打てるように頑張ります。(風が強かったが、それにより何か意識は変わるか)そうですね、逆風だったので、ホームランを狙いにいくというよりは低い当たりでという意識で打席に入っていました。(明日の一戦に向けて)今日の勢いそのままに明日も勝つだけなので、今日帰ってしっかり準備して、勝ちたいと思います。  

 

小笠原 知弘(環3)

(今日の勝利、おめでとうございます)ありがとうございます。(今日を振り返って)打線の援護が遅かった、そこだけですね。ピッチャーは凄く良く抑えてくれたので、最終回の4連打に繋がったんだろうと思います。(相手は好投手・石田だったが)チームとしては色々とあったと思うんですけど、僕は打つより守備で、と思っていたので、そこまで毎回意識はしていなかったですね。(第3打席、監督との会話について)チームの中の連携が取れてなくてリズムが悪くなったので、一旦を間を置く意味で取りました。タイムは自分から取りました。(明日以降意気込み)今日勝ったのも値千金だったんですけど、明日は普通の試合をして勝ちたいです。今日みたいに盛り上がるのもいいんですけど、もう少し早いうちから慶應のペースで試合を運べれば、苦しまずに勝てるのかな、と思います。

 

加嶋宏毅(商3)

(7回途中2失点の好投。ご自身で一番良かったと思うところは)今日はストレートが良かったです。(自信があるという変化球の調子は)いつもどおりという感じでしたね。今日はストレートが良かったんで、他の変化球も生きたという感じですね。(ストレートの具体的に良かったところは)球速も速かったですし、球のキレとか、体の調子が良かったです。(本日は140キロを計測していて、目標の145キロも見えてきたのでは)そうですね。じょじょに(球速が)戻ってきた感じはあります。(失点直後冷静に牽制で走者を刺したことについて、走者の動きが見えていたか)いや、たまたまです。(ご自身の判断か)そうですね。粘られていたので、一回牽制を入れようかなと思ったのと、走ってくるかなと思ったので牽制しました。(ランナーを残して三宮投手に継投したが、三宮投手をベンチで見守る心境は)三宮だったら大丈夫かな、と思っていました。ボールが当たったのですが、行けるかなと思っていたので、安心して見ていました。(試合は劇的なサヨナラ勝ち。ベンチの雰囲気も盛り上がったのでは)そうですね、盛り上がっていました。(無傷の連勝が続いているが、明日へ向けて一言お願いします)明日は加藤が頑張ってくれると思うので、負けなしで行きたいです。  

 

谷田成吾(商3)

(今日の試合を振り返って)勝ててすごく良かったです。(6回の打席では初球を打って安打を放ったがどのような意識で打席に立ったのか)真っ直ぐにちょっと振り遅れていたので、振り遅れないようにしっかり打とうと思って打ちました。真っ直ぐを狙っていました。(9回の打席ではどのようなことを意識して打席に立ったのか)もう打つしかないと思ったので、なにも難しいことは考えずに、ヒットを打つことだけを考えていました。(開幕から引き分けを1つ挟んで5連勝となったがチームの雰囲気はどうか)すごくいいです。今日、最終回1点差で負けてましたけど、すごくいい雰囲気で最終回を迎えてくれて、これならいけるかなと思ったら逆転できたので、すごくベンチの力を感じています。(明日に向けて)明日も勝って、連勝で勝ち点を取りたいと思います。  

 

山本泰寛(環3)

(劇的なサヨナラ勝ちだったが)ピッチャーがずっと粘ってくれたので、野手もなんとかしなきゃと思っていったから、いい結果になったと思います(相手先発石田投手の対策は)速いストレートが持ち味なので、ストレートに振り負けないようにして、ストレートをいかに打ち崩すかをみんなで考えていました(最終回、バントでもおかしくない場面でヒッティング、ヒットを放ったがその場面を振り返って)普段から監督に「お前は打てるからバントはさせないぞ」と言われていてその期待に応える気持ちで打ちました(無傷の5連勝、チームの雰囲気は)いやーほんとにチームの雰囲気はかなりいいと思います。負けていても沈み込まないで明るくやったり、イケイケの時はどんどんとれる点を取ってという形ができていて、チームの雰囲気は最高です(9回は佐藤旭選手がつないだがあのときの心境は)旭さんの背中を見て、じゃないですけど本当に打ってくれたので絶対につないでやるという気持ちで打席に入りました(明日に向けて)今日みたいに厳しい戦いが続くと思うので明日もまた一からしっかりやっていきたいと思います。  

 

横尾俊建(総3)

(今日の試合を振り返って)最終回に粘って食らいつたので、それが良い結果につながったんだと思います。(4回裏、先制点のきっかけとなった三塁打)上手く風に乗ってくれたという感じなんですけど、良い結果になって良かったです。(9回裏、打席に入る前の素振りに気合いが入っているように見えたが)一度思い切り振っておこうかなと思って。それが良い意味で結果につながりましたね。(右方向の打撃が目立ったが)それはただ振り遅れただけなので。ただ振り遅れて上手く飛んで、風が運んでくれました。(打撃は好調か)好調なんですかね。まあヒットが出ているので、結果的に見れば好調だと思うんですけど。自分としては良いコンディションで試合に臨めていると思います。(明日に向けて)明日も勝って優勝に向けて弾みをつけたいと思います。

 

齋藤大輝(商2)

(すごい勝ち方でしたね)そうですね、みんなよく頑張ってつないでくれたと思います。ピッチャーもよく投げてくれました。(勝てた要因は)負けていても負ける気はしなかったというか、ベンチもいい雰囲気だったのが勝てた要因だと思います。(全出塁と好調が続いるが)今日すごくいい感じで打席に立てていたので、その結果だと思います。(ファーストと守備は)僕はちょっと守備が苦手なんですけど、頑張ります(梅野選手に代走された場面は)仕方ないっちゃ仕方ないんですけど、ちょっと悔しかったです。(明日の試合に向けて)明日も勝って、優勝に近づけたらと思います。

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