【庭球(男子)】悲願への最終章Ⅱ 閑静な松山の夕空に、響き渡った藤原の雄叫び/王座準決勝 関西大学戦

庭球男子

46年ぶりの悲願に向けて、決勝に向けての大一番。ダブルス陣、2−0の段階で有本・菅谷がタイブレークに突入したがここを制しダブルスは3連勝。シングルス陣では相手の猛反撃を喰らうも最後は藤原が試合を決め、決勝進出の切符を掴んだ。

第77回全日本大学対抗テニス王座決定試合 準決勝 対関西大学

10月3日(火)@愛媛総合運動公園

♢試合結果♢

 

 

慶應義塾大学

5

D

3-0

S

2-3

3

関西大学

D1

林航平(理4・名古屋)

高木翼(総3・関西)

○2

6-3

6-4

●0

中村秋河(商4・相生学院)

薦田直哉(商1・新田)

D2

藤原智也(環4・東山)

下村亮太朗(法3・慶應)

○2

6-4

6-4

●0

井戸垣一志(人3・岡山理大附属)

天野響(社3・光泉)

D3

有本響(総2・慶應)

菅谷優作(法2・慶應)

○2

3-6

7-5

10-6

●1

堤隆貴(社2・四日市工業)

岩本晋之介(商2・関西)

S1

藤原智也

○2

7-6(6)

6-3

●0

岩本晋之介

S2

林航平

○2

4-6

7-5

6-1

●1

中村秋河

S3

下村亮太朗

●1

6-3

4-6

4-6

○2

堀川莞世(文3・東山)

S4

高木翼

●1

7-5

1-6

2-6

○2

井戸垣一志

S5

脇坂留衣(環3・興國)

●1

3-6

6-3

6(5)-7

○2

薦田直哉

S6

菅谷優作

 

7-6(8)

3-4

打ち切り

 

堤隆貴

 

D3 ○有本・菅谷 2{3-6/7-5/10-6}1 堤・岩本●

前日同様、彼らに試練が襲った。6-5で迎えた12ゲーム目、有本が堤のサーブを叩きブレイクに成功すると、運命は10ポイントタイブレへ。リーグ戦で4戦全勝の10ポイントタイブレと得意にしている二人。まずは菅谷のサーブからの2ボレー体制でポイントを重ねると、相手も黙ってはおらずサーブ2本であっさりキープされる。今度は有本が魅せ、サーブアンドボレーをストレートに決め1ポイント、相手の足元に落とし2ポイントと確実にキープ。有本はこれで終わらなかった。堤のサーブをライジングでストレートに決めリターンエース。4-2としてチェンジコートを迎える。声援の声も一段と高まり「ここ次ブレイク取るよ」の声。その声に応えるかのように、菅谷がバックハンドが相手前衛に突き刺さり5-2。3ポイントも差があれば彼らには十分だった。8-5で迎え、菅谷が鬼のストローク連打。相手のボレーは吹き飛び9-5とマッチポイントとすると、9-6から最後は菅谷得意のサーブで相手のリターンはコートに収まらず。10ポイントタイブレでまたもや強さを見せつけ、いつも通りダブルスは3−0で折り返した。

 

S1 ○藤原 2{7-6(6)、6-3}0 岩本●

岩本は今年のインカレでベスト8に入る実力を持っている。高校の1学年先輩の林に、フルセットの末敗退したものの、それだけの力を持ち合わせている。

ダブルスで3−0としたもののシングルス陣が3連敗。慶大が4、関大が3と、あと一人というところで勝負を決められずにいた慶大。この波乱に終止符を打てるか藤原智也。

立ち上がり、チームの逆転勝利がある中で相手の気迫に押され、いきなりブレイクされ0−2となる。しかし、会場全体を震えさせたパッシングでのリターンエースで、3−2で迎えた6ゲーム目をブレイクすると、次のゲームは5回に及ぶデュース戦。ここを藤原がサーブで押し切ると、完全に藤原の流れに、というところだったがそうはさせてくれない岩本。藤原は5−3で相手のフォアでの振り回し、いくら打ち返しても回り込んで返ってくる強烈なフォアに苦戦した。相手のビッグサーブにも押され、5−4ではサーブを1球しか返球できず5−5。その後のゲームでは、0-40とされるもここから押し返しデュースの末藤原がキープ。結局タイブレークに持ち越しとなった。この時、静かな松山市には17時を知らせるチャイムが。このチャイムは、藤原と岩本の激戦を告げる戦闘開始の合図となった。ここでベンチコーチには原荘太郎助監督。バックハンドを中心にポイントを重ね、4-1までリードをする。ポイント5-3では一気に畳み掛けようとサーブアンドボレーに出るが、ボレーはサイドアウト。ここから相手に飲まれ5−6とされる。しかしなんとか粘り6−6で、サーブは相手のラケットを弾いた。手を広げた藤原はこの勢いに乗り、リターンでも好リターンを決め8-6。大激戦の第1セットを制した。

エース、主将の誇りを胸に

第2ゲームもその余韻は冷めやらず。一進一退の攻防だが、ゲームカウント3−1ではサーブでのショートポイント3本含め4連取。ここから再び岩本の反撃にあうが捲られることはなく、最後のゲームはも4連取でエース対決を制した。多くの部員、観客が見守る中、藤原の勝利で慶大の決勝進出が決まった。ダブルス3連勝で圧倒的優位に立ったかに見えた慶大。シングルスでは関大の反撃にあうも、最後は藤原智也の快刀乱麻。勝利時の大歓声は、物静かな松山の夕空にこだました。

