【ラグビー】「この二人でなきゃ続けられていない」学生コーチが語るチームを支えるということ/藤田祥平×安田雄翔対談〜第102回早慶戦前インタビュー〜

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 9月13日の青学大戦で、白星発進を果たした慶大蹴球部。関東大学対抗戦、慶大蹴球部はここまで開幕から3勝2敗と、掲げる目標「日本一」へ向けて歩みを進めている。

 この先には、名だたる強豪校が立ちはだかる。そして11月23日、聖地・秩父宮ラグビー場で迎えるのは、第102回を数える伝統の早慶戦だ。慶大が2010年以降勝利から遠ざかっている宿敵・ワセダを前に、蹴球部員たちは今、何を思うのか。

 今回はケイスポラグビー班が、藤田祥平選手(経4・慶應)と安田雄翔選手(法4・甲南)に対談形式でお話を伺いました(取材:10月24日)。ぜひ最後までご覧ください!

ーーはじめに他己紹介をお願いします

安田→藤田:学生コーチの藤田祥平くんです。本当、僕にないものをいっぱい持っている人で。僕は大枠を決めるのは好きなんですけど、細かいところの徹底だったりはできない人間で。祥平はリマインダーだったりとか、すごく細かいアクションに長けてる人間だなって思っていて、すごい俺は尊敬してて。あともう1つは個性的なFWがめちゃめちゃ多い代なんですけど。それをまとめるのは多分祥平しかいないぐらい、僕は信頼している人間です。以上です。

藤田→安田:安田雄翔くんです。BKの学生コーチで、僕のことを自分には持ってないものを持ってるって言ってくれたんですけど、僕も同じ印象で。どちらかというと、僕はグループの後ろから尻叩いて押し上げていくイメージでやってるんですけど、彼は先頭に立ってチームを引っ張ってくれる存在なので、本当にいいバランスの取れてる学生コーチだと思ってます。何より、今はちょっとまだ感じられないですけど、情熱、パッションがものすごい人なので尊敬しています。

ーー今シーズンを振り返って

安田:春は結構FWとBKがちょっとバラバラだった感じがあるなと思っていて。お互いが、信頼しきれていない部分があるのかなと思っていたけど、合宿や対抗戦を通してチーム全体のまとまりはできてきたかなって。

藤田:確かに、春はFWがいい時はBKができなくて、BKがいい時はFWができないってところでチームとして一体感がなかなかない感じで。俺的には青学戦かな。春の青学戦で負けちゃってこのままでいいのかっていうのをチームのみんなが感じて。そこでうまく行かないことを助け合わないといけないよねっていうのをチームが認識できた瞬間だったので。そこから、チームがまとまっていったかなっていう印象です。

 

ーー青学戦がターニングポイントだったとのことですが具体的には

安田:普段、勝てている相手に負けてしまったというところで。結構、根本的に色々と変えて行かなきゃいけない、かつ日本一を掲げているぶんそこに対しての乖離があるっていうところで。1つ1つのプレーを変えていかなきゃだよねってところでみんなと話して。それに対してアクションしていったって感じですかね。

 

ーー春から秋に向けてディフェンスの力が向上したが、その完成度については

藤田:やっぱり、慶應のラグビーでディフェンスは欠かせない大事な部分なので。慶應が勝つ時ってディフェンスが良い時なので。そこに対するプライドの部分は全員が取り戻すという覚悟があって。春から夏にかけて、別にシステムを変えたとかではなくて、本当に細かい部分にいかにこだわれるかってところと、相手をいかに1センチでも前に返すって部分。もちろんスキルもあるけれどメンタル面も含めて変わったのかなと思ってます。

 

