【ソッカー(男子)】<コラム>ようやく抜け出した長いトンネル…2人の“渡辺”が慶大を呪縛から解き放つ

法大戦で先制点を挙げた渡辺夏(左)と、勝ち越し点を決めた渡辺恭(右)

 23日に行われた関東リーグ第13節・法大戦に、慶大は2-1で勝利。5月8日の第4節・専大戦(2〇1)以来、実にリーグ戦9試合ぶりとなる勝ち点3を手にした。ようやく抜け出した長いトンネル。その立役者となったのは、歩んできた道の異なる2人の“渡辺”だった。

 

ゴールを決めた渡辺夏(7番)は一目散に慶大ベンチへ

 開始から15分、試合が動く。慶大は相手ゴール前でボールを持った池田豊史貴(総4・浅野高)がDFをかわして右サイドに浮き球のパスを送ると、これを渡辺夏彦(総4・国学院久我山高)がダイレクトボレー。「インパクトした瞬間に『あっ入ったな』って思った」という見事な一撃で、渡辺夏が慶大に貴重な先制点をもたらした。ゴールが決まるや否や、彼は一目散に慶大ベンチへ駆け寄る。「チームの雰囲気をベンチや応援席も含めて盛り上げていくというのは意識していたというか。喜びを分かち合いたかった」。久々の勝利を視界に捉えた瞬間であった。

 

 思い返せば、関東リーグ前期を7戦勝ちなしで折り返し、さらにはアミノバイタルカップや第68回早慶サッカー定期戦で2部のチームを相手に惨敗を喫するなど、慶大の2017シーズン前半戦は壊滅的なものだった。そんな中でも、2年次からトップチームで試合出場を続ける彼は、記憶に新しい早慶定期戦でのゴールに代表されるように文字通り孤軍奮闘。ラストシーズンで、絶大な存在感を放っていた。宿敵・早大に1-5で敗れ、「絶望感」に打ちひしがれた定期戦から2カ月。夏の中断期間を経て戦い方は変わっても、渡辺夏の輝きは変わらない。

 

決勝点の渡辺恭はマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた

 だが、勝利への道のりはそう簡単なものではなかった。前半のうちに同点とされると、後半は幾度となく法大にピンチを作られる。最後の最後で守備陣がなんとかゴールを許さず、試合は1-1のまま終盤へ。引き分けもちらついてきた90分だった。慶大は近藤貫太(総4・愛媛FC)がボール奪取から右サイドを持ち上がり、クロスを供給する。大外には走り込んできた途中出場の渡辺恭平(商4・新潟高)。左足で合わせたシュートは、勝ち点3を大きくたぐり寄せる値千金の勝ち越しゴールに。「全然思ったより走れず、体力もなくて」と反省も口にしたものの、「最後に一発決められてよかった」とはにかんだ。

 

 渡辺恭は、決してエリート街道を歩んできたわけではない。トップチームでの出場は、第7節・東洋大戦が初めて。「自分は関東リーグに出られるような人間じゃないと思っていた」と振り返るように、地道に階段を上ってきた。日の目を見なくても、「自分の所属していたCチームとかBチームとかでそれぞれのリーグ戦で勝つことだけを考えてやってきた」日々。「ゴールというよりも今日の勝利が嬉しい」という言葉からも、そんな4年間が見て取れる。

 

2人の活躍で慶大は9試合ぶりの勝利を挙げた

 2人の活躍で慶大は久々の勝利を挙げ、2部降格圏を脱出した。それでも、「1回抜け出したからどうこうとか全然まだそんなことを考える段階ではない」と渡辺夏。そう、後期はまだ始まったばかり。あと9試合を残している。未だチームの総得点数は「9」とリーグワーストであることに変わりはなく、残留に向けて彼ら2人を含む攻撃陣のさらなる奮起が必要不可欠だ。渡辺恭の言葉を借りれば、「この勝利をきっかけに」。2人の“渡辺”によって呪縛から解き放たれた慶大が、ここから巻き返しを図る。

 

(記事 小林将平)

 

こちらの記事もあわせてどうぞ!!


タイトルとURLをコピーしました