 

S2 ○林 2{4-6/7-5/6-1}1 中村●

 インカレで準優勝という自身最高の成績を残した林。その実力を愛媛でも発揮できるのか。終始、相手の攻撃がどんなに激しかろうと、前後左右に振り回されようと、林は縦横無尽にコートを駆け巡っていた。その姿に観客誰もが魅了された。

第1セット、4-5で迎えたサービスゲーム。ファーストサーブから大事に入り攻撃を展開するも、相手もフォアを中心に攻め続けられる。林はボールを拾うもぎりぎりネットを越さなかったり、粘るも最後はウィナーを決められ、第1セットを落とす。しかし、ボールを必死に追い続けたその林の粘りは、すでに相手の脅威となっており、林自身も手応えを掴んだ様子であった。

ボールを懸命に追う林

 第2セットも同様の展開が続いたが、林もダウンザラインからのボレーや、ドロップを走って追いつきそのまま振り抜きポイントを重ねていく。「できることやっていこう」という竹内悠大(経4・慶應湘南藤沢)の檄にも背中を押され、長期戦のラリーでもクロスにストレートに打ち分けていく。2-2で迎えた5ゲーム目、アドバンテージが中村にあった際、ボレーで決められそうになったボールに喰らい付きカウンターでフォアをストレートに放った。「1、2年生の時は全部ロブだったんだよなあ」と呟く原荘太郎助監督。誰もが林の成長を認めており、林の逆転勝利を信じていた。そんな中で5−5の時、中村が足を攣った。林はミスしないよう丁寧にボールを配球し、ミスする気配がなかった。30-30からラリーで2本制しブレイクに成功すると、次のゲームでは最後にバックハンドをストレートに決めこのセットを奪った。

相手のMTOもあり時間が空いた中行われた第3セット、相手のサービスゲームで幕を開けた。展開変わらずラリー戦が続き、クロスラリー、ストレートへの展開が主であった。サーバーから30-40となり、中村のバックハンドは面に当たらず上に吹き飛んだ。早速ブレイクをし、流れに乗った林は13連続ポイントもあり一気にゲームカウントは4-0に。5-1で迎えたゲームでは、リターンが冴え、最後はフォアボレーを沈めて勝利した。

 

 

坂井利彰 総監督

——戦況をどう見守られていましたか

ダブスルで3−0がついて非常に良い滑り出しで、このリーグ戦から続いているダブルスでリードしてという我々の勝ちパターンにうまく乗っていたので、ダブルスがまず良かったと思います。シングルスについて、もちろん勝ち切れば良かったですけど、試合の中で負けた試合の中にも明日の試合につながる課題、成長も見えました。激戦でしたけど、逆に生命力がすごくチームに宿ったので、そういう意味ではこの価値はみんなの成長に繋がるなと思います。

 

——藤原選手が決めてくれましたね

堂々と主将として、No. 1として、闘ってくれたのでものすごく頼もしかったですし、彼が構えてくれているからこそみんなが思い切ってプレーできているので、すごく頼もしく、そして勝ってくれたことに感謝したいと思います。

 

——決勝への意気込み

とにかくこの1年間、4年生は4年間積み上げてきたものを、全部出し切って欲しいと思います。ここまできたら、勝ちに対する執念というのは体に染み付いていると思うので、勝ち負けを気にしすぎずに、思い切ったプレーをやって欲しいと思います。

 

 

★昨年度卒部されたOBの方にインタビュー

尾原太成(写真左)と日置和暉

——どのような気持ちで試合を観ていましたか

昨年度主務・尾原太成(R5理卒)さん

尾原:結論から言うと、また戻りたいなと言うのが素直な気持ちで、藤原が昨年の試合で白石に勝って、そこでバトンが藤原に渡されて、藤原の代が今王座で戦っているので、そこがバトンがつながっているなというのがあります。

 

日置和暉(R5環卒)さん

日置:1年前と出てるメンバーはあまり変わらないので、そういう意味では気分としては、昨年の団体戦を見ているのとすごく近いものがあって。OBとしてみると、勝って欲しいとか負けないでとか僕が思うというよりは、彼らが1年間やってきたことがあるので。僕の力では及ばないけど、彼らは1年間良い準備をしてきたのだろうという自信があるので、「勝ってほしいな」とか「負けないで」というよりかは、信じてみている感覚なので、あまり「頼む!」という感じではないですかね。

——1年間の成長

尾原:1個下の後輩がすごく積極的に動いていますね。自分たちの代だから本当に王座優勝を目指そうという、後輩たちが日本一を目指してがむしゃらに頑張っている姿がより一層顕著に表れてみんな一つ一つ成長しているのだなと感じました。

日置:出てるメンバーはあまり変わらないけれど、出ている選手は変わっているなと感じますね。一番変わっていたのは林航平です。もともと彼はシングルスプレーヤで打つタイプだったんですけど、粘り強くなっているし、D1で出ているというのが1年間の成長の中で一番すごいなと思います。どの選手も凄いのですが、一人ピックアップすると林くんが一番変わったな、という印象です。

——後輩たちにエールを

尾原:とにかく日本一取ってください!!!

日置:勝ちたいとか王座優勝したいというよりも、何をするかを大切にして欲しいです。何するか、例えば大事なポイントほど、足を動かすとか、ボールを良く見るとか、声出すとか。これがめちゃくちゃ難しいんですけど、自分の大切にしていることや、意識できることに意識を向けて、というところを大事にして欲しいです!

 

(取材:野上 賢太郎)

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