「一人ひとりが役割を果たせていない」。第17節・桐蔭横浜大戦(1●2)を終えて今のチームをそう分析したのは、鴻巣良真(総3・国学院久我山高)だ。第15節・東国大戦(2●3)で先発復帰してからチームの主軸として最終ラインで声を出し、体を張った熱いプレーを見せる彼だが、チームはその前の敗戦も含めてリーグ戦4連敗と先が見えない状況にある。
7月に行われた神大とのアミノバイタルカップ1回戦(0●3)では途中からキャプテンマークを巻くなど、チームの柱としての自覚を強く持つ鴻巣は、今のチーム状況を変えなければと使命感に燃えている。関東リーグ後期開幕から3試合をケガで欠場した鴻巣は、復帰後から闘志あふれるプレーを見せているものの、チームに勝利をもたらすことができていない。結果として、現在チームは降格圏の11位・日体大と勝ち点差なしの10位と窮地に追い込まれている。
桐蔭横浜大戦後、「このゲームに勝つ気があったのか」とチームの姿勢に苦言を呈した鴻巣だが、彼の思いは伝わっているだろうか。第16節・順大戦(0●2)後にはチームの雰囲気を「自分が入って変えてやろう」と奮闘する中でうまくいかない現状を話していた。また、「自分のパフォーマンスが上がらない中で負けるのが悔しい」というように、ケガ明けから思うようなプレーができていないこともあって、非常に苦しい時間を送っている。
慶大が現在抱える課題として、セットプレーでの危険なシーンが多いことが挙げられる。鴻巣もそのことには危機感を抱いており、その原因を「気持ちが足りないとしか言いようがない」と話す。精神面で負けたがゆえの失点、そして敗戦が続く現状を変えようと鴻巣は声を出し全力で戦うが、連敗し、低迷するチームの中ではその努力も空回りに終わってしまう。
ポジティブな話題がないわけではない。桐蔭横浜大戦でついにケガからの復帰を果たした小谷春日(環3・藤枝東高)を始め、欠けていたメンバーが徐々に揃いつつある。また、試合中も鴻巣や中井建太(総4・青森山田高)を中心に声を出している姿が以前と比べて見られるようになってきた。
リーグ戦はまだ終わっていない。「一人ひとりの役割にプラスして、チームで助け合うことができれば、勝利はつかめる」と鴻巣は語った。一人の頑張りだけでは当然チームを勝利に導くことはできない。その中で、彼は「まずは無失点で」と自身の役割を全力で果たす。いよいよ、崖っぷちに立たされた慶大。忍び寄る“降格”の影を断ち切ることができるか、男たちのプライドが試されている。
(記事 中村駿作)