ーー具体的にどの部分の改善がディフェンス全体の向上に繋がったか

安田:やっぱり、ブレイクダウン周りのところは結構良いかなと思っていて。それこそ1人目のタックルが入った時に1対1で終わらせるのではなくて、相手よりも1枚多い形でファイトする。ボールが出るまでファイトして、相手にプレッシャーを与え続けるってところが変わったかなと思っていて。その要因の1つが新しいコーチで7月から岡健二さん(コーチングコーディネーター)が来て下さって。健さんはディフェンスの細かいところ、最後まで密着して相手にプレッシャーかけるっていう細かいところを言ってくださって。マインドだけじゃなくてスキルの部分もついてきたのかなっていうのは思います。

 

ーー先日桐生で行われた立教大戦では61得点をあげた快勝となったがアタックの部分については

藤田:アタックの部分は毎試合良い準備ができているので、そこが積み上がってきた結果がこの立教戦かなと思っていて。アタックの部分はディフェンスとそんなに変わらないんですけど、ほんとに1センチ前に出るっていうところだったり、細かい部分をしっかり良いポジショニングとるとか、しっかりコミュニケーションとるとか、そういう誰でもできる部分をいかに速く正確にできるかってところを追求した結果かなと思っています。

 

ーー監督と選手の間に立つ学生コーチという立場だが、どのようなことを意識して活動しているか

安田:間にいるからといって特別何かを変えるということは意識していないですけど、やっぱり選手に近い立場なので。選手に対して気さくにコミュニケーションをとったりだとか、そういう社会人ではできないところをできていると思います。あとは、選手たちと戦うじゃないですけど、そこの情熱の部分、パッションの部分は僕自身も大事にしているかなと思います。

ーー今年のFW陣は1年生が多い中、下級生をまとめるために意識されているコーチングなどは

藤田:たしかに若い選手は多いですけど、だからといって別に何かを変えているわけではなくて。別にグランドに立てば年は下ですけど関係はフラットだと思っていて。下級生も敬語使ってるかって言われたらちょっと微妙ですけど(笑)。そういった意味では良い信頼関係は作れているのかなって思っています。

安田:やっぱり、こう上級生は下級生のサポートをする、というところはアプローチしているのと、下級生の中でも特に2年生の中野誠章(文2・桐蔭学園)だったり、1年生の申驥世(文1・桐蔭学園)は全国大会の優勝を経験したりっていう、経験値の高い選手なので。そういう部分でも信頼していますし、彼らにもしっかりリーダーシップを発揮するっていうところは伝えています。

 

ーー学生コーチとしてのやりがいとは

安田:対抗戦で改めて感じるのは、しっかり準備していたことが試合に出て、チームが勝つっていうのはやっぱり、めちゃめちゃ嬉しいことかなって思います。もう1つはやっぱりずっと見てきた選手が上手くなって、1つでもグレードがあがるっていうのは自分が選手をしていた時よりもすごく嬉しいというか、色んな感情がわいて。やりがいを感じますね。

藤田:彼が言ったことが全てかなってところではあるんですけど、色々な準備はしていますし、そこの部分で上手くいったときや、選手が活躍した時は自分も嬉しいですし、やりがいを感じています。

ーー逆に今シーズン辛かったことは

安田:僕はやっぱり青学戦に負けたところ。すごい難しかった。春、最初は立正に勝って、良い流れに乗れるのかなと思ったらやっぱり負けが続いてしまって。日本一と掲げているのにそれに差がありすぎて。このままでいいのかってなって。何を変えるべきなのかすごく悩みました。

藤田:僕は、あまり辛いってことはないんですけど。筑波に負けたあと、選手、スタッフ含めて号泣している時は、自分ももっとできたかなというか。つらさじゃないですけど、後悔まではいかないけれど、もっとできたんじゃないかなっていうのはありました。

 

ーーそこからどう乗り越えてきたか

藤田:練習でやってきたこと以上のことは試合ではできないと思っているので。その部分で練習からいかに試合をイメージした練習をできるかっていうところが全てなので。今までの敗戦を活かして細かいところまでこだわるっていうのを意識して取り組みたいです。

