第4週に東大から今季初の勝ち点を獲得した慶大。優勝へ一縷(いちる)の望みを残していたが、第5週の結果によって4季連続のV逸が確定した。第6週の相手である立大は、自力優勝こそなくなったが、まだ逆転優勝の可能性は残されている。2017年春季以来の悲願達成に燃える立大を前に、慶大は4季ぶりのAクラス返り咲きを懸け、絶対に勝ち点を落とせない。プライドをかけた意地の戦いが繰り広げられるだろう。
開幕週の慶法戦、第3週の慶明戦を落とした中で迎えた慶東戦は波乱の幕開けだった。頼みの綱の渡辺和大(商3・高松商業)が攻略され、打線も力のない打球を連発。3対6で敗れ、1回戦を落とした。1981年以来、44年ぶりの慶東戦勝ち点献上の危機だったが、2回戦では主将・外丸東眞(環4・前橋育英)が快投。今季初勝利を挙げ、チームも1勝1敗のタイに持ち込むと、3回戦も中塚遥翔(環2・智辯和歌山)の本塁打などで赤門軍団を下し、なんとか勝ち点を獲得した。

東大3回戦で飛び出した中塚の決勝弾
奇跡の逆転優勝へ僅かな可能性を残した状況で第4週を終えたが、第5週の他大学の結果により、慶大の優勝の可能性は完全に消滅。24年春から4季連続のV逸が確定した。ただAクラス入りの可能性は大いにある現状。残りの2カードは1つでも順位を上げ、来季以降につなげたいところだ。
対する立大は17年春以来、17季ぶりの栄光を目指す。今季は3カードを終え、勝ち点2、勝率.625。残りを全勝しても自力で首位の明大を上回ることは出来ないが、まずは慶大相手に無敗で勝ち点を取り、第7週に望みをつなぎたい。打線は今春三冠王の核弾頭・山形球道(コミュ4・興南)が早立3回戦の3安打から完全復活。打率.313、2本塁打とさすがの成績を残している。さらに、2番を打つ小林隼翔(コミュ2・広陵)は30打数で4本塁打と脅威的な長打力を携え、山形と小林隼は六大学で最強の1・2番コンビと言えるだろう。また、落合智哉(スポ3・東邦)、村本勇海(文2・大阪桐蔭)が好調を維持する中、春に中核を担った鈴木唯斗(コミュ4・東邦)や主将の西川侑志(社4・神戸国際大附)らは上がり目を残しており、まさに精鋭揃いの陣容だ。

一発を量産する長打力が魅力の小林隼

好調を維持する正捕手・落合らに警戒したい
投げては小畠一心(営4・智辯学園)、竹中勇登(コミュ4・大阪桐蔭)の右腕コンビの先発が予想される。 特に、今春の慶立戦にて計14回2/3を14奪三振、自責点2と奮闘した小畠には要警戒だ。ブルペンにも抑えの吉野蓮(コミュ4・仙台育英)ら力のある投手が控えており、加えて、8試合を戦って未だに失策がないバックの安定した守りも投手陣を支えている。

チームをけん引する立大エース・小畠

守護神として立ちはだかる好投手・吉野蓮
8試合で42得点を挙げた強力立大打線に立ち向かう慶大投手陣。今季はいずれも、1回戦は渡辺和、2回戦は外丸が先発しているが、渡辺和が慶東戦で打ち込まれたため、今春の慶立戦で2試合に先発し、計15回2/3を自責点3と好投した外丸を1回戦の先発に変更することも考えられる。また、外丸は平成以降で30人目となる通算20勝に王手をかけており、記録達成にも大きな期待がかかる。

リーグ戦通算20勝目に王手をかけた外丸主将
第6週はプロ併用日がないため、先発陣はもちろん中継ぎ陣の活躍も必須。夏季OP戦で複数回を投げる機会も多かった小川琳太郎(経4・小松)や水野敬太(経2・札幌南)を、慶東3回戦のようにロングリリーフとして起用し、継投策で戦うこともあり得るだろう。そんな中で、注目は熊ノ郷翔斗(環1・桐蔭学園)だ。直近4試合続けてベンチ入りしているが、いまだリーグ戦での登板はない。入学後の実戦経験も決して多くはないものの、10月12日のOP戦では、”火の玉ストレート”を武器に1回を2奪三振無失点と好投した怪腕が、神宮の晴れ舞台でついにベールを脱ぐか。
野手は、「三塁を誰が守るか」という点がキーとなる。夏季OP戦は捕手から転向した渡辺憩(商2・慶應)が多くの試合で先発出場していたが、リーグ戦では守備のミスが相次いだことからか、慶明2回戦以降は八木陽(法2・慶應)が先発起用されており、渡辺憩は一塁へと守備位置を移している。慶應義塾高校時代は遊撃手として甲子園優勝に貢献した八木。安定した三塁守備でダイヤモンドに落ち着きをもたらすことが出来るか。打撃面では、シーズンを通して左腕に翻弄される展開が多く見られている慶大。小畠と竹中、両本格派右腕の先発が目される中、どういった対応を見せるのか。

今季途中から三塁に定着した八木
1925年秋に発足した東京六大学野球。慶大と立大の初対戦は、3対4で立大が勝利している。それでも、その後の2回戦、3回戦を慶大が取り、史上最初の慶立戦は慶大が勝ち点を獲得した。戦前から紡がれてきた六大学の歴史も、今年で100年。慶大は、1964年春の2回戦で渡辺泰輔さんが六大学史上初の完全試合を達成するなど、立大には通算284勝167敗31分と大きく勝ち越している。今秋1回戦で483試合目となる慶立戦。義塾の意地か、はたまた飛躍を見せるセントポールの勢いか。注目の1回戦は10月18日の13時30分頃開始予定だ。
(記事:柄澤晃希)