安田:彼の言った通りで。やっぱり勝たないといけないので。できる準備をしっかりスタッフ陣からしていきたいです。

ーー学生コーチになってラグビーの見方に変化は

安田:選手の時は、チームで負けても自分が良いプレーをできていればある程度いいかなっていうのは正直あったんですけど。やっぱり、コーチになってチームが絶対勝たなきゃいけないっていう、勝つためにはなにをしなくちゃいけないかっていうところをすごく考えるようになって。戦略やスキルの部分含め、全体的にラグビーを見れるようになったかなっていう風に思っています。

藤田:僕はラグビーの部分は見え方はそんなに変わらないですが、コーチになってやっぱり全体に関わる量が増えた分、チームに対してコミットするってところだったりチームに対する愛みたいなところは増したかなって思っています。

 

ーー学生コーチ同士の絆は

藤田:オングランドでは本当に信頼していますし、オフグランドでは練習終わってからご飯食べに行くこともありますし。オフでも信頼していて、つながっていると思います。

安田:僕はたぶん祥平がコーチじゃなかったらこの部活で学生コーチできていないと思うので。そのくらい祥平に感謝していますし、信頼しています。

ーーあなたにとって学生コーチとは

藤田:チームに与える影響力は大きいよね。答えになっているかわからないんですけど、僕は高校の時に膝を怪我して、大学1年のときはずっとリハビリで。なかなか思うようにコンディションが整わなくて。正直腐っていた部分もありますし、なんとなくチームにいるだけになっていたところに、同期のFWに選ばれて学生コーチになったんですけど、ある意味居場所を作ってもらったというか、新しい役割をもらえたっていう風には思っています。

安田:表では全然みえないですけど、チームの要とは言わないけど、大事な部分を担っているというところで。大事なポジションかなと思っています。

 

ーー大学4年間で1番印象に残っている試合やプレーは

安田:僕は(今年の対抗戦の)筑波戦。正直めちゃめちゃ準備してきて。絶対勝てるって思っていたんですけど、やっぱり相手の方が1つ上で。勝ちきれなかったってところがめちゃめちゃ悔しくて。そっからもう1回「やり返したろ」っていう気持ちになりましたし、どうやったら強い相手に勝てるだろうかっていうのを考えるようになったので。悔しい思いをしたんですけど、もう1回頑張ろうと思えた試合で印象に残っています。

藤田:同じ回答になってしまうんですけど、筑波戦は自分の中で印象に残っていて。負けたんですけど、僕は準備してきたことを出せた部分と出せなかった部分がある中で、あまり言いたくないけど、負けた中でも成長できた試合だと思っていて。選手含め準備の部分から覚悟が決まった試合というか。メンタルの部分は何か観にきてくださった方の心を動かせるような試合ができたんじゃないかなと思ったので印象に残っています。

 

ーー同期はどのような存在

藤田:ありきたりなことになっちゃうんですけど、家族みたいな存在で。本当にくだらないことを毎日寮でずっとやっています(笑)。見てて飽きないですし、グランドを出たら殴り合うくらい本気でやっているけれど、いざグランド出たらわちゃわちゃしているんで本当に家族みたいな存在だと思っています。

安田:祥平の言った通りなんですけど、4年間一緒にやってきて、しんどいことも楽しいことも乗り越えてきた仲間なんで。やっぱりすごく大切な存在ですし、本当に家族みたいな存在かなって思っています。

 

ーー慶大蹴球部に入部して成長したことは

藤田:僕はよくラグビーではよく言われることなんですけどOne for All、All for Oneの「One for All」の部分は、この学生コーチという2人しか経験できないポジションになったことによって学ばせてもらったなと思っていて。もちろん選手の2年間も学ぶことは多かったですけど、やっぱり残り2年間で学ぶことの方が、チームのために自分がどうアクションをとるべきなのか、選手を支えるためにどうアクションするべきなのかを考えた2年間っていうところで成長できたなと思っていて。他人のために、チームのためにやるっていうのは多くのことを学べたかなという風に思います。

安田:僕はコミュニケーション能力の部分が成長できたかなと思っていて。先ほども話がありましたけど、選手と社会人の方々をつなぐ役割で、社会人の方々とコミュニケーションをとる機会も増えますし、逆に選手とも多くコミュニケーションをとらないといけないので。そこの部分は成長できたかなと思います。

 

ーー早慶戦での慶大のキーマンは

藤田:僕は1年生の山﨑太雅(商1・県立浦和)です。彼は高校からラグビーを始めて。今年、良い時も悪い時も付き続けてきました。本当、ポテンシャルは言うことないので。もう本当に愚直に体を張り続けてくれることを期待しています。

安田:今野椋平(環4・桐蔭学園)がキーマンになるかなと思っています。彼がどういうゲームメイクをやっていくかなってところで、すごい流れも変わってくるかなと思いますし、彼は1番体張ってチームに流れを持ってこないといけない選手だと思うので。キーマンになってくるかなと思います。

 

ーーあなたにとって早慶戦とは

藤田:僕は、他の人とは少し違う答えになっちゃうかもしれないんですけど、恩返しだと思っています。実は僕は9年間ワセダでラグビーをやっていて。ラグビーを始めたのもワセダクラブってところで。中学から慶應に来て、そこから慶應でワセダに勝つという目標を立てました。中学から今年で慶應に来て10年目です。ラグビーの楽しさだったり、ラグビーのおもしろさを教えてくれたのはワセダのグラウンドなので。(慶大が)勝つことが恩返しになるかわからないですけど、勝って恩返ししたいなって思っています。

安田:僕はありきたりなんですけど、憧れの試合かなって思っています。僕は高校2年生の時に初めて秩父宮に行って、早慶戦を観て。慶應でしかラグビーやりたくないって思えた試合でしたし、そこで負けて悔しそうにしている先輩方の顔とかを見ていたから、この試合は慶應にとって勝たないといけない試合なんだなって毎年毎年感じていた。憧れの舞台ですし、慶應として絶対勝たないといけないと思っています。

 

ーー早慶戦に向けてチームに貢献していきたいことは

安田:今チームに結構言っていることは本当に細かいところの徹底。チームの規律だったりとか、スキルの本当に細かいところの徹底をやっているなかで、やっぱり選手たちからもそうですけど、やっぱりこっちからもしっかりリマインドだったりをやってあげて。少しでも全てのことにおいてクオリティーをあげるってことは意識していきたいなって思っています。

藤田:今話しありましたけど、早慶戦だからと言って特に変えることはなくて。これまで積み上げてきた部分を細かいところまでこだわって徹底してやっていくってところが全てかなと思っています。

 

ーー試合前、選手たちに向けて何かかける言葉などは

安田:僕と祥平は毎回試合に出る選手全員に手紙を書いているんですけど、その手紙にかけたい言葉というか、やってほしいことは全部書いているので。「勝つよ」ってことは伝えたいですね。

藤田:個人に対しては色々あるんですけど、全体に向けては2つあって。1つ目は楽しんでほしいっていうこと。早慶戦ってワセダと慶應に入学して、入部した人しか立てない舞台なので、こんなに素晴らしいグラウンドで、たくさんのお客さんの前で試合できることって当たり前じゃないと思うので。
2つ目は覚悟の部分。楽しいのと同時に慶應である以上勝たなくてはいけないので。応援してくれる方だったり、観にきてくださる観客の方にがっかりして帰ってほしくないので、そこはしっかり覚悟を決めてほしいなって思います。

 

ーー早慶戦への意気込み

安田:これまで積み上げてきたことを出して、絶対勝ちたいと思います。

藤田:本当に、早慶戦に関われるのも最後なので。最後の早慶戦を自分も覚悟を決めて楽しみたいと思います。

貴重なお話をありがとうございました!

(取材:愛宕百華、髙木謙、根本佳奈 記事:根本佳奈)

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